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第4章 狂王の末路
3.はちみつ湯(ゆ)
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姜文は、人魚からもらった青い鱗を持ち浜辺に向かった。
その日は、晴れの日で爽やかな風が吹いていた。
浜辺に着くと其処には人影がなく、波達だけが穏やかに砂浜に押し寄せている状況であった。
遠くに漁師達の船が見える。顔に当たる海風が心地よい。
姜文は、人影がない事を確認すると青い鱗を海にいれた。
放り投げて、失くしてしまうのが怖い為、波打ち際にいき鱗を持った手をそっと海水につける。
浸けた後、その場所で暫く妖が来るのを待っていたが、しばらく経っても妖の姿が見えなかった。
(30日後と言われたのに、・・・流石に無理だったか・・)
姜文は、そんなにうまく自分の都合通りにはいかないなと苦笑いをして、海から出ようとした。
浜辺に戻ろうと、振り返り歩き出した時、海から猛スピードで近づいてくる気配に気がついた。
(・・・ヤバい)と、本能的に走りだし、海から退避する姜文。
海から、数メートル離れられた所で安全なところまで来れたと振り返ると、今迄姜文がいた場所の近くに仙女の姿をした妖が立っていた。
『姜文様、私を呼んでおいて、なぜ逃げる?』
無表情な仙女の口から出て来るその言葉に怒気はなく、何時も通り感情は無かった。
しかし自分の行動に後ろめたさがある姜文は、表情と彼女の声が相まってカノジョは怒っていると思ってしまった。
『スマヌ、逃げたわけではない』と、姜文は先ずは自分の行為を謝罪し、妖に呼んだ理由を説明しようとした。
しかし、妖はそれを許さない様に、自分から姜文に質問する。
『先日、30日後と言ったが、案外早く決心がついたようですね・・・』
『それで貴方様の結論は?、凛凛を育てる決心はついたのですか?』
『・・・スマヌ、決心は未だじゃ。しかし、決心をする前に色々と相談したい事があってな。今日はお主と相談がしたくて、話したくて・・・呼んだのじゃ』
『決心する前に、私と相談?私と話したい??』
『姜文様、スミマセヌ、仰っている事が分かりませぬ』
『決心がつかない方が、私と話し、何の意味があるのですか?』
『・・・そうじゃが、徐福様はお主に私の相談相手になって欲しいと願った言ったではないか?』
『私は、相談相手になるかもしれぬ、お主の事が分からない。そんな状態でお主と相談しろと言われても出来る訳が無い』
『お主が私の相談相手になれるかどうか、それを知りたい。簡単に言うとお主と話がしたいのじゃ』
『・・・・』、妖は姜文の言葉を直ぐに理解できないようで、無言で何かを考えている。
そして妖は自分の頭を抑え、姜文の言葉を繰り返す。
『私が姜文様の相談相手になれるかどうか、私を知る為に話をする・・』
『・・・フム、そこまで私も考えていなかったが、姜文様の言い分も一理ありますね。』
『それで、姜文様は何について私と話がしたいのですか?』と思考がまとまった様に妖は今迄とうって変わって速やかに姜文へ質問を投げかけた。
そして今度困ったのは、姜文である。
(・・・・)
(何を言えばよいのじゃ、集落の行政について意見を聞きたい?今の行政、そもそも、行政という言葉をこの妖が知っているのか?)
試しに相談してみたいという気持ちで、妖を呼び出したはいいが、肝心の相談事の準備をしてこなかった姜文は、自分の考えの浅はかさを悔いた。
『・・・・・』、言葉が出ず、気まずい時間が過ぎる。
『相談する事が無いのであれば、私は帰ります』と妖は冷静に言い、海の方角を向こうとする。
『待て待て、待ってくれ』
『お主を私の家に招きたい、私と徐福様が住んでいた家にお主を招きたい!来てはくれぬか?』
『徐福様が住んでいた・・・』と妖は小さい声で呟き、暫く考える様に下を向く。
(海の妖が、陸地に来れるのか?)と自分の口から出た言葉が、その場しのぎのようで姜文は恥ずかしい気持ちになっていた。
『・・・分りました。参りましょう。それ程長い間は、留まれませぬが、半日くらいであれば』と妖はいうと、『Ō』と聞き取れない呪文を唱える。
姜文からは、変化が分からないが、妖は何かを確認すると準備ができたみたいで、姜文のいる位置までユックリと歩み寄って来たのである。
二人は、浜辺から姜文の家に向かって歩いた。
家に帰ると、姜文を待っていた蘭華がふたりの気配に気づき、前もって扉を開けてくれた。
『姜文様、思ったより遅くなりましたね。お帰りなさ・・・』
『ひぃいい~、海の妖・・・ウゥワア!』
蘭華は、仙女の姿をした妖をみて、驚き思わず声をあげる。
驚きの声をあげ蘭華はものすごい速さで台所まで逃げてしまったのである。
『蘭華殿、・・蘭華殿、大丈夫です。彼女が貴方を襲う事はありませんよ。そんなに怖がらなくても良いですよ』と姜文が家の扉を開けたまま、遠くにいってしまった蘭華へ呼びかける。
『姜文様、あの者は、たしかこの前の夜もおりましたな』
『ンッ、覚えてくれていたか、あの方は蘭華殿じゃ、徐福様が亡くなられた後から、私の手伝いをして下さっておる』
『ランカ、らんか、蘭華』と妖は、名前を覚えたいのか、蘭華の名前を3回続けて口の中で繰り返していた。
姜文は、妖を椅子に座らせ、その足で蘭華を見に台所へ行く。
『蘭華殿、驚かせて申し訳ない。海の妖は、それほど悪い奴ではない』
『今日は、ただ話をする為に私が呼んだのじゃ』
『蘭華殿が嫌であれば、今日はもう帰られても・・・』
『いいえ、いいえ、嫌ではございません。ただ開けたら突然いたから、吃驚《びっくり》しちゃって』
蘭華は、気丈に答え姜文に心配は無用と彼に妖の元へ戻る様に促した。
蘭華に促され姜文が席に戻ると、妖は不思議そうに部屋の構造を見ている。
『スミマセヌ、人間の住む家にはいるのは初めてで』
『なんというか、面白くて』と妖は、姜文が聞いていないのにそんな言葉を口にする。
『いや気にするでない。私が貴女でもそういう気持ちになると思うので・・・』
二人がそんな会話をしていると、蘭華が二人に台所から飲み物を持って来た。
2杯のはちみつ湯であった。
『どうぞ、何もありませんが、良ければお飲みください。』
『毒などは入っておりませんので』という、蘭華の顔は明らかに緊張していた。
自分の手前に置かれた杯に入った飲み物を、妖はユックリと眺める。
それを見た姜文は、意図的に妖の前に置かれた杯を持ち上げ、それを自分で飲んだ。
蜂蜜がお湯に溶けており、飲むと姜文の舌に甘さが広がる。そして喉元を過ぎると温かさが胸に広がる。
『毒等、入っておりませぬ。美味しいですよ!』と姜文は言い、今度は自分の手前にあった杯を妖の手前まで差し出した。
妖は、姜文の勧めに応じ、一口呑む。飲んだ後、小さい声で呟く。
『おいしい、これは美味しい飲み物じゃ。そして温かい。これはなんという飲み物ですか、姜文様?』と日頃、無表情の妖の顔が、驚いた表情になっていた。
『はちみつ湯といいます』と答えたのは少し緊張の取れた蘭華だった。
『は・ち・み・つ・ゆ』と妖が蘭華の言った言葉を小さい声でユックリと繰り返す。
『未だいっぱいありますので』と蘭華は言い、妖の空になった杯に2杯目のはちみつ湯を注ぐ。
(蘭華殿には、本当に助けられている。これは、交渉ごとではない。分りあう為の交流じゃ。交流事には飲み物と旨い物が必要不可欠じゃな・・)
『蘭華殿、台所に何か食べれる者は有りませんか?良ければ彼女に』
『ちょっと、探してみますね』
二人は、初めて来てくれた客人に。その人を知る前に、自分達を知ってもらおうと慌てて準備をし始めたのであった。
その日は、晴れの日で爽やかな風が吹いていた。
浜辺に着くと其処には人影がなく、波達だけが穏やかに砂浜に押し寄せている状況であった。
遠くに漁師達の船が見える。顔に当たる海風が心地よい。
姜文は、人影がない事を確認すると青い鱗を海にいれた。
放り投げて、失くしてしまうのが怖い為、波打ち際にいき鱗を持った手をそっと海水につける。
浸けた後、その場所で暫く妖が来るのを待っていたが、しばらく経っても妖の姿が見えなかった。
(30日後と言われたのに、・・・流石に無理だったか・・)
姜文は、そんなにうまく自分の都合通りにはいかないなと苦笑いをして、海から出ようとした。
浜辺に戻ろうと、振り返り歩き出した時、海から猛スピードで近づいてくる気配に気がついた。
(・・・ヤバい)と、本能的に走りだし、海から退避する姜文。
海から、数メートル離れられた所で安全なところまで来れたと振り返ると、今迄姜文がいた場所の近くに仙女の姿をした妖が立っていた。
『姜文様、私を呼んでおいて、なぜ逃げる?』
無表情な仙女の口から出て来るその言葉に怒気はなく、何時も通り感情は無かった。
しかし自分の行動に後ろめたさがある姜文は、表情と彼女の声が相まってカノジョは怒っていると思ってしまった。
『スマヌ、逃げたわけではない』と、姜文は先ずは自分の行為を謝罪し、妖に呼んだ理由を説明しようとした。
しかし、妖はそれを許さない様に、自分から姜文に質問する。
『先日、30日後と言ったが、案外早く決心がついたようですね・・・』
『それで貴方様の結論は?、凛凛を育てる決心はついたのですか?』
『・・・スマヌ、決心は未だじゃ。しかし、決心をする前に色々と相談したい事があってな。今日はお主と相談がしたくて、話したくて・・・呼んだのじゃ』
『決心する前に、私と相談?私と話したい??』
『姜文様、スミマセヌ、仰っている事が分かりませぬ』
『決心がつかない方が、私と話し、何の意味があるのですか?』
『・・・そうじゃが、徐福様はお主に私の相談相手になって欲しいと願った言ったではないか?』
『私は、相談相手になるかもしれぬ、お主の事が分からない。そんな状態でお主と相談しろと言われても出来る訳が無い』
『お主が私の相談相手になれるかどうか、それを知りたい。簡単に言うとお主と話がしたいのじゃ』
『・・・・』、妖は姜文の言葉を直ぐに理解できないようで、無言で何かを考えている。
そして妖は自分の頭を抑え、姜文の言葉を繰り返す。
『私が姜文様の相談相手になれるかどうか、私を知る為に話をする・・』
『・・・フム、そこまで私も考えていなかったが、姜文様の言い分も一理ありますね。』
『それで、姜文様は何について私と話がしたいのですか?』と思考がまとまった様に妖は今迄とうって変わって速やかに姜文へ質問を投げかけた。
そして今度困ったのは、姜文である。
(・・・・)
(何を言えばよいのじゃ、集落の行政について意見を聞きたい?今の行政、そもそも、行政という言葉をこの妖が知っているのか?)
試しに相談してみたいという気持ちで、妖を呼び出したはいいが、肝心の相談事の準備をしてこなかった姜文は、自分の考えの浅はかさを悔いた。
『・・・・・』、言葉が出ず、気まずい時間が過ぎる。
『相談する事が無いのであれば、私は帰ります』と妖は冷静に言い、海の方角を向こうとする。
『待て待て、待ってくれ』
『お主を私の家に招きたい、私と徐福様が住んでいた家にお主を招きたい!来てはくれぬか?』
『徐福様が住んでいた・・・』と妖は小さい声で呟き、暫く考える様に下を向く。
(海の妖が、陸地に来れるのか?)と自分の口から出た言葉が、その場しのぎのようで姜文は恥ずかしい気持ちになっていた。
『・・・分りました。参りましょう。それ程長い間は、留まれませぬが、半日くらいであれば』と妖はいうと、『Ō』と聞き取れない呪文を唱える。
姜文からは、変化が分からないが、妖は何かを確認すると準備ができたみたいで、姜文のいる位置までユックリと歩み寄って来たのである。
二人は、浜辺から姜文の家に向かって歩いた。
家に帰ると、姜文を待っていた蘭華がふたりの気配に気づき、前もって扉を開けてくれた。
『姜文様、思ったより遅くなりましたね。お帰りなさ・・・』
『ひぃいい~、海の妖・・・ウゥワア!』
蘭華は、仙女の姿をした妖をみて、驚き思わず声をあげる。
驚きの声をあげ蘭華はものすごい速さで台所まで逃げてしまったのである。
『蘭華殿、・・蘭華殿、大丈夫です。彼女が貴方を襲う事はありませんよ。そんなに怖がらなくても良いですよ』と姜文が家の扉を開けたまま、遠くにいってしまった蘭華へ呼びかける。
『姜文様、あの者は、たしかこの前の夜もおりましたな』
『ンッ、覚えてくれていたか、あの方は蘭華殿じゃ、徐福様が亡くなられた後から、私の手伝いをして下さっておる』
『ランカ、らんか、蘭華』と妖は、名前を覚えたいのか、蘭華の名前を3回続けて口の中で繰り返していた。
姜文は、妖を椅子に座らせ、その足で蘭華を見に台所へ行く。
『蘭華殿、驚かせて申し訳ない。海の妖は、それほど悪い奴ではない』
『今日は、ただ話をする為に私が呼んだのじゃ』
『蘭華殿が嫌であれば、今日はもう帰られても・・・』
『いいえ、いいえ、嫌ではございません。ただ開けたら突然いたから、吃驚《びっくり》しちゃって』
蘭華は、気丈に答え姜文に心配は無用と彼に妖の元へ戻る様に促した。
蘭華に促され姜文が席に戻ると、妖は不思議そうに部屋の構造を見ている。
『スミマセヌ、人間の住む家にはいるのは初めてで』
『なんというか、面白くて』と妖は、姜文が聞いていないのにそんな言葉を口にする。
『いや気にするでない。私が貴女でもそういう気持ちになると思うので・・・』
二人がそんな会話をしていると、蘭華が二人に台所から飲み物を持って来た。
2杯のはちみつ湯であった。
『どうぞ、何もありませんが、良ければお飲みください。』
『毒などは入っておりませんので』という、蘭華の顔は明らかに緊張していた。
自分の手前に置かれた杯に入った飲み物を、妖はユックリと眺める。
それを見た姜文は、意図的に妖の前に置かれた杯を持ち上げ、それを自分で飲んだ。
蜂蜜がお湯に溶けており、飲むと姜文の舌に甘さが広がる。そして喉元を過ぎると温かさが胸に広がる。
『毒等、入っておりませぬ。美味しいですよ!』と姜文は言い、今度は自分の手前にあった杯を妖の手前まで差し出した。
妖は、姜文の勧めに応じ、一口呑む。飲んだ後、小さい声で呟く。
『おいしい、これは美味しい飲み物じゃ。そして温かい。これはなんという飲み物ですか、姜文様?』と日頃、無表情の妖の顔が、驚いた表情になっていた。
『はちみつ湯といいます』と答えたのは少し緊張の取れた蘭華だった。
『は・ち・み・つ・ゆ』と妖が蘭華の言った言葉を小さい声でユックリと繰り返す。
『未だいっぱいありますので』と蘭華は言い、妖の空になった杯に2杯目のはちみつ湯を注ぐ。
(蘭華殿には、本当に助けられている。これは、交渉ごとではない。分りあう為の交流じゃ。交流事には飲み物と旨い物が必要不可欠じゃな・・)
『蘭華殿、台所に何か食べれる者は有りませんか?良ければ彼女に』
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