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第19話 それからどうなったかって?
オーウェン様と私は、イザベラやフィリップ様と街のカフェに出かけ、オーウェン様の武芸大会の見学に行って、イザベラと一緒にキャアキャア騒ぎ(フィリップ様も出ていたので)、クリントン公爵家のお茶会に招かれ、学園のお昼時には食堂で四人でランチした。
マーク殿下はその中には混ざらなかったが、たまに、一緒になることがあって姉の話が出ることがあった。
「先週、初めて一緒に孤児院に行ったよ」
殿下はちょっと笑った。
「彼女のいうことは僕にもよくわかるよ。読み書きは必要だと思うね」
私は、殿下は着実に姉の信頼を勝ち得ているのだと思った。
だが、マーク殿下が行ってしまうと、オーウェン様が言った。
「うん。着実に騙していっているな。手に入れたいだけだ、あれは。あいつが教育問題だの慈善だのの話をしているところ、見たことがないぞ?」
オーウェン様は口が悪いと思う。大事だと思うわ、教育問題。そう言うと、オーウェン様はムキになって言った。
「マーク殿下が対抗馬で、俺がどんなに心配したと思うんだ。全く。婚約破棄の方は、全然進んでないし」
彼は腕を組んでちょっと考えた。
「ハーバートが、武道大会で事故死すれば話は早いな」
「冗談はやめて」
笑えない。ハーバート様と違って、オーウェン様は本格的武闘派だった。顔だけじゃなかった。いつも服を着ているので、細マッチョかな?くらいだったのだが、武芸大会を見学して、私は完全に納得した。うん。オーウェン様すごい。騎士様として最高だわ。
ええと、まあ、よけい惚れ込んでしまったわけだけど。これは、まだオーウェン様には内緒だ。
本当に、ハーバートの一人や二人、武芸大会の事故で簡単に息の根を止めそうだ。
「止めてくださいね」
思わず真剣になって言ったら、笑われた。
「サラはかわいいな。大丈夫。ばれないようにするから」
婚約破棄に関しては、ウィザスプーン家は粘れるだけ粘ったらしいが、結局、かなりの賠償金を払わされ、泣く泣く婚約を破棄した。
婚約解消なら、まだ穏やかだったと思うのだが、何があっても兄が破棄だけは譲らなかったのである。
普通、逆だと思う。
破棄された側になんらかの悪い点があるはずなので、この場合、私の側が穏便に解消にしましょうと持ちかけるはずなのだが、兄は、断固、婚約解消を拒んだのである。
困り果てたハーバートの父のウィザスプーン侯爵は、うっかり最悪なことを口走ってしまったらしい。
「婚約破棄された傷もの令嬢と言われたら、嫁ぎ先に困ることもあるかと……」
聞いた兄はたちまち目を吊り上げた。
「ハーバート君はマリリン嬢との結婚が決まってらっしゃるから、破棄でも何でも、困ることは何もないでしょう」
それを聞いたウィザスプーン侯爵は、塩をかけられたなめくじのように委縮したらしい。
一度だけマリリン嬢は、ウィザスプーン家を非公式に訪問したことがあるらしいのだが、夫人を筆頭に全員から総スカンを喰ったらしい。一体、何をしたんだろう。
「絶対、マリリン嬢との結婚などしたくないらしい。いい年のオッサンに泣いて取り縋られて、あんまり腹が立つので、マリリン嬢の当家への襲撃事件、バラしてやった」
あれは醜聞と言うより、異常さが目立つ話だった。
「侯爵、ご存じなかったのですね?」
「そりゃ知らないだろう。蒼白になっていたよ。とにかく婚約破棄は決まった。今、書類は全部法務局民事部の方に提出された。すぐに受理されるさ」
婚約が解消されたと知らされた時、オーウェンは口の端だけを上げる妙な微笑みを浮かべた。
場所は私の家の客間で、特別な事なんか何もない日だった。
でも、オーウェン様はこの日をずっと待っていたらしかった。
イザベラ嬢やフィリップ様と、いつも一緒に楽しんでいたが、彼らが二人きりで観劇や食事に出かける時、私たちは別れてそれぞれの家に帰らないわけにはいかなかった。私が、婚約破棄の交渉中だったから、世間的にあまり派手なことをするわけにはいかなかったのだ。いろいろと我慢することが多かった。
「サラ嬢」
彼は改まって、片膝を絨毯の上について、私の手を取った。
「あなたの手を取る権利を僕にくれませんか。この先、一生。神に誓い、法に則って」
答えは決まっていたし、彼だってそのことを知っていた。だけど、私たちはそれまで、その言葉を表立って口にすることが出来なかったのだ。
言葉にすることは、きっと何かの責任とか重みが加わるのだ。
「はい」
たった一言。短い誓いだったけれど、私は、自分の意志で、彼と一緒に歩き続ける道を選んだのだった。
「もっと場所を選びたかったんだけど。花もないし、宝石もない。二人きりの海岸とか、満天の星の下とか、誰もいない森の中のぽっかり空いた空き地とか。そんな場所で愛を誓いたかった。だけど……」
どうやら彼は最速という点を重視したらしい。
「もう絶対に誰かに先を越されたくなかった。一刻も早く届を出さねば。憎たらしいマーク殿下のこともあったし」
私は呆れた。まだ、根に持っているのかしら? それから手を放してくれないかな。恥ずかしいんだけど。
「人の婚約破棄を勝手に利用しやがって。それで、自分は先に結婚するとは、腹立つな」
だが、実際にマーク殿下が結婚したのは、私たちの予想よりずっと遅かった。
マーク殿下は、オーウェン様のように婚約者の卒業を待つ必要はなかったのだけど。
マーク殿下はその中には混ざらなかったが、たまに、一緒になることがあって姉の話が出ることがあった。
「先週、初めて一緒に孤児院に行ったよ」
殿下はちょっと笑った。
「彼女のいうことは僕にもよくわかるよ。読み書きは必要だと思うね」
私は、殿下は着実に姉の信頼を勝ち得ているのだと思った。
だが、マーク殿下が行ってしまうと、オーウェン様が言った。
「うん。着実に騙していっているな。手に入れたいだけだ、あれは。あいつが教育問題だの慈善だのの話をしているところ、見たことがないぞ?」
オーウェン様は口が悪いと思う。大事だと思うわ、教育問題。そう言うと、オーウェン様はムキになって言った。
「マーク殿下が対抗馬で、俺がどんなに心配したと思うんだ。全く。婚約破棄の方は、全然進んでないし」
彼は腕を組んでちょっと考えた。
「ハーバートが、武道大会で事故死すれば話は早いな」
「冗談はやめて」
笑えない。ハーバート様と違って、オーウェン様は本格的武闘派だった。顔だけじゃなかった。いつも服を着ているので、細マッチョかな?くらいだったのだが、武芸大会を見学して、私は完全に納得した。うん。オーウェン様すごい。騎士様として最高だわ。
ええと、まあ、よけい惚れ込んでしまったわけだけど。これは、まだオーウェン様には内緒だ。
本当に、ハーバートの一人や二人、武芸大会の事故で簡単に息の根を止めそうだ。
「止めてくださいね」
思わず真剣になって言ったら、笑われた。
「サラはかわいいな。大丈夫。ばれないようにするから」
婚約破棄に関しては、ウィザスプーン家は粘れるだけ粘ったらしいが、結局、かなりの賠償金を払わされ、泣く泣く婚約を破棄した。
婚約解消なら、まだ穏やかだったと思うのだが、何があっても兄が破棄だけは譲らなかったのである。
普通、逆だと思う。
破棄された側になんらかの悪い点があるはずなので、この場合、私の側が穏便に解消にしましょうと持ちかけるはずなのだが、兄は、断固、婚約解消を拒んだのである。
困り果てたハーバートの父のウィザスプーン侯爵は、うっかり最悪なことを口走ってしまったらしい。
「婚約破棄された傷もの令嬢と言われたら、嫁ぎ先に困ることもあるかと……」
聞いた兄はたちまち目を吊り上げた。
「ハーバート君はマリリン嬢との結婚が決まってらっしゃるから、破棄でも何でも、困ることは何もないでしょう」
それを聞いたウィザスプーン侯爵は、塩をかけられたなめくじのように委縮したらしい。
一度だけマリリン嬢は、ウィザスプーン家を非公式に訪問したことがあるらしいのだが、夫人を筆頭に全員から総スカンを喰ったらしい。一体、何をしたんだろう。
「絶対、マリリン嬢との結婚などしたくないらしい。いい年のオッサンに泣いて取り縋られて、あんまり腹が立つので、マリリン嬢の当家への襲撃事件、バラしてやった」
あれは醜聞と言うより、異常さが目立つ話だった。
「侯爵、ご存じなかったのですね?」
「そりゃ知らないだろう。蒼白になっていたよ。とにかく婚約破棄は決まった。今、書類は全部法務局民事部の方に提出された。すぐに受理されるさ」
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場所は私の家の客間で、特別な事なんか何もない日だった。
でも、オーウェン様はこの日をずっと待っていたらしかった。
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「サラ嬢」
彼は改まって、片膝を絨毯の上について、私の手を取った。
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答えは決まっていたし、彼だってそのことを知っていた。だけど、私たちはそれまで、その言葉を表立って口にすることが出来なかったのだ。
言葉にすることは、きっと何かの責任とか重みが加わるのだ。
「はい」
たった一言。短い誓いだったけれど、私は、自分の意志で、彼と一緒に歩き続ける道を選んだのだった。
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どうやら彼は最速という点を重視したらしい。
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私は呆れた。まだ、根に持っているのかしら? それから手を放してくれないかな。恥ずかしいんだけど。
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