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第25話 親善パーティのエスコートの申し出
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アレクは失敗したことに気が付いた。
「ハハハ……」
エドワードが突然、不自然な笑い声を出した。
「今となっては、全く不必要な空騒ぎだったと思うのですが、ええと、お近づきになりたかったのです。魔法力をこっそり調べろと、そう、レオ殿下から言われまして。結局、レオ殿下がご自分であなたを呼び出して調べられましたので、そんな必要はなくなったのですが。で、部屋番号を調べて、それで……」
「菓子を贈った」
何か地獄の底から響いてくるような声でアレクがついに自白した。
「あ、あら。それは、申し訳ないことを。お礼も申し上げずに」
ローザはむちゃくちゃに焦った。なんだかアレクの様子が変だったからだ。
お菓子をもらっておいてお礼を言わないだなんて礼儀知らずだからローザが悪い……のかもしれなかったが、名前が書かれていなかったのでお礼の伝えようがなかったのだ。だから、私、悪くなくない?……と思ったが、アレクは機嫌悪そうだ。
「いいんだ」
「とても、おいしゅうございました。気の利いたことをなさる方がいらっしゃるものねと皆々感心しておりましたのよ?」
アレクを持ち上げてみた。
「ケネスの仕業だと思われて、ケネスの株をあげただけで終わってしまった」
「申し訳ございませんでした。殿下からのプレゼントとわかっていれば……」
わかっていれば……どうしたんだろう?
「どうせ、俺なんか、無視されて終わりだから」
「もう、殿下が付き合ったらいいんじゃありませんか?」
エドワードが割り込んだ。
「「え?」」
「臣下の娘がほかならぬ殿下に熱を上げるのは、まあ、ありうる話です。何しろ、殿下は麗しいご容貌の持ち主、一種のファン行動とみなされるでしょう」
「なるほど」
殿下は我が意を得たりと言わんばかりにうなずいた。
いえ、私は殿下のファンではありませんし、と言いかけたが、エドワードにぎろりとにらまれて、黙れと言う意味なのだなとローザは悟って黙った。
「それに、殿下が少々ローザ嬢に甘い顔をしても、これだけ美人なら不自然ではありません。浮気と言うより、殿下の鷹揚さを示すだけで終わるでしょう。それにレミントン伯爵家なら、お相手が殿下とあらば事情を話せば大目に見てくれると思います。婚約者がいるのなら、殿下ならとにかく、ただの側近の私と付き合ったら余計もめます」
「そうか」
「いや、ちょっと、それは……」
それは怖すぎる。ローザはあわてて、待ったをかけた。
「私では不満か?」
ローザは焦った。
「いや、その、そうではなくて……」
殿下が、急にニコッと笑ってうなずいた。
ええと、その意味ではなくて!
勘違いさせてしまった。不満じゃないとかではなくて、もっと重大な問題があるのだ。
「それをしますと、他のご令嬢たちからのやきもちとか悪口とか……」
「それは王太子の相手を務める以上、仕方あるまい」
アレクは満足げだった。
「ほんと、それは困るんです。エドワード様、ものすごい事態が予想されるのですが」
エドワードは優雅に微笑んだ。
「じゃあ、まあ、一人で頑張りますか」
「それで結構です。アレク様と付き合ったりしようものなら、生きた心地がしませんので」
生きた心地がしないと言われて、アレクはちょっとムッとした様子だったが、すぐに何か思いついたらしくスマートに微笑んだ。
「わかった。じゃあ、親善パーティの時、エスコートさせていただこう」
ローザは耳を疑った。違うでしょ? エスコートなんかされたら、地獄を見るわ! 話が逆! 逆!
「アレク様、今の話、ちゃんと聞いていましたか?」
ローザはわめいた。
「付き合わなくていいんです。それで済むんです。これ以上波風立てないで」
「招待状を送ろう。逃げられると思うなよ」
「ちょっと、エドワード様! エスコートなどと大それたことは……」
ローザは良識派のエドワードにすがったが、エドワードは殿下の忠実な側近なので知らん顔をしていた。
殿下のご希望である。逆らうと面倒くさい。
だんだん、そんな気がしてきた。
なんか、どうしても関係を持ちたいらしい。だんだん殿下の話の脈絡がわからなくなってきた。
「さあ、もう、女子寮に着いた」
アレクはご機嫌だった。
「話は決まった。こんな事情では、秘密を守るために孤独な令嬢をお守りするのもやむを得ない。叔父上も父上も認めてくださるだろう。エスコートくらい、仕方ない。やってやろう」
どんな事情? エスコートしなきゃいけない事情なんてなかったでしょう?
「ちょっと! アレク様!」
やらなくていいから! 今の話のどこをどう押すと、その結論になると言うの?
ローザはアレクに向かって怒鳴った。礼儀もへったくれもない。楽しい学園生活が絶体絶命の危機だ。
「まあまあ」
エドワードが近付いてきて小声で言った。
「早めにドレスの発注をかけてください。難しいようなら、こちらで手配します」
「パーティーには欠席と、すでに回答していますのよ?」
エドワード様まで一体なんなの!?
「こちらで撤回の手続きを取っておきます」
「やめてください! ダンスは踊れないのよ」
「おや、踊るつもりだったのですか。では、殿下にお伝えしなければ」
エドワードはどこ吹く風と言った様子で、受け流した。事態悪化だ。
「やーめーてー」
ローザは叫んだ。
「ハハハ……」
エドワードが突然、不自然な笑い声を出した。
「今となっては、全く不必要な空騒ぎだったと思うのですが、ええと、お近づきになりたかったのです。魔法力をこっそり調べろと、そう、レオ殿下から言われまして。結局、レオ殿下がご自分であなたを呼び出して調べられましたので、そんな必要はなくなったのですが。で、部屋番号を調べて、それで……」
「菓子を贈った」
何か地獄の底から響いてくるような声でアレクがついに自白した。
「あ、あら。それは、申し訳ないことを。お礼も申し上げずに」
ローザはむちゃくちゃに焦った。なんだかアレクの様子が変だったからだ。
お菓子をもらっておいてお礼を言わないだなんて礼儀知らずだからローザが悪い……のかもしれなかったが、名前が書かれていなかったのでお礼の伝えようがなかったのだ。だから、私、悪くなくない?……と思ったが、アレクは機嫌悪そうだ。
「いいんだ」
「とても、おいしゅうございました。気の利いたことをなさる方がいらっしゃるものねと皆々感心しておりましたのよ?」
アレクを持ち上げてみた。
「ケネスの仕業だと思われて、ケネスの株をあげただけで終わってしまった」
「申し訳ございませんでした。殿下からのプレゼントとわかっていれば……」
わかっていれば……どうしたんだろう?
「どうせ、俺なんか、無視されて終わりだから」
「もう、殿下が付き合ったらいいんじゃありませんか?」
エドワードが割り込んだ。
「「え?」」
「臣下の娘がほかならぬ殿下に熱を上げるのは、まあ、ありうる話です。何しろ、殿下は麗しいご容貌の持ち主、一種のファン行動とみなされるでしょう」
「なるほど」
殿下は我が意を得たりと言わんばかりにうなずいた。
いえ、私は殿下のファンではありませんし、と言いかけたが、エドワードにぎろりとにらまれて、黙れと言う意味なのだなとローザは悟って黙った。
「それに、殿下が少々ローザ嬢に甘い顔をしても、これだけ美人なら不自然ではありません。浮気と言うより、殿下の鷹揚さを示すだけで終わるでしょう。それにレミントン伯爵家なら、お相手が殿下とあらば事情を話せば大目に見てくれると思います。婚約者がいるのなら、殿下ならとにかく、ただの側近の私と付き合ったら余計もめます」
「そうか」
「いや、ちょっと、それは……」
それは怖すぎる。ローザはあわてて、待ったをかけた。
「私では不満か?」
ローザは焦った。
「いや、その、そうではなくて……」
殿下が、急にニコッと笑ってうなずいた。
ええと、その意味ではなくて!
勘違いさせてしまった。不満じゃないとかではなくて、もっと重大な問題があるのだ。
「それをしますと、他のご令嬢たちからのやきもちとか悪口とか……」
「それは王太子の相手を務める以上、仕方あるまい」
アレクは満足げだった。
「ほんと、それは困るんです。エドワード様、ものすごい事態が予想されるのですが」
エドワードは優雅に微笑んだ。
「じゃあ、まあ、一人で頑張りますか」
「それで結構です。アレク様と付き合ったりしようものなら、生きた心地がしませんので」
生きた心地がしないと言われて、アレクはちょっとムッとした様子だったが、すぐに何か思いついたらしくスマートに微笑んだ。
「わかった。じゃあ、親善パーティの時、エスコートさせていただこう」
ローザは耳を疑った。違うでしょ? エスコートなんかされたら、地獄を見るわ! 話が逆! 逆!
「アレク様、今の話、ちゃんと聞いていましたか?」
ローザはわめいた。
「付き合わなくていいんです。それで済むんです。これ以上波風立てないで」
「招待状を送ろう。逃げられると思うなよ」
「ちょっと、エドワード様! エスコートなどと大それたことは……」
ローザは良識派のエドワードにすがったが、エドワードは殿下の忠実な側近なので知らん顔をしていた。
殿下のご希望である。逆らうと面倒くさい。
だんだん、そんな気がしてきた。
なんか、どうしても関係を持ちたいらしい。だんだん殿下の話の脈絡がわからなくなってきた。
「さあ、もう、女子寮に着いた」
アレクはご機嫌だった。
「話は決まった。こんな事情では、秘密を守るために孤独な令嬢をお守りするのもやむを得ない。叔父上も父上も認めてくださるだろう。エスコートくらい、仕方ない。やってやろう」
どんな事情? エスコートしなきゃいけない事情なんてなかったでしょう?
「ちょっと! アレク様!」
やらなくていいから! 今の話のどこをどう押すと、その結論になると言うの?
ローザはアレクに向かって怒鳴った。礼儀もへったくれもない。楽しい学園生活が絶体絶命の危機だ。
「まあまあ」
エドワードが近付いてきて小声で言った。
「早めにドレスの発注をかけてください。難しいようなら、こちらで手配します」
「パーティーには欠席と、すでに回答していますのよ?」
エドワード様まで一体なんなの!?
「こちらで撤回の手続きを取っておきます」
「やめてください! ダンスは踊れないのよ」
「おや、踊るつもりだったのですか。では、殿下にお伝えしなければ」
エドワードはどこ吹く風と言った様子で、受け流した。事態悪化だ。
「やーめーてー」
ローザは叫んだ。
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