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第38話 婚約クラッシャー・マイラ王女殿下
しかし問題は問題を呼ぶようで、翌日私は王家からのお手紙を頂戴した。
なぜ、王家からお手紙が私なんかに?
疑問だったが、内容を読み、さすがにこれには顔色が変わった。
両親とそれから伯爵様にも見ていただくことになった。
伯爵様は渋い男前で、髪は半白、スッと鼻筋の通った貴族らしい風貌の方だった。すてき。
伯爵は仔細に手紙を読んでため息をついた。
「マイラ王女がお忍びで遊びに来たいと」
「ここへですか? 田舎の平民の屋敷でございますよ」
母が顔色を変えて言った。
「まあ、アシュトン王子狙いではないかと思う」
伯爵が言い、情報通の父が言葉を添えた。
「マイラ王女殿下におかれましては、よき縁を求めておられるとの噂がございます」
聞けばマイラ王女様は只今二十一歳。なるほど婚活真っ最中のお年頃のはず。そして他国の王家の中でも、アシュトン王子の王家は金持ちで有名だ。
「でも、もしかすると、ロアン様狙いかもしれません」
母がぼそっと言った。
は?
「マイラ王女殿下の別名は婚約クラッシャーですしね」
なんですってええ?
横のキティがフッと笑った。
「ローズ様ったら……冷たくあしらってましたけど、その実……」
いや、そういう意味じゃないの。私は純粋に、これ以上の騒ぎが嫌なの。全然、市場に行けてないのよ。
私はアシュトン王子に帰国を促してみることにした。
マイラ王女の婚活会場なんか、ウチでなくてもいいと思う。大物ターゲットがいるからいけないのよ。
「ご両親がそろそろ心配なさるのでは? 船の事故から無事に生還することができたのですから……」
ほんの僅か匂わせても、敏感に反応するのが、この王子の長所というか短所というか。
「なに? 私を邪魔者扱いする気か」
なんで、そういう風に取るかな?
「私は、あと数か月はここにいようかと思っているんだ」
数ヶ月? 思わず気が遠くなりかけた。止めて。早く家に帰って。
殿下はおかしそうにクスッと笑った。
「嘘だよ。帰るよ。でも、ここは居心地がいいんだ。ローズもいるし、ローズは私にとって邪魔じゃない。結婚しようとも言わないし」
「平民なんだから当たり前です」
「よし。じゃ、加爵しよう」
加爵……そんな言葉あったっけ。叙爵かな?
「王家には使わなくなったタイトルがいっぱいあるんだ。女侯爵、これでどうだ。女公爵なら、私に結婚を申し込めるぞ」
誰が結婚を申し込みたいだなんて言いました? 私は殿下の悪い冗談は無視して、用件を伝えた。
「でも、我が国の第三王女のマイラ殿下がここへ静養に来たいとおっしゃっているんです。殿下がここにおられるからだと思いますの。婚活ではないかしら。女性に迫られるのは、お嫌だっておっしゃってたではありませんか」
「え? あのマイラ王女が?」
「今なら行き違いで帰ってしまわれましたで済みますわ」
せっかくお勧めしたのに殿下は私の方を向き直って、真剣になって言った。
「これから水虫の薬と鼻毛をフサフサにする薬を作る約束じゃないか」
「ですから、殿下、鼻毛をフサフサにする薬なんか何に使うのですか?」
王侯貴族ってめんどくさいなあ。一日中、ご機嫌伺いをしているようなものだ。ちっともグータラできない。
一日も早く帰って欲しくなってきた。
それなのにアシュトン殿下は、今度はマイラ王女に興味を持ってしまって、一目見てから帰るとか言い出したのだ。
「ねえねえ、聞いたよ。婚約クラッシャーだって?」
この上に評判の悪いマイラ王女だなんてやりきれない。王女殿下はいつ来るのだろう? 王女様の旅だ。歩みは鈍いだろう。
しかし意外にマイラ王女の到着は早かった。
なぜ、王家からお手紙が私なんかに?
疑問だったが、内容を読み、さすがにこれには顔色が変わった。
両親とそれから伯爵様にも見ていただくことになった。
伯爵様は渋い男前で、髪は半白、スッと鼻筋の通った貴族らしい風貌の方だった。すてき。
伯爵は仔細に手紙を読んでため息をついた。
「マイラ王女がお忍びで遊びに来たいと」
「ここへですか? 田舎の平民の屋敷でございますよ」
母が顔色を変えて言った。
「まあ、アシュトン王子狙いではないかと思う」
伯爵が言い、情報通の父が言葉を添えた。
「マイラ王女殿下におかれましては、よき縁を求めておられるとの噂がございます」
聞けばマイラ王女様は只今二十一歳。なるほど婚活真っ最中のお年頃のはず。そして他国の王家の中でも、アシュトン王子の王家は金持ちで有名だ。
「でも、もしかすると、ロアン様狙いかもしれません」
母がぼそっと言った。
は?
「マイラ王女殿下の別名は婚約クラッシャーですしね」
なんですってええ?
横のキティがフッと笑った。
「ローズ様ったら……冷たくあしらってましたけど、その実……」
いや、そういう意味じゃないの。私は純粋に、これ以上の騒ぎが嫌なの。全然、市場に行けてないのよ。
私はアシュトン王子に帰国を促してみることにした。
マイラ王女の婚活会場なんか、ウチでなくてもいいと思う。大物ターゲットがいるからいけないのよ。
「ご両親がそろそろ心配なさるのでは? 船の事故から無事に生還することができたのですから……」
ほんの僅か匂わせても、敏感に反応するのが、この王子の長所というか短所というか。
「なに? 私を邪魔者扱いする気か」
なんで、そういう風に取るかな?
「私は、あと数か月はここにいようかと思っているんだ」
数ヶ月? 思わず気が遠くなりかけた。止めて。早く家に帰って。
殿下はおかしそうにクスッと笑った。
「嘘だよ。帰るよ。でも、ここは居心地がいいんだ。ローズもいるし、ローズは私にとって邪魔じゃない。結婚しようとも言わないし」
「平民なんだから当たり前です」
「よし。じゃ、加爵しよう」
加爵……そんな言葉あったっけ。叙爵かな?
「王家には使わなくなったタイトルがいっぱいあるんだ。女侯爵、これでどうだ。女公爵なら、私に結婚を申し込めるぞ」
誰が結婚を申し込みたいだなんて言いました? 私は殿下の悪い冗談は無視して、用件を伝えた。
「でも、我が国の第三王女のマイラ殿下がここへ静養に来たいとおっしゃっているんです。殿下がここにおられるからだと思いますの。婚活ではないかしら。女性に迫られるのは、お嫌だっておっしゃってたではありませんか」
「え? あのマイラ王女が?」
「今なら行き違いで帰ってしまわれましたで済みますわ」
せっかくお勧めしたのに殿下は私の方を向き直って、真剣になって言った。
「これから水虫の薬と鼻毛をフサフサにする薬を作る約束じゃないか」
「ですから、殿下、鼻毛をフサフサにする薬なんか何に使うのですか?」
王侯貴族ってめんどくさいなあ。一日中、ご機嫌伺いをしているようなものだ。ちっともグータラできない。
一日も早く帰って欲しくなってきた。
それなのにアシュトン殿下は、今度はマイラ王女に興味を持ってしまって、一目見てから帰るとか言い出したのだ。
「ねえねえ、聞いたよ。婚約クラッシャーだって?」
この上に評判の悪いマイラ王女だなんてやりきれない。王女殿下はいつ来るのだろう? 王女様の旅だ。歩みは鈍いだろう。
しかし意外にマイラ王女の到着は早かった。
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