俺の幼馴染はちょっと変わった優等生

ケイト

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ミファの誘惑になんて負けないっ!

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 テスト。
それは学生にとっての悪魔だ。
いや、悪魔なら魔術で倒せるけれどコイツは魔術で倒す事が出来ないって点を踏まえると、悪魔以上の存在に違いない。
先生との約束を守る為、俺は数学の教科書開いて早速勉強を開始した。
さてと……。
 
「降臨者と転生者の違いは……えーっと……だめだ、眠い……」
 
教科書を開いてわずか10分、とにかく眠い。
言い訳じゃなくて、本当に眠い。
さっきまでやる気に満ち溢れていたし、本当に頑張ろうとしていた。
なのに、今の俺は睡魔と戦っている。
クソ、やはり教科書には悪魔がいて俺を眠らせる為に魔術で攻撃しているに違いない。
 
しかし、満点を取ったら先生が師匠を紹介してくれると、満点を取ると約束したんだ。
頑張らないと……これも魔術師として成長する為の試練!
乗り越えるぞ!
 
「ただいま」
 
「おかえり……ふぁ~、ねむ」
 
ミファは玄関で靴を脱ぎ、買い物袋を自慢げに俺に見せている。
ここから見ても分かるぐらいに袋は野菜や卵でパンパンになっていて、さらに彼女のドヤ顔もあり、特売に勝利したのだと嫌でも分かる。

「やりましたよナーパム! 見てください、卵一人一皿限定でしたけど魔術で変装して二皿買えました! しかも二皿で定価の一皿分の値段なんですよ」
 
それはいいのだろうか。
そもそも、彼女は戦う時以外に魔術を使うなと言っていたような……。
ああ、特売は戦場だからいいとかそんな理由かな。
とにかく、今日のミファは機嫌がいい。
いつも勉強を見てくれるが、もしかしたら今日は遅くまで付き合ってくれるかも。
 
「荷物持つよ」
 
「ありがとうございます、着替えたらすぐご飯作りますからね! あ、言っておきますけど覗かないで下さいね」
 
「そんな事する訳ないだろ」
 
「私の事彼女とか言っちゃうくせに」
 
最近よくこの話でイジられる。
何回もあの時は助ける事だけしか考えられなくて、ライフさんの言葉に反射的に反応しただけだと言ったんだが、彼女はニヤニヤとするだけでまったく信じてくれない。
 
仮に、もし仮にミファが彼女だとする。
なら男の俺がミファを守れるぐらいの力を持っているべきだと思うし、頭の良さも匹敵するレベルじゃないとダメだ。
つまり、ふさわしく無い。
でも、それでも俺がミファを守れるようになったら……。
 
「あれ? ナーパムが一人で勉強ですか、珍しいですね」
 
「んぇ!? ちょ、ミファ!」
 
「いいからほら見せて下さい、ふんふん、成る程、降臨者と転生者の話ですか……これはですね」
 
近い!
何故俺の座っている椅子の半分を奪うようにして隣に来るんだ。

「ミファ! 近いから離れて!」
 
「む! それはダメです! ナーパムが珍しくやる気になっているのですからそれを見るのが私の役目……えい!」
 
俺の身体が一瞬だけ宙に浮く。
その後すぐに背中に少し柔らかくて、温かい物が広がっていく。
耳にかかる少し温かい風と、背中に感じる体温が、俺が今ミファの膝の上に座っているのだと嫌でも認識させて来やがる。

「これなら勉強から逃げられませんよね」
 
ペンを持った手は上からミファに掴まれて、手を開く事が出来なくなっている。
俺の方が手は大きいはずなのに、魔術を使っているのか動かそうとしても巨大な岩で固定されているかのように言う事を効かない。
 
「ちゃんと勉強するから! だから離れてくれよ!」
 
「だーめ、ふーっ」
 
いちいち息を耳にかけてくるな!
違う、俺はこんなので興奮する変態じゃないだろ!
しっかりしろ、俺!
 
「じゃあ、この問題からいきましょうか」
 
右手は固定され、左手は膝の上。
ミファの右手と左手は俺の手の上におかれている。
さらに足は絡められていて、立ち上がる事も出来ない。
つまり、完全に逃げ道を塞がれている。
 
「降臨者と転生者、違いは何かな?」
 
「そ、それはだな……」
 
「不正解だったら、またお耳をふーってしてあげますよ」
 
いらない!
それいらないから!
 
「つ、強さが違う」
 
「ハ・ズ・レ、はいご褒美ね、ふーっ」
 
「……っっっ!」
 
「あれー? あれあれあれー? ナーパムもしかして」
 
この密着した状態じゃ……体がゾクゾクと反応してしまうのを避けられないし、ミファにも隠せない。
顔を見なくても分かる。
絶対にミファはニヤニヤしてる。
俺で遊んでやがる!
 
「お耳、気持ちいいんですかぁ?」
 
「そんな事……な、ない!」
 
「そうですよねぇ~、じゃあ第二問です。転生者の使う魔術は特別な魔術ですが、その特別な魔術とは何ですか?」
 
これは分かる。
魔術の起動に必要な術式を知っていても転生者じゃないと使えない特別な魔術、転生魔術だ。
 
「間違える事が出来たら、もっといっぱいふーってしてあげちゃいますよ」
 
正解を答えるんだ。
これ以上、ミファの好きにさせてたまるか。

「失敗したら気持ちいいのが待ってる、この問題は難しい、だから間違えても仕方ない。ナーパムはこの問題が分からない……ですよね?」
 
もっと……。
これは……そう、転生魔術じゃなくて他の魔術があるかもしれないから……それを今考えているだけ。
ミファの誘惑に負けそうになっている訳じゃない。
 
「どうしたのかな?」
 
右手がミファに動かされる。
ペン先が、転生魔術を指している。
これが答え、それは分かっているのに、何故俺はこんなにも……答えたくないって思ってしまうんだ。
 
「ナーパム君、わかるかなぁ?」
 
「そ、それは……」
 
ペンが転生魔術をぐるぐると囲う。
絶対に転生魔術が答え。
言え、言うんだ。
ミファに負けるな、負けちゃダメだろ!
彼女を守れる魔術師になるって、自分に誓っただろうが!
 
「転生前の世界の……魔術」
 
俺の想いとは逆に、体はミファに従った。
 
「フフッ、はい、不正解です」
 
体が動くようになった。
椅子から降ろされ、足も開放されている。
 
「もっとしっかり勉強しないとダメですよ? こんなの基礎中の基礎ですから」
 
開放されたが、俺はそれどころじゃなかった。
貰えると思った物が、いきなりお預けになってもうそれどころじゃない。
 
「わ、わかってる……けど」
 
「……っっっ! そんなに残念そうな顔をして、どうしましたか?」
 
「分かってるだろ!」
 
「言ってくれないと分かりませんね」
 
言うな。
これ以上ミファのペースに乗せられるな。
 
『いいじゃねぇか、今日だけミファに負けちまえよ』
 
だ、誰だお前!
 
『俺はお前だよ、お前の本心だ』
 
くっそ、悪魔みたいな俺が脳内に現れやがった。
だが所詮……言ってて悲しくなるけど相手は俺!
これぐらいなら!
 
『考えてみろよ、今の段階でミファに勝てるのか?』
 
それは……勝てない。
 
『だろ? 将来的に勝てるようになればいいんだ、つまり、今だけしか負けられないんだぞ? せっかくだしさっきみたいに気持ちよくしてもらおうぜ、それが幸せってもんだろ』
 
……言われてみれば確かにそうだ。
今日だけ、今日だけだから……!
 
『それはダメだ!』
 
も、もう一人の綺麗な俺!
強い意思を持つ俺がやってきたぞ!
立派な魔術師として豪華なローブをまとい、輝く黄金色の炎を宿した俺が脳内にやってきた!
 
頼む、悪魔みたいな俺を倒してくれ。
 
『将来的にと君は言うが、少しづつ成長する事を諦めては将来的な勝利は無い! だからここは耐えるんだ!』

そのとおりだ。
そうだ、もっと言ってやれ!
 
『だいたい悪魔のような君の発言は』
 
『耐えても成長なんかしねぇよ、ここは罰として受け入れて先に進む。考え方を変えればただそれだけだ』
 
『しかしそれでは……その罰は自分が望んだ物だ、罰には』
『うるさい! 俺達は思春期の男だぞ、例え幼馴染で姉みたいな存在だろうと、異性には勝てねぇんだ! くらえ、デビルシシュンキビーム!』
 
魔術師の俺は、悪魔の俺に倒されて消えてしまった。
 
「どうしたのかな?」
 
「ま、間違えたから! 罰を受けないといけないって……その」
 
「んー?」
 
「……して、下さい」
 
ミファに抱き寄せられた。
それと同時に、気持ちいい耳ふーをしてくれる。
体が喜んでいる。
ダメ、立っていられない。
 
「今回は自分に素直になれたナーパムを評価してあげますけど、次からはしっかり言って下さいね」
 
「は……はい……」
 
翌日セイメイにこの事を相談したが。
 
「って事があったんだけどさ、やっぱ俺ってミファに負けたのかな?」

「ボロボロに負けてる、完敗だろ」
 
フォローもケアもしてくれなかった。


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