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婚約者と結婚したいだけなのに
結婚は秒読みになり、国中がこのロマンチックな純愛物語を祝福した。
しかしながら、王宮内では深刻な問題が勃発していた。
「結婚したいわけではないと」
眉間のしわを深くしながら、王妃様がマリゴールド嬢に尋ねた。
「エドワード殿下、王妃様、この度は誠にありがとうございました」
マリゴールド嬢はお礼を言った。
「あのまま、屋敷に閉じ込められていたら、私は死んでいたと思います」
王妃様は深刻な顔をした。
「叔母と料理人の女は、食事を減らしてきました。私がダイエットに励んでいて、頑として食事を受け付けないとほかの使用人には言いふらしていました。きっと、行き過ぎたダイエットで死ぬか、弱ったところに無理をさせて体調を悪くさせて爵位を継ぐのにふさわしくないと言いふらすつもりだったのでしょう」
あまりにも偽伯爵夫人とその手下の料理人の供述と合致していて、王妃様は絶句した。
なかなかどうして読みが深い。
「あの屋敷から出られさえすれば、私は安全でした。エドワード殿下のおかげです」
「でも、結婚したくないのね?」
「ええと……」
給餌のためにスプーンとフォークを持って待機していた殿下は、悲しそうな顔になった。
「殿下におかれましては、婚約時代、一度もお話をしたこともございませんでしたし」
デートに誘わなかった殿下が悪い。
「お手紙をいただいたこともございません」
返事を書かなかった殿下が悪い。
「私が婚約者ではご不満なのかなと」
「そんなことはない!」
殿下が大声で叫んだ。
「ますますかわいくて仕方ない! 毛艶もぐっとよくなったし、肉付きもよくなった。まだまだ太らせたいとは思うけど。お風呂に入れるのをまだ許してくれないけど」
何かこう、気まずい雰囲気が漂った。
「水浴びは嫌いかなあ? 嫌いな子は多いよね。仕方ないかな?」
殿下は一生懸命フォローに回った。なんのフォローかわからない。
だが。
そのあと、エドワード王子殿下は、王妃様と二人残されて、差し向いで散々説教された。
それから王都の中でも一番汚くて一番痩せていて一番お腹を減らしている子猫を与えられた。
しかし……
世の中は思うようにはならないものである。
殿下は子猫には見向きもしなかったのである。
遠慮するマリゴールド嬢を追い回し、王妃様直属の有能侍女軍団直々に教えを乞い、側近ともども英才教育を受けた。
猫の飼い方ではない。女性の懐け方をである。
殿下は成績は良かった。呑み込みは速い。
「相手の気持ちになってあげることが大事です」
王子殿下と側近たちはペンを握り締めて一生懸命ノートを取った。
「よいですか? 付けさせたい首輪ではなく! 似合いそうな首飾りでもなく! マリゴールド嬢が好きそうなものを贈るのです。わかりましたか?」
殿下は渋々本を二冊、『昆虫類大全』と『領地経営の今後の展開~土地活用のあるべき姿』を買って贈った。
『欲しかった本をありがとうございます。昆虫類大全は毎晩楽しみで枕の下に置いて寝ています。エドワード様ありがとう』
お礼状が来た。
「僕はマリゴールド嬢をより一層美しくするものを送りたかったのに」
エドワードとマリゴールド、この組み合わせはこれでいいのか、さすがの侍女軍団も悩み始めたが、とりあえず励ました。
「ご結婚なされば、好きなように飾れますよ」
「そうだねっ」
殿下は目をキラッとさせてうなずいた。
__________
なんかヤベェこいつ
しかしながら、王宮内では深刻な問題が勃発していた。
「結婚したいわけではないと」
眉間のしわを深くしながら、王妃様がマリゴールド嬢に尋ねた。
「エドワード殿下、王妃様、この度は誠にありがとうございました」
マリゴールド嬢はお礼を言った。
「あのまま、屋敷に閉じ込められていたら、私は死んでいたと思います」
王妃様は深刻な顔をした。
「叔母と料理人の女は、食事を減らしてきました。私がダイエットに励んでいて、頑として食事を受け付けないとほかの使用人には言いふらしていました。きっと、行き過ぎたダイエットで死ぬか、弱ったところに無理をさせて体調を悪くさせて爵位を継ぐのにふさわしくないと言いふらすつもりだったのでしょう」
あまりにも偽伯爵夫人とその手下の料理人の供述と合致していて、王妃様は絶句した。
なかなかどうして読みが深い。
「あの屋敷から出られさえすれば、私は安全でした。エドワード殿下のおかげです」
「でも、結婚したくないのね?」
「ええと……」
給餌のためにスプーンとフォークを持って待機していた殿下は、悲しそうな顔になった。
「殿下におかれましては、婚約時代、一度もお話をしたこともございませんでしたし」
デートに誘わなかった殿下が悪い。
「お手紙をいただいたこともございません」
返事を書かなかった殿下が悪い。
「私が婚約者ではご不満なのかなと」
「そんなことはない!」
殿下が大声で叫んだ。
「ますますかわいくて仕方ない! 毛艶もぐっとよくなったし、肉付きもよくなった。まだまだ太らせたいとは思うけど。お風呂に入れるのをまだ許してくれないけど」
何かこう、気まずい雰囲気が漂った。
「水浴びは嫌いかなあ? 嫌いな子は多いよね。仕方ないかな?」
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だが。
そのあと、エドワード王子殿下は、王妃様と二人残されて、差し向いで散々説教された。
それから王都の中でも一番汚くて一番痩せていて一番お腹を減らしている子猫を与えられた。
しかし……
世の中は思うようにはならないものである。
殿下は子猫には見向きもしなかったのである。
遠慮するマリゴールド嬢を追い回し、王妃様直属の有能侍女軍団直々に教えを乞い、側近ともども英才教育を受けた。
猫の飼い方ではない。女性の懐け方をである。
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「相手の気持ちになってあげることが大事です」
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「よいですか? 付けさせたい首輪ではなく! 似合いそうな首飾りでもなく! マリゴールド嬢が好きそうなものを贈るのです。わかりましたか?」
殿下は渋々本を二冊、『昆虫類大全』と『領地経営の今後の展開~土地活用のあるべき姿』を買って贈った。
『欲しかった本をありがとうございます。昆虫類大全は毎晩楽しみで枕の下に置いて寝ています。エドワード様ありがとう』
お礼状が来た。
「僕はマリゴールド嬢をより一層美しくするものを送りたかったのに」
エドワードとマリゴールド、この組み合わせはこれでいいのか、さすがの侍女軍団も悩み始めたが、とりあえず励ました。
「ご結婚なされば、好きなように飾れますよ」
「そうだねっ」
殿下は目をキラッとさせてうなずいた。
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