王になりたかった男【不老不死伝説と明智光秀】

野松 彦秋

文字の大きさ
152 / 168
第9章 世代交代への動き

15.契約【後編】

しおりを挟む
(我は、共工きょうこう、かっては、お前が憎む天に、この世の王となる様にと、選ばれたモノなり)

(しかし、奴は手のひらを返しおった)

(我のやり方が、失敗だと、我を責め、己で我に与えた権限を、アヤツは、女媧じょかはワシから奪い返したのじゃ)

女媧じょか?、貴方様が言う女媧とは、まさか我ら人を創造したという、神の事か?』

(・・・・黙れ!)

『ギャア~】

趙高は、その場で頭を抱え倒れ、悶え苦しんだ。

共工の恫喝の様な言葉と同時に、趙高の頭が握りつぶされるような激しい痛みに襲われからである。

『お許しを、お許しを、お許し下され』

趙高は、正に地獄の苦しみから逃れようと、絶対的な力を持った、何かに慈悲を乞うた。

(2度目は無い、我の話を遮る事は許さん・・)

(奴は、我を封じる時、こう言った)

(人の世は、人に治めさせると・・人を越えた我に統治させた事が事態が失敗であったと)

(・・・ア奴は、自分の失敗を認めず、我に擦り付けただけじゃ・・・)

(それは、お主も知っているとおり、人間の歴史は、殺し合いばかり・・)

(我に替わり、女媧が選んだ人間の王とやらは、権力に執着する)

(我と同じでは無いか、イヤ我以上じゃ!)

(・・・それでも、女媧は、変わらず人間から、王を選ぶ・・)

(我は、人間の歴史をずっと見て来た、封印された場所からずっとじゃ)

(なぜじゃ、なぜなのじゃ、なぜ我より劣る人間どもに、その意味とは・・女媧の真意はどこにあるとずっと考えたが、・・・・・気づいたのじゃ)

(奴の真意を知る必要など無いと・・)

(我の頭に、ある日、一つの考えが閃いたからじゃ)

(・・・我が再び人界を支配できる方法が・・・)

人間の顔と大蛇の胴を持ったバケモノの思念は、其処で止まり、そして今度はユックリと趙高へ近づいて来た。

共工きょうこうの顔は、趙高の顔の近くまでとまららず、息がかかる位置まで来て静止する。

『ヒィィッ』

趙高は、おぞましさ、恐怖に耐えきれず、思わず叫んでしまった。

(簡単な事じゃ・・・・我が人間に転生すれば良いのじゃ)

(我が人間に生まれ変わり、人間として、人界を支配する)

(そうすれば、女媧は我に手を出せん・・あ奴の負けじゃ)

(我は、既に転生の術を使い、転生の日を待っておったのだが、一つ大きな問題があってのう)

(転生の条件は、前世の記憶を失う事・・・我は前世の記憶を失い、唯の人間として生きるじゃろう)

(我でも、その決まりはくつがえらなかった・・・其処でじゃ)

(お主の力が必要じゃ・・・・趙高よ)

(お主が、転生した我をみつけ、我が忘れている記憶を呼び覚ます・・)

(その役目を、お主に与える・・・・)

『見つける?この広い世界で、どうやって見つける事ができるのでしょうか?』

『会えば、分かる、お主にはわかる様に、我が呪をかける』

『ッ・・・お声が・・・』

突然、思念から、声に変えた共工に趙高は驚いた。

『我は、約1700年後、秦ではない、国で生を受ける』

『何処の国でございますか?匈奴の国?それとも、もっと遠い国でございますか』

『今は、未だ何も無い地じゃ・・・』

『・・・確かお主らが、蓬莱の国と呼んでいた地じゃ』

『不老不死の霊薬が眠るという、あの蓬莱の国でございますか・・』

『そうじゃ、我はその地で生まれ、先ずはその地を支配し、その軍を率いて再びこの秦の地を支配しにやってくる』

『お主は、その日の為に影から我を助けよ・・・』

共工はそう言って、再び元の位置まで下がり、不気味な音共に蜷局を巻いたのである。

『・・・仰せのままに』

趙高の声には、始皇帝へ仕えていた頃のような主君への恐怖と、言葉では言えない興奮の両方が含まれていた。

彼は、新しき自分の王と役目を見つけたのである。

この世の全てを破壊するという、不吉であるがとても甘美な役目を・・秦を滅ぼした男は受けたのである。

帰蝶と信長の祝言の約1700年前の事であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

航空自衛隊奮闘記

北条戦壱
SF
百年後の世界でロシアや中国が自衛隊に対して戦争を挑み,,, 第三次世界大戦勃発100年後の世界はどうなっているのだろうか ※本小説は仮想の話となっています

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

処理中です...