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第8話 グロリア、登場
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アーノルド様は、私の顔の表情を読んで、ゆっくりと言った。
「そうだよね。あなたがそんなこと、言うはずないもの」
「どうして、そんなことに……」
「社交界のお誘い、一切を若い娘が断るだなんておかしい。みんながそう思っていた。特にあなたのことを知っている人たちはね」
「お誘いは一つももらっていませんわ。自分の妹を褒めるのはおかしいでしょうけれど、どんな殿方も、できることなら明るくて美しいグロリアとお知り合いになりたがるものでしょう? 当然、グロリアの方をお誘いになると義母が言っておりましたわ」
アーノルド様は、ちょっと妙な具合に唇を歪めて笑った。
「そうとばかりは限らないと思うよ。たとえば、この僕なんかね?」
「え?」
だって、グロリアは、アーノルド様は、私よりグロリアのことが気に入って非常な関心を寄せているって聞いたばかりなんですけど。
そういうと、アーノルド様は、突然、額の毛の生え際まで真っ赤になった。
アーノルド様、結構、怒りんぼなのよ……。子どもの時と一緒ね。
「僕はあなたのことが知りたかったんだよ。なんでこんなことになっているのか」
「あの……私については何もお尋ねにならないってグロリアは言っていましたけど」
「そりゃそうさ。あなたのことを聞いたら、変人のブス姉ですか?掃除をさせていますけど、それさえ満足にできないんですよって言われたんだ。あなたが掃除をするはずがないだろ? 満足にできるわけもない。した事ないんだから」
ご令嬢に掃除をさせるだなんて、確かにおかしいのだけど、洗濯よりマシだと思う。手荒れしない。
「でも、最近は多少は上手くなったと義母に褒められましたわ」
「一体、あなたのところの義母は……」
そう言いかけた時、パタパタと足音がして、華やかなピンクの衣装に身を包んだ女性が走ってやってきた。
「アーノルド様あ」
どう見てもグロリアだった。
しかし、私は凍りついた。
無作法この上ない。
ましてやここはバーガンディ家のパーティ。他人の家である。
父が、グロリアは招ばれていないと言っていたような気がする。大丈夫かしら……というか、絶対に大丈夫ではないわ。
私を突き飛ばしそうな勢いで、グロリアはアーノルド様に抱きつこうとしたが、アーノルド様がすっと身を引いたので、転びかけた。
「どうなさいました、ダラム嬢」
氷のように冷え冷えとした声で、傍のアーノルド様が聞いた。
グロリアは明るい調子で話しかけた。
「お姉様とご一緒だなんて、さぞご退屈でしたでしょう? 話題の選び方も話し方も、なってませんものね」
チラとアーノルド様のお友達と目が合った。
みんな、注視していた。
グロリアは、にっこりと彼らに向かって微笑んであいさつした。
「あら、ジョンがいたわ」
ジョン……と言うのが誰だかわからなかったが、声をかけられた男性が足早にやってきた。
グロリアは、元気よくその男の方に向かって歩き出した。
ジョンとグロリアから少し離れたところに座ったまま、アーノルド様が私にだけ聞こえるような小さな声で言った。
「ジョン・スタンレーは、商家の息子だ。今日は父親の仕事の関係で参加している。遊び人だと噂らしいけど……」
「そうだよね。あなたがそんなこと、言うはずないもの」
「どうして、そんなことに……」
「社交界のお誘い、一切を若い娘が断るだなんておかしい。みんながそう思っていた。特にあなたのことを知っている人たちはね」
「お誘いは一つももらっていませんわ。自分の妹を褒めるのはおかしいでしょうけれど、どんな殿方も、できることなら明るくて美しいグロリアとお知り合いになりたがるものでしょう? 当然、グロリアの方をお誘いになると義母が言っておりましたわ」
アーノルド様は、ちょっと妙な具合に唇を歪めて笑った。
「そうとばかりは限らないと思うよ。たとえば、この僕なんかね?」
「え?」
だって、グロリアは、アーノルド様は、私よりグロリアのことが気に入って非常な関心を寄せているって聞いたばかりなんですけど。
そういうと、アーノルド様は、突然、額の毛の生え際まで真っ赤になった。
アーノルド様、結構、怒りんぼなのよ……。子どもの時と一緒ね。
「僕はあなたのことが知りたかったんだよ。なんでこんなことになっているのか」
「あの……私については何もお尋ねにならないってグロリアは言っていましたけど」
「そりゃそうさ。あなたのことを聞いたら、変人のブス姉ですか?掃除をさせていますけど、それさえ満足にできないんですよって言われたんだ。あなたが掃除をするはずがないだろ? 満足にできるわけもない。した事ないんだから」
ご令嬢に掃除をさせるだなんて、確かにおかしいのだけど、洗濯よりマシだと思う。手荒れしない。
「でも、最近は多少は上手くなったと義母に褒められましたわ」
「一体、あなたのところの義母は……」
そう言いかけた時、パタパタと足音がして、華やかなピンクの衣装に身を包んだ女性が走ってやってきた。
「アーノルド様あ」
どう見てもグロリアだった。
しかし、私は凍りついた。
無作法この上ない。
ましてやここはバーガンディ家のパーティ。他人の家である。
父が、グロリアは招ばれていないと言っていたような気がする。大丈夫かしら……というか、絶対に大丈夫ではないわ。
私を突き飛ばしそうな勢いで、グロリアはアーノルド様に抱きつこうとしたが、アーノルド様がすっと身を引いたので、転びかけた。
「どうなさいました、ダラム嬢」
氷のように冷え冷えとした声で、傍のアーノルド様が聞いた。
グロリアは明るい調子で話しかけた。
「お姉様とご一緒だなんて、さぞご退屈でしたでしょう? 話題の選び方も話し方も、なってませんものね」
チラとアーノルド様のお友達と目が合った。
みんな、注視していた。
グロリアは、にっこりと彼らに向かって微笑んであいさつした。
「あら、ジョンがいたわ」
ジョン……と言うのが誰だかわからなかったが、声をかけられた男性が足早にやってきた。
グロリアは、元気よくその男の方に向かって歩き出した。
ジョンとグロリアから少し離れたところに座ったまま、アーノルド様が私にだけ聞こえるような小さな声で言った。
「ジョン・スタンレーは、商家の息子だ。今日は父親の仕事の関係で参加している。遊び人だと噂らしいけど……」
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