婚約者の王子は正面突破する~関心がなかった婚約者に、ある日突然執着し始める残念王子の話

buchi

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有能侍女頭のメモシリーズ

 マリゴールド嬢の抵抗などものともせず、軽々と抱き上げた殿下は、寝室のドアを乱暴に足で開けた途端、鍵穴にたかって中の話を盗み聞きしようとしていた執事と女中頭をころばしてしまった。

 だが、そこは王子様。他人の家の使用人でも遠慮なくこき使う。
 執事に向かって命令した。

「馬車の用意を」

 うん。マリゴールド嬢、確かに太った。抱いたまま歩いて王宮に連れ帰るのは、今回は無理かな?
 それに今回は背中に背負うのではなくて、お姫様抱っこだしね。

「王宮に花嫁を連れ帰る」

「かしこまりました!」

 婿入りするはずの第三王子殿下のお言葉だったが、誰も逆らわず、執事の声が響いた。

「今すぐ、馬車の用意を!」

「ねえ、マリゴールド嬢。馬車の窓も扉もキッチリ閉まるから僕は嬉しいよ」

 耳もとで殿下がささやく。

 え? なんで?

「君の愛らしさに僕はメロメロだ。髪の毛一筋までくまなくお手入れして、かわいがってあげるよ。だから早く結婚しようね。その日が楽しみだ」



 第三王子殿下とマリゴールド嬢の結婚は、王妃様と王妃様の侍女頭の懸念をよそにつつがなく行われ、結婚生活も少なくとも王子殿下はこの上なく満足そうだった。膝の上に座らせたがり、毛並みをナデナデするのが大好きだった。

 ゴチャゴチャ構われ過ぎると、思わずイラッとして三日くらいしらんぷりされて、わかりやすく落ち込む殿下。

 遂に見かねた王妃様の侍女頭がメモを伝授してくれた。

 適当で切り上げる。
 しつこく誘わない。
 猫が要求してきたらいつでも相手する。
 最後は必ず満足させる。

「ほおぉ……」

 なんだか気になる一文字があるが、これは名言な気がする。
 実際、非常に効果的であった。そして二人は大勢の子どもに恵まれ、幸せな一生を送りましたとさ。


---おしまい---




 ところで……

 偽伯爵の方は、それまでに使い込んだ費用を、宝石店や衣装屋から厳しく取り立てられることになった。

 マリゴールド嬢へ食事を与えなかった偽伯爵夫人と料理番の女は、殺人未遂罪が適用された。牢屋行きである。

 エレンとアメリアの娘たち二人は、呼ばれてもいないお茶会に出席したり、勝手に伯爵家の娘を名乗ったり、落ち着きなく知らない令息の顔に見とれたりをやらかしたが、罪には問われなかった。しかし、誰よりも悪評を買ったのはこの偽伯爵家の娘たちだった。

「いけ図々しい」

 身の程知らずとか厚かましいとか言う時の形容詞として「偽伯爵家の娘みたい」と言う新語が生まれたくらいだった。

 偽伯爵一家のご機嫌を取り、マリゴールド嬢に冷たく当たった使用人たちは解雇された。
 偽伯爵を本当の雇い主だと思い込んだ件はやむを得ないにしても、マリゴールド嬢が弱って行く様を見て、気の毒に思うどころか弱い者いじめに平気で加担していたことを世間に知られると彼らはどこにも雇ってもらえなくなってしまった。


「全員が全員、私を虐めようとしたわけではないのですよ」

 王子夫人のマリゴールドは思慮深い人だった。

「世評に流されて、何もしていないのに罵倒され雇ってもらえず、生活に困っている人もいますわ」

「あなたを助けなかったと言われているのだが」

「私と同じく当時は偽伯爵夫妻に逆らう力がなかったのです」

 そういった人たちをマリゴールド夫人は助けようとした。

「どうしようかな」

 殿下は、王妃様の有能侍女頭からもらったメモの続きをこっそり確認した。
 
 基本好きにさせておく
 束縛しない
 放し飼いにしない(外に出さない)
 ただし刺激不足にならないよう運動に注意する

「刺激的な運動をと言うことだな」

 殿下は一番下の項目に何度目かのアンダーラインを引いたが、愛する夫人に向かって

「あなたの好きにすればよい」

とにっこり笑った。




***「子ネコ拾った」系ネコ動画見過ぎ


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