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第6章 土岐家の名君
6.連歌の会への招待
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頼純は、再び帰蝶の部屋を訪れたのは年が変わった正月であった。
1547年、雪の少ない年で例年よりは寒さもきつくなかった。
久しぶりに帰蝶の部屋に訪れた頼純は、心なしか元気が無かった。
『頼純様、私は毎日、お待ちしていたのですよ、さっぱり来て頂けなくなって、帰蝶は寂しいございました!』
帰蝶は、そういうと、頼純へ飛びついた。
『スマン、スマン、仕事が忙しく、又体調が芳しくなくてな・・ワシも帰蝶殿に会えなくて寂しかったぞ・・仕事が、落ち着いたので、また来れる様になったのじゃ』
帰蝶を抱き上げた頼純は、一人では無かった。
御付きの家来が付いて来ていたのである。
頼純に付いて来た家来の男は、部屋に入ってくるなり、十兵衛に軽く会釈をしただけで何もしゃべらず、当然の様に部屋の隅に座り目を瞑る。
『十兵衛、スマヌ、その者は朝倉家に居る時からワシの世話をしてくれている者じゃ』
『不愛想な男じゃが、悪い男では無い、ワシの護衛みたいな者じゃ・・』
『護衛とは、・・・頼純様私と十兵衛兄様が頼純様に危害を与えるとでも?』
頼純に抱き上げられている帰蝶は、幼い素直な意見を口にした。
『そちらの事を怪しんでいるのではない。スマヌ、ワシの言葉が悪かった』
『越前朝倉家の当主、義景様の指示じゃ、守護職に戻ったばかりのワシの身を案じての事、二人とも気を悪くせんでくれ・・』
そう言いながら、抱き上げた帰蝶を自分のウデから下ろす頼純であった。
『私が近くに居れば、頼純様を守ってあげれるから、護衛なんか必要ないわ』
帰蝶は、顔を膨らませながら座っている男へ不満をぶつける様に、そう呟いたのである。
(護衛・・・、頼純様を監視する意思もあるのだろう)
(越前の朝倉義景様という御方も、道三様の意図を見抜いておられる・・という事か)
十兵衛は、座っている男を横目に、隣国の朝倉家の当主の思惑を想像していたのであった。
『そうじゃ、十兵衛、3月に京の都から幕府の使者の方がワシの守護就任の祝いを持って、この城に参る事になった』
『お主、連歌は歌えるか?』
『ワシは、その方が来たら茶会か、もしくは連歌の会でもして、その方を接待したいと思っておる』
『幕府の方と、お会いできる機会など、そうそうある事ではない、お主も我が一族の一門の者として参加するが良いぞ!』
『その時、歌の一句、2句は歌えねば恥をかくぞ、十兵衛、後2ヶ月の猶予がある、歌の勉強をしとけよ』
頼純は、そう言うと十兵衛の背中を軽く叩いたのであった。
『私の様な身分の者が、恐れおおい・・お誘いでございます』
十兵衛は、そう言い、頼純の誘いを丁重に断ろうとしたが、それを頼純は許さなかった。
『十兵衛、これは美濃守護であるワシ、土岐頼純の命令じゃ』
頼純は、威厳のある声でそう言うと、もう議論するつもりはないと言う姿勢を示す様に、帰蝶への方へ向き直ってしまった。
『・・・ハッ!』
(これは、思いがけない事に巻き込まれてしまった・・)と十兵衛は思いながらも、その場で座り込み、背中を向けた頼純へ頭を下げ平伏したのであった。
『頼純様、連歌の会って何、私は出てもいいの?』
幼い帰蝶が、頼純へ無邪気に聞いているのが、下げた頭の上から聞こえてくる。
『帰蝶殿には、先ずこの頼純が連歌を教えて進ぜよう、帰蝶様の連歌の実力がついたと私が判断したら、
参加しても良いが、簡単な様でそんなに簡単ではないぞ』
『連歌、百人一首で、読んでるような句を作ればいいのですか?』
『そうじゃ、そうじゃ、帰蝶殿、百人一首じゃ、あのような句を自分で作れるようになれれば、連歌の会には出れるぞ』
『帰蝶殿は、ワシの正妻になのだから、良い歌を、良い句を作れる女性になって欲しいモノじゃ』
『私頑張る!、頼純様の立派な妻になれる様に!!』
『十兵衛、帰蝶様の気構えを聞いたか?ワシは美濃一の幸せ者じゃな。お主も、帰蝶様に負けない様に頑張るのじゃぞ!!』
『ハッ!この十兵衛、お誘いを受けました連歌の会にて、頼純様、いや土岐の一門の名を落とさない様に努力致します』
『頼むぞ!十兵衛、明智家の名を、土岐の名を汚すでないぞ』
十兵衛は、頼純の言葉に、親戚の年長者から声をかけられた様な温かみを感じたのであった。
1547年、雪の少ない年で例年よりは寒さもきつくなかった。
久しぶりに帰蝶の部屋に訪れた頼純は、心なしか元気が無かった。
『頼純様、私は毎日、お待ちしていたのですよ、さっぱり来て頂けなくなって、帰蝶は寂しいございました!』
帰蝶は、そういうと、頼純へ飛びついた。
『スマン、スマン、仕事が忙しく、又体調が芳しくなくてな・・ワシも帰蝶殿に会えなくて寂しかったぞ・・仕事が、落ち着いたので、また来れる様になったのじゃ』
帰蝶を抱き上げた頼純は、一人では無かった。
御付きの家来が付いて来ていたのである。
頼純に付いて来た家来の男は、部屋に入ってくるなり、十兵衛に軽く会釈をしただけで何もしゃべらず、当然の様に部屋の隅に座り目を瞑る。
『十兵衛、スマヌ、その者は朝倉家に居る時からワシの世話をしてくれている者じゃ』
『不愛想な男じゃが、悪い男では無い、ワシの護衛みたいな者じゃ・・』
『護衛とは、・・・頼純様私と十兵衛兄様が頼純様に危害を与えるとでも?』
頼純に抱き上げられている帰蝶は、幼い素直な意見を口にした。
『そちらの事を怪しんでいるのではない。スマヌ、ワシの言葉が悪かった』
『越前朝倉家の当主、義景様の指示じゃ、守護職に戻ったばかりのワシの身を案じての事、二人とも気を悪くせんでくれ・・』
そう言いながら、抱き上げた帰蝶を自分のウデから下ろす頼純であった。
『私が近くに居れば、頼純様を守ってあげれるから、護衛なんか必要ないわ』
帰蝶は、顔を膨らませながら座っている男へ不満をぶつける様に、そう呟いたのである。
(護衛・・・、頼純様を監視する意思もあるのだろう)
(越前の朝倉義景様という御方も、道三様の意図を見抜いておられる・・という事か)
十兵衛は、座っている男を横目に、隣国の朝倉家の当主の思惑を想像していたのであった。
『そうじゃ、十兵衛、3月に京の都から幕府の使者の方がワシの守護就任の祝いを持って、この城に参る事になった』
『お主、連歌は歌えるか?』
『ワシは、その方が来たら茶会か、もしくは連歌の会でもして、その方を接待したいと思っておる』
『幕府の方と、お会いできる機会など、そうそうある事ではない、お主も我が一族の一門の者として参加するが良いぞ!』
『その時、歌の一句、2句は歌えねば恥をかくぞ、十兵衛、後2ヶ月の猶予がある、歌の勉強をしとけよ』
頼純は、そう言うと十兵衛の背中を軽く叩いたのであった。
『私の様な身分の者が、恐れおおい・・お誘いでございます』
十兵衛は、そう言い、頼純の誘いを丁重に断ろうとしたが、それを頼純は許さなかった。
『十兵衛、これは美濃守護であるワシ、土岐頼純の命令じゃ』
頼純は、威厳のある声でそう言うと、もう議論するつもりはないと言う姿勢を示す様に、帰蝶への方へ向き直ってしまった。
『・・・ハッ!』
(これは、思いがけない事に巻き込まれてしまった・・)と十兵衛は思いながらも、その場で座り込み、背中を向けた頼純へ頭を下げ平伏したのであった。
『頼純様、連歌の会って何、私は出てもいいの?』
幼い帰蝶が、頼純へ無邪気に聞いているのが、下げた頭の上から聞こえてくる。
『帰蝶殿には、先ずこの頼純が連歌を教えて進ぜよう、帰蝶様の連歌の実力がついたと私が判断したら、
参加しても良いが、簡単な様でそんなに簡単ではないぞ』
『連歌、百人一首で、読んでるような句を作ればいいのですか?』
『そうじゃ、そうじゃ、帰蝶殿、百人一首じゃ、あのような句を自分で作れるようになれれば、連歌の会には出れるぞ』
『帰蝶殿は、ワシの正妻になのだから、良い歌を、良い句を作れる女性になって欲しいモノじゃ』
『私頑張る!、頼純様の立派な妻になれる様に!!』
『十兵衛、帰蝶様の気構えを聞いたか?ワシは美濃一の幸せ者じゃな。お主も、帰蝶様に負けない様に頑張るのじゃぞ!!』
『ハッ!この十兵衛、お誘いを受けました連歌の会にて、頼純様、いや土岐の一門の名を落とさない様に努力致します』
『頼むぞ!十兵衛、明智家の名を、土岐の名を汚すでないぞ』
十兵衛は、頼純の言葉に、親戚の年長者から声をかけられた様な温かみを感じたのであった。
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