重ねる

たこみ

文字の大きさ
上 下
1 / 6

第一話 特別の意味がある

しおりを挟む
私は獲物を追っている。
物心がついたときからそういう感情がどこかにあった。

ずっと探求しているけれど、それが何なのかは分からず終いだった。
アンテナを張ってひたすら走ってみても自分が追い求めているものに遭遇することができず、達成感のない日々を送っていた。

「今の状態から抜け出す道は、やっぱりその人を探し出すしかないと思うんだよね」
中学から付き合いのある沙耶さやの家は娘や友達に全く関心のない親のせいか、とても居心地がいい。

「だねー。頑張れ」
割と深刻な声で言ってみた私に、床に寝転んでいる沙耶は適当に返事した。

「ね~、沙耶も私が作り話してると思ってる?」
クジラの抱き枕をを抱きしめながら、不貞腐れると、沙耶はあんたのことを
信じてるよと言った。

「まあ受け入れがたい話だけどね・・・」
「私の背負ってるものってさあ、前世に関わるものだと思うの」
沙耶は携帯をいじりながら、では前世に支配されているだけでなく、ネットで呼びかけてみたらどうだと提案してきた。

「どうやって?前世で私と知り合いだった方とか?」
「うーん。#前世#知り合いかも、だけじゃなく日和ひよりとその人だけが知ってそうなこととかないの?」

私は混乱している記憶を頭の中でかき集めると「T字路・・・」と呟いた。
沙耶は不可解な面持ちで「えっ、場所?」と首を傾げた。

「うん、なんかその相手のことは覚えてないんだけど、いつもその人のことを見張ってたような気がする」
納得していない顔をしている沙耶は日和はその人と想い合っていたのかと思ったと言った。

「いや私が一方的に相手を想ってた感じじゃなく、夢の中ではその人を追いかけてやっとT字路に追い詰めたような状況だったと思う」

「言いたくないけど・・・」
沙耶は戸惑いながら相手は放っておいてほしいというか、日和に捕まりたくないと思っているのではないかと言った。

「でも・・・、それは過去っていうか前世?の話だし、私の中に記憶が残ってるのはそれを忘れさせない何か理由があると思うんだよね」

ぽかんとした表情をした沙耶は四六時中そのことを考えてるとおかしくなるわよと忠告した。
「じゃあ適当に今言ったことを書いて返事を待ってみたら?」

私はうんと頷くと、自分の複雑怪奇な記憶が明らかになることを想像してワクワクした。


そして後に自分の天命を呪うことになる。






しおりを挟む

処理中です...