グラクイ狩り〜真実の愛ってどこに転がってますか〜

buchi

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第35話 撤収作業終了 長すぎる

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「ああ、ご苦労だった。どうだった? マフィ少尉は?」

「てこずりましたよ。あ、ごめん、君の上司だった。」

 と、ナオハラが言った。

「いや、もう、いいですよ。あの人が頑固なのはいつものことですから。今回ばかりは確かにてこずりましたが。」

「彼を激昂させてしまって悪かった。基地でも意固地になっていたら、私のせいかもしれない。君のことも悪く言ってしまって申し訳ない。でも、マフィ少尉に病院に行ってもらいたかったんだ。素人の感じでは、だいぶまずいと思ったんだ。意外に軽症だったのかもしれないが。軽傷だったら、マフィ少尉がまた怒るだろうね?」

「いや、ノルライド少尉、マフィ少尉は確かにかなり重傷のようです。四週間の入院を命ぜられていました。傷が深かったのです」

 シンが言った。ナオハラはマフィ少尉に好感を抱かなかったらしかった。かなりてこずったのだろう。

「少尉は、病院へ行く必要はないって、がんばるのです。そんなはずないじゃないですか」

 そこへ、疲れた様子のケムシアとバホイとゼミーがやってきた。

 もう、基地に戻れると思っていたのに違いない。別のところで、まだ働いてこいと言われるとは考えていなかっただろう。

「すまない。あと二時間だけだ(たぶん)。六人いるからマシだよ。作業員たちの方がうんざりしているだろう。シルバー隊はどうだったのかな?」

 ケムシアが説明した。

「二日くらい前から、グラクイが凶暴化してきて、いきなり、一人に狙い定めて、集中砲火を浴びせる手法に切り替えてきたのです。最初がバーグ曹長でした。彼らは、誰がボスだか知っているようでした」

「ブルー隊では、オスカーがやられましたよね。おそらく、少尉は途中から参加したので、彼らはオスカーがボスと判断したんでしょうね」

 ナオハラが言った。

「シェリは多分偶然だったのだろう。シェリはオスカーみたいに重傷ではなかったから。オスカーは明らかに狙いを定められていた」

 ギルが慎重に考えながら言った。ゼミーもうなずきながら、鼻の頭にしわを寄せていた。

「ロウもやられていた。マフィ少尉も。やはりボスからつぶすつもりなんだな」

「ということは、今夜最も危険なのはあなたですね、ノルライド少尉」

「なあに、今晩は六人体制で普段の倍だ。それにあと二時間だけだ。逆に私を狙ってくるのなら、こちらもそのつもりで応対すればいい。対策が立てられる」

 とはいえ、正直対策の立てようはなかった。連中が来たら片っ端から撃つだけである。
 私を中心に六人を配置した。一番はじに腕の立つベッグとギルを置いた。もう真っ暗で、レーザーに頼るしかない。


 一方、ロペスを先頭に作業員たちは一心不乱に働いていた。夜が危険だということ、最近グラクイが凶暴化していることを、ナオハラが伝えたのだ。

「六人体制で護衛しているが、安全のためにも出来るだけ早く撤収したい。」

 結局二時間でなく三時間かかってしまい、その間我々は誰かがひっきりなしに撃っている状態だった。

 卵は減っていても、今度の狙いは、どうやら我々を戦闘不能に陥れたい意図が見え隠れしていた。事態は変化しているのだ。感情を持たないはずのグラクイとしては、理解しがたい行動だった。

 やはり、真ん中の私がターゲットらしく、私は、まわりの五人の援護射撃のおかげでようやく難を逃れている状態だった。ギルとベッグは、周囲からのグラクイを撃ち、そのおかげでゼミーとナオハラとシンは手が空くので、三人で私めがけて押し寄せてくる連中をレーザーで気絶させ続けていた。

 作業員は、もう数人程度しか残っていなかった。

「ロペス、最後によく確認しろ。卵、武器、器具等なにも残っていないな? やつらの手に渡ったら、模造されて、我々の身が危なくなるぞ」

「大丈夫です、少尉殿」

「最後の連中に、空の薬きょう、空のレーザー補充缶、テントを持たせろ。ゴミもだ。いいな?」

「しかし、あなた方はどうやって移動するつもりですか? 打ち続けではGPSの操作が出来ないではありませんか!?」

「最後に光ボムを放つ。その隙に我々は移動する。君達全員が、安全に退去した後だ」

 私は言った。

「早く退去の用意を済ませてほしい」

 数分後、ロペスが叫んだ。

「完了です。私が最後です。今から移動します!」

「よし、やるぞ! 目を覆って!」

 光ボムを操作した。全員がうずくまってレーザーを避けながら、目を覆った。

 光が薄れたのは、目を覆っていてもわかった。

 幸運なことに、一本レーザーを当てられただけで(一本くらいなら火傷も負わない)、みんな無事だった。

周り中のグラクイは、みんな倒れていた。

「ざまあみろ」

 ナオハラがぼやいた。
 
「さあ、急ごう。今のうちだ。数時間のうちに必ず復活する。充分余裕はあるが、長居は無用だ。忘れ物だけは注意して、さっさと帰ろう。」

 順次、基地に戻ると、ジェレミーが憔悴しきった顔で待っていた。

「連絡がないからどうしたのかと思っていたよ。」

「悪かった。連中の攻撃がすごくて、全然連絡できなかった」

「さっき、バウスト曹長を通じて、レッド隊の作業部が、全員無事に帰還してきたという連絡を受けたところだ。
 ロペスという男を捕まえて話を聞いたら、君たちは全員で、ずっと撃ち続けていたって言うけど。どうやって無事に帰ったの?」

「光ボムを使わせてもらった。もっと光ボムがたくさんあれば、撤退も簡単だったんだろうけど」

 気まずそうにジェレミーが答えた。

「全く量産が間に合っていないからね。カネもないし」

「今日は六人でも全然ダメだった。人が足りなかった。気絶させているだけなので、しばらくすると復活してくるので、もう限界だった。光ボムの使用許可は取っていなかったけど……」

「許可は出そう」

 影のところに座っていたオーツ中佐がすっくと立ち上がって言った。私たち六人は、誰も彼に気がついていなかったので、びっくりした。

「ご苦労だった。君たちを待っていたのだ。本当にご苦労だった。」

 私たちは中佐を見つめていた。

「君たちのおかげで、作業部隊は無事に撤収し、大量の卵を回収できた。次の戦法を練って、今度こそ大打撃を与えることが出来ると思う」

 中佐も疲れている様子だった。それは、ありありとわかった。

「ロウ曹長、マフィ少尉、バーグ曹長ら十八名は、それぞれ治療を受けているが、元気だ。少し休めば大丈夫だろう。
 重傷はマフィ少尉だけで、オスカーも比較的重傷だが、二週間のうちに退院できる見通しだ。こんな状態の中、無事に作業を終わらせた。金一封ものだ。とりあえず握手しよう」

 中佐が真剣だったのは、疑いも入れない事実だった。(中佐と握手しても、そんんなに嬉しいわけじゃなかった。ところで、金一封って、いくらなんだろう)
 ひととおり手を握ると、中佐は続けた。

「一週間の休暇を与える。ただし、GPSは持ち歩くよう。以上だ。散会。」

 疲労困憊、猛烈に長かった作戦はこれでいったん終止符を打った。
 自分の安全で清潔なベッドが、真剣に恋しかった。
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