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代表戦編inランドレウス
アリシアの力
しおりを挟む「そろそろ派手にいくわよ、カリス。」
後方で構えていたシルヴィアが笑みを浮かべながら、手元に広げた巨大な魔法陣に魔力を注ぎ込む。
カリスも隣で静かに呪文を紡ぎ始める。
「了解だ。これで終わりにする。」
2人の声が重なる
「「グランド・デルージュ」」
瞬く間に、魔法陣から湧き出た水が形を持ち、天井を覆うほどの大質量の水流が出現する。
「これはすごい!アグアメリアの得意とする連携魔法が来ました!あの水流……攻撃範囲と威力が尋常じゃない規模です!」
アルノアが目を見開いた。
「ここまで具現化できるのか……?本物の川みたいじゃないか。」
水流が揺らぎながら頭上を覆い尽くす。そのまま押し流すように、アルノアとアリシアに迫る。
アルノアが動こうとしたその瞬間、アリシアが軽く手を挙げた。
「アルノア、動かないで。」
彼女の声は静かで落ち着いていたが、その言葉には一切の揺るぎがなかった。
「いや、これだけの規模だ。俺も……」
アルノアが反論しようとしたが、アリシアは彼を遮るように微笑む。
「私だけで十分よ。」
その言葉と同時に、アリシアの足元から魔法陣が浮かび上がる。その輝きは圧倒的で、観客席からも歓声とどよめきが上がった。
アリシアが地面に手を軽く触れると、全体が振動する。
「あなたたちの大質量攻撃、確かに見事なものだけれど……私に届くかしら?」
巨大な水流が落下しようとした瞬間、大地から無数の尖った岩柱が突き出し、天井に迫る水の流れを次々と粉砕していく。
シルヴィアが目を見張った。
「そんな、予備動作もなく指を鳴らしただけで、ここまで完璧に防がれるなんて……!」
さらにアリシアは軽く指を鳴らすと、岩柱が次々に崩れて砂となり、水を巻き込んで泥へと変化していった。
「あなたたちの水流が重いなら、その重さを利用させてもらうわね。」
アリシアの声は冷静そのものだった。
水流が完全に消え去ると、会場は一瞬静まり返った。そして、その沈黙を破るように、観客席から歓声が沸き起こる。
「す、すごい!アリシア選手、一瞬のうちにあの大規模魔法を無力化しました!」
シルヴィアとカリスは明らかに動揺している。カリスが悔しそうに呟いた。
「たった一人で……俺たちの連携をここまで崩すなんて……」
アルノアは肩をすくめ、苦笑いを浮かべた。
「本当に言った通り、一人で十分だったな。」
アリシアは静かに立ち上がり、振り返りざまにアルノアへ言う。
「次はあなたの番よ。遊びすぎないようにね。」
「泥はちゃんと消しといてあげるから。しっかり動くのよ。」
アルノアは小さく笑って頷いた。
アルノアとアリシアが並んで闘技場に姿を現すと、会場が一瞬ざわついた。
その華やかな雰囲気の中、ランドレウスに住む一部の観客たちは、過去にアルノアを知っている者たちだった。
「やっぱり、あの聖天アリシアのおかげなんだろうな。」
「2人だけでここまで来たってのは驚きだけど、どうせアリシアが引っ張ってきたに違いない。」
「あいつ、昔もパッとしなかったしな。お零れで1位になっただけなんじゃないのか?」
彼らは小声でそんな噂を囁き合い、冷ややかな視線をアルノアに向けた。かつて学園にいた頃の彼の印象が強く残っているため、アリシアという圧倒的存在と一緒にいることが信じられなかったのだ。
「まあ、アリシアがすごいだけで、アルノアはついて行ってるだけさ。」
「そうそう、アリシアが相手の全員を片付けるんだろう。」
そんな中、アルノアは特に気にも留めず、アリシアと共に冷静な表情を浮かべていた。その姿を見た何人かは、心のどこかでかつてのアルノアと何かが違うと感じつつも、過去の印象を払拭するには至らなかった。
後衛のシルヴィアとカリスが連携して再びアリシアを狙う。
「水竜波(スイリュウハ)!」
シルヴィアが放った魔法により、巨大な水の竜が生成され、アリシアに向かって咆哮しながら突進する。同時に、カリスはその水竜に合わせて雷の矢を放ち、水を媒介にして電撃を増幅させる狙いだ。
「これでどうだ!」
二人は確信を持ちながら、魔法の着弾を見据えた。
しかし、アリシアは冷静な表情を崩さず、軽く息を吐くと魔力を集中させた。
「あなたたちの連携は見事ね。でも、まだ私を動かすことはできないわね。」
アリシアは地面に手をかざし、静かに魔法を唱えた。
「岩嶺の障壁(ガンレイノショウヘキ)!」
彼女の足元から地面が隆起し、硬質な岩の壁が立ち上がる。その瞬間、迫ってきた水竜は岩壁に激突し、飛沫を上げて消失する。雷の矢も同様に岩壁に吸収され、ただの静寂が残った。
「これが聖天アリシアの力……どこがてっぺんなんだ」
シルヴィアとカリスは、その圧倒的な防御力に息を呑んだ。
アリシアは、アルノアの背中越しに相手の魔法を封じ込めながら、冷静かつ力強い声で言い放った。
「アルノア、後衛の魔法は私が止めておいてあげるわ。だから、前衛の勝負には必ず勝ちなさい。」
その言葉には一切の妥協が感じられず、アリシアの視線は試合の先を見据えていた。
「この会場に、あなたの力を見せてあげるのよ。」
その一言に観客の視線が集まり、緊張感がさらに高まる。
「俺の力を……?」
アルノアは一瞬、自分がこの場で何をすべきかを考えた。フレスガドルで築いた信頼、そして今ここで自分を見守る仲間たちの顔が浮かぶ。
「……わかった。」
深呼吸を一つし、アルノアの目に迷いはなくなった。
アルノアはダリオの構えを見据えながら、自分の武器を握り直す。周囲に漂う魔力が微かに変化し、風が静かに流れ始めた。
「来るなら全力で来いよ。お前たちの全てを受け止めて、それ以上の力を見せてやる。」
ダリオもその言葉に応えるように、剣を構え直す。
「いいだろう。これが俺たちの全力だ!」
試合の緊張感は頂点に達し、観客たちは次の展開を固唾を飲んで見守る。
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