夢禍自戒(むかじかい)

さこ丸

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四節 -2

放課後の教室

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放課後の教室。
窓の外は赤に染まり、影が伸びている。

教室には健一と、詩織の二人だけ。

健一は窓際の席に座り、無言で外を見ていた。
詩織は隣の席に座ったまま、何かを言いたげに視線を向けている。

…沈黙が長い。

「…ねえ、藤井くん」

詩織の声に健一が反応する。

「昨日の夢のことだけど…ちゃんと話しておきたい。

「…うん。」

健一は椅子に座り直し、詩織と向き合った。

「あのね。…結論から言うと、あの夢に巻き込んじゃったの…私なの。」

「…?どういうこと?」

詩織はカバンの中から、何かをを取り出す。
それは、あの日、彼に渡した受験祈願のお守り。

「本当はね。普通のお守り…じゃなかったの。うちの神社に伝わる、ちょっと特別な”結界札”みたいなもので」

「つまり…?」

「もちろん、”受験祈願”のつもりで渡したんだよ。本気で。」

「でも、それを藤井くんが持ったことで、夢の渦に触れちゃったんだと思う。」

言葉を探すように、詩織は視線を伏せる。

「だから…ごめんね。ほんとに」

ポツポツと涙が落ちる。声が少し上ずっていた。

健一は、彼女の方を向き、真剣な表情で答える。

「つまり…僕があのバケモノに襲われたのは、お守りが原因だったんでしょ?だったら、夢前さんのせいじゃないよ。」

「でも、それを渡したのは、私で…」

「”受験祈願で”でしょ?だったらこんなの事故じゃん。それに夢前さんには助けてもらったんだよ。むしろ、ありがとだよ。」

彼女の表情が崩れる。目元を手で覆い、目線を下に向ける。

「助けてくれてありがとう。夢前さん」

健一は詩織にそういうと、自身のお守りを見せる。

「このお守りをもらったとき。ほんとうに嬉しかった。だから気にしないで?」

彼女はこの言葉を聞いたあと、さらに泣き出した。

ーー 数分後。

「…落ち着いた?」

「…うん」

そう言って彼女は顔を上げる。目元がほんのり赤い。

「ねえ。藤井くん」

「ん?」

「私、夢の中で”健一”って名前で呼んじゃってたよね。」

「え?あ、ああ。言われてみれば…」

「これからさ…藤井くんのこと”健一”って呼んでいい?私のことも”詩織”でいいからさ。」

少し照れたように笑う詩織。

「うん。わかった。詩織。」

今度は健一が、ほんの少し照れた顔をした。

「健一。これからもよろしくね。」

夕陽が教室に差し込み、二人の影が並ぶ。

ーー 最後にみせた詩織の笑顔が、頭から離れなかった。
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