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#1 どうやらあの世から逃げたらしい。
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神崎瑠菜28歳。独身。彼氏無し。趣味はオンラインゲームや読書。自宅からはあまり出たくないインドア派。
誘われれば外に出る事もやぶさかではないけれど、自分から積極的に出る事はない。
来る者拒まず去る者追わず。遊びの誘いは予定が無ければ断る事はない。
そうやって断らないで周りの人間に付き合っていくうちに、人間関係が煩わしくなってくる。
飲み会やら遊びやら、行く前はかなり面倒だけれど行けば楽しい。けれどそれが積み重なると行く事自体が面倒になりフェードアウトしたくなる。そういう事を繰り返して学生時代の友達は全て私から連絡を取らなくなった。
仕事は1年から2年で転職を繰り返している。勿論元の職場の人とも連絡を絶っている。
今の仕事は出版関係で皆かなり忙しそうだけれど、途中入社の私は雑用がメインなので編集の人よりは楽だったりする。
この会社に入って二年。そろそろかな…と思っている。
何かって?それは退職する事。
「そろそろ潮時だなぁ…」
給湯室でお茶の用意をしながら一人で思案する。ここで働きだして二年。最近色々な仕事を回されるようになって面倒になってきた。
嫌なんだよね。責任とか色々ついて回るのが。
それに以前よりも飲み会とか付き合いとかに誘われるのが増えてきたのも面倒に拍車がかかってる。
「いつ辞めるか…取り敢えずスマホの番号新しいのにしてラインもアカウント変えようかな」
そんな事を考えながら最後の1つの湯飲みにお茶を注いだ瞬間、物凄い爆発音が響き渡った。
気付けば何もない空間に一人佇んでいた。
「何…ここは?」
キョロキョロと辺りを見回すが何もない。景色も、音も、風も、何も感じない。
「手元にあったお茶…も無いか」
まさかお茶を注いだら爆発して人類滅亡…とかじゃないよね?とか考えながら一歩踏み出そうとした時、ザァッと風が吹きすさぶ。思わず目を瞑り風をやり過ごす。
風は一瞬で止んだので瑠菜は目を開けた。
「やぁ。」
目の前にはに10歳位の男の子が立っていた。パッチリとしたブラウンの瞳と同じ色の髪の毛。ニコニコと楽しそうに瑠菜を見つめている。
「えっと、僕はどこの子?迷子?」
瑠菜は戸惑いながら目の前の男の子に問い掛ける。すると男の子は両手を腰に当て、少し頬を膨らましながら怒ったように口を開いた。
「迷子なのは瑠菜の方だし」
「私が迷子?」
「そうだよ~!瑠菜はいつも逃げているからね。」
「何で逃げていると迷子になるの?」
男の子は仕方ないなぁといった感じで右手を目の前にかざした。すると見覚えのある景色がスクリーンみたいに映し出される。
「ここって!!!」
「そう。瑠菜の働いてた所だよ。とある愉快犯が爆弾を仕掛けてドカーン!!!」
「はぁ!?」
「運悪く戦時中に落とされた不発弾が地中深くにあって、連鎖するようにドカーン!!って感じだね」
「ちょっと…それじゃあここは何処なの?」
「時空の狭間だよ」
「いやいやいや、爆発でそんな狭間に行けるとかあり得ないでしょ?そしたら近隣の人達もここに居ないとおかしいじゃない」
瑠菜は冗談でしょ?と、いった風で男の子に反論する。そんな瑠菜を意に介さず男の子は話を続けた。
「皆は迷子にならないでちゃんと行けたよ?」
「え?だから何処に?どういう事?避難出来たって事?」
「あの世に。勿論無事だった人も多少は居たみたいだけど」
ヒヤリとした汗が瑠菜の背中を伝う。ジッと男の子を見つめる瑠菜。よく見ると男の子は確かに笑ってはいるが目が笑っていない。口元だけ弧を描き、瞳の奥は冷たく光っている。
「…私は今どういう状態なの?」
「死んであの世に行く筈の魂がここ、時空の狭間にやってきた状態だね。まさか死んで魂になって尚、逃げ癖が健在とは驚いたよ」
面白そうに笑う男の子。先程の笑い顔と違って今度は本当に楽しそうだ。
「…じゃあ私はこれからあの世に行く…って事?」
瑠菜の言葉に男の子はニンマリと口元を歪めた。
「まさかこの空間に来られる人間が居るなんてね。本当に面白い。こんな事は初めてだから僕は今とても気分がいいんだ」
男の子はスクリーンを消すと3本指を出して瑠菜へと問い掛ける。
「瑠菜、君に選択肢を3つあげるよ。1つ目、このままあの世に行く。2つ目、このままあの世に行かないで魂ごと消滅する。3つ目、君が暮らしていた世界とは違う世界で暮らす」
「1つ目と2つ目の違いは?」
「あの世に行けばいずれは輪廻転生によって生まれ変わる。魂の消滅は即ち生まれ変わりもなく存在そのものの消滅。」
「どう考えても3つ目しか選択肢がないわね。」
瑠菜は小さくため息をつくと3つ目で、と言葉を発する。
「いいの?それで?瑠菜の居た地球よりも暮らしにくい世界だよ?」
「どういう世界なの?科学技術はどの程度発展してる?」
「科学技術は中世ヨーロッパ位かなぁ。その代わり地球とは違って魔法が使えるね。ただし魔物とかも生息しているから地球より命の危険度は高いね」
男の子はもう一度右手でスクリーンを出す。そこには自然豊かな景色や、中世ヨーロッパ風な建築や城が建ち並ぶ街並みが映っている。
「転生が希望だけれど、私魔法も使えないしそもそも言語は通じる?このままだとすぐに死んでしまう気がするんだけど」
「そうだね。このまま飛ばすとあっという間に魔物にパックンチョ…って食べられるね」
「それは困るというか、転生した意味ないよね?」
瑠菜の物言いに男の子は、あはははは!!と笑い転げた。
「そうだね。確かにそうだ。…それじゃあ瑠菜、君に何個か能力…所謂スキルと魔法を使えるようにしてあげよう。希望が無ければ僕が適当に見繕うけど、どうする?」
「あ、それは私が考えたいから少し待ってもらえる?」
「オッケー。じゃあ決まったら声かけてね」
そう言うと男の子はスゥっと姿を消した。
スキルと魔法…う~ん。あまり目立ちたくないのよね。平凡で生きていきたいから。人間付き合い面倒だし。
かと言って一人で生きていくには多分…キツイんだろうな。魔物とかも居るし。でも強すぎる力は目立ってしまう…ああ~でも死んだら元も子もない…
堂々巡りに陥る瑠菜。立っているのも疲れるので地面へと寝転んでゴロゴロしている。
目立ちたくない…目立ちたくない…隠密!!気配を消すスキルなら魔物からも逃げられるわ!
万が一見つかったら逃げたいから足を速く、空も飛べる魔法があるならそれも欲しいかな。後は…お金稼ぐのにダンジョンとかあるなら罠を察知出来るようにもなりたいわ。後は…万が一怪我をした時に回復出来る魔法。
こんなものかな。あ、荷物を保管出来る空間…えっとなんだっけ?オンラインゲームで出てきたやつ…あ、アイテムボックスか!それも欲しいな。
瑠菜は一通り考えを纏めると立ち上がる。男の子を呼ぼうとしてふと気付いた。そう言えば名前聞いてなかったな。
「ねぇ、決まったわ」
瑠菜がそう言うと男の子はスゥっと現れた。
「決まったみたいだね。因みにこの空間に居る間は瑠菜の考えは僕にも伝わってるから」
「じゃあ手間が省けるわね」
「回復魔法はあっちの世界では聖魔法の括りになる。取り敢えずはヒール位は使えるようにしておくよ。後は自分で練習すれば部位欠損位は治せるようにはなるかな。流石に死者蘇生は世界の理に反するから出来ないけど」
「部位欠損を治せるって…それで十分よ。あ、病気とかは治せる?」
「勿論病気も治せる。ただし高難度の魔法はさっきも言ったけど最初から使えない。瑠菜の努力で使えるようになるからそれだけは忘れないで」
「分かったわ」
「アイテムボックスは空間魔法だね。これも最初から使えるようにはしておく。努力すれば空間移動、うーん、君達の世界的で言えば某どこでもなドアみたいに一度行った場所に移動出来るようになるから」
「空間移動…まさかそこまで出来るような世界なの?」
「空間移動まで使える人間はほぼ居ないね。あっちの世界では片手で足りる位の人間しか使えないよ」
「何だか違う意味でチートになりつつあるのは気のせいかしら…」
「で、スキルは隠密ね。これも問題ない。自分の気配を消すのと敵の察知、罠の察知は最初から使えるようにしてあるよ。あと足もかなり速くなってる。透明化の魔法は闇魔法の括りになる。これはさっきと同じ瑠菜の努力次第で使えるようになるから」
「…いや、まさか透明化の魔法まであるなんて…」
「これも数人しか使えないね。あとは空を飛ぶ…だっけ?これは風魔法なんだけど、一番難易度が高いから努力して身に付けてね。最初は小さな風を起こせる位の魔法しか使えないから。聖魔法、風魔法、空間魔法はレベルが上がれば最上位まで使えるように設定しておく。火、水、土は上位魔法位までにしておこうか。闇は…敢えて設定しないでおくよ。透明化は中級で使えるようになるから必ず使えるようになる。上位や最上位は…あまりオススメ出来ないから使えるようになっても使わない方が懸命だね」
「ありがとう。十分よ。て、言うか火とか水とかいらないんだけど…まぁ念の為使えた方がいっか。闇魔法は…どんな魔法か分からないけど多分透明化以外は使わないと思う。後、お願いがあるんだけど」
「何?」
「多分地球のゲームで言うMPを消費して魔法を出すと思うんだけど、出来れば初期のMPを多目に欲しいの」
「あ~確かに女の子一人じゃ普通のMP量じゃすぐ詰んじゃうよね。オッケー。じゃあ多目に設定しておくよ。隠密スキルはMPは消費しないから。…あとは言語、喋れるけど書くのは自分で努力してね。あまりチートすぎてもつまらないしね」
「話せるなら何とかなりそうだしそれでいいわ」
「で、最後の希望を聞くよ。容姿はどうする?君の体は爆発によって木端微塵だから一から生成するから希望を叶えるよ。年齢は…28じゃあっちの世界では行き遅れで詰んでるから…18歳に設定するよ」
「行き遅れ…まぁそうなんですけどね!!」
「あっちの世界の結婚適齢期は16~22だからね。で、容姿はどうする?」
「う~ん…ツヤツヤ黒髪ロングストレート!目はパッチリ二重で!!体つきは細めで胸はDカップ位!ウエストは括れて足も細く!!色白でザ!美少女!!でお願い!!!」
「…欲望丸出しすぎていっそ清々しいね」
「そりゃ女の子に生まれたなら美少女になりたい!って誰もが思うでしょう?化粧で誤魔化したりしない天然美少女に!!」
瑠菜の勢いに押され気味の男の子はやれやれといった感じで苦笑した。
「じゃあ瑠菜、そろそろあっちの世界に送るけど他には何か聞きたい事はある?」
「…あなたの名前と正体位かな」
「あはは、それは秘密で」
「そう言うと思った」
「瑠菜があっちの世界でどう生きていくのか、僕は此処から楽しみに見てるよ」
「あら、乙女の生活を覗き見るのはどうかと思うんだけど?」
「乙女?中身28歳でしょ。あはは。じゃあ瑠菜、頑張ってね」
瑠菜が怒って言い返そうとした瞬間、空間がまるでガラスを割ったように崩れていく。瑠菜はそのままゆっくりと意識を手放した。
誘われれば外に出る事もやぶさかではないけれど、自分から積極的に出る事はない。
来る者拒まず去る者追わず。遊びの誘いは予定が無ければ断る事はない。
そうやって断らないで周りの人間に付き合っていくうちに、人間関係が煩わしくなってくる。
飲み会やら遊びやら、行く前はかなり面倒だけれど行けば楽しい。けれどそれが積み重なると行く事自体が面倒になりフェードアウトしたくなる。そういう事を繰り返して学生時代の友達は全て私から連絡を取らなくなった。
仕事は1年から2年で転職を繰り返している。勿論元の職場の人とも連絡を絶っている。
今の仕事は出版関係で皆かなり忙しそうだけれど、途中入社の私は雑用がメインなので編集の人よりは楽だったりする。
この会社に入って二年。そろそろかな…と思っている。
何かって?それは退職する事。
「そろそろ潮時だなぁ…」
給湯室でお茶の用意をしながら一人で思案する。ここで働きだして二年。最近色々な仕事を回されるようになって面倒になってきた。
嫌なんだよね。責任とか色々ついて回るのが。
それに以前よりも飲み会とか付き合いとかに誘われるのが増えてきたのも面倒に拍車がかかってる。
「いつ辞めるか…取り敢えずスマホの番号新しいのにしてラインもアカウント変えようかな」
そんな事を考えながら最後の1つの湯飲みにお茶を注いだ瞬間、物凄い爆発音が響き渡った。
気付けば何もない空間に一人佇んでいた。
「何…ここは?」
キョロキョロと辺りを見回すが何もない。景色も、音も、風も、何も感じない。
「手元にあったお茶…も無いか」
まさかお茶を注いだら爆発して人類滅亡…とかじゃないよね?とか考えながら一歩踏み出そうとした時、ザァッと風が吹きすさぶ。思わず目を瞑り風をやり過ごす。
風は一瞬で止んだので瑠菜は目を開けた。
「やぁ。」
目の前にはに10歳位の男の子が立っていた。パッチリとしたブラウンの瞳と同じ色の髪の毛。ニコニコと楽しそうに瑠菜を見つめている。
「えっと、僕はどこの子?迷子?」
瑠菜は戸惑いながら目の前の男の子に問い掛ける。すると男の子は両手を腰に当て、少し頬を膨らましながら怒ったように口を開いた。
「迷子なのは瑠菜の方だし」
「私が迷子?」
「そうだよ~!瑠菜はいつも逃げているからね。」
「何で逃げていると迷子になるの?」
男の子は仕方ないなぁといった感じで右手を目の前にかざした。すると見覚えのある景色がスクリーンみたいに映し出される。
「ここって!!!」
「そう。瑠菜の働いてた所だよ。とある愉快犯が爆弾を仕掛けてドカーン!!!」
「はぁ!?」
「運悪く戦時中に落とされた不発弾が地中深くにあって、連鎖するようにドカーン!!って感じだね」
「ちょっと…それじゃあここは何処なの?」
「時空の狭間だよ」
「いやいやいや、爆発でそんな狭間に行けるとかあり得ないでしょ?そしたら近隣の人達もここに居ないとおかしいじゃない」
瑠菜は冗談でしょ?と、いった風で男の子に反論する。そんな瑠菜を意に介さず男の子は話を続けた。
「皆は迷子にならないでちゃんと行けたよ?」
「え?だから何処に?どういう事?避難出来たって事?」
「あの世に。勿論無事だった人も多少は居たみたいだけど」
ヒヤリとした汗が瑠菜の背中を伝う。ジッと男の子を見つめる瑠菜。よく見ると男の子は確かに笑ってはいるが目が笑っていない。口元だけ弧を描き、瞳の奥は冷たく光っている。
「…私は今どういう状態なの?」
「死んであの世に行く筈の魂がここ、時空の狭間にやってきた状態だね。まさか死んで魂になって尚、逃げ癖が健在とは驚いたよ」
面白そうに笑う男の子。先程の笑い顔と違って今度は本当に楽しそうだ。
「…じゃあ私はこれからあの世に行く…って事?」
瑠菜の言葉に男の子はニンマリと口元を歪めた。
「まさかこの空間に来られる人間が居るなんてね。本当に面白い。こんな事は初めてだから僕は今とても気分がいいんだ」
男の子はスクリーンを消すと3本指を出して瑠菜へと問い掛ける。
「瑠菜、君に選択肢を3つあげるよ。1つ目、このままあの世に行く。2つ目、このままあの世に行かないで魂ごと消滅する。3つ目、君が暮らしていた世界とは違う世界で暮らす」
「1つ目と2つ目の違いは?」
「あの世に行けばいずれは輪廻転生によって生まれ変わる。魂の消滅は即ち生まれ変わりもなく存在そのものの消滅。」
「どう考えても3つ目しか選択肢がないわね。」
瑠菜は小さくため息をつくと3つ目で、と言葉を発する。
「いいの?それで?瑠菜の居た地球よりも暮らしにくい世界だよ?」
「どういう世界なの?科学技術はどの程度発展してる?」
「科学技術は中世ヨーロッパ位かなぁ。その代わり地球とは違って魔法が使えるね。ただし魔物とかも生息しているから地球より命の危険度は高いね」
男の子はもう一度右手でスクリーンを出す。そこには自然豊かな景色や、中世ヨーロッパ風な建築や城が建ち並ぶ街並みが映っている。
「転生が希望だけれど、私魔法も使えないしそもそも言語は通じる?このままだとすぐに死んでしまう気がするんだけど」
「そうだね。このまま飛ばすとあっという間に魔物にパックンチョ…って食べられるね」
「それは困るというか、転生した意味ないよね?」
瑠菜の物言いに男の子は、あはははは!!と笑い転げた。
「そうだね。確かにそうだ。…それじゃあ瑠菜、君に何個か能力…所謂スキルと魔法を使えるようにしてあげよう。希望が無ければ僕が適当に見繕うけど、どうする?」
「あ、それは私が考えたいから少し待ってもらえる?」
「オッケー。じゃあ決まったら声かけてね」
そう言うと男の子はスゥっと姿を消した。
スキルと魔法…う~ん。あまり目立ちたくないのよね。平凡で生きていきたいから。人間付き合い面倒だし。
かと言って一人で生きていくには多分…キツイんだろうな。魔物とかも居るし。でも強すぎる力は目立ってしまう…ああ~でも死んだら元も子もない…
堂々巡りに陥る瑠菜。立っているのも疲れるので地面へと寝転んでゴロゴロしている。
目立ちたくない…目立ちたくない…隠密!!気配を消すスキルなら魔物からも逃げられるわ!
万が一見つかったら逃げたいから足を速く、空も飛べる魔法があるならそれも欲しいかな。後は…お金稼ぐのにダンジョンとかあるなら罠を察知出来るようにもなりたいわ。後は…万が一怪我をした時に回復出来る魔法。
こんなものかな。あ、荷物を保管出来る空間…えっとなんだっけ?オンラインゲームで出てきたやつ…あ、アイテムボックスか!それも欲しいな。
瑠菜は一通り考えを纏めると立ち上がる。男の子を呼ぼうとしてふと気付いた。そう言えば名前聞いてなかったな。
「ねぇ、決まったわ」
瑠菜がそう言うと男の子はスゥっと現れた。
「決まったみたいだね。因みにこの空間に居る間は瑠菜の考えは僕にも伝わってるから」
「じゃあ手間が省けるわね」
「回復魔法はあっちの世界では聖魔法の括りになる。取り敢えずはヒール位は使えるようにしておくよ。後は自分で練習すれば部位欠損位は治せるようにはなるかな。流石に死者蘇生は世界の理に反するから出来ないけど」
「部位欠損を治せるって…それで十分よ。あ、病気とかは治せる?」
「勿論病気も治せる。ただし高難度の魔法はさっきも言ったけど最初から使えない。瑠菜の努力で使えるようになるからそれだけは忘れないで」
「分かったわ」
「アイテムボックスは空間魔法だね。これも最初から使えるようにはしておく。努力すれば空間移動、うーん、君達の世界的で言えば某どこでもなドアみたいに一度行った場所に移動出来るようになるから」
「空間移動…まさかそこまで出来るような世界なの?」
「空間移動まで使える人間はほぼ居ないね。あっちの世界では片手で足りる位の人間しか使えないよ」
「何だか違う意味でチートになりつつあるのは気のせいかしら…」
「で、スキルは隠密ね。これも問題ない。自分の気配を消すのと敵の察知、罠の察知は最初から使えるようにしてあるよ。あと足もかなり速くなってる。透明化の魔法は闇魔法の括りになる。これはさっきと同じ瑠菜の努力次第で使えるようになるから」
「…いや、まさか透明化の魔法まであるなんて…」
「これも数人しか使えないね。あとは空を飛ぶ…だっけ?これは風魔法なんだけど、一番難易度が高いから努力して身に付けてね。最初は小さな風を起こせる位の魔法しか使えないから。聖魔法、風魔法、空間魔法はレベルが上がれば最上位まで使えるように設定しておく。火、水、土は上位魔法位までにしておこうか。闇は…敢えて設定しないでおくよ。透明化は中級で使えるようになるから必ず使えるようになる。上位や最上位は…あまりオススメ出来ないから使えるようになっても使わない方が懸命だね」
「ありがとう。十分よ。て、言うか火とか水とかいらないんだけど…まぁ念の為使えた方がいっか。闇魔法は…どんな魔法か分からないけど多分透明化以外は使わないと思う。後、お願いがあるんだけど」
「何?」
「多分地球のゲームで言うMPを消費して魔法を出すと思うんだけど、出来れば初期のMPを多目に欲しいの」
「あ~確かに女の子一人じゃ普通のMP量じゃすぐ詰んじゃうよね。オッケー。じゃあ多目に設定しておくよ。隠密スキルはMPは消費しないから。…あとは言語、喋れるけど書くのは自分で努力してね。あまりチートすぎてもつまらないしね」
「話せるなら何とかなりそうだしそれでいいわ」
「で、最後の希望を聞くよ。容姿はどうする?君の体は爆発によって木端微塵だから一から生成するから希望を叶えるよ。年齢は…28じゃあっちの世界では行き遅れで詰んでるから…18歳に設定するよ」
「行き遅れ…まぁそうなんですけどね!!」
「あっちの世界の結婚適齢期は16~22だからね。で、容姿はどうする?」
「う~ん…ツヤツヤ黒髪ロングストレート!目はパッチリ二重で!!体つきは細めで胸はDカップ位!ウエストは括れて足も細く!!色白でザ!美少女!!でお願い!!!」
「…欲望丸出しすぎていっそ清々しいね」
「そりゃ女の子に生まれたなら美少女になりたい!って誰もが思うでしょう?化粧で誤魔化したりしない天然美少女に!!」
瑠菜の勢いに押され気味の男の子はやれやれといった感じで苦笑した。
「じゃあ瑠菜、そろそろあっちの世界に送るけど他には何か聞きたい事はある?」
「…あなたの名前と正体位かな」
「あはは、それは秘密で」
「そう言うと思った」
「瑠菜があっちの世界でどう生きていくのか、僕は此処から楽しみに見てるよ」
「あら、乙女の生活を覗き見るのはどうかと思うんだけど?」
「乙女?中身28歳でしょ。あはは。じゃあ瑠菜、頑張ってね」
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