戦神(せんじん)の魂と経験共有で強くなる~白き戦神の冒険譚~

ルキノア

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代表戦編inランドレウス

集まる仲間たち

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「……なんだ、この黒いオーラは?」

戦いの熱気に包まれていた会場が、一気に凍りついた。

突如現れた異形の魔物たちを前に、観客席は騒然とする。

「見たことのない魔物だ……!」
「おい、まずいんじゃないか!?」

各国から集まった強者たちも、さすがに動揺を隠せない。

どんな魔物も、塔の中でなら記録がある。

だが、今目の前にいる魔物たちは――まるでこの世界の理から逸脱した存在のようだった。

「おい、なんだあの竜……」

誰かが震えた声で呟く。

黒い鱗、漆黒のオーラを纏い、その眼光には理性と狂気が入り混じっている。

塔の攻略中でもめったに遭遇しない竜種。それが今、目の前にいる。

そして――

この場には、一般の観客が大勢いるのだ。

戦える者はいる。各国の代表として参加した学生たち、強豪たち。

だが、皆が疲弊している。

アルノアやアリシアも、試合直後で満身創痍。

「……こんなの、まともに戦えるのか?」

誰もがそう思った。

「……この光景、まるであの時の……!」

ランドレウスの学生たちの間で、恐怖にも似た動揺が広がる。

学園襲撃事件。

突如として現れた未知の魔物が学園を襲い、多くの生徒や教師が命を落とした、あの悪夢。

そして今、目の前に広がるのは、あの時と酷似した状況。

狼型の魔物が猛然と駆け出し、オーガのような巨体の魔物が咆哮を上げる。

違うのは、今回の敵がはるかに規模も質も上回っていること。

「くそっ、またかよ……!」
「やるしかない!」

学生たちの中には恐れながらも武器を握りしめ、魔法を展開する者もいた。

ランドレウスの強者たちが前に出る。ロイ、サーシャ、エマも、戦いの疲労を押して立ち上がった。

「……バルボリス、動く気はないみたいね」

アリシアが鋭い視線を上空へ向ける。

バルボリスは、宙に浮かびながらその光景を眺めているだけだった。

それが幸いとも言えた。

先ほどのオーラの威圧感を思い出すだけで、今ここにいる学生たちではまともに戦える相手ではないと誰もが理解していたからだ。

「くそっ、まずはこの魔物たちを片付けるしかない!」

アルノアが剣を握り直し、アリシアも覚悟を決める。

「……やるしかないわね」

試合の興奮が一変し、生存を懸けた本物の戦場へと変わっていった。

「そういうことだ」

アルノアは息を整えながら、剣を握り直した。

フレスガドルのメンバーは、突如として現れた黒いオーラを纏う魔物を目の当たりにし、戦慄した。

「……このオーラ、まさか……」
いち早く異変を察知したユリウスが低く呟く。

シエラが魔物の群れを睨みつける。
「間違いないわ、あの時のダンジョンで出てきた魔物と同じ……! ってことは……」

「破壊神の影響か!」
デクスターが拳を握りしめ、焦りの表情を浮かべる。

その言葉に、フレスガドルのメンバーの間に緊張が走る。

「急ぐぞ! アルノアのところへ!」
ユリウスが指示を出すと、全員が一斉にアルノアのもとへと駆け出した。

彼らが見たのは、戦いを終えたばかりで疲労しきっているアルノアとアリシアの姿。

「アルノア、大丈夫か!?」
ユリウスが駆け寄ると、アルノアは浅い呼吸をしながら顔を上げた。

「……お前ら……」

「こんな状況だからな、のんびりしてる暇はないぞ」
ヴィクトールが肩を叩く。

「アルノア、この魔物たち、破壊神の影響よね?」
シエラが鋭い視線を向けると、アルノアはわずかに頷く。

「……あぁ、間違いない」

その言葉に、ユリウスが剣を握りしめる。
「やっぱりな。ランドレウスのダンジョンで戦った時の魔物と同じなら、厄介な相手だ」

「アルノア、正直、今の状態で戦えるの?」
シエラが問いかけると、アルノアは苦笑しながら答えた。

「……少し、厳しいかもな」

ユリウスが言った通り、この魔物たちはダンジョンで戦ったものと同じオーラを纏っている。
つまり、ただの魔物ではない。破壊神に関わる存在——。

アルノアは、正直限界が近いことを自覚していた。
試合での激戦、エーミラティスの力の行使……。

疲労は明らかだった。

そこへ、リヒターが観客席から降りてくる。

「まったく……こっちは観戦を楽しんでたってのによ」
「回復できる奴がアルノアを回復してる間に、俺らで雑魚どもを蹴散らし、あのでかい竜の足止めをすればいいってことだろ?」

リヒターの言葉に、フレスガドルの仲間たちも応じる。

「任せて! ここは絶対に通さないから!」
シエラも笑顔を見せるが、その瞳には決意の炎が灯っていた。

「このオーラ……ダンジョンの時と同じなら、油断はできないね」デクスターが冷静に武器を構える。
「時間は稼ぐ。アルノアはしっかり回復しろよ」ユリウスが念を押した。

リリアンは素早く回復魔法を展開し、アルノアとアリシアの体に優しい光を降り注いでいた。

「……ふぅ、なんとか応急処置はできたわ」
彼女は額の汗を拭いながら、ふたりの容態を確認する。

「ありがとう、リリアン……」
アルノアが息を整えながら言うと、リリアンは微笑んだ。

そのとき、慌ただしい足音が響き、一人の少女が駆け寄ってきた。

「アルノア!」

サーシャだった。息を切らしながら、しかしその目は真剣な光を宿している。

「サーシャ……?」

サーシャは息を整えながら言葉を続ける。
「天使がね、アルを助けろって言ってるの。何でか知らないけど、すごい興奮しているの!」

「天使が?」
リリアンが驚いたように目を見開く。

サーシャは少し困惑した表情を見せつつも、拳を握りしめて強く頷いた。
「でも、フレスガドルの皆さんの動きを見て、間違ってないと思った。みんなアルノアの元に集まってたから……」

彼女は一瞬アルノアの顔を見て、しっかりとした声で宣言する。
「私も手伝います!」

アルノアはそんなサーシャを見つめ、やがて静かに頷いた。
「……助かる」

その言葉を聞いたサーシャの表情が明るくなり、すぐに行動を開始する。

「私も回復魔法を使えるから、リリアンと一緒にあなたたちを回復する! だから、その間に……」

「俺たちが戦う!」
ユリウスとロイの声が力強く響く。

ロイは傷だらけの体を引きずりながら、それでも堂々と前に出た。

「はっ、面白ぇじゃねぇか」
彼は肩を回しながら、余裕の笑みを浮かべる。

「アル、お前が出なくてもいいようにしてやるぜ」

その言葉に、アルノアは驚いたように彼を見つめる。ついさっきまで敵として戦っていた男が、今は再び仲間として前線に立とうとしていた。

すると、その隣にカインとゼインも進み出る。

「ここはランドレウスだ」
カインが低く、しかし強い声で言った。

「俺らの国で好き勝手させるわけにはいかねぇ」
ゼインも剣を抜きながら続ける。

ランドレウスの精鋭たちが揃って前に立つその姿に、周囲の学生たちも奮い立つようだった。

そして、エマがアルノアのそばに歩み寄り、柔らかく微笑む。

「ねぇアルくん、みんなアルくんのこと心配してたんだよ」
彼女の声は、どこか優しく、それでいて力強かった。

「また会えたんだもん。これくらい乗り越えないとね!」

そう言って、エマも前へと進む。

アルノアは彼らの背中を見つめながら、静かに拳を握った。
彼は確かに疲れていた。だが、仲間たちの覚悟が、その疲労すらも忘れさせてくれる。

「……頼むぞ」

そう呟いた彼の目は、再び戦場を見据えていた。

サーシャは天使の力を解放しながら、リリアンとともにアルノアとアリシアの回復を続ける。

「私たちが持ちこたえる! だから……」

「アルノア、早く回復して!」

仲間たちの声援が響く中、アルノアは静かに目を閉じた——戦いの続きは、これからだ。

 
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