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第4章 狂王の末路
1.心に空いた穴、注がれたモノ
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懸命に生きる者達の運命を変えた満月の夜が明けた。
徐福の死を知った集落の民達は、死というモノを理解できる者は例外なく自分達の家族を失った様な悲しみに襲われた。
その日、集落では徐福と陸信の葬儀が行われる。
憔悴している姜文を、漁師の長と蘭華が献身的に支えた事で、二人の葬儀は大きな混乱もなく粛々と進められたのであった。
姜文や陸信の妻風鈴の憔悴の様子は、誰もが心配するほど酷かった。
飽桀による凛凛の誘拐、それを阻止するために徐福と父親の陸信が尊い命を失った。
表向きには、二人の死は集落の者達にその様に伝えられた。
葬儀の終了間際、陸信の妻風鈴が姜文の近くに駆け寄り、夫の死は姜文の責任だと罵った。
『昨日、貴方が夫と娘を連れださなければ、こんな事は起こらなかった』
『夫を、子供達の父親を私達家族に返して下さい』
『全部、貴方が悪いの・・・』と風鈴は最後まで言えず、そんな彼女を見かねて漁師の長の妻が駆け寄り彼女を連れて葬儀の場から離れたのである。
『姜文様は、何故、何も言わない?』
『心の中に、何かやましい事でもあるのではないか』と、悪意を持って見つめる視線も少なからずあった。
しかし、姜文は終始無言で葬儀の終わりまで参列し、そして家に帰ったのであった。
誰も待つ者はいない、彼の家に。
家の扉を開けると、暗い部屋の中に御膳が見えた。
誰もいない。ただそれが良かった。独りだけ生き残った罰を、姜文は心から欲していたのである。
寂しさを感じる事も、自分には許されないのだ。そんな資格は無い。
姜文は、本気でそう思っていた。
今、姜文が辛うじてこの世の中に立っていられるのは、徐福が残した言葉であった。
自身(徐福)を想うのであれば、どうか苦しまないでくれと慰めの言葉を残した。
そして徐福自身が受けなければならなかった苦しみを姜文が代わりにうける事に、養父は感謝と謝罪の言葉を残した。
妖の口をとおし、徐福の声でそれを聞けた事が姜文にとっては幸福な事だったのかもしれない。
生真面目な義理の息子は、ぽっかり空いた心の穴に、義父の遺言を無理矢理押し込み、傷ついている自分を更に傷つける事、貶める事で、何とか正気を保っていたのである。
心が何時崩壊するかわからない、それは危うい状況であった。
彼は、その日何も食べれず、そのまま寝床に入った。
しかし目を瞑っても、眠れず日が昇るぐらいまで眠れなかった。
考える事は過去の思い出と、過ちに対する悔いばかりである。
次の日の朝、家の扉を叩く音で姜文は自分が眠れたことに気づく。
扉を見に行くと、其処にはご飯を持って立っている蘭華がいた。
『おはようございます。朝ごはんをお持ちしました。』
『さあ、食べますよ。』
蘭華は、彼女らしく姜文の意思は確認せず、忙しそうに部屋に押し入ったのである。
その日から、彼女は当たり前のように、毎日食事や会話をしに姜文の家に通うようになった。
見た目は強引な彼女だが、自分から姜文には無理に話しかけず、求められた時にだけ会話をするように心がけていた。
ただ温かく見守る様に傷ついた姜文に接したのである。
それは、ポッカリと開いた姜文の心の穴と、穴で脆くなった姜文の心を理解した上での彼女なりの配慮であった。
彼女はユックリと慎重に、自分が持っている姜文への全ての愛情を注いだのである。
何時、姜文の心の穴が満たされるかは分からない。
しかしそんな事彼女にはどうでもよい事だった。
彼女が注ぐ愛情とは、男女間の愛ではなく、友達同士の中の友情でも無い。
注いだのは人間として、傷ついて倒れそうになっている人に、手を差し伸べたいという無償の愛情だったからだ。
彼女に見守られ、10日が過ぎる頃、姜文はやっと自分から会話らしい事を話す事が出来着るようになった。
蘭華は、その時初めて自分から姜文を抱きしめ喜んだ。
姜文は、苦しそうに笑い、蘭華は満面の笑顔であった。
姜文が、現実に戻ってこれた日であった。
徐福の死を知った集落の民達は、死というモノを理解できる者は例外なく自分達の家族を失った様な悲しみに襲われた。
その日、集落では徐福と陸信の葬儀が行われる。
憔悴している姜文を、漁師の長と蘭華が献身的に支えた事で、二人の葬儀は大きな混乱もなく粛々と進められたのであった。
姜文や陸信の妻風鈴の憔悴の様子は、誰もが心配するほど酷かった。
飽桀による凛凛の誘拐、それを阻止するために徐福と父親の陸信が尊い命を失った。
表向きには、二人の死は集落の者達にその様に伝えられた。
葬儀の終了間際、陸信の妻風鈴が姜文の近くに駆け寄り、夫の死は姜文の責任だと罵った。
『昨日、貴方が夫と娘を連れださなければ、こんな事は起こらなかった』
『夫を、子供達の父親を私達家族に返して下さい』
『全部、貴方が悪いの・・・』と風鈴は最後まで言えず、そんな彼女を見かねて漁師の長の妻が駆け寄り彼女を連れて葬儀の場から離れたのである。
『姜文様は、何故、何も言わない?』
『心の中に、何かやましい事でもあるのではないか』と、悪意を持って見つめる視線も少なからずあった。
しかし、姜文は終始無言で葬儀の終わりまで参列し、そして家に帰ったのであった。
誰も待つ者はいない、彼の家に。
家の扉を開けると、暗い部屋の中に御膳が見えた。
誰もいない。ただそれが良かった。独りだけ生き残った罰を、姜文は心から欲していたのである。
寂しさを感じる事も、自分には許されないのだ。そんな資格は無い。
姜文は、本気でそう思っていた。
今、姜文が辛うじてこの世の中に立っていられるのは、徐福が残した言葉であった。
自身(徐福)を想うのであれば、どうか苦しまないでくれと慰めの言葉を残した。
そして徐福自身が受けなければならなかった苦しみを姜文が代わりにうける事に、養父は感謝と謝罪の言葉を残した。
妖の口をとおし、徐福の声でそれを聞けた事が姜文にとっては幸福な事だったのかもしれない。
生真面目な義理の息子は、ぽっかり空いた心の穴に、義父の遺言を無理矢理押し込み、傷ついている自分を更に傷つける事、貶める事で、何とか正気を保っていたのである。
心が何時崩壊するかわからない、それは危うい状況であった。
彼は、その日何も食べれず、そのまま寝床に入った。
しかし目を瞑っても、眠れず日が昇るぐらいまで眠れなかった。
考える事は過去の思い出と、過ちに対する悔いばかりである。
次の日の朝、家の扉を叩く音で姜文は自分が眠れたことに気づく。
扉を見に行くと、其処にはご飯を持って立っている蘭華がいた。
『おはようございます。朝ごはんをお持ちしました。』
『さあ、食べますよ。』
蘭華は、彼女らしく姜文の意思は確認せず、忙しそうに部屋に押し入ったのである。
その日から、彼女は当たり前のように、毎日食事や会話をしに姜文の家に通うようになった。
見た目は強引な彼女だが、自分から姜文には無理に話しかけず、求められた時にだけ会話をするように心がけていた。
ただ温かく見守る様に傷ついた姜文に接したのである。
それは、ポッカリと開いた姜文の心の穴と、穴で脆くなった姜文の心を理解した上での彼女なりの配慮であった。
彼女はユックリと慎重に、自分が持っている姜文への全ての愛情を注いだのである。
何時、姜文の心の穴が満たされるかは分からない。
しかしそんな事彼女にはどうでもよい事だった。
彼女が注ぐ愛情とは、男女間の愛ではなく、友達同士の中の友情でも無い。
注いだのは人間として、傷ついて倒れそうになっている人に、手を差し伸べたいという無償の愛情だったからだ。
彼女に見守られ、10日が過ぎる頃、姜文はやっと自分から会話らしい事を話す事が出来着るようになった。
蘭華は、その時初めて自分から姜文を抱きしめ喜んだ。
姜文は、苦しそうに笑い、蘭華は満面の笑顔であった。
姜文が、現実に戻ってこれた日であった。
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