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第12話 アーネスティン様からの提案
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そんなわけで、家の状況はある程度よくなった。
義母と義姉たちが、私から少し距離を置いてくれるようになったので、楽になった。
そのほかに家庭教師が新たに雇い入れられ、義姉たちの勉強を見ることになった。
ただし、この費用はセバスに拒絶された。
「侯爵令嬢の費用を伯爵家で負担するのは少々問題がございまして」
義母はむっとした。
「エレクトラ様がご一緒に教わるのなら、よろしいのではございませんか?」
セバスが提案した。
「エレクトラ様のついでと言うことで」
「ついでとは何です。それにエレクトラは学年が下です。そんな低レベルなことを教えに来ている家庭教師ではありません」
家庭教師なんか本気でいらないし、義姉たちのレベルに合わせてもらうと、成績が落ちそうよ。
セバスはうまいことを言う。私のついでなんて、義母のプライドが絶対に許さない。
知らないふりしているだけで、執事は大抵のことを把握している。
「嫌がらせかもしれないわね」
アーネスティン様に、家での出来事を話すとほんのりと微笑んだ。そして言った。
「最悪、あなたは私の侍女とか秘書になればいいのではなくて?」
私はものすごく驚いた。
「王弟殿下のお屋敷に?」
「そうではなくて、モントローズ公爵のお屋敷に」
アーネスティン様がほんのり桜色に頰を染めた。
これまで婚約者のモントローズ公爵の話はあまりしなかったけど、婚約者のことは大事に思っていらっしゃるのね。
「恐れ多いです」
「そんなことはありません。あなたなら王家に仕えてもおかしくはないでしょう。でも、王家はなかなか大変です。それに比べてモントローズ家は小さいので楽だと思うわ」
小さいと言う規模ではない。
王都にも大きな城があったし、領地の城は名建築として有名だった。領地は工業が盛んな場所にあり、港を擁していたから、羊がメエメエ鳴いて草がぼうぼう生えているるような場所が領地の家とは段違いの収入がある。
「あなたのお話だと、好きでもないうえに貧乏な人と無理やり結婚させられそうだと言うじゃない。それなら私の家に来たらいい。私もあなたが来てくれたら心強いわ」
貴族の女が働くことは容易ではない。
働くなんてこと、考えていなかったが、アーネスティン様は穏やかで賢明な方だ。モントローズ家はすごい家である。公爵家のくせに大金持ちだった。名前は公爵家でも、しょっぱい地代だけでやり繰りに苦労しているような家とは違う。
「よろしくお願いします」
私が即座に覚悟を決めて、頭を下げた。
義母がこの調子で妨害し続けるなら、ロクな結婚話は来ないと思う。
有利な話は、絶対義姉に回される気がする。
義姉がうまくいかなければ、腹いせに結婚話なんか潰されるだろう。
結婚がダメでも生きていける。安心した。
アーネスティン様は心配そうに言った。
「違うのよ。一生、私についてきてと言っているのではないの。あなたなら、どこのお家へでも結婚できると思うの。母に相談してみますわ。もし、生家を離れて働いても、モントローズ公爵家ならキズにはならないと思うの。働くと言っても、私の話し相手みたいなものだけど、その間に良いご縁があれば、結婚出来ると思うわ」
そうか。アーネスティン様は、侍女になってあの家を離れろと言ってくださっているのだ。伯爵家の娘が侍女になるだなんて、使用人に身を落としたように見えるだろう。だが、王家に匹敵しそうなくらいの家格のモントローズ家ならそうならない。
「卒業するまでは、伯爵家にいないといけません。家を出る理由がありませんからね。でも、卒業したら、家から出てはどうかしら?」
持つべきものは良き友。アーネスティン様にしかできない離れ業だが、私の結婚先の心配までしてくださっている。
次からはご主人さまと呼ばなくては。アーネスティン様なら、お仕えし甲斐があると言うものだわ。
「私、頑張りますわ。成績を良くしないといけませんわね」
「今のままで、十分よ、エレクトラ」
アーネスティン様は笑っておっしゃった。
義母と義姉たちが、私から少し距離を置いてくれるようになったので、楽になった。
そのほかに家庭教師が新たに雇い入れられ、義姉たちの勉強を見ることになった。
ただし、この費用はセバスに拒絶された。
「侯爵令嬢の費用を伯爵家で負担するのは少々問題がございまして」
義母はむっとした。
「エレクトラ様がご一緒に教わるのなら、よろしいのではございませんか?」
セバスが提案した。
「エレクトラ様のついでと言うことで」
「ついでとは何です。それにエレクトラは学年が下です。そんな低レベルなことを教えに来ている家庭教師ではありません」
家庭教師なんか本気でいらないし、義姉たちのレベルに合わせてもらうと、成績が落ちそうよ。
セバスはうまいことを言う。私のついでなんて、義母のプライドが絶対に許さない。
知らないふりしているだけで、執事は大抵のことを把握している。
「嫌がらせかもしれないわね」
アーネスティン様に、家での出来事を話すとほんのりと微笑んだ。そして言った。
「最悪、あなたは私の侍女とか秘書になればいいのではなくて?」
私はものすごく驚いた。
「王弟殿下のお屋敷に?」
「そうではなくて、モントローズ公爵のお屋敷に」
アーネスティン様がほんのり桜色に頰を染めた。
これまで婚約者のモントローズ公爵の話はあまりしなかったけど、婚約者のことは大事に思っていらっしゃるのね。
「恐れ多いです」
「そんなことはありません。あなたなら王家に仕えてもおかしくはないでしょう。でも、王家はなかなか大変です。それに比べてモントローズ家は小さいので楽だと思うわ」
小さいと言う規模ではない。
王都にも大きな城があったし、領地の城は名建築として有名だった。領地は工業が盛んな場所にあり、港を擁していたから、羊がメエメエ鳴いて草がぼうぼう生えているるような場所が領地の家とは段違いの収入がある。
「あなたのお話だと、好きでもないうえに貧乏な人と無理やり結婚させられそうだと言うじゃない。それなら私の家に来たらいい。私もあなたが来てくれたら心強いわ」
貴族の女が働くことは容易ではない。
働くなんてこと、考えていなかったが、アーネスティン様は穏やかで賢明な方だ。モントローズ家はすごい家である。公爵家のくせに大金持ちだった。名前は公爵家でも、しょっぱい地代だけでやり繰りに苦労しているような家とは違う。
「よろしくお願いします」
私が即座に覚悟を決めて、頭を下げた。
義母がこの調子で妨害し続けるなら、ロクな結婚話は来ないと思う。
有利な話は、絶対義姉に回される気がする。
義姉がうまくいかなければ、腹いせに結婚話なんか潰されるだろう。
結婚がダメでも生きていける。安心した。
アーネスティン様は心配そうに言った。
「違うのよ。一生、私についてきてと言っているのではないの。あなたなら、どこのお家へでも結婚できると思うの。母に相談してみますわ。もし、生家を離れて働いても、モントローズ公爵家ならキズにはならないと思うの。働くと言っても、私の話し相手みたいなものだけど、その間に良いご縁があれば、結婚出来ると思うわ」
そうか。アーネスティン様は、侍女になってあの家を離れろと言ってくださっているのだ。伯爵家の娘が侍女になるだなんて、使用人に身を落としたように見えるだろう。だが、王家に匹敵しそうなくらいの家格のモントローズ家ならそうならない。
「卒業するまでは、伯爵家にいないといけません。家を出る理由がありませんからね。でも、卒業したら、家から出てはどうかしら?」
持つべきものは良き友。アーネスティン様にしかできない離れ業だが、私の結婚先の心配までしてくださっている。
次からはご主人さまと呼ばなくては。アーネスティン様なら、お仕えし甲斐があると言うものだわ。
「私、頑張りますわ。成績を良くしないといけませんわね」
「今のままで、十分よ、エレクトラ」
アーネスティン様は笑っておっしゃった。
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