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第20話 ポーション作りまくり
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モンフォール街十八番地は、今度はずっと早く見つけることができた。
そして、人が見ていない瞬間を狙って私はするりと中に入った。
相変わらず人の気配はしない。
今回の目当ては、地下のポーション作成場だ。
私は、ポーションの授業に出られるようにはなった。
殿下が、ほんのぽっちり魔力が見つかったと学校に申請してみたらいいのでは?と助言してくれたのだ。ほんとに殿下は親切な人だと思う。
ほんのわずかでも魔力があれば、授業は受けられるそうだ。だけど、元々平民の場合、かなりの魔力がなければ、第二夫人ルートはあり得ないと教えてくれた。
「目立ってはダメだよ?」
殿下は心配そうに言った。
目立たせている張本人が何を言うか。
山羊先生に魔力ありの申請を出した時、先生はかなり胡散臭そうな顔をしていたいた。
絶対、信用していない。
「平民だったよね?」
「はい」
なんか違うらしいけども、事情は言えない。
証明書は魔術塔の方に書いていただいた。正確にいうと、セス様が書いてくれた。偽名を使ってだけど。
「しかもEランク? 何もできないんじゃない?」
魔力量はAからEまでランクが分かれているそうで。全然知りませんでした。
「Eって、何ですか?」
山羊先生はため息をついた。
「本当に何も知らないんだな。Eは、生活魔法の一部が多少使える程度だ。たとえば水をちょっぴり温めることができるとか、その程度だ。本格的な魔法は使えないよ」
そんなことはない。私、Eランクですけど、生活魔法、超便利ですよ。おかげで手荒れが治りましたしね。先生は貴族だから、家事のしんどさを知らないんだな。
「そうなんですか。私はポーションを作りたいんですが」
先生は目をむいた。
「できる訳ないだろ? ポーションつくりは高度魔法だ。せめてCランクを持っていないと」
「ランクって上がるんですか?」
「そりゃ上がることだってあるさ。でも、下がることだってある」
「じゃあ、Eランクだと、ポーションの授業、受けられないんですか?」
先生はううむと言った。
要するに、受けられないわけではないそうだ。
受けさせたくないだけで。
「実技で足を引っ張ると思う。実技はグループでやる場合が多い。薬草取りに行くとか。他の人の迷惑にならなきゃいいが。心配だな」
意外にまともな理由だった。平民だから入るなじゃなくて、レベルが低いので、授業に差し支えが出ることを心配しているようだった。
「平民なんかグループ組む時に迷惑だよ。悪いことは言わないからやめておけ」
出た。平民蔑視。
とはいうものの、後でこっそり同じクラスの令嬢方に話を聞いたところ、Eクラスという方は結構多いらしく、ポーション作りに登録している方も何人かいた。
彼女たちは、表向き、平民と親しくするわけにはいかないので、いかにも嫌そうに振る舞っているが、実は案外好意的だった。
好意というか、関心があった。
アデル嬢を紹介してくれたのも、巡り巡って、彼女たちのおかげである。
「どうなったのかしら?」
ツンと反対側を向きながら、聞いてくる。気になるらしい。
「瞬殺でした?」
どういう意味かと思ったら、すぐ断られただろうと期待しているらしかった。
「いいえ。デートにお出かけになりました」
「えええええー?」
突然、般若のような顔になって、こっちを振り向いたのには驚いた。
「絶対、脈なんかないと思ったのに!」
「わからないものですねえ。学校ではまずいので、街で馬車デートするっておっしゃってましたよ?」
「何ですってええ?」
ワラワラと他の令嬢も、集まってきた。全員、青筋を立てている。怖い。
「そんなだったら、私たちも!」
「そうよ、そうよ」
だから、あんなに勧めたのに。
ちっとも乗ってこなかったから。
今更ですよ。
「だから、お勧めしましたのに」
すると彼女たちは少しは冷静になったらしく、顔を見合わせた。
「で、でも、侯爵令嬢ならまだしも……」
「私、しがない田舎の男爵家の出身ですし」
「リーマン様はこの国でも有数の大商家ですわ」
確かに、後ろ盾という意味では、家の勢力は非常に大事だろう。
「でも……これで、ちょっとわからなくなってきましたわね」
王子妃レースの行方が、という意味だろう。みんなワクワクしているようだ。
ちなみに王太子殿下は数年前に結婚して、こちらの方は決着がついている。
それよりも、顔立ち整い、同じ学園に在学中の王子殿下の帰趨に興味が集まるのは当然の事だ。
「案外、殿下は女好きなのかもしれませんよ」
殿下をちょっとディスっておいた。毎朝、タダ飯を食らいにくるのである。金に不自由はなさそうなのに。
目元涼しい鼻筋通ったイケメンが毎朝やってきたら、嬉しいかもしれないけど、自分のみすぼらしい顔が嫌になるではないか。
平凡顔の似合いの男が来てくれたら、落差で卑屈になるなんてことないのに。
でも、平凡顔の同じレベルの男だったら、ワクワク感は半減かな……矛盾してるよね、この気持ち。
そんなこんなで、私は多少はクラスに溶け込み、ポーションのクラスにも問題なく潜入できた。
「難しいのに、よくもまあ挑戦する気になったわね」
同じ最下位クラスのご令嬢様(彼女もEクラスだ)のご意見は聞き流して私は授業に出た。
授業には出たが、実技はさせてもらえなかった!
「平民だからね」
理の当然と言わんばかり。
担任の先生は、脂ぎった太鼓腹の中年だったが、ぎろりとメガネの奥の目を光らせて宣言した。
「皆さんの迷惑にならないように、隅の方で聞いていなさい。それだけでも、名誉だろう」
名誉なんか、どうでもいいです! そんなことのために授業を受けてるんじゃないんです。私は本気でポーションが作りたいんです!
それが理由で、仕方ないから、モンフォール街十八番地まで来なくてはならなかった。だって、授業でポーションを作らせてくれないんだもん。
教科書とメモ、それから実技で使った薬草や材料は持ってきた。泥棒魔法最高! どんな時にも役に立つ。
あとは設備だけだ。私は改めて、モンフォール街十八番地の地下に置いてある道具を眺めた。
「スゲー」
古いものだと思っていたが、最新のものが揃えてある。全部一流の品だ。学校のより上等だった。
「でも、おかしいな?」
わたしは首をひねった。
これだけの設備を整えてあるにしては、使った形跡のないものがある。
と言うか、ほとんど未使用なのでは?
「まあいいか」
私は、実験をやり始めた。
生徒の授業として適当なのかわからないが、授業でやったポーションは結構難しいものが多かった。私は必死にメモを取って、他の生徒の実験の様子を見物したのだ。
魔力の多寡や個性によって、ポーションの効果は違ってくる。
でも、手順と材料は同じだ。
授業に出てきたポーションは、田舎にいた頃、よく作ったものもあった。しかし、やり方が多少違うものもあってとても参考になった。
私は丸一日かかって、夢中になってすごい種類と量を作って持ち帰った。
それには理由があった。私はバスター君という仲良し?をポーションクラスで作ってしまったのである。
なぜなら、バスター君は、とてつもなくポーションの才能が無かったからだ。
実家が国で一番と言われるポーション屋の息子なのにも関わらず。
そして、人が見ていない瞬間を狙って私はするりと中に入った。
相変わらず人の気配はしない。
今回の目当ては、地下のポーション作成場だ。
私は、ポーションの授業に出られるようにはなった。
殿下が、ほんのぽっちり魔力が見つかったと学校に申請してみたらいいのでは?と助言してくれたのだ。ほんとに殿下は親切な人だと思う。
ほんのわずかでも魔力があれば、授業は受けられるそうだ。だけど、元々平民の場合、かなりの魔力がなければ、第二夫人ルートはあり得ないと教えてくれた。
「目立ってはダメだよ?」
殿下は心配そうに言った。
目立たせている張本人が何を言うか。
山羊先生に魔力ありの申請を出した時、先生はかなり胡散臭そうな顔をしていたいた。
絶対、信用していない。
「平民だったよね?」
「はい」
なんか違うらしいけども、事情は言えない。
証明書は魔術塔の方に書いていただいた。正確にいうと、セス様が書いてくれた。偽名を使ってだけど。
「しかもEランク? 何もできないんじゃない?」
魔力量はAからEまでランクが分かれているそうで。全然知りませんでした。
「Eって、何ですか?」
山羊先生はため息をついた。
「本当に何も知らないんだな。Eは、生活魔法の一部が多少使える程度だ。たとえば水をちょっぴり温めることができるとか、その程度だ。本格的な魔法は使えないよ」
そんなことはない。私、Eランクですけど、生活魔法、超便利ですよ。おかげで手荒れが治りましたしね。先生は貴族だから、家事のしんどさを知らないんだな。
「そうなんですか。私はポーションを作りたいんですが」
先生は目をむいた。
「できる訳ないだろ? ポーションつくりは高度魔法だ。せめてCランクを持っていないと」
「ランクって上がるんですか?」
「そりゃ上がることだってあるさ。でも、下がることだってある」
「じゃあ、Eランクだと、ポーションの授業、受けられないんですか?」
先生はううむと言った。
要するに、受けられないわけではないそうだ。
受けさせたくないだけで。
「実技で足を引っ張ると思う。実技はグループでやる場合が多い。薬草取りに行くとか。他の人の迷惑にならなきゃいいが。心配だな」
意外にまともな理由だった。平民だから入るなじゃなくて、レベルが低いので、授業に差し支えが出ることを心配しているようだった。
「平民なんかグループ組む時に迷惑だよ。悪いことは言わないからやめておけ」
出た。平民蔑視。
とはいうものの、後でこっそり同じクラスの令嬢方に話を聞いたところ、Eクラスという方は結構多いらしく、ポーション作りに登録している方も何人かいた。
彼女たちは、表向き、平民と親しくするわけにはいかないので、いかにも嫌そうに振る舞っているが、実は案外好意的だった。
好意というか、関心があった。
アデル嬢を紹介してくれたのも、巡り巡って、彼女たちのおかげである。
「どうなったのかしら?」
ツンと反対側を向きながら、聞いてくる。気になるらしい。
「瞬殺でした?」
どういう意味かと思ったら、すぐ断られただろうと期待しているらしかった。
「いいえ。デートにお出かけになりました」
「えええええー?」
突然、般若のような顔になって、こっちを振り向いたのには驚いた。
「絶対、脈なんかないと思ったのに!」
「わからないものですねえ。学校ではまずいので、街で馬車デートするっておっしゃってましたよ?」
「何ですってええ?」
ワラワラと他の令嬢も、集まってきた。全員、青筋を立てている。怖い。
「そんなだったら、私たちも!」
「そうよ、そうよ」
だから、あんなに勧めたのに。
ちっとも乗ってこなかったから。
今更ですよ。
「だから、お勧めしましたのに」
すると彼女たちは少しは冷静になったらしく、顔を見合わせた。
「で、でも、侯爵令嬢ならまだしも……」
「私、しがない田舎の男爵家の出身ですし」
「リーマン様はこの国でも有数の大商家ですわ」
確かに、後ろ盾という意味では、家の勢力は非常に大事だろう。
「でも……これで、ちょっとわからなくなってきましたわね」
王子妃レースの行方が、という意味だろう。みんなワクワクしているようだ。
ちなみに王太子殿下は数年前に結婚して、こちらの方は決着がついている。
それよりも、顔立ち整い、同じ学園に在学中の王子殿下の帰趨に興味が集まるのは当然の事だ。
「案外、殿下は女好きなのかもしれませんよ」
殿下をちょっとディスっておいた。毎朝、タダ飯を食らいにくるのである。金に不自由はなさそうなのに。
目元涼しい鼻筋通ったイケメンが毎朝やってきたら、嬉しいかもしれないけど、自分のみすぼらしい顔が嫌になるではないか。
平凡顔の似合いの男が来てくれたら、落差で卑屈になるなんてことないのに。
でも、平凡顔の同じレベルの男だったら、ワクワク感は半減かな……矛盾してるよね、この気持ち。
そんなこんなで、私は多少はクラスに溶け込み、ポーションのクラスにも問題なく潜入できた。
「難しいのに、よくもまあ挑戦する気になったわね」
同じ最下位クラスのご令嬢様(彼女もEクラスだ)のご意見は聞き流して私は授業に出た。
授業には出たが、実技はさせてもらえなかった!
「平民だからね」
理の当然と言わんばかり。
担任の先生は、脂ぎった太鼓腹の中年だったが、ぎろりとメガネの奥の目を光らせて宣言した。
「皆さんの迷惑にならないように、隅の方で聞いていなさい。それだけでも、名誉だろう」
名誉なんか、どうでもいいです! そんなことのために授業を受けてるんじゃないんです。私は本気でポーションが作りたいんです!
それが理由で、仕方ないから、モンフォール街十八番地まで来なくてはならなかった。だって、授業でポーションを作らせてくれないんだもん。
教科書とメモ、それから実技で使った薬草や材料は持ってきた。泥棒魔法最高! どんな時にも役に立つ。
あとは設備だけだ。私は改めて、モンフォール街十八番地の地下に置いてある道具を眺めた。
「スゲー」
古いものだと思っていたが、最新のものが揃えてある。全部一流の品だ。学校のより上等だった。
「でも、おかしいな?」
わたしは首をひねった。
これだけの設備を整えてあるにしては、使った形跡のないものがある。
と言うか、ほとんど未使用なのでは?
「まあいいか」
私は、実験をやり始めた。
生徒の授業として適当なのかわからないが、授業でやったポーションは結構難しいものが多かった。私は必死にメモを取って、他の生徒の実験の様子を見物したのだ。
魔力の多寡や個性によって、ポーションの効果は違ってくる。
でも、手順と材料は同じだ。
授業に出てきたポーションは、田舎にいた頃、よく作ったものもあった。しかし、やり方が多少違うものもあってとても参考になった。
私は丸一日かかって、夢中になってすごい種類と量を作って持ち帰った。
それには理由があった。私はバスター君という仲良し?をポーションクラスで作ってしまったのである。
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