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第2章 鏡石と紗和(さより)
第1話 再会後編
「あの人に会ってきたの?どこで?」
マンションのドアを開けたとたんにママが聞いてくる。やっぱりパパのこと気になっているんじゃない。分かれて20年も経つのに、ずっと言い寄ってくる男を蹴散らして、パパのこと気にしていないふりして、本当に素直じゃない。パパもこんなわがままな人のどこが気に入ったんだろう。きっとずっと振り回されていたんだろうな。
「スカイパーク」
私が小さい頃のパパとのデートの定番だった店。わざとその店にしたのに、パパは気づかなかったみたい。少し寂しい。
「ファミレス?せっかくお酒が飲めるようになった娘に数年ぶりに会ったのに?相変わらず、ほんとに貧乏くさい。」
パパが貧乏なのは、私のせい。でも私もあなたの娘だから、答えは素直じゃないの。
「あたしが断ったの。貧乏人にたかる気はないの。」
どう?ママが言いそうなことでしょ。もう23年の付き合いになるんだから良くわかってるわ。こう答えるとかわいくないって思うことも、全部知っているからね。
「まあ。いいわ。なんでも、気が済んだのなら。あの人は本当は優秀なのに、あたしと娘のためって好きな研究止めちゃって、負担になって重い女になりたくなかったから別れたのに、結局変わらなかった。責任持つ相手がいなくなったんだから、もう一度挑戦してくれてもいいんだけどね。自分を小さく見るくせがついちゃっているからきっともう駄目ね。」
ママは今でもパパのことが大好き。今日だって一緒に行きたかったくせに、結局いろいろ言ってついて来なかった。だけど気になって仕方ないんだわ、しょうがない人。
「今でも尊敬しているんでしょ。」
自分では気が付いていないかもしれないけど、すぐパパのこと話しているんだからね。
「お互い年取ったから、異性としての魅力はなくなったかもしれないけど。」
本音を隠したいからって言ってもこれは酷い。許せない。私のパパなんだからね。
「パパはそんなことないよ。今日も素敵だったよ。」
一人の男を取り合う美女二人だからね。美女かどうかわからないのと熟女だけど。
「あはははははははは。年頃の娘にそう言ってもらえるなんて、幸せな人ね。」
パパはずっとずっと二人のこと愛し続けているよ。たぶん。ママも本当はそのこと分かっているくせに、ずっとずっと強がっているよね。いつか、素直に気持ちをパパにぶつけてほしい。パパもママも幸せになってほしい。私はもう大丈夫です。二人のおかげで、立派な社会人になりました。二人とも自分の幸せに目を向けて下さい。お願いします。
紗和と別れてシャワーを浴び終えたころ、珍しい相手から着信があった。怒られるのかな、理由はわからないけど。まさか紗和に何かあったわけではないよな。
「あたしよ~。久しぶり。紗和に会ったんでしょう。あたしは無理に会わなくていいって言ったんだけど、就職して社会人になったんだからけじめだってさ。」
もう他人になってから20年経つというのに、相変わらずの距離感の会話である。別に嫌いになって別れたわけではないから、いやじゃないけど釈然としないものがあることはあるのである。
「ま、あの子にはあの子の考えがあるんでしょうよ。今でもパパだって思っているようだし。お酒も飲まなかったのね。飲むと面白かったのに。あたしたちはほとんど飲めないのに、あの子はざるよ。うわばみよ。底がないからね。いくら飲んでも全く変わらないの。あえて言えばワインが好きかもしれないわ。ワインと言っても、モーゼルワインはだめよ。この深い緑の瓶が美しいだろなんて言ったらほんとに嫌われるからね。(その口説き言葉はあたしだけで、娘にもだめだから)」
自分の娘じゃ酔わせる意味もないだろう。娘酔わせてどうするつもり?焚霧だったら、酔わせてみたい気もするけどね。でも、酒がものすごく強いというのは良い情報だ。飲みに行っても変な事されずに済みそうだからな。それに、焚霧じゃないから、モーゼルワインなんて頼まないよ。酒が弱いのをごまかすためだし、手ごろな値段のワインだったし、理由は学生くらいで、大人の誘い方じゃないからね。
「紗和も社会人になったんだし、もう責任感じなくていいからね。これで本当のサヨナラ。うちの子に今までありがとうね。あの子なぜだかわからないけど、あなたの好きな歴史?に進んじゃったけど。」
あの子はいろいろな才能があったはずなのに、なぜ僕と同じ道を選んだんだろう。部活もサイエンス部だったりしたらしい。本当は違うことがしたかったんじゃないかって心配になることがある。
「あたしは会う気ないけど、あの子が会いたがったら会ってやってね。助けてあげられるときは、パパとして力になってね。約束よ。邪馬台国の話をしたの?あなたの専門じゃない。どうせなら、今度二人で研究旅行してみたら、あたしは遠慮するけど。」
そこは一緒に行ってくれないんだ。娘が心配なだけなのかな。焚霧とこうして話していると、そこまで僕のこと嫌っているようには思えないんだけどね。もちろん助けるさ。助けられる限りは助けるよ。最愛の娘なのだから。
マンションのドアを開けたとたんにママが聞いてくる。やっぱりパパのこと気になっているんじゃない。分かれて20年も経つのに、ずっと言い寄ってくる男を蹴散らして、パパのこと気にしていないふりして、本当に素直じゃない。パパもこんなわがままな人のどこが気に入ったんだろう。きっとずっと振り回されていたんだろうな。
「スカイパーク」
私が小さい頃のパパとのデートの定番だった店。わざとその店にしたのに、パパは気づかなかったみたい。少し寂しい。
「ファミレス?せっかくお酒が飲めるようになった娘に数年ぶりに会ったのに?相変わらず、ほんとに貧乏くさい。」
パパが貧乏なのは、私のせい。でも私もあなたの娘だから、答えは素直じゃないの。
「あたしが断ったの。貧乏人にたかる気はないの。」
どう?ママが言いそうなことでしょ。もう23年の付き合いになるんだから良くわかってるわ。こう答えるとかわいくないって思うことも、全部知っているからね。
「まあ。いいわ。なんでも、気が済んだのなら。あの人は本当は優秀なのに、あたしと娘のためって好きな研究止めちゃって、負担になって重い女になりたくなかったから別れたのに、結局変わらなかった。責任持つ相手がいなくなったんだから、もう一度挑戦してくれてもいいんだけどね。自分を小さく見るくせがついちゃっているからきっともう駄目ね。」
ママは今でもパパのことが大好き。今日だって一緒に行きたかったくせに、結局いろいろ言ってついて来なかった。だけど気になって仕方ないんだわ、しょうがない人。
「今でも尊敬しているんでしょ。」
自分では気が付いていないかもしれないけど、すぐパパのこと話しているんだからね。
「お互い年取ったから、異性としての魅力はなくなったかもしれないけど。」
本音を隠したいからって言ってもこれは酷い。許せない。私のパパなんだからね。
「パパはそんなことないよ。今日も素敵だったよ。」
一人の男を取り合う美女二人だからね。美女かどうかわからないのと熟女だけど。
「あはははははははは。年頃の娘にそう言ってもらえるなんて、幸せな人ね。」
パパはずっとずっと二人のこと愛し続けているよ。たぶん。ママも本当はそのこと分かっているくせに、ずっとずっと強がっているよね。いつか、素直に気持ちをパパにぶつけてほしい。パパもママも幸せになってほしい。私はもう大丈夫です。二人のおかげで、立派な社会人になりました。二人とも自分の幸せに目を向けて下さい。お願いします。
紗和と別れてシャワーを浴び終えたころ、珍しい相手から着信があった。怒られるのかな、理由はわからないけど。まさか紗和に何かあったわけではないよな。
「あたしよ~。久しぶり。紗和に会ったんでしょう。あたしは無理に会わなくていいって言ったんだけど、就職して社会人になったんだからけじめだってさ。」
もう他人になってから20年経つというのに、相変わらずの距離感の会話である。別に嫌いになって別れたわけではないから、いやじゃないけど釈然としないものがあることはあるのである。
「ま、あの子にはあの子の考えがあるんでしょうよ。今でもパパだって思っているようだし。お酒も飲まなかったのね。飲むと面白かったのに。あたしたちはほとんど飲めないのに、あの子はざるよ。うわばみよ。底がないからね。いくら飲んでも全く変わらないの。あえて言えばワインが好きかもしれないわ。ワインと言っても、モーゼルワインはだめよ。この深い緑の瓶が美しいだろなんて言ったらほんとに嫌われるからね。(その口説き言葉はあたしだけで、娘にもだめだから)」
自分の娘じゃ酔わせる意味もないだろう。娘酔わせてどうするつもり?焚霧だったら、酔わせてみたい気もするけどね。でも、酒がものすごく強いというのは良い情報だ。飲みに行っても変な事されずに済みそうだからな。それに、焚霧じゃないから、モーゼルワインなんて頼まないよ。酒が弱いのをごまかすためだし、手ごろな値段のワインだったし、理由は学生くらいで、大人の誘い方じゃないからね。
「紗和も社会人になったんだし、もう責任感じなくていいからね。これで本当のサヨナラ。うちの子に今までありがとうね。あの子なぜだかわからないけど、あなたの好きな歴史?に進んじゃったけど。」
あの子はいろいろな才能があったはずなのに、なぜ僕と同じ道を選んだんだろう。部活もサイエンス部だったりしたらしい。本当は違うことがしたかったんじゃないかって心配になることがある。
「あたしは会う気ないけど、あの子が会いたがったら会ってやってね。助けてあげられるときは、パパとして力になってね。約束よ。邪馬台国の話をしたの?あなたの専門じゃない。どうせなら、今度二人で研究旅行してみたら、あたしは遠慮するけど。」
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