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第25話 知らなかった危機
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亡命して来た隣国の第三王子リオネール殿下の求婚は、その場にいなかった人々の間にも瞬く間に広がり、取り返しのつかないことになった。
「うん。全然、取り返しがつかないだろう」
リオンは、気に入りの(姉の家の)ソファーにゴロゴロしながら、嬉しそうに言った。
「別に二人だけの時に、言ってくれてもよかったのよ?」
周り中から、視線を浴びて、私は恥ずかしくて顔から火が出る思いだった。
本当は、リオンが膝をつき、私の手を取った時は、嬉しくてふわっと心が浮き立ったけど。
「あー、よかった。これで話は早く進む。誰も僕の本気を疑わないからね」
は?
言われて私は初めて気づいた。
あれで、にらみつけてきてた令嬢方は完全に出番なしになってしまった。
あんな王家の正式なパーティでの公開プロポーズを、なかったことにするのは至難の業だ。
「国王がらみで、別な令嬢を真実の愛の相手にすげかえられたら困るからね。もう、大丈夫」
そうなのか。
王家の息子は言うことが違う。
そう言うこともあり得るのね。考えたことがなかったけど。
それで、あんなに派手に、みんなの前でプロポーズして見せたのか。
カザリンは、恐喝の道具として利用されるだけ利用されたが、結局、裁判は取り下げになった。したがって、お金はもらえなかった。
「証言の報酬金を当てにして、あちこちに借金したらしい。やることが、ほんとにダメだな」
ソファの上でダラダラしながら、リオンが言った。
「ねえ。トマシン」
アイスブルーの目がこっちを見つめた。
「わかってた?」
「え? 何を?」
「真実の愛を貫くことを、国王は快く認めてくれたけど、その相手は変えられるってこと」
「え?」
真実の愛って、決まった相手がいるからこそ、真実の愛なんじゃないの?
リオンは首を振った。
「国王にとって、僕の真実の愛は、隣国の第三王子を人質に取るための、体のいいただの口実。だから、相手はこの国の大公爵の娘の方が都合がいい」
はうあっ。
考えてもいなかったわ!
王子と伯爵家の娘とでは、それこそ身分違いだわっ。
「そ、そうよね、そうよね。申し訳ない。今からでも……」
「この国の王女では逆に都合が悪い。隣国への野心が透けて見えすぎる。隣国からのとばっちりも怖い。だが、王家の傍系の公爵家なら、持ってこいだ。隣国に何かあった時、この国の王家が隣国を乗っ取れるし、王女と違い、万一の時、切り捨てても非難されない」
私が口をあんぐり開けていると、リオンはうなずいた。
「でもね、僕はね、それはどうでもいいんだ」
「どうでもいい……それなら、公爵家の令嬢と結婚した方が、お金もあるし地位も高いし、王家のバックアップもあって、何かと楽で有利なんじゃない?」
「そしたら、君はどうなるの?」
「私っ?」
私は、自分のことは考えてなかった。
リオンが優しく微笑んだ。
「そう言うとこだよ……僕が好きなのは」
私はどうとでもなる。多分。
だけど、リオンは私なんかと結婚したら、とても不利。それに不安定。
「今からでも、もっと別な令嬢を……」
「君が好きだ」
リオンは身軽にソファから起き上がって、私に向き直った。
「誰にも聞かせたくない君への想いを、あんなどうでもいい連中に聞かせたのも、君を確実に手にするためだ」
それから、彼はそっと耳にキスした。そして、耳元で囁いた。
「真実の愛……それはあるんだよ。こんなふうに」
彼はもう一度キスした。
今度は唇に。
溶けてしまいそう。
「こぉーらぁ! そこぉ!」
姉の声が響いた。
「なに、いちゃついてるの!」
ガタガタと音がして、子どもの声が響いた。
「あっ、リオン様とトマシン叔母様、なにしてるの? キスしてるの?」
「聞いたよ、公開プロポーズしたんだって?」
姉の一家が、ドヤドヤとやって来た。
義兄のジョージが笑いを含みながら言った。
「もう、殿下がトマシンを連れていくのを止めないよ。チャールストン卿も、陛下が、諦めて、笑って許してくれたと言っている」
「あの話、なくなったんですね」
ジョージ義兄様がうなずいた。
「打診前に、ああも派手にやらかすとね。公爵家令嬢も遠慮するんじゃないかな?」
「うん。全然、取り返しがつかないだろう」
リオンは、気に入りの(姉の家の)ソファーにゴロゴロしながら、嬉しそうに言った。
「別に二人だけの時に、言ってくれてもよかったのよ?」
周り中から、視線を浴びて、私は恥ずかしくて顔から火が出る思いだった。
本当は、リオンが膝をつき、私の手を取った時は、嬉しくてふわっと心が浮き立ったけど。
「あー、よかった。これで話は早く進む。誰も僕の本気を疑わないからね」
は?
言われて私は初めて気づいた。
あれで、にらみつけてきてた令嬢方は完全に出番なしになってしまった。
あんな王家の正式なパーティでの公開プロポーズを、なかったことにするのは至難の業だ。
「国王がらみで、別な令嬢を真実の愛の相手にすげかえられたら困るからね。もう、大丈夫」
そうなのか。
王家の息子は言うことが違う。
そう言うこともあり得るのね。考えたことがなかったけど。
それで、あんなに派手に、みんなの前でプロポーズして見せたのか。
カザリンは、恐喝の道具として利用されるだけ利用されたが、結局、裁判は取り下げになった。したがって、お金はもらえなかった。
「証言の報酬金を当てにして、あちこちに借金したらしい。やることが、ほんとにダメだな」
ソファの上でダラダラしながら、リオンが言った。
「ねえ。トマシン」
アイスブルーの目がこっちを見つめた。
「わかってた?」
「え? 何を?」
「真実の愛を貫くことを、国王は快く認めてくれたけど、その相手は変えられるってこと」
「え?」
真実の愛って、決まった相手がいるからこそ、真実の愛なんじゃないの?
リオンは首を振った。
「国王にとって、僕の真実の愛は、隣国の第三王子を人質に取るための、体のいいただの口実。だから、相手はこの国の大公爵の娘の方が都合がいい」
はうあっ。
考えてもいなかったわ!
王子と伯爵家の娘とでは、それこそ身分違いだわっ。
「そ、そうよね、そうよね。申し訳ない。今からでも……」
「この国の王女では逆に都合が悪い。隣国への野心が透けて見えすぎる。隣国からのとばっちりも怖い。だが、王家の傍系の公爵家なら、持ってこいだ。隣国に何かあった時、この国の王家が隣国を乗っ取れるし、王女と違い、万一の時、切り捨てても非難されない」
私が口をあんぐり開けていると、リオンはうなずいた。
「でもね、僕はね、それはどうでもいいんだ」
「どうでもいい……それなら、公爵家の令嬢と結婚した方が、お金もあるし地位も高いし、王家のバックアップもあって、何かと楽で有利なんじゃない?」
「そしたら、君はどうなるの?」
「私っ?」
私は、自分のことは考えてなかった。
リオンが優しく微笑んだ。
「そう言うとこだよ……僕が好きなのは」
私はどうとでもなる。多分。
だけど、リオンは私なんかと結婚したら、とても不利。それに不安定。
「今からでも、もっと別な令嬢を……」
「君が好きだ」
リオンは身軽にソファから起き上がって、私に向き直った。
「誰にも聞かせたくない君への想いを、あんなどうでもいい連中に聞かせたのも、君を確実に手にするためだ」
それから、彼はそっと耳にキスした。そして、耳元で囁いた。
「真実の愛……それはあるんだよ。こんなふうに」
彼はもう一度キスした。
今度は唇に。
溶けてしまいそう。
「こぉーらぁ! そこぉ!」
姉の声が響いた。
「なに、いちゃついてるの!」
ガタガタと音がして、子どもの声が響いた。
「あっ、リオン様とトマシン叔母様、なにしてるの? キスしてるの?」
「聞いたよ、公開プロポーズしたんだって?」
姉の一家が、ドヤドヤとやって来た。
義兄のジョージが笑いを含みながら言った。
「もう、殿下がトマシンを連れていくのを止めないよ。チャールストン卿も、陛下が、諦めて、笑って許してくれたと言っている」
「あの話、なくなったんですね」
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