戦神(せんじん)の魂と経験共有で強くなる~白き戦神の冒険譚~

ルキノア

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代表戦編inランドレウス

表彰と霞滅の挨拶

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実況が大きく息を吸い込み、会場全体に響くように叫ぶ。

「試合終了ーーー!!!」

その瞬間、会場が一斉に爆発したかのような歓声に包まれた。

「すげぇ!!」
「本当に2人で勝ちやがった!!」
「どっちも強すぎる!!」

観客席のあちこちで興奮した声が飛び交う。
誰もが手に汗を握りながら見守っていた試合。その決着に、驚きと興奮が入り混じった歓声が止まらない。

アルノアとアリシアは、互いに荒い息をつきながらも、拳を軽くぶつけ合った。
「……勝ったな。」
「あんたのおかげよ。」

試合を終えた戦士たちが次々と会場に戻ってくる。

ロイは唇を噛み締めながらも、どこか満足そうな表情でアルノアを見つめる。
サーシャは悔しそうにしながらも、天使との契約を再確認するようにそっと胸元に手を当てていた。
エマはふっと微笑みながら、「やっぱり降参して正解だった」と呟く。

一方で、ヴァイスや他の挑戦者たちは唇を噛み、悔しさを隠せない様子だ。
「まさか、ここまでやるとはな……。」
「でも、次は負けない。」

 ユリウスは静かにアルノアに歩み寄ると、満足げに微笑んだ。

「約束通り、勝ってくれてありがとう。」

それだけを言うと、ユリウスは力強くアルノアの肩を叩く。その瞳には、確かな信頼と誇りが宿っていた。

シエラも腕を組みながら、少しふてくされたように言う。
「まったく……あなたたち、どこまで強くなるのよ。でも、正直感動したわ。」

彼女の後ろでは、ヴィクトールが豪快に笑いながら言った。
「ははっ!俺たちの仲間が優勝したんだ、誇らしいぜ!」

「すごかった! 本当にすごかったよ!」
リリアンが興奮気味に飛び跳ねながら賞賛する。

アルノアはそんな仲間たちの言葉を受けながら、少し照れくさそうに笑った。
「みんなのおかげでもあるよ。」

アリシアも「そうね」と頷きながら、仲間たちに視線を向けた。

その瞬間、彼らがこれまで共に戦い、乗り越えてきた日々が蘇る。
そして、彼らの絆がさらに深まったことを、誰もが確信していた。

そんな中、荘厳な雰囲気が広がる。
ランドレウス王がゆっくりと立ち上がり、表彰のため壇上へと歩みを進める。
会場が静まり返り、次の瞬間、王の威厳ある声が響き渡った。

「この試合を戦い抜いた全ての戦士たちに、敬意を表する。」

その言葉と共に、表彰が始まる――。
 会場が表彰の空気に包まれたその瞬間――。

突如、圧倒的なオーラが場内を覆った。

それは強者たちだけではなく、観客の誰もが感じ取れるほどの凄まじい威圧感。まるで恐怖そのものが具現化し、全身を締め付けるかのような感覚に、誰もが息を呑んだ。

「な、なんだ……?」
「身体が震える……!」

観客席からも、戦士たちの間からもざわめきが広がる。

そして、会場の中心――その上空に、黒い影がゆっくりと姿を現した。

「素晴らしい原石たちだな……。」

低く響く声とともに、男のシルエットがはっきりと見える。

漆黒のマントを纏い、燃え上がるような紅い瞳を持つ男。
その存在だけで、まるで場の空気すら支配してしまうかのような圧倒的な威圧感を放っていた。

誰かがその名を呟いた瞬間、場内の空気が凍りついた。

塔の深層で名を馳せる、“災厄”とまで呼ばれた存在。
その名を知る者たちは絶望に近い感情を抱き、知らぬ者ですら本能的な恐怖を覚えた。

アルノアは瞬時に構えを取り、隣のアリシアも剣を握り締める。

「……どういうつもりだ?」

アルノアの問いかけに、バルボリスは愉悦に満ちた笑みを浮かべながらゆっくりと降り立った。

「ちょっとした挨拶さ。お前たちの戦い……実に興味深かった。」

彼の瞳がアルノアを射抜くように見つめる。

「だからこそ……試してみたくなった。」

その言葉に、アルノアの全身の毛が逆立つ。

次の瞬間、バルボリスのオーラがさらに膨れ上がり――会場全体がまるで巨大な捕食者の巣に迷い込んだかのような錯覚に陥る。

ランドレウス国王の側近に控えていた男が、一歩前に出た。

銀色の髪を肩まで伸ばし、鋭い眼光を持つ男――ゼファー・ストラウス。

彼はランドレウスの王直属の護衛であり、同時にSランク冒険者でもある。その身に宿るオーラは、まさに歴戦の猛者のもの。

だが、彼でさえも目の前の男が放つ圧倒的な威圧感に、わずかに眉をひそめた。

「……お前、バルボリスか?」

その名を口にした瞬間、会場が再びざわめいた。

バルボリス――かつてランドレウスにいたSランク冒険者。
だが、数年前、塔の攻略中に行方をくらまし、死んだものとされていた男。

ゼファーの言葉に、バルボリスはゆっくりと笑みを浮かべる。

「ほう……覚えていたか。」

「当然だ。ランドレウスでSランクに名を連ねた者の名を忘れるはずがない。だが……お前は死んだと聞いていた。」

ゼファーはバルボリスを鋭く睨みながらも、その正体を確かめるようにオーラを探る。

間違いない。

この圧倒的な威圧感、異常なまでの魔力の密度、そして、かつて感じたことのある独特な闘気――。

目の前の男は、紛れもなく”かつてのSランク冒険者”バルボリスそのものだった。

しかし、何かが決定的に違う。

「……お前、何をした?」

ゼファーの問いに、バルボリスは口角を上げ、不敵な笑みを浮かべながら答えた。

「“死んだ”のではない。“生まれ変わった”のさ。」

彼の紅い瞳が、異様な光を宿す。

「そして今、俺は自分の”強さ根源”を知った。」

その言葉に、ゼファーをはじめ、アルノアやアリシア、さらには周囲の冒険者たちの背筋に悪寒が走った。

バルボリスが何を手に入れたのか、まだ誰も知らない。

だが、一つだけ確かなことがあった。

この男は、かつてのSランク冒険者とは別次元の存在になっている。

バルボリスの言葉と共に、空間に不気味な魔法陣が浮かび上がった。

闇色の魔力が渦を巻き、底知れぬ邪悪な気配があたりを包み込む。

「我々は霞滅という。」

その名が告げられた瞬間、会場中の冒険者たちが息をのむ。聞いたことのない組織名だ。それなのに、この男はそれを当然のように告げる。

「今後、貴様らもどこかで同士と出会うことになるだろう。」

まるで、不可避な運命であるかのように。

そして――。

「これが私からの手土産だ。」

バルボリスが軽く腕を振ると、黒い魔法陣が次々と地面や空中に出現した。

そこから湧き出る黒いオーラ。

やがて、その魔法陣から無数の魔物が這い出してくる。

漆黒の獣たち。異形の魔人。腐食した巨躯を持つゴーレム。

そして――

「……っ!?」

一際大きな魔法陣が展開されると、そこから巨大な影が姿を現した。

黒い鱗に覆われた、獰猛な瞳を持つ竜。

「……竜種……!?」

観客席から誰かが震えた声で呟く。

ただの魔物ではない。竜種。それは塔の中でさえ滅多に遭遇しない強大な存在。

その竜が今、この会場に召喚されている。

「さあ、楽しんでくれ、原石たちよ。」

バルボリスは、まるで舞台を用意した演者のように言い放ち、冷たく笑った。

――そして、地獄の幕が上がった。
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