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第二話 Stop punishing yourself
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私たちの育った村に、父のことを知らない人はいなかったと思う。
彼は村から出た唯一の国王の側近だった。
口が裂けても言えなかっただろうが、父は常に自分ならばもっとうまく国をまとめることができると確信していた。
「まだ迷っているのか、アイリーン」
そんな偉大な父でも、王室で生き残るためには必死だったようで、家の未来を私に託そうとしていた。
父に何度聞かれても、私から出てくる答えは彼と一緒になりたいというものだった。
それを承知の上で父は私に確認してくるのだった。
母は全くの中立だった。
父にも私にも反対しなかった。
自分の娘に生まれたのだから、家のための結婚をしてほしいものだと父は私たちに訴えた。
「黙りなさい!」
一緒になりたい人がいるのだと言うと、父は断固として聞き入れなかった。
話せばわかるような娘では私はなかった。
「姉さまはクルトと一緒にいたいのでしょう?」
私の目を無邪気に覗き込んでくる小さな妹を見て、自分が裕福な家に嫁げば彼女にこんな粗末な服を着せずにすむのだろうなと申し訳なくも思った。
なのに私は家族の手の届かないところに行くことを選んだ。
クルトとはこの村と隣町に隣接する森で落ち合うことに決めた。
だから私は彼のことを許せていない。
結局クルトは私との未来を選ばなかったのだから。
知らなかったことにした。
どうしても自分は、娘の未来に口をだすことができなかった。
彼はきっと後ろめたくなったのだろう。
自分の幸せのために、娘とその家族に迷惑をかけることを。
「彼は一人で行ってしまったわ・・」
明け方、家の裏口から戻ってきた娘にかけてやる言葉が見つからず、ただ抱きしめることしかできなかった。
「母さんはいつもあなたの側にいるわよ」
私の腕の中で彼女は頷くと、自分はどうしてクルトを愛したのだろうと呟いた。
「私のせいで彼に不幸になってほしくない」
そう言って泣く娘の頭をなでながら、神にこれ以上娘を傷つけないで下さいと願った。
あまりよく眠れていないのだろうな。
クルトの顔を見るといつもそう感じる。
彼は自分のことをあまり話そうとしないが、悪いやつではない。
なぜだかわからないが、ただ幸せでいてほしいと強く思ってしまう。
金がたまったらこの町を出ると言うやつらに、クルトもゆくゆくはそうするのだろうと聞かれていた。
「どこに・・?」
困った顔のクルトに、彼らは自分たちはまだ若いのだからどこへだって行けるさと目を輝かす。
心配しなくていい。
俺だって将来のことなんてまだわからない。
クルトを見ていると、自分に罰を与えているように見えるのはなぜだろう。
「俺なんて飯が上手くて気候がいいところならどこでもいいけどな~」
俺の言葉に隣にいたクルトは、ははっと笑った。
「アーサーらしいな」
そうだろ?という俺に、彼は確かにそうだなと頷いてくれた。
彼は村から出た唯一の国王の側近だった。
口が裂けても言えなかっただろうが、父は常に自分ならばもっとうまく国をまとめることができると確信していた。
「まだ迷っているのか、アイリーン」
そんな偉大な父でも、王室で生き残るためには必死だったようで、家の未来を私に託そうとしていた。
父に何度聞かれても、私から出てくる答えは彼と一緒になりたいというものだった。
それを承知の上で父は私に確認してくるのだった。
母は全くの中立だった。
父にも私にも反対しなかった。
自分の娘に生まれたのだから、家のための結婚をしてほしいものだと父は私たちに訴えた。
「黙りなさい!」
一緒になりたい人がいるのだと言うと、父は断固として聞き入れなかった。
話せばわかるような娘では私はなかった。
「姉さまはクルトと一緒にいたいのでしょう?」
私の目を無邪気に覗き込んでくる小さな妹を見て、自分が裕福な家に嫁げば彼女にこんな粗末な服を着せずにすむのだろうなと申し訳なくも思った。
なのに私は家族の手の届かないところに行くことを選んだ。
クルトとはこの村と隣町に隣接する森で落ち合うことに決めた。
だから私は彼のことを許せていない。
結局クルトは私との未来を選ばなかったのだから。
知らなかったことにした。
どうしても自分は、娘の未来に口をだすことができなかった。
彼はきっと後ろめたくなったのだろう。
自分の幸せのために、娘とその家族に迷惑をかけることを。
「彼は一人で行ってしまったわ・・」
明け方、家の裏口から戻ってきた娘にかけてやる言葉が見つからず、ただ抱きしめることしかできなかった。
「母さんはいつもあなたの側にいるわよ」
私の腕の中で彼女は頷くと、自分はどうしてクルトを愛したのだろうと呟いた。
「私のせいで彼に不幸になってほしくない」
そう言って泣く娘の頭をなでながら、神にこれ以上娘を傷つけないで下さいと願った。
あまりよく眠れていないのだろうな。
クルトの顔を見るといつもそう感じる。
彼は自分のことをあまり話そうとしないが、悪いやつではない。
なぜだかわからないが、ただ幸せでいてほしいと強く思ってしまう。
金がたまったらこの町を出ると言うやつらに、クルトもゆくゆくはそうするのだろうと聞かれていた。
「どこに・・?」
困った顔のクルトに、彼らは自分たちはまだ若いのだからどこへだって行けるさと目を輝かす。
心配しなくていい。
俺だって将来のことなんてまだわからない。
クルトを見ていると、自分に罰を与えているように見えるのはなぜだろう。
「俺なんて飯が上手くて気候がいいところならどこでもいいけどな~」
俺の言葉に隣にいたクルトは、ははっと笑った。
「アーサーらしいな」
そうだろ?という俺に、彼は確かにそうだなと頷いてくれた。
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