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第26話 アレクの囲い込み作戦
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翌日、アレクが不遜な微笑みを浮かべながら、珍しく食堂に現れた。
その姿を目の端で捉えたローザは、そぉっと腰を浮かせた。
「あ、いけません。アレク様、ローザ嬢に気づかれました」
「おかしいな? いつもなら、絶賛ぼんやり中なのに」
「うーむ。あの魔道具のせいではありませんか? ぼんやりを吹き払うとか言う」
「ああ、あれか」
見ているうちに、そそくさとローザは食堂を出て行ってしまった。
「普通になって、逆に手強くなりましたね」
「おもしろくないな」
「まあ、アレク様が、意味ありげにウロチョロしているだけでも、本人には伝わるからいいんじゃないでしょうか」
「伝わるって何が?」
「一人じゃないってことですよ。抱えきれなくなって、友達とかに秘密をしゃべって歩かれるのが一番困るので。こうやって、我々が姿を見せておけば、どうしてもって時は相談しに来ると思います」
「どうしてもって時まで待たねばならんのか」
アレクは残念だった。
「アレク様、どうしてもって事態は起こさなくていいですからね。安全第一、平穏第一です」
アレクは、はなはだ不満だったが、話題を変えた。
「叔父上は何をしている?」
「ローゼンマイヤー先生と、例の本を解読しています。あと瓶のラベルも」
「なあ、エドワード、お前は何も知らないのか?」
エドワードは首を振った。
「アレク様、私には魔法力はないのですよ。何も感じ取れない」
アレクは少しもどかしそうに側近を見つめた。
優秀な側近が、この面では彼の役に立たない。
「アレク様ほどの魔法力の持ち主はこの世に一人もいないのです。ローゼンマイヤー先生も叔父様も、あなたの力にははるかに及ばない」
「だが、叔父上は……」
「あの方は、確かに魔法力は強くはないが、研究熱心です。生涯を魔力の研究に捧げたと言っても過言ではないでしょう。この頃の動きはなにか目的があるのでしょう」
「その目的って……どうして私には教えてくれないんだ」
「役者はそろったとかレオ殿下はおっしゃっていましたから、じきに教えてもらえるのでしょう」
「なあ、エドワード、知ってるんなら……」
側近のエドワードはまぶしいものでも見るような目つきでアレクを見た。
「本当に知らないのです。それに、私にはわからない」
「わからないだと?」
アレクは気色ばんだ。
「アレク様、それは、持つ者と持たない者の差です。圧倒的なまでの違いです。私にはなんの力もないのです」
アレクは気が付いていない。
彼が当然のものとして受け入れている魔法力は、唯一無二のもの。
それゆえに誰にも理解されない。
完全な孤独なのだ。
それはローザも同じだった。きっと、誰にも理解してもらえない。アレク殿下と違って、魔法に詳しい叔父がいるわけでもない。
エドワードは、だからローザの孤独を心配したのだ。
一方で、アレクがぐいぐいローザに惹かれていく様子を見ていて、ちょっと怖かった。
レオ殿下やローゼンマイヤー先生が言うとおりの魔法力をローザ嬢が本当に持っていたら、アレク殿下はどうするのだろう。二人の力が合わされば?
いや、そんな先のことまで考えても仕方がない。
「さあ、次は歴史です。国史の時間です。自覚を持ちましょう、アレク様」
エドワードは、ローザの教室へ行く方法を考えているらしいアレク殿下を、授業を受けさせるために問答無用で引きずって行きながら言った。
その姿を目の端で捉えたローザは、そぉっと腰を浮かせた。
「あ、いけません。アレク様、ローザ嬢に気づかれました」
「おかしいな? いつもなら、絶賛ぼんやり中なのに」
「うーむ。あの魔道具のせいではありませんか? ぼんやりを吹き払うとか言う」
「ああ、あれか」
見ているうちに、そそくさとローザは食堂を出て行ってしまった。
「普通になって、逆に手強くなりましたね」
「おもしろくないな」
「まあ、アレク様が、意味ありげにウロチョロしているだけでも、本人には伝わるからいいんじゃないでしょうか」
「伝わるって何が?」
「一人じゃないってことですよ。抱えきれなくなって、友達とかに秘密をしゃべって歩かれるのが一番困るので。こうやって、我々が姿を見せておけば、どうしてもって時は相談しに来ると思います」
「どうしてもって時まで待たねばならんのか」
アレクは残念だった。
「アレク様、どうしてもって事態は起こさなくていいですからね。安全第一、平穏第一です」
アレクは、はなはだ不満だったが、話題を変えた。
「叔父上は何をしている?」
「ローゼンマイヤー先生と、例の本を解読しています。あと瓶のラベルも」
「なあ、エドワード、お前は何も知らないのか?」
エドワードは首を振った。
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「アレク様ほどの魔法力の持ち主はこの世に一人もいないのです。ローゼンマイヤー先生も叔父様も、あなたの力にははるかに及ばない」
「だが、叔父上は……」
「あの方は、確かに魔法力は強くはないが、研究熱心です。生涯を魔力の研究に捧げたと言っても過言ではないでしょう。この頃の動きはなにか目的があるのでしょう」
「その目的って……どうして私には教えてくれないんだ」
「役者はそろったとかレオ殿下はおっしゃっていましたから、じきに教えてもらえるのでしょう」
「なあ、エドワード、知ってるんなら……」
側近のエドワードはまぶしいものでも見るような目つきでアレクを見た。
「本当に知らないのです。それに、私にはわからない」
「わからないだと?」
アレクは気色ばんだ。
「アレク様、それは、持つ者と持たない者の差です。圧倒的なまでの違いです。私にはなんの力もないのです」
アレクは気が付いていない。
彼が当然のものとして受け入れている魔法力は、唯一無二のもの。
それゆえに誰にも理解されない。
完全な孤独なのだ。
それはローザも同じだった。きっと、誰にも理解してもらえない。アレク殿下と違って、魔法に詳しい叔父がいるわけでもない。
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一方で、アレクがぐいぐいローザに惹かれていく様子を見ていて、ちょっと怖かった。
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いや、そんな先のことまで考えても仕方がない。
「さあ、次は歴史です。国史の時間です。自覚を持ちましょう、アレク様」
エドワードは、ローザの教室へ行く方法を考えているらしいアレク殿下を、授業を受けさせるために問答無用で引きずって行きながら言った。
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