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第3話 アイドルは王女様

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婚約者が嫌なので、他のアイドルに夢中になったのか、それとも婚約者など眼中になく、他のアイドルに夢中になるのか。

「小さい時は優しかったのになあ……」

美男で公爵家の跡取りともなれば、幼いメリンダならずとも、侍女たちも揃って夢中になる。

父の子爵に学園で惚れ込んで、家族の反対を押し切って結婚した元侯爵家令嬢の母も、若いルイスに好意的だった。

しかし、王女殿下が学園に入られてから、ルイスはメキメキと頭角を表し、親衛隊を構築したのである。(褒めているわけではない)

それ以来、たまに贈られてくるプレゼントは、王女殿下がお褒めになったお菓子とか、王女殿下にお送りして喜ばれた花とかだった。

「メリンダ嬢にも喜んでもらえるかと。お褒めいただいた時は天にも登る気持ちだった。お裾分け」

ダンスパーティのことなどキレイに忘れているらしかったので、どうされますかと手紙で問い合わせたところ、今回は忙しいので残念ながらエスコートできないと返事が来た。

メリンダは仕方がないので、父に見せに行った。

父はため息をついて、こう言った。

「私もメリンダの嫁ぎ先としてなら良いと言って、公爵家のお世話をしていたのだが……。メリンダのことがお気に召さないなら、これまでのことを話し合って、一括いっかつで金かかった費用を返してもらうという形で関係を清算しようか。あの坊っちゃまに、こういった問題がどの程度理解できるか疑問だがね」

「親戚筋にはあたるのですよ。私の叔母があの方の祖母ですからね」

母が言った。

「婚約を解消するというなら、それ相応の跳ね返りがあるでしょう。王家も、王女殿下の結婚間近の今、親衛隊活動が原因で婚約破棄されるなんて喜ばないかもしれない。王女殿下と関係があって婚約破棄されたと勘違いされると困りますからね」

「ロザモンド王女殿下の結婚が無事済むまで、婚約解消は公表できないな。王家ににらまれる可能性がある」

メリンダもため息をついた。

たとえルイスがあの調子だったとしても、自分は公爵家の婚約者に間違いはない。

従って、学園でメリンダに話しかける男はいなかった。

礼儀違反なのだ。

だから、毎度壁の花なのだが、どうにもみんなの視線が痛い。

学年が上がれば上がるほど、カップル前提の行事が増えてくる。

メリンダはそれら全てを欠席せざるを得なかった。

親友のナタリーにだって婚約者ができた。学園での知り合いなので、お互いが見染めた存在だ。

しかも、両親の話だと、水面下での交渉はとにかく、婚約解消の件は表沙汰には(噂レベルでも)できないわけだ。すなわち、学園での婚活は無理。

「まあ、でも、メリンダはまだ十六歳。婚約者探しは考えておこう」




メリンダはしおしおと学園に向かった。

本日はダンスパーティ当日である。

しかし、なんだかちょっと様子が違う。

「親衛隊の行事が差し止めになったんだって!」

興奮気味に入口で何人かの生徒が団子になって騒いでいる。

全員夜会服を着用しているが、それどころではないらしい。

「王室が、婚約者の隣国の王子に誤解されたくないと……」

「ロザモンド様を崇拝するのが生き甲斐だったのに……くっ」

男泣きに泣いているのは、親衛隊員だろう。

父の予想通りだ。

「会長はどうしている?」

メリンダは耳がピクリと動いた。(ような気がした)

「男らしく、ぐっと耐えているよ。殿下のお幸せに万一でも影を落とすことなど、決して考えてもおりませんって、言ってたよ」

「それがねー、内々で聞いた話なんだけど」

内々にしては、声が大きい。

「あれほどまでに忠誠を誓うなら、護衛騎士として隣国に着いて行ってもよいと、国王陛下自らご提案なされたそうだ」

「え、すごい」

え、すごい。

メリンダも思った。

「だけど、外聞もあるので、結婚してから着いていけって。幸い、婚約者もいることだし」

え? ひどい。

別居確定?

メリンダは目が点になった。
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