30 / 168
第2章 人魚の肉【不老不死の霊薬】
8.妖(あやかし)の命ごいと不死の代償
しおりを挟む
上半身が人間の身体似ている妖は、予想していなかった事態にパニックになった。
『我の腕が、ウデが・・・ウデがぁ、』と泣き叫びながら、海中で暴れる。
『お主ら・・・。許さんぞ、我に攻撃を加えるとは・・・。』
冷静さを失った妖は、3人の乗っている船を沈めようと、力任せに船に体をぶつけようとする。
その動きを冷静に見ていたのが、姜文である。
姜文は、槍を投げつけた後、直ぐに弓と矢を持ち、構えていたのである。
素早く、矢を射る。その速さと正確さは訓練の賜物たまものなのだろう、姜文が放った矢が妖の右目を射抜いたと思うと、続け様にほぼ同じ個所を矢が射抜いた。
『ギィャアア。』、2本の矢に射抜かれた目を苦しそうに押さえる妖。
『目が、目が、めがぁ。』、悶絶する妖めがけて、ある全ての武器を投げつけ、矢を射る姜文と陸信。
この瞬間を逃せば、自分達は殺される。誰が見ても圧倒的有利な展開は、実は妖に対する恐怖の裏返しであり、二人は無我夢中に、自分達の準備してきた武器を使い攻撃したのであった。
二人の連続攻撃を受け、妖は自分の力の限り暴れ回る。
妖が暴れる度に船は揺れ、船が転覆しそうになる。揺れる度に、船を転覆させない様に必死にバランスを取る3人。
しかし、抵抗空しく、一人又、一人と海に落ちていく。船だけが運よく、沈まずに海面に浮かんでいる。
3人が海に落ちたのを見た、妖は、自分の片手を焼失させた一番憎い徐福を目指し、襲いかかろうとする。
妖の身体が徐福に覆いかぶさろうとする。徐福は決死の妖の形相を見て、自分の死を覚悟した。その時である、妖が突然苦しみ出した。
『・・・・ゲェ、ゲェ、ゲェ・・・・ゲ・・。』
妖の身体は痙攣しだし、痙攣が終わると、妖は意識を失い、力なく海面に沈んでいこうとした。
武器の刃先に塗っていた毒が、妖の身体から自由を奪ったのであった。
妖の身体が海面から姿を消そうとする時、陸信が潜り、妖の身体を支え浮上しようとした。
姜文も又、陸信と同じように潜り、妖の身体の下に入り、陸信を手助けする。
二人が力をあわせ、やっとの事で妖の身体を船上に持ち上げる。
水から離され、船上に上げられた妖は、正にまな板の上の鯉の状況になった。
船上で意識を取り戻し暴れようとするが、毒の為身体に力が入らず、妖の身体を押さえる陸信の力に抗う事が出来ない様であった。
抵抗が不可能だと妖は悟った様に、動きを止めた。
あきらめた妖は、か弱き女子の様に涙を流し命乞いを始めた。
『・・我の負けじゃ、助けてくれ。命を助けてくれれば、これから先は人間には手を出さぬ。』
『・・・助けてくれれば、30年はお主らの漁が不漁になることはない、我が保証する。』
『我は、お主らを不老不死にできるモノを持っておる。どうじゃ、不老不・・・。』と言いながら妖は堪らず号泣し始める。
片目と片手を失い、泣きながら命乞いをする妖をみて、徐福は考える。
『お主が、命を奪った者達の中には、今のお主と同じように命乞いをした者がいなかったのか?。』
『・・・いなかった。我の歌声を聞いた者は、術にかか・・、眠っている間に生気を吸ったので、苦しんだ者はいない筈じゃ。我を信じてく・・。』と、妖は感情が高ぶっている為か、途切れ途切れの言葉で涙ながらに訴えた。
徐福は、その姿を黙って見つめ、暫く考え込む。その後、考えがまとまったのか、重い門を開くように、ゆっくりと口をひらく。
『姜文、陸信、スマヌがお主ら、こ奴を海に返してやってくれ!。』
『ワシは、多くの者の命乞いをきかず、簡単に人の命を奪う男を知っている、ワシが今、こ奴を殺せば、ワシもその男になってしまう気がして怖いのじゃ。スマヌが、ワシの我儘を聞いてくれ。』と徐福は、二人を説得する様に言葉を続けた。
『妖よ、もし今後、同じようにワシの民達に危害を与えれば、ワシの法力で必ずお主を殺す。忘れるでないぞ。一度だけ、お主に機会を与える。一度だけじゃぞ。』と徐福が妖に念を押すと、妖は徐福の目を見つめゆっくりと2回頷いてみせた。
(あの男の事か・・・。)
その言葉を聞き、姜文は幼き頃に見た狂王の顔を思い出す。
『ハッ!承知致しました。陸信、スマヌがそっちを持ってくれ!!』と姜文は、妖の上半身を持って忠実な漁師にお願いをした。
海に放された妖は、勢いよく海に沈み、そのまま消えるかと思われたが、10数秒後再び、海面から顔を出し、自分の頭の角の一本の先端を折り、船の中の3人に向けて投げたのであった。
掌に収まる長さの角が船の底を転がる。それをみて、姜文は拾い上げる。
『その角には、我が長い間溜めた生気が詰まっておる。それを口にすれば、その者の身体は不老不死になる、しかし、その代償は孤独じゃ。その者は血脈を残す事ができなくなる。つまり、子孫ができなくなるのじゃ。不老不死の呪いと言うべきか、独りでは決して解けない・・・。』
『不老不死とは孤独を未来永劫味わうという罰・なのだ。その罰を背負う勇気があれば、その角を口にすればよい。その一本で、3人の者は不老不死になる・・・。我が思うに、生半可な覚悟では口にしない方が良いと思うが・・・、忠告はしたぞ。』
妖は、そう言い残し、ゆっくりと海の中に潜っていった。その日、再び姿を現す事は無かったのである。
妖が姿を消し、3人の緊張が一気に解ける。
『ワシらは夢でも見たのか?、自分の目が信じられん。』と言い、徐福はゆっくりと船底へ腰を下ろす。
『不思議な事もあるものですな。蛇の下半身、人間の上半身。ああいう生き物を何と呼べばいいのですか?人蛇ですか?』
『海と言えば、魚じゃろ。人魚で良いと思うが・・・。ワシはあ奴の角など、食べたくないな。不味いまずじゃろ。絶対・・・。』
『私もそう思います・・・。』と姜文が言うと、陸信も静かに頷く。
『とにかく、今日、皆揃って生きて帰れる。それだけで、幸せじゃな。』と徐福は皆の思いを代弁する様に呟いたのであった。
『我の腕が、ウデが・・・ウデがぁ、』と泣き叫びながら、海中で暴れる。
『お主ら・・・。許さんぞ、我に攻撃を加えるとは・・・。』
冷静さを失った妖は、3人の乗っている船を沈めようと、力任せに船に体をぶつけようとする。
その動きを冷静に見ていたのが、姜文である。
姜文は、槍を投げつけた後、直ぐに弓と矢を持ち、構えていたのである。
素早く、矢を射る。その速さと正確さは訓練の賜物たまものなのだろう、姜文が放った矢が妖の右目を射抜いたと思うと、続け様にほぼ同じ個所を矢が射抜いた。
『ギィャアア。』、2本の矢に射抜かれた目を苦しそうに押さえる妖。
『目が、目が、めがぁ。』、悶絶する妖めがけて、ある全ての武器を投げつけ、矢を射る姜文と陸信。
この瞬間を逃せば、自分達は殺される。誰が見ても圧倒的有利な展開は、実は妖に対する恐怖の裏返しであり、二人は無我夢中に、自分達の準備してきた武器を使い攻撃したのであった。
二人の連続攻撃を受け、妖は自分の力の限り暴れ回る。
妖が暴れる度に船は揺れ、船が転覆しそうになる。揺れる度に、船を転覆させない様に必死にバランスを取る3人。
しかし、抵抗空しく、一人又、一人と海に落ちていく。船だけが運よく、沈まずに海面に浮かんでいる。
3人が海に落ちたのを見た、妖は、自分の片手を焼失させた一番憎い徐福を目指し、襲いかかろうとする。
妖の身体が徐福に覆いかぶさろうとする。徐福は決死の妖の形相を見て、自分の死を覚悟した。その時である、妖が突然苦しみ出した。
『・・・・ゲェ、ゲェ、ゲェ・・・・ゲ・・。』
妖の身体は痙攣しだし、痙攣が終わると、妖は意識を失い、力なく海面に沈んでいこうとした。
武器の刃先に塗っていた毒が、妖の身体から自由を奪ったのであった。
妖の身体が海面から姿を消そうとする時、陸信が潜り、妖の身体を支え浮上しようとした。
姜文も又、陸信と同じように潜り、妖の身体の下に入り、陸信を手助けする。
二人が力をあわせ、やっとの事で妖の身体を船上に持ち上げる。
水から離され、船上に上げられた妖は、正にまな板の上の鯉の状況になった。
船上で意識を取り戻し暴れようとするが、毒の為身体に力が入らず、妖の身体を押さえる陸信の力に抗う事が出来ない様であった。
抵抗が不可能だと妖は悟った様に、動きを止めた。
あきらめた妖は、か弱き女子の様に涙を流し命乞いを始めた。
『・・我の負けじゃ、助けてくれ。命を助けてくれれば、これから先は人間には手を出さぬ。』
『・・・助けてくれれば、30年はお主らの漁が不漁になることはない、我が保証する。』
『我は、お主らを不老不死にできるモノを持っておる。どうじゃ、不老不・・・。』と言いながら妖は堪らず号泣し始める。
片目と片手を失い、泣きながら命乞いをする妖をみて、徐福は考える。
『お主が、命を奪った者達の中には、今のお主と同じように命乞いをした者がいなかったのか?。』
『・・・いなかった。我の歌声を聞いた者は、術にかか・・、眠っている間に生気を吸ったので、苦しんだ者はいない筈じゃ。我を信じてく・・。』と、妖は感情が高ぶっている為か、途切れ途切れの言葉で涙ながらに訴えた。
徐福は、その姿を黙って見つめ、暫く考え込む。その後、考えがまとまったのか、重い門を開くように、ゆっくりと口をひらく。
『姜文、陸信、スマヌがお主ら、こ奴を海に返してやってくれ!。』
『ワシは、多くの者の命乞いをきかず、簡単に人の命を奪う男を知っている、ワシが今、こ奴を殺せば、ワシもその男になってしまう気がして怖いのじゃ。スマヌが、ワシの我儘を聞いてくれ。』と徐福は、二人を説得する様に言葉を続けた。
『妖よ、もし今後、同じようにワシの民達に危害を与えれば、ワシの法力で必ずお主を殺す。忘れるでないぞ。一度だけ、お主に機会を与える。一度だけじゃぞ。』と徐福が妖に念を押すと、妖は徐福の目を見つめゆっくりと2回頷いてみせた。
(あの男の事か・・・。)
その言葉を聞き、姜文は幼き頃に見た狂王の顔を思い出す。
『ハッ!承知致しました。陸信、スマヌがそっちを持ってくれ!!』と姜文は、妖の上半身を持って忠実な漁師にお願いをした。
海に放された妖は、勢いよく海に沈み、そのまま消えるかと思われたが、10数秒後再び、海面から顔を出し、自分の頭の角の一本の先端を折り、船の中の3人に向けて投げたのであった。
掌に収まる長さの角が船の底を転がる。それをみて、姜文は拾い上げる。
『その角には、我が長い間溜めた生気が詰まっておる。それを口にすれば、その者の身体は不老不死になる、しかし、その代償は孤独じゃ。その者は血脈を残す事ができなくなる。つまり、子孫ができなくなるのじゃ。不老不死の呪いと言うべきか、独りでは決して解けない・・・。』
『不老不死とは孤独を未来永劫味わうという罰・なのだ。その罰を背負う勇気があれば、その角を口にすればよい。その一本で、3人の者は不老不死になる・・・。我が思うに、生半可な覚悟では口にしない方が良いと思うが・・・、忠告はしたぞ。』
妖は、そう言い残し、ゆっくりと海の中に潜っていった。その日、再び姿を現す事は無かったのである。
妖が姿を消し、3人の緊張が一気に解ける。
『ワシらは夢でも見たのか?、自分の目が信じられん。』と言い、徐福はゆっくりと船底へ腰を下ろす。
『不思議な事もあるものですな。蛇の下半身、人間の上半身。ああいう生き物を何と呼べばいいのですか?人蛇ですか?』
『海と言えば、魚じゃろ。人魚で良いと思うが・・・。ワシはあ奴の角など、食べたくないな。不味いまずじゃろ。絶対・・・。』
『私もそう思います・・・。』と姜文が言うと、陸信も静かに頷く。
『とにかく、今日、皆揃って生きて帰れる。それだけで、幸せじゃな。』と徐福は皆の思いを代弁する様に呟いたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
【読者賞受賞】江戸の飯屋『やわらぎ亭』〜元武家娘が一膳でほぐす人と心〜
☆ほしい
歴史・時代
【第11回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞(ポイント最上位作品)】
文化文政の江戸・深川。
人知れず佇む一軒の飯屋――『やわらぎ亭』。
暖簾を掲げるのは、元武家の娘・おし乃。
家も家族も失い、父の形見の包丁一つで町に飛び込んだ彼女は、
「旨い飯で人の心をほどく」を信条に、今日も竈に火を入れる。
常連は、職人、火消し、子どもたち、そして──町奉行・遠山金四郎!?
変装してまで通い詰めるその理由は、一膳に込められた想いと味。
鯛茶漬け、芋がらの煮物、あんこう鍋……
その料理の奥に、江戸の暮らしと誇りが宿る。
涙も笑いも、湯気とともに立ち上る。
これは、舌と心を温める、江戸人情グルメ劇。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる