【完結】町のはずれで小さなお店を。

buchi

文字の大きさ
45 / 47

第45話 計画的犯行過ぎる

食堂は両親がそろって満面の笑みだった。

「?」

「あの王子、王女がいなくなってくれて本当に良かった」

あ、そっちの話。

「それにアシュトン王子のせいで、無事の帰宅を喜びたかったのに出来なかった。本当だったら大パーティーでも開きたいところだったのに」

「そうよ。私たちもあなたが大変だったことを帰り道にドネルからの手紙で知って、怒り心頭でしたよ」

ああ。その通りだわ。

「普通なら家出なんか推奨しないけど、いい判断だった。ジェロームのヤツめ」

父は相当怒っているらしかった。

「ローズは心配しなくていいのよ? お父様が帰ってこられた以上、ジェロームにはふさわしい罰を受けてもらいますからね」

母がとても優しく言った。

父の手元にある書物のタイトルは、『リンチ大全』だった。よく見ると副題がついていた。『法に触れず相手を死に至らしめる方法から嫌がらせまで』

見なかったことにしよう。

「アシュトン王子は、あんなことがあったのだから、いったん王宮に帰って無事な姿をご両親に見せてあげなさいと勧めたんだが……」

父がちょっと渋い顔で言い出した。

「ちょうどドネルからの手紙を私たちが読んでいるのを、アシュトン王子が見てしまってね。王子の暗殺計画とか危険な内容ではないことをわかってもらうために見せたんだ」

余計なことを。

「ところが王子はザマァ小説の愛読家でね」

どうして、そんなところに話が飛ぶ?

「ザマァ小説とは、勧善懲悪物語なのだ」

父が説明してくれたが違和感ありまくりだった。

「私も王子に勧められて読んだけど、まあ……」

父は言葉を濁したが、母は愛読者になったそうである。

「あなた、ザマァ小説の理解が間違ってますわ……ザマァ小説というのは……」

父は母をさえぎって言った。

「それで王子は現場を確認したいって、ついてきちゃったんだよ」

そのせいで、私はバリー男爵の顔を見に行かなきゃならなくなったのか。

「邪魔者はいなくなったし、うちわで盛大な帰還パーティーをしたいわ」

母が言い出した。

気持ちはわかります。私もそんな気分です。家族でお祝いパーティーですね。

「バリー家の当主は健在だと知らしめるためにもね」

母が付け加えた。

ん? ちょっと規模が大きくなったかな?

「伯爵様もお招きして……」

「ロアン様とローズの婚約披露を、当家も行わないと行けないからな」

えっ?

「今朝、ロアン様が来られて手筈を整えていかれた」

えっ? げっ?

「式は来月。新居はロアン様がお住まいの伯爵家の別邸。何度か泊まったことがあるそうだな? ローズ」

「勝手知ったる屋敷ですから、心やすいと思いますと言ってらしたわ」

母がホホホと笑った。なんか誤解してる?

「大評判を呼んだ小さな薬草店を経営していたそうだな、ローズ」

今度は父が真剣な表情になって言い出した。

「結婚すれば伯爵夫人だが、薬作りは素晴らしい事業で伯爵家にとっても名誉となるでしょうと、ロアン様は言っておられた。医者にかかれない貧しい人々を救う道になると」

私は今度、火傷に効き目があった塗り薬を高級お肌用クリームとして、富裕層向けに超高値で売る計画を練っていたんですけども? 貧乏人?

「続けてよいと寛容だった」

「ロアン様は、二年も前から婚約を申し込んで来られてたので」

「二年前?」

私、十三歳とか十四歳だったのでは?

「冗談かと思ってたけど、本気だったのねえ。ホホホホ」

なにそれ怖い。すごく怖い。

「さあ、忙しくなるぞ! 先ずはパーティーだ。表向きは帰還パーティーだが、婚約披露も兼ねている。式までの間が短いからな。早くしないと。ロアン様は、式は明日で、婚約式はその後でもいいと言っておられたが、段取りが悪いから」

頭がついていかなかった。その婚約式は意味があるのかしら。

母が笑いながら言った。

「今日から、ロアン様のお家へ引っ越すことであなたと話が決まってると言われたのよ。でも、朝ごはんが済んでからにしてくださいって、頼んだの。それでもいいわよね? ローズ」






感想 7

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

【完結】帳簿係の地味令嬢、商会の不正を見抜いて王宮に見出されました。

夏灯みかん
恋愛
王都の商工会議所で働く、地味な帳簿係エミリー。 真面目に記録をつけることだけが取り柄の彼女は、同僚から軽く扱われ、雑用を押しつけられる日々を送っていた。 そんなある日――エミリーは、孤児院への配給物資の記録に、わずかな“ズレ”があることに気づく。 数量は合っている。 だが、なぜか中身の重量だけが減っている。 違和感を覚えたエミリーは、自ら倉庫へ足を運び、現物を確認する。 そこで見つけたのは、帳簿では見えない“静かな不正”だった。 しかしその矢先――不正の責任を押しつけられ、職場から追い出されそうになってしまう。 それでもエミリーは諦めない。ただ一つ、自分が積み上げてきた“記録”を信じて。 「では、正式な監査をお願いいたします」 やがてその記録は、王宮の政務監査官リオンの目に留まり―― 隠されていた不正はすべて暴かれる。 そして、彼女を軽んじていた者たちは、その代償を支払うことになる。 これは、地味で目立たなかった一人の帳簿係が、 “正しく記録した”ことで不正を暴き、王宮に見出されるまでの物語。

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

死ぬまでに叶えたい十の願い

木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」 三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。 離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する—— 二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

成功条件は、まさかの婚約破棄!?

たぬきち25番
恋愛
「アリエッタ、あなたとの婚約を破棄する……」 王太子のアルベルト殿下は、そう告げた。 王妃教育に懸命に取り組んでいたアリエッタだったが、 それを聞いた彼女は……? ※他サイト様にも公開始めました!