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第28話 街を出る
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ジャックはフィオナ包囲網を徐々に狭めつつあった。
グレンフェル侯爵の仕事はジャック程融通が付かない。今日から彼は議会のはずだ。当分、伯爵家を訪問などできないだろう。仕事が終わった後の夜中の訪問だなんて、礼儀知らずにも程がある。笑止だ。花を贈ったり手紙を出すのがせいぜいだろう。
姉のクリスチンだったら、義母なんか会わなければいいだけでしょうと突っぱねるだろう。気にもしないだろう。
でも、あのフィオナがそんな強い態度に出られるかと言われれば、出来ないだろう。
そんな所が好きなのだが、彼女はきっと悩むだろう。
「出来るところまではやった」
あとはフィオナの気持ちが変わるのを待つだけである。
「毎日でも通って口説いてやる。花とプレゼントは、何がいいかな」
彼女はなにが好きなのだろう。アンドルーに聞いてみようかとも思ったが、アンドルーのことだ、変なフィルターを通してくるかもしれない。
「空いている時間で調べてみようか」
彼に出来ることは包囲網を完ぺきにすることだ。アンドルーと彼女は持参金の話をしていた。そのことは前もチラッと気になっていた。
フィオナの大伯母のことである。
ジョゼフィン・ハドウェイ。金融で富豪だったハドウェイ氏の後妻だ。
彼女は3回結婚している。
彼女の人生がどんなだったかに興味はない。気になるのは遺産だ。
ダーリントン伯爵家の人々は、あまり経済に詳しくないから、疑問に思わなかったのかも知れないが、彼女の遺産が数万ポンドと言うのはいかにも少なすぎる。
どこか教会か病院、孤児院などに大金を寄付していなければ、家族に残したはずだ。
彼女の資産は、数十万ルイはあるに違いなかった。
「ウィリアムに聞いてみるか」
ウィリアムは、ゴードン弁護士事務所で働いている知り合いだ。
「確かハドウェイ家はあの弁護士事務所を利用していたはずだ。なんか知ってるかも知れないな。弁護士事務所で働いている以上、余計なことは何も言わないと思うが……」
「お嬢様……」
さすがのマーゴットが困り果てていた。
「修道院に行きます」
フィオナが青白い顔をして宣言したからだ。
「何を馬鹿なことを言ってるんだッ」
兄のアンドルーが口から泡を飛ばして怒鳴りつけた。
「パーシヴァル家に嫁ぐことになっている! 今更覆せない!」
「いいえ、いいえ」
フィオナは泣きながら抗議した。
「いやです。結婚なんかしたくない」
「とにかく、今日のところはお一人で静かにさせてあげてください。事情を聞いておきますから」
渋々、アンドルーが出て行くと、フィオナは泣きながら訴えた。
「セシルが好き。セシルの悪口を言うジャックなんか好きじゃない」
逆効果が上がっていた。
「でもね、その話は社交界ではいつも言われていました……セシル様のお母さまが犯人だと」
フィオナは驚いてマーゴットの顔を見た。
「もちろん本当のところはわかりません。否定しても否定しても言われ続ける。遺産をもらい損ねた人達、つまり亡くなられたお兄様の遠い親族が噂をぶり返すのです。もし殺人なら、犯人側は遺産なんかもらえません。だから、セシル様たちが犯人だと繰り返し言い続けるのです。本当のところはとにかく、それはグレンフェル侯爵家が抱えている問題なのです。お母さまは、疲れ果てて、精神的に病んでいるらしいです。すると今度は無罪なら精神的に病むはずがないと口さがなく言われています」
セシルは母を庇いたかったのだ。だけど、おそらく世間の噂は手強かったのだ。
「ですからね、お嬢様、パーシヴァル様の言うことはある程度はもっともなのです。きっと、あなた様もその親族の人たちから非難のターゲットにされるんじゃないかとか、精神的に病んでらっしゃるお義母様の面倒をみなければならなくなるだろうと言った問題点をあげていらっしゃるのです。それくらいなら、自分の方が好ましいだろうと」
フィオナは転地療養することになった。
街が嫌になったのである。
「ご一緒したいわ」
そう言って来たのは、クリスチンだった。ジャックから聞いたらしい。
フィオナは耳を疑った。グレンフェル侯爵狙いではなかったのか?
「ちょうど、街を出ないといけない用事があってね。それにあなたには、とても迷惑をかけたと思っているの」
あのクリスチンが顔を赤らめて言うのである。
「ちょっと、問題が起きてしまって。あ、今回はジャックには絶対しゃべらないから」
全く信用できない。
「信じてよ、本当よ。行き先は完全に秘密よ。でないと私も困るのよ。ジャックがあんな子だったなんて思わなかったわ。しつこいったらありゃしない」
しつこいったらありゃしないのは、どうもジャックのことではないらしい。あのクリスチンが男に追いかけられて真剣に困っているらしい。
「しつこい男から追いかけられて困ってる者同士、2週間ほど田舎の風に吹かれましょうよ。手配はするわ。そういう手配には自信があるのよ」
「フィオナ様、クリスチン様とご一緒なら、街を出られます」
マーゴットがこっそりアドバイスした。
「何しろ、ジャック様のお姉様です。アンドルー様もオーケーを出されるに決まっています。むしろ、親しくして来いとおっしゃるでしょう。パーシヴァル家からのお誘いですから、ジャック様にお知らせする必要もございません。クリスチン様がお知らせしたと言えばよろしいのです。ご姉弟なんですから」
それから、あのマルゴットがため息をついた。
「このまま、この家にいるのはおつらいでしょう。アンドルー様はジャック様と結婚させるつもりです。お嬢様が少し考える時間が欲しいと思われるのも無理はございません」
なんだかよくわからないままに、クリスチンとフィオナは、連れ立って田舎に静養しに行くことになった。
「いいなー」
アンドルーは、反対どころか死ぬほど羨ましそうだった。
「ジャック様を強くお勧めされるんじゃないのかしら?」
フィオナは不安だった。
「ないと思いますよ」
マーゴットがあっさり言った。
「クリスチン様は、自分がやりたい事しかしないので有名です」
クリスチンの目的がわからないだけにフィオナの不安は一向解消されなかったが、後日、社交界ではこの二人の逃避行は有名になったらしい。
「恋ゆえの逃避行! 有名になった?」
目的地の田舎に着いてからこの話を聞いて、フィオナは呆れ返ったが、クリスチンはクスクス笑ってなんだか嬉しそうだった。
「きっと、マークは今頃イライラしているわ」
ブツブツ独り言を言っている。
今をときめく若い侯爵と社交界の人気者ジャックの二人から求婚された伯爵令嬢と、数多の恋人との関係を囁かれながらも未だ相手を決めていない社交界の花形の二人旅に想いを馳せる殿方も多かったと聞く。
ついでに言うなら、いろいろと間違った解釈で思いを馳せた男性も多かったと聞く。
一方でフィオナはクリスチンのような強心臓ではないので、この噂を聞いた時はビクビクした。
「女性同士って、怖いものだと思いますわ」
「私のこと?」
クリスチンに睨まれた。
「もちろん、違います。帰って来たら、なにを言われるかと……」
クリスチンは、フィオナがなにを心配しているのかわかった途端に笑い出した。
「ああ、フィールス夫人のサロンとかね? 気にしないこと!」
クリスチンほどの古強者になれば、気にしなくて済むのかも知れないが、フィオナは文字通り小鳥の心臓である。
「ねえ、私たちのことを誰も知らないところで暮らすのは気楽で楽しいわよ? 私はクレアって名乗るから、フィオナは、そうね…フィリパにしなさい」
なんですか? それは?
「姉妹ってことにしましょう。それがいいわ。いろいろと説明が面倒だから。家を貸してくれたのは、ダウリッチ氏だから、ダウリッチ氏の姪になりましょう!リーズ姉妹ね!」
「すみません。どうして、ダウリッチ姉妹じゃなくてリーズ姉妹なんでしょうか?」
「そこは田舎なのよ! ダウリッチ氏の兄弟姉妹のことはみんなが知ってるから、もう何年も前に亡くなったらしい奥様の姓を使えばいいと思うの!」
「あの……匿名ごっこですか?」
「別人に成りすますのよ! 楽しくない? しがらみを忘れるのよ」
しがらみ……
そんなわけで、リーズ姉妹は、ダウリッチ氏が貸してくれた、こぎれいな田舎家に落ち着いたのだった。
グレンフェル侯爵の仕事はジャック程融通が付かない。今日から彼は議会のはずだ。当分、伯爵家を訪問などできないだろう。仕事が終わった後の夜中の訪問だなんて、礼儀知らずにも程がある。笑止だ。花を贈ったり手紙を出すのがせいぜいだろう。
姉のクリスチンだったら、義母なんか会わなければいいだけでしょうと突っぱねるだろう。気にもしないだろう。
でも、あのフィオナがそんな強い態度に出られるかと言われれば、出来ないだろう。
そんな所が好きなのだが、彼女はきっと悩むだろう。
「出来るところまではやった」
あとはフィオナの気持ちが変わるのを待つだけである。
「毎日でも通って口説いてやる。花とプレゼントは、何がいいかな」
彼女はなにが好きなのだろう。アンドルーに聞いてみようかとも思ったが、アンドルーのことだ、変なフィルターを通してくるかもしれない。
「空いている時間で調べてみようか」
彼に出来ることは包囲網を完ぺきにすることだ。アンドルーと彼女は持参金の話をしていた。そのことは前もチラッと気になっていた。
フィオナの大伯母のことである。
ジョゼフィン・ハドウェイ。金融で富豪だったハドウェイ氏の後妻だ。
彼女は3回結婚している。
彼女の人生がどんなだったかに興味はない。気になるのは遺産だ。
ダーリントン伯爵家の人々は、あまり経済に詳しくないから、疑問に思わなかったのかも知れないが、彼女の遺産が数万ポンドと言うのはいかにも少なすぎる。
どこか教会か病院、孤児院などに大金を寄付していなければ、家族に残したはずだ。
彼女の資産は、数十万ルイはあるに違いなかった。
「ウィリアムに聞いてみるか」
ウィリアムは、ゴードン弁護士事務所で働いている知り合いだ。
「確かハドウェイ家はあの弁護士事務所を利用していたはずだ。なんか知ってるかも知れないな。弁護士事務所で働いている以上、余計なことは何も言わないと思うが……」
「お嬢様……」
さすがのマーゴットが困り果てていた。
「修道院に行きます」
フィオナが青白い顔をして宣言したからだ。
「何を馬鹿なことを言ってるんだッ」
兄のアンドルーが口から泡を飛ばして怒鳴りつけた。
「パーシヴァル家に嫁ぐことになっている! 今更覆せない!」
「いいえ、いいえ」
フィオナは泣きながら抗議した。
「いやです。結婚なんかしたくない」
「とにかく、今日のところはお一人で静かにさせてあげてください。事情を聞いておきますから」
渋々、アンドルーが出て行くと、フィオナは泣きながら訴えた。
「セシルが好き。セシルの悪口を言うジャックなんか好きじゃない」
逆効果が上がっていた。
「でもね、その話は社交界ではいつも言われていました……セシル様のお母さまが犯人だと」
フィオナは驚いてマーゴットの顔を見た。
「もちろん本当のところはわかりません。否定しても否定しても言われ続ける。遺産をもらい損ねた人達、つまり亡くなられたお兄様の遠い親族が噂をぶり返すのです。もし殺人なら、犯人側は遺産なんかもらえません。だから、セシル様たちが犯人だと繰り返し言い続けるのです。本当のところはとにかく、それはグレンフェル侯爵家が抱えている問題なのです。お母さまは、疲れ果てて、精神的に病んでいるらしいです。すると今度は無罪なら精神的に病むはずがないと口さがなく言われています」
セシルは母を庇いたかったのだ。だけど、おそらく世間の噂は手強かったのだ。
「ですからね、お嬢様、パーシヴァル様の言うことはある程度はもっともなのです。きっと、あなた様もその親族の人たちから非難のターゲットにされるんじゃないかとか、精神的に病んでらっしゃるお義母様の面倒をみなければならなくなるだろうと言った問題点をあげていらっしゃるのです。それくらいなら、自分の方が好ましいだろうと」
フィオナは転地療養することになった。
街が嫌になったのである。
「ご一緒したいわ」
そう言って来たのは、クリスチンだった。ジャックから聞いたらしい。
フィオナは耳を疑った。グレンフェル侯爵狙いではなかったのか?
「ちょうど、街を出ないといけない用事があってね。それにあなたには、とても迷惑をかけたと思っているの」
あのクリスチンが顔を赤らめて言うのである。
「ちょっと、問題が起きてしまって。あ、今回はジャックには絶対しゃべらないから」
全く信用できない。
「信じてよ、本当よ。行き先は完全に秘密よ。でないと私も困るのよ。ジャックがあんな子だったなんて思わなかったわ。しつこいったらありゃしない」
しつこいったらありゃしないのは、どうもジャックのことではないらしい。あのクリスチンが男に追いかけられて真剣に困っているらしい。
「しつこい男から追いかけられて困ってる者同士、2週間ほど田舎の風に吹かれましょうよ。手配はするわ。そういう手配には自信があるのよ」
「フィオナ様、クリスチン様とご一緒なら、街を出られます」
マーゴットがこっそりアドバイスした。
「何しろ、ジャック様のお姉様です。アンドルー様もオーケーを出されるに決まっています。むしろ、親しくして来いとおっしゃるでしょう。パーシヴァル家からのお誘いですから、ジャック様にお知らせする必要もございません。クリスチン様がお知らせしたと言えばよろしいのです。ご姉弟なんですから」
それから、あのマルゴットがため息をついた。
「このまま、この家にいるのはおつらいでしょう。アンドルー様はジャック様と結婚させるつもりです。お嬢様が少し考える時間が欲しいと思われるのも無理はございません」
なんだかよくわからないままに、クリスチンとフィオナは、連れ立って田舎に静養しに行くことになった。
「いいなー」
アンドルーは、反対どころか死ぬほど羨ましそうだった。
「ジャック様を強くお勧めされるんじゃないのかしら?」
フィオナは不安だった。
「ないと思いますよ」
マーゴットがあっさり言った。
「クリスチン様は、自分がやりたい事しかしないので有名です」
クリスチンの目的がわからないだけにフィオナの不安は一向解消されなかったが、後日、社交界ではこの二人の逃避行は有名になったらしい。
「恋ゆえの逃避行! 有名になった?」
目的地の田舎に着いてからこの話を聞いて、フィオナは呆れ返ったが、クリスチンはクスクス笑ってなんだか嬉しそうだった。
「きっと、マークは今頃イライラしているわ」
ブツブツ独り言を言っている。
今をときめく若い侯爵と社交界の人気者ジャックの二人から求婚された伯爵令嬢と、数多の恋人との関係を囁かれながらも未だ相手を決めていない社交界の花形の二人旅に想いを馳せる殿方も多かったと聞く。
ついでに言うなら、いろいろと間違った解釈で思いを馳せた男性も多かったと聞く。
一方でフィオナはクリスチンのような強心臓ではないので、この噂を聞いた時はビクビクした。
「女性同士って、怖いものだと思いますわ」
「私のこと?」
クリスチンに睨まれた。
「もちろん、違います。帰って来たら、なにを言われるかと……」
クリスチンは、フィオナがなにを心配しているのかわかった途端に笑い出した。
「ああ、フィールス夫人のサロンとかね? 気にしないこと!」
クリスチンほどの古強者になれば、気にしなくて済むのかも知れないが、フィオナは文字通り小鳥の心臓である。
「ねえ、私たちのことを誰も知らないところで暮らすのは気楽で楽しいわよ? 私はクレアって名乗るから、フィオナは、そうね…フィリパにしなさい」
なんですか? それは?
「姉妹ってことにしましょう。それがいいわ。いろいろと説明が面倒だから。家を貸してくれたのは、ダウリッチ氏だから、ダウリッチ氏の姪になりましょう!リーズ姉妹ね!」
「すみません。どうして、ダウリッチ姉妹じゃなくてリーズ姉妹なんでしょうか?」
「そこは田舎なのよ! ダウリッチ氏の兄弟姉妹のことはみんなが知ってるから、もう何年も前に亡くなったらしい奥様の姓を使えばいいと思うの!」
「あの……匿名ごっこですか?」
「別人に成りすますのよ! 楽しくない? しがらみを忘れるのよ」
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