起床と共に俺が異世界人

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第1章 模索

1節 目覚めれば此処は

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此処は名前も分からない山の山頂にある丘。

自分にとっては踏み入れた覚えの無い未知なる領域であり、気付けばそんな場所から自分の異世界人生はスタートしていた。

夢だろうと思っていた、むしろそう願っていた....

「...あれ、俺は今何してたんだ?それより此処...どこ?」

そう呟いて目覚めた場所は、先言った通り、全く見に覚えの無い場所の木にもたれ掛かって寝てたみたいだ。

何があったのか…

記憶を掘り返すも、最後の記憶は昨晩の事、職場辞めストレスから開放された俺は、次の職場で骨を埋める前の休暇中に友達の部屋へ泊まり込みでゲーム三昧な一日を過ごしていた。

そんなバカみたいな日常を、自分は満喫していたのだが…
 
続いて、さっきまで帰りの電車に乗りながら睡魔で意識を朦朧としていたところ、気付いたらこの木にもたれ掛かっていたと言うわけである。

寝起きも最悪で、目の回りと喉が痛く、まるで一日中大声で泣いた後の様な感覚である。

「風邪、引いてるのか?」と思って自身の体調に聞いてみるも喉以外は不思議な事に快調。

何がどうなってるのか、かなり困惑していて、ついでに足下の良くテレビで見るサバイバルナイフが置いてある。

サバイバルしろってこと?

更にはもたれかかっていた木をふと見ると、彫った様な傷跡に気付く。

俺は何をしていたんだろう...

因みに木の傷跡にはカタカナで「エニグマ」と書いてあり、横線で訂正する様に消されている。

 因みにエニグマが何かを説明すると、西洋語から訳すと“謎”や“パズル”の意味合いがあり、ギリシア語から訳すと“謎めいた言葉”の意味合いがあり、ドイツやナチスで用いられていたローター式暗号機にもその名前が使われており、その暗号にはエニグマ暗号と名付けられている。

誰に言っているんだろうか俺は....

自分は偶然その単語と出会ってから単純に意味合い関係無く、たった4文字の言葉の響きに惚れしまった。

それゆえに自分のオンラインネームに使わせてもらっている。

なんの為に彫ったのかが謎過ぎて何処ぞにあるVR謎解きサバイバルゲームかと思わされる。

もちろん、そんなとあるラノベにあるゲームの世界に対してフルダイブ出来る様な家庭用ゲーム機にダイブする体験版を見た覚えも無いし知らない。

更に自分の性格上、木に何かで彫って文字を書く趣味もありはしない....

周囲を確認すると、木の根下にどうしてか俺の投げナイフが2本ある。なぜ?

このナイフは趣味で買ったドラゴンスローイングナイフと言う名で、刃に白色で龍の絵の塗装が施されている。

投げるのさえ勿体なく、自分は観賞用に片付けていた、はずなのだが...

もしかしたらコレで木を彫ったのか?

そんな事するはずないか....

他にも周囲に幾つか散乱している。

リュックサックも置いてあり、挙げ句の果てには松明までもがあると言うサバイバル魂を擽る組合せだった。

俺は泊まり込みでこんなものを持ち込んだ覚えは無い、自慢する気もない。

記憶を辿った結論は、俺の覚えてることに関してはそれ以降の記憶が無い。

1番大事な所でしょうよ…

リュックの中を確認すると、自分の寝間着やスーパーで買ったが食べなかった夜食類、主にドライフルーツがあった。

更にサブポケットには緊急用の太陽光バッテリーやUSBケーブルが入っていた。
しかし肝心の携帯電話が入っていない。

携帯無いから太陽光バッテリー意味ねーよ、使いどころあるなら真っ暗な所でも多少明るく照らせる懐中電灯機能ぐらいか。

松明あるけど不要説←


ただ1つだけ感じるものがある、この状況が何故か身体がふわふわしている。
恐らく夢か何かなのだろう。そんな不安と期待が入り交じった心地を持っていた。

一先ず俺はナイフをリュックサックに入れてから背負い上げ、立ち上がる。

見たところ此処は山っぽいのだが、どの辺の山なのか見当付かない、まずは山を下って人の居る場所を探そう。

流石に貴重な体験くらいは出来そうだ。

夢にしては、と言う考え方である。

「そうだ携帯は...」と思い電話しようと携帯を出そうとするが、そういえば無かったのだった。

どうせ圏外なんでしょうけど…

流石に携帯無くしたとか紛失届けを出さないといけないな。

携帯依存症の自分には非常に心細い現状である。

故に携帯が無かろうと気付けばポケットをまさぐってしまうのだ。

しかしホントに此処はどこなんだよ...

話題を原点に戻し考え、お尻側のポケットにあるべき財布を確認したらちゃっかりと存在していた。

中身は現金が約8千円と小銭が少々、他には免許証とキャッシュカード、それに交通機関で使うICカードとラーメン屋の割引券が入っていた。

そして小銭入れはボタン式ポケットになっており、一つは先程の小銭が入っており、もう片方にはポケットタイプの小型カッターナイフが収納されている。

このカッターは自分の辞めた職場で極稀に使っていた携帯アイテムで、デザインが気に入っている御墨付き道具だ。

ここで持ち物は一通り見たが、肝心な此処までの経緯を、やはり思い出せないし分からない現状が辛い所である。

目の前が丘になっているので、とりあえずそこまで数十メートルと言う距離を歩いてみた。

そしてこの丘の向こうには、見下ろす限り急斜面になっている。

すぐ横には丁度良い坂があるのでそこから下ろう。

因みに丘を下った先には、非常に長い距離まで森林が続いており、何とも言えないぐらいに、非常に景色が良い。

空気は今の所凛々としていてとても美味しい、重くならないと良いが。

何はともあれ今現在の景色、人はこれを絶景と呼ぶのだろう。

ただ問題は、下山先の一面が森でネガティブになり、絶望を感じていると言う事だった。

だが、その森の向こうには、僅かに薄い緑の平原が見える、様な気がする。

とてつもなくそうであってほしい。

目が悪くなってるのかも知れない、ゲームのやり過ぎだったか?

そんなくだらない話はさておき、下山して安全な場所や休息できる場所を探そう。

サバイバル的なノリを考えると、最悪シェルター代わりの何かを作る事になるのだろう…

さて、まずはこの先の森へと入る。

それから15分程だが歩き続けたが、もちろん、あまり下れている実感は無い。

木に上ればあるいは周囲をもっと見渡せそうだと考え、付近の高そうで登りやすそうな木があり、それに登ってみた。

小さい頃から遊びで木に登ってて良かったと此処では自画自賛している。

そして一番上まで登ったが、近くに少し開けた場所があり、出れそうだ。
 
他に崖やいい景色のある場所が見当たらなかったが、後ろを振り向くと最初の丘が思ったより高い所にあるので、一応下れてはいるハズだ。

取り敢えずは無いより良い情報を収穫出来たかと思う。

その後、俺はこの木から下り、開けた場所を目指して歩いていった。
 
しばらく歩いていると、正面に動物が二頭倒れているのが見える。

少し怖いが気になったので近付いてみる。

.....っ!?

自分はかなりの衝撃で言葉を失った。

何故なら目の前まで来てみれば、それは二頭ではなく、真っ二つになっている動物の死骸だったからだ。

牛っぽいが翼があり、如何にもファンタジーを模した様な姿をした動物だが既に腐っていてウジ虫も大量に湧いている、非常に悪臭がしてショッキングだ。

死体からウジ虫が湧いているということは3日以上経過しているのだろう。

ウジ虫を食べるサバイバル番組を観た事がある、たんぱく質が豊富で大抵のウジ虫には毒性を持っていたとしても、死に至るほどのものではないらしい。

因みに無菌的に育てたウジムシをそぼろにすると大変美味だという話をどこかの書籍で読んだ事がある。

結論ですけど、最悪食べれます。

もちろん俺はとても苦手なので、放置と共に記憶から消そうと意識している。

ウジ虫好きのイケるサバイバル人からしたら、これはパラダイスなのか...?

まあ、意識するほど忘れられないのが人間の嫌な所だ。

サバイバルにおいてはウジ虫も食料になると言うのは事実だとしても、俺はそう言うのは慣れていない。

その神経質さが命取りになるらしいが、やはり見てるだけで耐え難いものを感じた。

とにかく此処から離れたくて、自分は早歩きで進む事にした。

それから更に歩き続け、広く見渡せる湖のある場所に到達した。

良かった、何とかすれば飲めそうな水にありつけたかも知れない。

この湖水は良く透き通っていて美味しそうだ。

だが危険性がある水である可能性が高い為、リュックサックから金属で作られた空の水筒を出す。

そして蓋状のコップで水を汲み、ハンカチをかぶせ砂、砂利、石の順にのせ、水をコップ満タンになるまでろ過した。

その間、ふと湖を見ると魚も確認できた。

そのあと、丈夫なそうなY字の棒を二本とまっすぐな棒を一本。計3本を持ってきて、地面にY字をさして1本を持ち上げた状態にする。

その持ち上げた棒に吊るす様に水筒を引っ掻ける。
そして乾燥した枯木を集めて水筒の下に置き、リュックに入っていたマッチを使い、枯木を燃やす。

流石に摩擦熱を使った火起こし経験が無い為、無駄な体力の消耗を控えた。
そして、後は充分に水筒の中の水を沸騰消毒させれば飲めるようになる、ハズ。

 因みに摩擦熱を使った火起こしのやり方は知っているつもりだ。

少し周囲を歩きながら、魚をとる方法を考えていた。

だが、釣りの経験もなければ、竿も糸も針もない。無理だな。

やはり釣竿を作ることも考えたが、全く分からない。その辺に関してはサバイバルを好きで観ていたが、あやふやだった。

取り敢えず戻ってみると、水は充分に熱菌消毒が済んだ沸騰水になっていた。

十分に冷ましてから水筒に入れ、移動する準備を整えた。

それから暫く歩き続ける事恐らく3時間程経過したのだろうか。

とにかく大分長い事、無心で歩いた気がする。

ある程度疲れて来たので、一旦足を止め、休憩してからもう一度木を上ってみる。

そして周囲を見渡すと、山を降りた先に切り立った崖が見える。

反対側にも崖があるので谷だな。

しかし、その先に小さな村らしき景色も見えた。

たが中間を陣取る形で谷があるので、どうやって通るかが重要だ。

取り敢えず崖を過ぎる方法は追々考える事にして木から下りる。

そして歩き出そうとすると、すぐ目の前には狼がいた。

しかし、狼っぽいのだが牙が長過ぎる。

猪みたいな感じ、うん、やっぱり狼にしておこう...

順に危機感が自分の生存本能を刺激し始める。

兎にも角にも、あの狼を刺激しないように去ろうとした。

しかしこちらを睨み付ける狼の目力が増し、唸り声を上げた。

そして、こちらに対して飛び掛かってくる狼に自分は怯んでしまう。

反射的に自分は身を屈めて飛び付こうとする狼を避けてから全力で木の少ない開けた方まで走った。

それでも走りで狼に勝てる事はなく、じわじわと距離を詰めてくるように追い掛けてくる。

必死に逃げていたが、目の前に高い段差があることに気付かず、そのまま転げ落ちた。

挙げ句岩に頭をぶつけ、直ぐ様俺は尻を地面から離し、即座にリュックからナイフを出していつでも抵抗し走れる体勢にする。

だが頭がぼんやりと脳震盪を引き起こしているのか、意識と視界がふわっとぼかして見える。

それから追い詰めたと言わんばかりに、狼がやって来る。

そしてすぐに飛び掛かって来るのを反射的に身体を反らし、狼の身体にナイフを通すのだが、驚く事に切れ味が良く何の抵抗も無く切れた。

衝撃のあまり、「えっ!?」と声が出てしまう。

こいつ、こんなに切れ味があったのか!?

しかしまだ狼は生きていて、諦めないと言わんばかりに、こちらに攻撃しようとする。

どうしてこんなに体から血を出しながらも、こちらを狙って来るのだろうか...

そう考えていてもキリが無さそうだ。

夢だと割り切っていても、どうしようもないくらい、恐い...

今までの育ち方1つでこの様な腰抜けになってしまうのかと思うと、せめてもう少し悪い経験をしておくべきだったと思った。

「うぉおぁああああ!」

どうしようもなく、叫んで威嚇しようと血の付いたナイフを振り回すと、振り回した至る方向に向けてカマイタチの様な衝撃派が現れた。

その刃の一部が狼の鼻先から尻尾にかけて勢い良く切り裂き、直前で狼は大声で「グルァァァァ!!」と叫んだ。

「えっ.....な..に..?」

自分でもその言葉が口から出て以降、唖然としていた。

とにかく俺は、それから倒れた狼の生死を確認しに行く。

そして、俺はその狼に触れた。

毛並みが、心地良い...

良く見るとこの狼、目を瞑っている姿が非常に愛らしい。

そんな動物を自分はこの手で殺した、そう考えた瞬間...

意識が薄れて行く。

俺は、何をしてるんだっけ?

………

ああ、俺は何を…して……

ーーーーーーーーーー

気付けば村の中の噴水を目の前に自分は立っていた。

あれ?此処、今いた場所じゃない..

「寂しいけどここでお別れだ」

この声、誰の声だ?

俺じゃない、姿は見えないが、声だけが聞こえる...

優しい低い声のお兄さん、そう感じさせる声だ。

「短い間だったけど、またどこかで..........」

しかし誰なんだろう、こんな声の知り合い...いたっけ.....?

でも何故だろう、足元に居る動物ばかり見ている...

ーーーーーーーーーー 

ん?あれ??

気付けば目の前にある先程の狼の死体に手で触れていた。

間違えなく自分の殺ってしまった狼の死体だ。

こんな姿ではなかった気もするが、さっきの動物と良く似てたがする。

だがそれよりも、振っただけであんな刃が出る事に対しての手の震えがまだ止まらない。

狼を見ると身体が切れ目より綺麗に真っ二つになっていて、とてつもなくショッキングな姿となっている。

余程の切れ味がこのナイフに秘められているだろう。

なんでだよ…?こんなナイフじゃなかったよ…

非常に危険だからどこかで勝手に暴発だけはしないでほしい...

それから俺はこの狼を殺してしまった事の罪悪感が来てしまった。

悪気はなかったが死にたくない、その気持ちで必死に抗った結果だ。

夢は夢でも、此処で死んでなるものかと戦ったが、死体がリアルでとても気持ち悪い。

しかし、結局のところ俺はこの動物が狼かは未だに分かっていない。

考えながら、今は死体からかなり離れた場所まで歩いてきた。

こんなことを考えても切りが無いのは分かってはいるが、良心が痛むだけで俺の中では何一つしてやれる事が無かった。

考えながら俺は正面の木にもたれた。

夢...か....と考えながらも、段々と今が現実に思えてくるようになる。

実際にゲームでは何も感じずに殺せるし、実際にやってみると血が吹き出す上に血しぶきが自分の肌に触れる。

お互いが必死で、死を拒絶し殺し合う残酷さを体験して、心が落ち着かない。

だから余計に夢で終わらせたいと思いここから逃げたくて、危機感を覚える自分を、リアルな夢だなぁと思うだけの危機感の欠片もない余裕な自分で、何とか恐怖の抑止力としている気がする。

夢が覚めるまでの我慢だと考えたい、それまでの犠牲だと思っていたい。

命の大きさは壮大で、偉大で、しかしそれに喰らいつかないと生きてはいけない生命の厳しさを、自分は再意識する。

本当にそんな夢で綺麗サッパリ終わって欲しい...

今まで食べてきた肉は、そう言った理不尽な惨殺から得た恵みなのだろう。

これ以上は何も起こらず、平和に目覚めたい....

そして体の休息が取れた俺は立ち上がり、再び前を向いて歩き出す。

その先の崖を越える橋が無かった場合、どうやって越えるか方法を考えながら進む事にした。
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