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第45話 計画的犯行過ぎる
食堂は両親がそろって満面の笑みだった。
「?」
「あの王子、王女がいなくなってくれて本当に良かった」
あ、そっちの話。
「それにアシュトン王子のせいで、無事の帰宅を喜びたかったのに出来なかった。本当だったら大パーティーでも開きたいところだったのに」
「そうよ。私たちもあなたが大変だったことを帰り道にドネルからの手紙で知って、怒り心頭でしたよ」
ああ。その通りだわ。
「普通なら家出なんか推奨しないけど、いい判断だった。ジェロームのヤツめ」
父は相当怒っているらしかった。
「ローズは心配しなくていいのよ? お父様が帰ってこられた以上、ジェロームにはふさわしい罰を受けてもらいますからね」
母がとても優しく言った。
父の手元にある書物の題は、『リンチ大全』だった。よく見ると副題がついていた。『法に触れず相手を死に至らしめる方法から嫌がらせまで』
見なかったことにしよう。
「アシュトン王子は、あんなことがあったのだから、いったん王宮に帰って無事な姿をご両親に見せてあげなさいと勧めたんだが……」
父がちょっと渋い顔で言い出した。
「ちょうどドネルからの手紙を私たちが読んでいるのを、アシュトン王子が見てしまってね。王子の暗殺計画とか危険な内容ではないことをわかってもらうために見せたんだ」
余計なことを。
「ところが王子はザマァ小説の愛読家でね」
どうして、そんなところに話が飛ぶ?
「ザマァ小説とは、勧善懲悪物語なのだ」
父が説明してくれたが違和感ありまくりだった。
「私も王子に勧められて読んだけど、まあ……」
父は言葉を濁したが、母は愛読者になったそうである。
「あなた、ザマァ小説の理解が間違ってますわ……ザマァ小説というのは……」
父は母をさえぎって言った。
「それで王子は現場を確認したいって、ついてきちゃったんだよ」
そのせいで、私はバリー男爵の顔を見に行かなきゃならなくなったのか。
「邪魔者はいなくなったし、うちわで盛大な帰還パーティーをしたいわ」
母が言い出した。
気持ちはわかります。私もそんな気分です。家族でお祝いパーティーですね。
「バリー家の当主は健在だと知らしめるためにもね」
母が付け加えた。
ん? ちょっと規模が大きくなったかな?
「伯爵様もお招きして……」
「ロアン様とローズの婚約披露を、当家も行わないと行けないからな」
えっ?
「今朝、ロアン様が来られて手筈を整えていかれた」
えっ? げっ?
「式は来月。新居はロアン様がお住まいの伯爵家の別邸。何度か泊まったことがあるそうだな? ローズ」
「勝手知ったる屋敷ですから、心やすいと思いますと言ってらしたわ」
母がホホホと笑った。なんか誤解してる?
「大評判を呼んだ小さな薬草店を経営していたそうだな、ローズ」
今度は父が真剣な表情になって言い出した。
「結婚すれば伯爵夫人だが、薬作りは素晴らしい事業で伯爵家にとっても名誉となるでしょうと、ロアン様は言っておられた。医者にかかれない貧しい人々を救う道になると」
私は今度、火傷に効き目があった塗り薬を高級お肌用クリームとして、富裕層向けに超高値で売る計画を練っていたんですけども? 貧乏人?
「続けてよいと寛容だった」
「ロアン様は、二年も前から婚約を申し込んで来られてたので」
「二年前?」
私、十三歳とか十四歳だったのでは?
「冗談かと思ってたけど、本気だったのねえ。ホホホホ」
なにそれ怖い。すごく怖い。
「さあ、忙しくなるぞ! 先ずはパーティーだ。表向きは帰還パーティーだが、婚約披露も兼ねている。式までの間が短いからな。早くしないと。ロアン様は、式は明日で、婚約式はその後でもいいと言っておられたが、段取りが悪いから」
頭がついていかなかった。その婚約式は意味があるのかしら。
母が笑いながら言った。
「今日から、ロアン様のお家へ引っ越すことであなたと話が決まってると言われたのよ。でも、朝ごはんが済んでからにしてくださいって、頼んだの。それでもいいわよね? ローズ」
「?」
「あの王子、王女がいなくなってくれて本当に良かった」
あ、そっちの話。
「それにアシュトン王子のせいで、無事の帰宅を喜びたかったのに出来なかった。本当だったら大パーティーでも開きたいところだったのに」
「そうよ。私たちもあなたが大変だったことを帰り道にドネルからの手紙で知って、怒り心頭でしたよ」
ああ。その通りだわ。
「普通なら家出なんか推奨しないけど、いい判断だった。ジェロームのヤツめ」
父は相当怒っているらしかった。
「ローズは心配しなくていいのよ? お父様が帰ってこられた以上、ジェロームにはふさわしい罰を受けてもらいますからね」
母がとても優しく言った。
父の手元にある書物の題は、『リンチ大全』だった。よく見ると副題がついていた。『法に触れず相手を死に至らしめる方法から嫌がらせまで』
見なかったことにしよう。
「アシュトン王子は、あんなことがあったのだから、いったん王宮に帰って無事な姿をご両親に見せてあげなさいと勧めたんだが……」
父がちょっと渋い顔で言い出した。
「ちょうどドネルからの手紙を私たちが読んでいるのを、アシュトン王子が見てしまってね。王子の暗殺計画とか危険な内容ではないことをわかってもらうために見せたんだ」
余計なことを。
「ところが王子はザマァ小説の愛読家でね」
どうして、そんなところに話が飛ぶ?
「ザマァ小説とは、勧善懲悪物語なのだ」
父が説明してくれたが違和感ありまくりだった。
「私も王子に勧められて読んだけど、まあ……」
父は言葉を濁したが、母は愛読者になったそうである。
「あなた、ザマァ小説の理解が間違ってますわ……ザマァ小説というのは……」
父は母をさえぎって言った。
「それで王子は現場を確認したいって、ついてきちゃったんだよ」
そのせいで、私はバリー男爵の顔を見に行かなきゃならなくなったのか。
「邪魔者はいなくなったし、うちわで盛大な帰還パーティーをしたいわ」
母が言い出した。
気持ちはわかります。私もそんな気分です。家族でお祝いパーティーですね。
「バリー家の当主は健在だと知らしめるためにもね」
母が付け加えた。
ん? ちょっと規模が大きくなったかな?
「伯爵様もお招きして……」
「ロアン様とローズの婚約披露を、当家も行わないと行けないからな」
えっ?
「今朝、ロアン様が来られて手筈を整えていかれた」
えっ? げっ?
「式は来月。新居はロアン様がお住まいの伯爵家の別邸。何度か泊まったことがあるそうだな? ローズ」
「勝手知ったる屋敷ですから、心やすいと思いますと言ってらしたわ」
母がホホホと笑った。なんか誤解してる?
「大評判を呼んだ小さな薬草店を経営していたそうだな、ローズ」
今度は父が真剣な表情になって言い出した。
「結婚すれば伯爵夫人だが、薬作りは素晴らしい事業で伯爵家にとっても名誉となるでしょうと、ロアン様は言っておられた。医者にかかれない貧しい人々を救う道になると」
私は今度、火傷に効き目があった塗り薬を高級お肌用クリームとして、富裕層向けに超高値で売る計画を練っていたんですけども? 貧乏人?
「続けてよいと寛容だった」
「ロアン様は、二年も前から婚約を申し込んで来られてたので」
「二年前?」
私、十三歳とか十四歳だったのでは?
「冗談かと思ってたけど、本気だったのねえ。ホホホホ」
なにそれ怖い。すごく怖い。
「さあ、忙しくなるぞ! 先ずはパーティーだ。表向きは帰還パーティーだが、婚約披露も兼ねている。式までの間が短いからな。早くしないと。ロアン様は、式は明日で、婚約式はその後でもいいと言っておられたが、段取りが悪いから」
頭がついていかなかった。その婚約式は意味があるのかしら。
母が笑いながら言った。
「今日から、ロアン様のお家へ引っ越すことであなたと話が決まってると言われたのよ。でも、朝ごはんが済んでからにしてくださいって、頼んだの。それでもいいわよね? ローズ」
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