夢禍自戒(むかじかい)

さこ丸

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五章

訓練 ー1

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最初に健一が襲われた夢から1週間が経った。
あれからあの”いかがわしい”怪異をふくめて3回。健一は襲われていた。

放課後の帰り支度をしていた健一は、
ふいに声をかけられた。

「ねえ、健一」

振り返ると、詩織が立っていた。
制服の胸元を軽く押さえながら、どこか言いにくそうな顔。

「ちょっと、付き合って。」

「ああ、”夢”関連の話?」

健一がそう聞くと、詩織は小さく頷いた。

「そう。…でもそれだけじゃないの。健一にも、少し備えてほしいから」

「…備える?」

「うん。最近、健一が怪異に巻き込まれることが多くなってきたから。」

詩織は言いながら、制服の袖を直し、小さく息を吸った。

「健一には、夢の中で自衛できるように、戦い方を覚えてもらいます。」

「…え?」

「え?じゃないよ。最近は怪異が少しずつ活性化してきているの。さっきも言ったけど、

健一は怪異に巻き込まれることが多いから。…この前だって、あんな…」

詩織が少し顔を赤らめた後、再度、口を開く。

「助けが間に合わないなんてこともあるんだよ。護身術くらいでもできたらいいと思う。」

「まあ、その怪異?の夢。妙にリアルだからね。毎回、夢だけどほんとに死ぬんじゃないかって思うよ。」

健一の言葉を聞いた詩織が、目を見開き、少し青ざめた表情で言う。

「…健一。夢で殺されると…ほんとに死んじゃうよ?」

「…え」

詩織がぎゅっと両手を握り、真剣な目でこちらを見つめる。

「えっとね。夢の中の攻撃って、現実の身体には影響ないけど…”心”には確実にダメージが残るの。

攻撃を受ければ受けるほど、少しずつ蓄積していって ーー 限界を超えると精神がこわれちゃう。」

「それだけならまだいい。心の傷はずっと残るわけじゃなくて、怪我みたいに治るから。」

「でも、もし夢の中で”致命傷”を受けて、本当に死んだら…精神は現実にも戻ってこられなくなる。」

だんまりして詩織の話を聞いていた健一が口を開く。

「つまり、夢の中でも死ぬことはあるってことか…」

詩織はふいに目を伏せた。

「…ごめんね。こんな大事なこと、もっと早く言うべきだったよね。」

暗い表情で、どこか申し訳なさそうに言う詩織。

健一は、わずかに肩をすくめて笑った。

「いいよ。そもそも言うタイミングなかったじゃん。最初に襲われた後に、実はあれ…。

なんてわざわざ怖がらせる必要もないでしょ?」

詩織の瞳が少しだけ揺れた。

次の瞬間、ふっと口元に笑みが戻る。

「ありがと。じゃあ、健一。改めて、健一には”戦い方”を学んでもらいます。」

「訓練はウチでやるから。ついてきて?」


ーー 次回、訓練開始 ーー






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