戦神(せんじん)の魂と経験共有で強くなる~白き戦神の冒険譚~

ルキノア

文字の大きさ
57 / 65
代表戦編inランドレウス

アリシアの奮闘と援軍

しおりを挟む
アリシアは息を整えながら、目の前のロイとサーシャを見据えた。

――ボルタジアの4人がアルノアへと向かったことで、彼女の負担は一時的に減った。だが、それでも決勝戦が始まってから数多の強敵を相手にしてきた影響で、体力も魔力も確実に削られていた。

ロイが拳を握り、サーシャが杖を構える。後方ではエマが控え、風魔法とサポートに徹している。

「アリシアさん、まだ余裕ありますか?」

ロイが静かに問いかける。

アリシアは軽く息を吐き、微笑んだ。

「そんなこと、戦って確かめてみたら?」

挑発とも取れるその言葉に、ロイの口元がわずかに釣り上がる。

「……そうですね。じゃあ、遠慮なく!」

ロイの足元が炎を纏い、一瞬で間合いを詰めてくる。

「灼刃連舞(じゃくじんれんぶ)!」

紅蓮の軌跡を描く連続の拳撃が襲いかかる。

アリシアは巨大な岩の腕を駆使し、素早く防御に徹する。炎を纏った拳が岩に当たるたびに火花が散り、衝撃が周囲に響く。

だが――

「……っ!」

一撃を受け止めた瞬間、アリシアの足元に風が巻き起こる。

エマの魔法――「疾風の束縛」

強烈な突風がアリシアの足をすくい、バランスを崩させる。

その隙を逃さず、ロイが次の攻撃を仕掛ける。

「灼刃裂破(しゃくじんれっぱ)!!」

爆炎を纏った渾身の拳がアリシアに襲いかかる。

――が、

「煌岩創造――【ルビーの障壁】!」

アリシアが宝石の力を解放し、真紅の障壁を瞬時に展開する。

ロイの拳が壁に激突し、爆発が巻き起こる。

しかし、その爆発の中からサーシャの声が響いた。

「凍れ――【氷雨の抱擁(アイスレイン・エンブレイス)】!」

爆風の後ろから冷気を帯びた水が一気に襲いかかる。

アリシアの動きを鈍らせるためのサーシャの策だった。

その瞬間、ロイの炎とサーシャの氷が合わさり、蒸気が一気に立ち込める。

「――っ!?」

アリシアの視界が一瞬奪われる。

そして、その中からロイの気配が迫る。

「もらった!」

蒸気の中を炎が駆け抜ける。

「まだよ……!」

アリシアは素早く後退しながら、岩の腕で自身を守る。

だが――

「逃がしません!」

エマの風が吹き荒れ、アリシアの動きを封じる。

その瞬間、ロイの渾身の拳が迫った。

「……解除!」

アリシアの身体を覆っていた魔力が一瞬で霧散する。

巨大な岩の腕が崩れ落ち、煌めく宝石の輝きが消えた。

ロイ、サーシャ、エマの三人はその様子を見て警戒を強める。

「……魔力切れ?」

サーシャが一瞬疑問を口にするが、ロイはすぐに首を振る。

「いや……違う」

――これは、決意の表れ。

アリシアはゆっくりと拳を握りしめ、大地を踏みしめる。

「大地の加護――展開!」

次の瞬間、彼女の全身に力が漲る。

アリシアはランドレウスの学園時代から、魔力量の多さと精密な魔法制御に優れていた。
しかし、それと同時に“地の加護を受けし者”として、魔法に頼らぬ武術にも長けている。そして鉱物魔法を使えるようになる前ですら地属性の天才と言われていた。

――今は、アルノアが来るまで耐える時。

「……来なさい!」

アリシアは両足を踏みしめ、構えを取る。

ロイが素早く炎を纏い、サーシャが水の術式を展開し、エマが風で援護する。

三人が同時に攻撃を仕掛けた。

ロイの拳が火を引き裂きながら炸裂する。

サーシャの水の刃が鋭く大地を切り裂く。

エマの風が、動きを封じようと纏わりつく。

アリシアはそれら全てを、己の体術とシンプルな地属性魔法のみで迎え撃った。

地面から隆起させた岩で防御し、拳と蹴りで弾き、足場を変えて動きを制限する。

一発、一発が重い。

だが、アリシアは耐え抜く。

(アルノア……早く来なさいよ!)

必死に攻撃を捌く彼女の脳裏には、白銀の魔力を纏った仲間の姿が浮かんでいた。

 ロイは拳を握りしめ、燃え盛る炎を纏ったままアリシアへと突進した。

(やっぱり……すげぇな、アリシアさん!)

武術の天才と称され、どれほどの強敵と戦っても常に自信を持ち続けてきたロイだったが、今目の前にいるアリシアの実力には驚きを隠せなかった。

炎を纏った拳を繰り出せば、アリシアは岩の壁で受け止め、衝撃を殺しながら次の動作に繋げる。

蹴りを放てば、その勢いを利用して後方へ跳び、間合いを調整する。

完全に受け流されているわけではない。だが、こちらの猛攻を凌ぎながら、一瞬の隙を見せることすらない。

それでも――。

(時間の問題だ……!)

エマの風魔法がロイの炎をさらに加速させ、動きにも鋭さを与える。

サーシャの水魔法が死角から襲いかかり、アリシアの回避の選択肢を減らす。

そして、アリシア自身の疲労が確実に蓄積していた。

試合開始直後から、彼女はボルタジアの猛攻を受け続けてきた。

さらにロイたちランドレウスの三人との戦いは、個々の技量が高いこともあり、純粋な消耗戦となっていた。

アリシアの息がわずかに荒くなり、わずかに動きが鈍る。

ロイはそれを見逃さなかった。

「もらった!」

全身に炎を纏い、爆発的な推進力で距離を詰める。

拳を引き絞り、全力の一撃を放つ――。

アリシアは即座に反応し、防御の姿勢を取った。

しかし、その時――。

「……遅いよ、ロイ。」

白銀の閃光が戦場を駆け抜けた。

ロイの拳がアリシアに届く直前、別の力がそれを弾き返す。

ロイの目が見開かれた。

サーシャとエマの動きも一瞬止まる。

戦場に、新たな力が加わったことを感じ取ったからだ。

――白い魔力の援軍が、ついに合流した。

ロイの視界の先、アリシアの隣に立つのは、白銀の雷を纏った男。

アルノアだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ

よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。   剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。  しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。   それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。 「期待外れだ」 「国の恥晒しめ」   掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。  だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。 『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』  彼だけが気づいた真実。  それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。  これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。 【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...