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第32話 ロアン様の嘘物語
私、突然、貴族になってしまった?
「まあ、これまでも美貌の富豪の令嬢として、十分に尊重されて暮らしてきたと思うが、身分が追いついてきたわけだ。隣国王家からの好意もあるし、名実ともにこの国の社交界では花形になるだろう」
ロアン様はそう言ったが、なんだか喜んではいないらしい。
なんとなく表情が曇っていた。
「爵位はあった方がいいからね。伯爵令嬢ともなれば、より良い縁談が望めるだろう。きっと一緒に隣国へ行くように言われるだろう」
私は絶望的な顔になって、ロアン様を見つめた。
お店が遠くなっていく。
「あなたが遠くなって行く」
ロアン様が暗い調子で言った。
よく見ると、顔色が悪かった。それから、さっきから、あなた呼びになっている。
「今度ばかりは本当にモレル伯爵から言いつかった。あなたを警備するようにと」
ん? ちょっと待って。じゃあ、今までは警護しろとは言われてなかったってこと?
ロアン様はだんだんと打ちのめされたような顔つきになっていった。
「あなたを伯爵家の本邸へお連れするようにと言われていた」
なんですって?
「じゃあ、どうして今まではロアン様の別邸へ?」
いよいよ打ち萎れてロアン様は言った。
「だって、本邸は母上の目があるから」
なんだとぉ? どう言う意味だ?
「うまい具合に、ちょうど両親が留守だったので……俺の別邸に」
ええええ。何言い出すの!
「……でも、嫌われたくなくて」
はああ?
「あなたの両親が出かける前に、許しを願いに行ったんだ。伯爵をようやく説き伏せて、平民でも結婚を許してもらったところだった」
結婚?
「あなたが好きだった。必ず結婚しようと心に決めていた。式場の予約も候補日を押さえたし、ドレスは母上のドレスメーカーにお願いしたいと」
突然の告白……?
ちょっと待って! 本人は? 本人の意向は?
「相思相愛の二人だと両親を説き伏せた。だから、いいかなって」
誰と誰が相思相愛なの? 何言ってるの? いいかなって何がいいの? もしかして、私の勘、当たってた? ロアン様の方が、ジェロームより危険だったの?
「バリー商会は国内でも有数の大商会だ。その娘が伯爵家に嫁いだところで、ウチが金目当てと誹られるのが関の山で、羨ましがられるのがせいぜいだ」
勝手に話を進めないでください!
「だが、こうなってしまっては……」
ロアン様は、襲撃後の家に唯一残った私のイスに崩れるように座って頭を抱えた。
「あなたはきっと隣国に行くだろう。バリー商会は隣国にも支店がある。今度のことで、バリー商会の当主は裕福なだけではなく、立派な身分がついた。隣国王家と言うバックも付いた。大勢の貧しい人たちを助けたことで評判も爆上がりだ。それにあなたは美しい……」
え? わあ、褒められちゃった?
「俺だって、一目見た時からどうやって手に入れようか、毎晩考えた」
えっ? 一足飛びに今なんて言った?
ゾオオオ。誰か助けて。この人、変態です。
「こんなきれいな人を誰も捨ておかないだろう。きっと大勢の男たちが……」
バタンと音がして、急に外が騒がしくなった。
普段なら怯えるところだけど、今回ばかりは助かった。
変態とさし向かいはイヤ。
「ローズさん!」
ヘンリー君の声だった。
忘れてた。
ヘンリー君の真剣な求婚の最中だった。ほっぽらかして、出て行っちゃった。そのあと、忘れてた。いろいろあって。もうだいぶ経つ。
「ローズさん、無事ですか?」
ああ、この騎士様だけじゃなかった。
もう一人いたの忘れてたわ。
「まあ、これまでも美貌の富豪の令嬢として、十分に尊重されて暮らしてきたと思うが、身分が追いついてきたわけだ。隣国王家からの好意もあるし、名実ともにこの国の社交界では花形になるだろう」
ロアン様はそう言ったが、なんだか喜んではいないらしい。
なんとなく表情が曇っていた。
「爵位はあった方がいいからね。伯爵令嬢ともなれば、より良い縁談が望めるだろう。きっと一緒に隣国へ行くように言われるだろう」
私は絶望的な顔になって、ロアン様を見つめた。
お店が遠くなっていく。
「あなたが遠くなって行く」
ロアン様が暗い調子で言った。
よく見ると、顔色が悪かった。それから、さっきから、あなた呼びになっている。
「今度ばかりは本当にモレル伯爵から言いつかった。あなたを警備するようにと」
ん? ちょっと待って。じゃあ、今までは警護しろとは言われてなかったってこと?
ロアン様はだんだんと打ちのめされたような顔つきになっていった。
「あなたを伯爵家の本邸へお連れするようにと言われていた」
なんですって?
「じゃあ、どうして今まではロアン様の別邸へ?」
いよいよ打ち萎れてロアン様は言った。
「だって、本邸は母上の目があるから」
なんだとぉ? どう言う意味だ?
「うまい具合に、ちょうど両親が留守だったので……俺の別邸に」
ええええ。何言い出すの!
「……でも、嫌われたくなくて」
はああ?
「あなたの両親が出かける前に、許しを願いに行ったんだ。伯爵をようやく説き伏せて、平民でも結婚を許してもらったところだった」
結婚?
「あなたが好きだった。必ず結婚しようと心に決めていた。式場の予約も候補日を押さえたし、ドレスは母上のドレスメーカーにお願いしたいと」
突然の告白……?
ちょっと待って! 本人は? 本人の意向は?
「相思相愛の二人だと両親を説き伏せた。だから、いいかなって」
誰と誰が相思相愛なの? 何言ってるの? いいかなって何がいいの? もしかして、私の勘、当たってた? ロアン様の方が、ジェロームより危険だったの?
「バリー商会は国内でも有数の大商会だ。その娘が伯爵家に嫁いだところで、ウチが金目当てと誹られるのが関の山で、羨ましがられるのがせいぜいだ」
勝手に話を進めないでください!
「だが、こうなってしまっては……」
ロアン様は、襲撃後の家に唯一残った私のイスに崩れるように座って頭を抱えた。
「あなたはきっと隣国に行くだろう。バリー商会は隣国にも支店がある。今度のことで、バリー商会の当主は裕福なだけではなく、立派な身分がついた。隣国王家と言うバックも付いた。大勢の貧しい人たちを助けたことで評判も爆上がりだ。それにあなたは美しい……」
え? わあ、褒められちゃった?
「俺だって、一目見た時からどうやって手に入れようか、毎晩考えた」
えっ? 一足飛びに今なんて言った?
ゾオオオ。誰か助けて。この人、変態です。
「こんなきれいな人を誰も捨ておかないだろう。きっと大勢の男たちが……」
バタンと音がして、急に外が騒がしくなった。
普段なら怯えるところだけど、今回ばかりは助かった。
変態とさし向かいはイヤ。
「ローズさん!」
ヘンリー君の声だった。
忘れてた。
ヘンリー君の真剣な求婚の最中だった。ほっぽらかして、出て行っちゃった。そのあと、忘れてた。いろいろあって。もうだいぶ経つ。
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ああ、この騎士様だけじゃなかった。
もう一人いたの忘れてたわ。
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