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第3話 クリスの意見
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なんてヤローだ、あの王太子。
姉様はのんきすぎる。もっと怒るべきだ。ボーム侯爵だと? 覚えておこう。俺の敵に回ると言うなら、そのつもりでいるがいい。
そしてあの王太子は失礼だ。
まあいい。姉様の値打ちがわからないだなんて、そんなヤツと結婚したら、姉様が不幸になる。
俺が学園を卒業したら、時間に余裕ができる。
そしたら、領地の経営だのなんだのは全部俺が切り回すことができる。
金も、もう少し余裕ができるだろう。そうすれば、姉様にもっと贅沢がさせられる。
姉様は、いつだって、俺のことばっかり優先するんだ。
姉様は全然興味なさげだが、もっと似合うドレスを仕立てれば、あの突き当たっていったブスの侯爵令嬢なんか相手にもならない。
僕の姉様が着飾って現れたら、宮廷中が驚き、迷うだろう。姉様の美しさに。その時のことを思うと、ゾクゾクする。
身内の身びいきだなんてクソ叔父は思ってるらしいが、違うな。
学園でも、姉様の名前を出すと、どいつもこいつも物欲しそうな目になる。
「紹介してもらうわけには……いかないな。いや、何でもない。フィリップ殿下の婚約者だったね」
一応、こういうバカの名前と言われた日付と内容はメモに取って置くことにしている。危険人物だ。
だいぶん長いリストが出来つつある。要注意だ。
大体、クソ叔父のバカ息子も、要注意だ。
目つきが悪すぎる。
姉様ときたら、まるで何にも気がついてないみたいだ。
天使みたいに純真なんだから、困ったものだ。
絹のようなほわほわの輝く金の巻毛に、夢見るような青い目、陶器の人形のように整った小さな顔立ちと、うっかりしたら壊れそうな細い体つきなのだ。
俺だけが知ってるのだが、あれで歌わせると天使のような歌声だ。
もう、なんていうか、天使中の天使って言うか。
したがって、大体、婚約とか間違ってる。
両親が亡くなった時、王家から丁重に援助の申し出があったが、もちろん断った。
公爵家の財産に手を突っ込まれてはたまらない。
一国の王妃も、まあ、名前としては悪くないかもしれないが、苦労する可能性を思うと、俺の目の届く範囲の、誠実で、そこそこ名のある貴族の嫡子と結婚してもらった方がいい。
とっとと王太子との婚約なんぞ破棄してもらいたいものだ。
俺は反対だったんだ。
だが、十歳そこそこの俺の意見は無視されてしまった。
何しろ、姉様は人がいい。というより、自分のことを忘れている。
俺のこととなると途端に、嘘みたいに頭が回転し始めるんだが、自分のことになるとまるでダメだ。
「クリス、怖い顔」
姉様が馬車の中でのんきに笑う。天使が笑っている。
「私のことはいいのよ。あなたは、きっと学園で人気だと思うわ。とてもきれいな顔をしているのですもの。せっかく夜会に来たのだから、他のお嬢さんたちと踊ってくればよかったのに。私は一人でも帰れますもの」
何考えてんだろう。俺は今夜は姉様の護衛ですよ。変な男が寄って来ないように、そばで見張るために用事もない夜会なんかに来てるんですよ。
「姉様、僕は姉様のそばがいいの。姉様が心配なの」
ちょっと甘えてみた。
姉様はにっこりして、頭を撫でようとして、全然背が届かなくなっていることに気付いて、また笑った。
いいな。姉様はいつだって優しい。それにきれいだ。
「まあ、何言ってるのかしら。名ばかりだけど、一応、殿下の婚約者なんだから誰も寄ってきませんよ」
「だって、さっきボーム伯爵令嬢がぶつかってきました。女性の方が怖いですね」
あのクソ女。俺がもっと力を付けたら覚えておけよ。
姉様はのんきすぎる。もっと怒るべきだ。ボーム侯爵だと? 覚えておこう。俺の敵に回ると言うなら、そのつもりでいるがいい。
そしてあの王太子は失礼だ。
まあいい。姉様の値打ちがわからないだなんて、そんなヤツと結婚したら、姉様が不幸になる。
俺が学園を卒業したら、時間に余裕ができる。
そしたら、領地の経営だのなんだのは全部俺が切り回すことができる。
金も、もう少し余裕ができるだろう。そうすれば、姉様にもっと贅沢がさせられる。
姉様は、いつだって、俺のことばっかり優先するんだ。
姉様は全然興味なさげだが、もっと似合うドレスを仕立てれば、あの突き当たっていったブスの侯爵令嬢なんか相手にもならない。
僕の姉様が着飾って現れたら、宮廷中が驚き、迷うだろう。姉様の美しさに。その時のことを思うと、ゾクゾクする。
身内の身びいきだなんてクソ叔父は思ってるらしいが、違うな。
学園でも、姉様の名前を出すと、どいつもこいつも物欲しそうな目になる。
「紹介してもらうわけには……いかないな。いや、何でもない。フィリップ殿下の婚約者だったね」
一応、こういうバカの名前と言われた日付と内容はメモに取って置くことにしている。危険人物だ。
だいぶん長いリストが出来つつある。要注意だ。
大体、クソ叔父のバカ息子も、要注意だ。
目つきが悪すぎる。
姉様ときたら、まるで何にも気がついてないみたいだ。
天使みたいに純真なんだから、困ったものだ。
絹のようなほわほわの輝く金の巻毛に、夢見るような青い目、陶器の人形のように整った小さな顔立ちと、うっかりしたら壊れそうな細い体つきなのだ。
俺だけが知ってるのだが、あれで歌わせると天使のような歌声だ。
もう、なんていうか、天使中の天使って言うか。
したがって、大体、婚約とか間違ってる。
両親が亡くなった時、王家から丁重に援助の申し出があったが、もちろん断った。
公爵家の財産に手を突っ込まれてはたまらない。
一国の王妃も、まあ、名前としては悪くないかもしれないが、苦労する可能性を思うと、俺の目の届く範囲の、誠実で、そこそこ名のある貴族の嫡子と結婚してもらった方がいい。
とっとと王太子との婚約なんぞ破棄してもらいたいものだ。
俺は反対だったんだ。
だが、十歳そこそこの俺の意見は無視されてしまった。
何しろ、姉様は人がいい。というより、自分のことを忘れている。
俺のこととなると途端に、嘘みたいに頭が回転し始めるんだが、自分のことになるとまるでダメだ。
「クリス、怖い顔」
姉様が馬車の中でのんきに笑う。天使が笑っている。
「私のことはいいのよ。あなたは、きっと学園で人気だと思うわ。とてもきれいな顔をしているのですもの。せっかく夜会に来たのだから、他のお嬢さんたちと踊ってくればよかったのに。私は一人でも帰れますもの」
何考えてんだろう。俺は今夜は姉様の護衛ですよ。変な男が寄って来ないように、そばで見張るために用事もない夜会なんかに来てるんですよ。
「姉様、僕は姉様のそばがいいの。姉様が心配なの」
ちょっと甘えてみた。
姉様はにっこりして、頭を撫でようとして、全然背が届かなくなっていることに気付いて、また笑った。
いいな。姉様はいつだって優しい。それにきれいだ。
「まあ、何言ってるのかしら。名ばかりだけど、一応、殿下の婚約者なんだから誰も寄ってきませんよ」
「だって、さっきボーム伯爵令嬢がぶつかってきました。女性の方が怖いですね」
あのクソ女。俺がもっと力を付けたら覚えておけよ。
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