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第24話 出撃! ダンスパーティー
私はキティとポーツマス夫人と三人であてがわれた寝室に向かった。
ドアは閉まると、着付けを始めながら三人はごそごそしゃべり始めた。
「そんなにひどいの? そのバーバラ嬢って」
どんな女性なのかしら。気になるわ。
「ひどいですよ。平民丸出しというか。あまり学もないようで、エリザベス様がバカにしきって、ちょいちょい教養テストを仕掛けてくるので、嫌な顔をされています」
それはエリザベスの性格が悪いのでは。
「男爵夫人は生まれに嫌味を言いますし」
男爵夫人も性格が悪かったっけ。
「一番派手なのはリンダ嬢で、金切り声で大喧嘩をしています。自分が着たかったドレスを兄のジェローム様がバーバラ様用に取り上げられるので。そんな汚くて平凡な栗色の髪と目に着られたら、ドレスが泣くわとか、デブには似合わないとか」
デブと言う言葉に思わず反応した。
「彼女、私のドレスがはいるサイズなの?」
破れたりしたらどうしよう。
「いう程太っていません。背が低いので、入るには入ります。ただ引きずっています」
私は自分のドレスの無事を祈った。縫い目とか裂けてないといいなあ。
「ジェローム様には魂胆があるみたいです。このなりすまし結婚が成功すれば、バリー商会のすべてがジェローム様のものになると考えているようです。そうなればお屋敷内で一番力があるのはジェローム様になります。男爵はジェローム様の作戦に賛成しておられますね。お金を考えるとそれしかないのでしょう」
「でも、今の話だとバーバラ嬢は目の色も違うし、私よりかなり背が低いのよね。他人だと思わないのかしら」
「似ているのは髪だけですからねえ」
「髪は染められますから、今はお嬢様と同じ枯れ草色です。それがまた似合わないのなんのって」
私はあきらめた。今晩のパートナーは伯爵家の御曹司ロアン様。確かにロアン様にエスコートしてもらえれば、すべては解決すると思う。
「でも、お嬢様、よくロアン様を射止めましたね」
「えっ?」
「すごいことですわ。あの、皆様のあこがれのロアン様を」
「私は伯爵様のご意向だと聞いたのですけど」
侍女と女中頭は顔を見合わせた。
「「違います」」
二人は声をそろえた。
「伯爵様のご意向は知りませんが、どう見てもべたぼれじゃありませんか」
「はい?」
「だって、新しいドレスまで手配して、宝飾品もほら」
キティが指したネックレスには、キラキラするダイヤモンドが付いていた。超高そう。
「これを必ずつけるようにって」
「本気で?」
これは家宝クラスではないか? だが、二人はうなずいた。
「本気も本気。超本気がギラギラしてません?」
「で、こちらがドレス」
おおうっ。高そう。
一目でわかってしまった。これは有名な王都のドレスメーカーのもの。
派手ではないが、すばらしい。どう説明したらいいかわからないが、すごく素敵。
「急がせて作らせたそうですわ」
べたぼれ。
不意に私はヘンリー君を思い出した。あっちもべたぼれだろう。
こっちのべたぼれと、あっちのべたぼれ。
いずれも甲乙つけがたいが、財力的にこっちのべたぼれの圧勝みたいだけど。
突然のモテ期到来。
キティがクスッと笑った。
「いえ。ロアン様はずっと前からお嬢様の周りをウロウロされていましたよ?」
侍女の観察記?
「別にモレル伯爵様のお使いなんか他の者にやらせればいいんです。ロアン様がなさることはなかったのです」
そりゃそうだ。そのせいで、私はずっとロアン様のことを伯爵の秘書かなんかだと思っていた。
「あんまりしょっちゅう来られるので、ご主人様も苦笑いされていました」
あらら。お父様まで?
「包囲網ですわね」
二人の使用人は声高らかに笑いだした。
本人の私だけ、半信半疑で陰気臭く二人を見つめた。
ロアン様って、割と高慢だなと思っていたのだが、身分がわかると仕方ないなと気が付いた。
「でもね、私は平民です」
私は重要なことを指摘した。
「そうですね。だからご主人様も苦笑いするだけで何もなさらなかったのだと思います」
「お嬢様、今晩のところは、ロアン様のおっしゃる通り着飾ってパーティに出ましょう。それがお嬢様の身を守ることになりますわ」
女中頭のポーツマス夫人が真剣になって言った。
「ロアン様のご好意を使わせていただきましょう。今晩はジェローム様もダンスパーティにバーバラを連れて出ると大騒ぎしていました。婚約を公表するのだとおっしゃって、それに相応しい格好をと」
鉢合わせか。
「ジェローム様にはあのバーバラとか言う女が似合いですわ」
キティが憎々しげに言った。ポーツマス夫人も説明してくれた。
「二人のローズ様がご出席なされば、別人だとわかります。あのバーバラがローズ様だなんて、通用しません。会場の皆様だって、お嬢様の顔を知らない方ばかりではないですからね。ジェローム様はバリー商会の財産目当てなので、本物のローズ様に乗り換えたがるでしょうが、相手がロアン様では絶対に無理です。そう、絶対に」
ドアは閉まると、着付けを始めながら三人はごそごそしゃべり始めた。
「そんなにひどいの? そのバーバラ嬢って」
どんな女性なのかしら。気になるわ。
「ひどいですよ。平民丸出しというか。あまり学もないようで、エリザベス様がバカにしきって、ちょいちょい教養テストを仕掛けてくるので、嫌な顔をされています」
それはエリザベスの性格が悪いのでは。
「男爵夫人は生まれに嫌味を言いますし」
男爵夫人も性格が悪かったっけ。
「一番派手なのはリンダ嬢で、金切り声で大喧嘩をしています。自分が着たかったドレスを兄のジェローム様がバーバラ様用に取り上げられるので。そんな汚くて平凡な栗色の髪と目に着られたら、ドレスが泣くわとか、デブには似合わないとか」
デブと言う言葉に思わず反応した。
「彼女、私のドレスがはいるサイズなの?」
破れたりしたらどうしよう。
「いう程太っていません。背が低いので、入るには入ります。ただ引きずっています」
私は自分のドレスの無事を祈った。縫い目とか裂けてないといいなあ。
「ジェローム様には魂胆があるみたいです。このなりすまし結婚が成功すれば、バリー商会のすべてがジェローム様のものになると考えているようです。そうなればお屋敷内で一番力があるのはジェローム様になります。男爵はジェローム様の作戦に賛成しておられますね。お金を考えるとそれしかないのでしょう」
「でも、今の話だとバーバラ嬢は目の色も違うし、私よりかなり背が低いのよね。他人だと思わないのかしら」
「似ているのは髪だけですからねえ」
「髪は染められますから、今はお嬢様と同じ枯れ草色です。それがまた似合わないのなんのって」
私はあきらめた。今晩のパートナーは伯爵家の御曹司ロアン様。確かにロアン様にエスコートしてもらえれば、すべては解決すると思う。
「でも、お嬢様、よくロアン様を射止めましたね」
「えっ?」
「すごいことですわ。あの、皆様のあこがれのロアン様を」
「私は伯爵様のご意向だと聞いたのですけど」
侍女と女中頭は顔を見合わせた。
「「違います」」
二人は声をそろえた。
「伯爵様のご意向は知りませんが、どう見てもべたぼれじゃありませんか」
「はい?」
「だって、新しいドレスまで手配して、宝飾品もほら」
キティが指したネックレスには、キラキラするダイヤモンドが付いていた。超高そう。
「これを必ずつけるようにって」
「本気で?」
これは家宝クラスではないか? だが、二人はうなずいた。
「本気も本気。超本気がギラギラしてません?」
「で、こちらがドレス」
おおうっ。高そう。
一目でわかってしまった。これは有名な王都のドレスメーカーのもの。
派手ではないが、すばらしい。どう説明したらいいかわからないが、すごく素敵。
「急がせて作らせたそうですわ」
べたぼれ。
不意に私はヘンリー君を思い出した。あっちもべたぼれだろう。
こっちのべたぼれと、あっちのべたぼれ。
いずれも甲乙つけがたいが、財力的にこっちのべたぼれの圧勝みたいだけど。
突然のモテ期到来。
キティがクスッと笑った。
「いえ。ロアン様はずっと前からお嬢様の周りをウロウロされていましたよ?」
侍女の観察記?
「別にモレル伯爵様のお使いなんか他の者にやらせればいいんです。ロアン様がなさることはなかったのです」
そりゃそうだ。そのせいで、私はずっとロアン様のことを伯爵の秘書かなんかだと思っていた。
「あんまりしょっちゅう来られるので、ご主人様も苦笑いされていました」
あらら。お父様まで?
「包囲網ですわね」
二人の使用人は声高らかに笑いだした。
本人の私だけ、半信半疑で陰気臭く二人を見つめた。
ロアン様って、割と高慢だなと思っていたのだが、身分がわかると仕方ないなと気が付いた。
「でもね、私は平民です」
私は重要なことを指摘した。
「そうですね。だからご主人様も苦笑いするだけで何もなさらなかったのだと思います」
「お嬢様、今晩のところは、ロアン様のおっしゃる通り着飾ってパーティに出ましょう。それがお嬢様の身を守ることになりますわ」
女中頭のポーツマス夫人が真剣になって言った。
「ロアン様のご好意を使わせていただきましょう。今晩はジェローム様もダンスパーティにバーバラを連れて出ると大騒ぎしていました。婚約を公表するのだとおっしゃって、それに相応しい格好をと」
鉢合わせか。
「ジェローム様にはあのバーバラとか言う女が似合いですわ」
キティが憎々しげに言った。ポーツマス夫人も説明してくれた。
「二人のローズ様がご出席なされば、別人だとわかります。あのバーバラがローズ様だなんて、通用しません。会場の皆様だって、お嬢様の顔を知らない方ばかりではないですからね。ジェローム様はバリー商会の財産目当てなので、本物のローズ様に乗り換えたがるでしょうが、相手がロアン様では絶対に無理です。そう、絶対に」
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