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第1章 1度目の人生での反省点と今後の人生プラン
深く考える
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(……………やっぱり甘い)
庭でリナリーに抱きしめられた後、エリーはそのまま自室に戻った。
窓辺にある1人掛けのソファに座り、エリーが考えることは兄の優しさについてである。昔からリナリーはエリーにとても優しかったが、その優しさも年々増している気がする。
今世の家族の優しさに触れるたびに前世の家族のことを思い出してしまう。前世のエンヴィの家族は、黒持ちが生まれたとなるや否や、早々に王家の第二王子との婚約を強引に押し通した。
当時、病弱で先の不安があった第一王子の代わりに次期国王になる可能性の大きかった第二王子とのつながりを強くするためだ。
その婚約には、まだ齢7の小さな王子と、3歳にも満たない黒髪の侯爵子息の気持ちなどは全く考えられていなかった。
男性と男性、女性と女性の結婚はエンヴィが生きていたーーもといにエリーが生きている国では別に珍しいことではない。ただ、同性であれば子を成せる確率が異性よりも下がるため、子孫を残し家を繁栄させることを第一と考える貴族は同性婚はあまりしないのだ。
それを王家の王子が同性である四つ下の侯爵家の息子を第一妃として迎えることになったので、周囲の貴族に『第二王子殿下は侯爵家を後ろ盾につけるためだけに男の妃をもらった』と強く印象付ける事になってしまった。
そしていくら黒持ちのエンヴィであろうと『第二王子からの愛をもらっていない哀れな婚約者殿』というレッテルを剥がすことが難しくなった。
(愛されていたと思ってたんだけど。気づいていなかったのは俺だけだったな)
エンヴィを道具として扱い、都合が悪くなった途端、侯爵家とは関係ないと切り捨てた前世の家族を恨むつもりはない。貴族として生き残るためには必要なことだったと理解している。
ただ、今の家族の深い愛に触れた今では、心に残るのは前世で自分が家族から蔑ろにされていた、という事実と虚しさだ。
「エリー様」
後ろに静かに控えていたアランが口を開いた。
なに、と小さく聞くと、
「温かい紅茶を淹れて参りますので、少し失礼いたします」
そう一礼して部屋を出て行ってしまった。急にどうして紅茶なんかと思っていると、頬に少し濡れた感覚があった。
手で擦ると水滴が付いている。
(あれ…、泣いてる?)
自分の目から出たものであると気づくと、音もなく流れていたものがまたどっと溢れてきた。
(……………そっか、悲しかったのか)
前世の家族に、今のように愛されなくて。
いまだに残る、エンヴィが泣いているのだ。
愛してほしかった。
愛していたから。
信じてほしかった。
切り捨てるのではなく、守ってほしかった。
いつもはすぐに紅茶を淹れて持ってきてくれるアランが今日はなぜかいやに遅い。
そのおかげでエリーは人の目を気にすることなく、好きなだけ泣けた。
しばらく経ってからアランが淹れて持ってきた紅茶は、エリーが一番好きな茶葉のものだった。
庭でリナリーに抱きしめられた後、エリーはそのまま自室に戻った。
窓辺にある1人掛けのソファに座り、エリーが考えることは兄の優しさについてである。昔からリナリーはエリーにとても優しかったが、その優しさも年々増している気がする。
今世の家族の優しさに触れるたびに前世の家族のことを思い出してしまう。前世のエンヴィの家族は、黒持ちが生まれたとなるや否や、早々に王家の第二王子との婚約を強引に押し通した。
当時、病弱で先の不安があった第一王子の代わりに次期国王になる可能性の大きかった第二王子とのつながりを強くするためだ。
その婚約には、まだ齢7の小さな王子と、3歳にも満たない黒髪の侯爵子息の気持ちなどは全く考えられていなかった。
男性と男性、女性と女性の結婚はエンヴィが生きていたーーもといにエリーが生きている国では別に珍しいことではない。ただ、同性であれば子を成せる確率が異性よりも下がるため、子孫を残し家を繁栄させることを第一と考える貴族は同性婚はあまりしないのだ。
それを王家の王子が同性である四つ下の侯爵家の息子を第一妃として迎えることになったので、周囲の貴族に『第二王子殿下は侯爵家を後ろ盾につけるためだけに男の妃をもらった』と強く印象付ける事になってしまった。
そしていくら黒持ちのエンヴィであろうと『第二王子からの愛をもらっていない哀れな婚約者殿』というレッテルを剥がすことが難しくなった。
(愛されていたと思ってたんだけど。気づいていなかったのは俺だけだったな)
エンヴィを道具として扱い、都合が悪くなった途端、侯爵家とは関係ないと切り捨てた前世の家族を恨むつもりはない。貴族として生き残るためには必要なことだったと理解している。
ただ、今の家族の深い愛に触れた今では、心に残るのは前世で自分が家族から蔑ろにされていた、という事実と虚しさだ。
「エリー様」
後ろに静かに控えていたアランが口を開いた。
なに、と小さく聞くと、
「温かい紅茶を淹れて参りますので、少し失礼いたします」
そう一礼して部屋を出て行ってしまった。急にどうして紅茶なんかと思っていると、頬に少し濡れた感覚があった。
手で擦ると水滴が付いている。
(あれ…、泣いてる?)
自分の目から出たものであると気づくと、音もなく流れていたものがまたどっと溢れてきた。
(……………そっか、悲しかったのか)
前世の家族に、今のように愛されなくて。
いまだに残る、エンヴィが泣いているのだ。
愛してほしかった。
愛していたから。
信じてほしかった。
切り捨てるのではなく、守ってほしかった。
いつもはすぐに紅茶を淹れて持ってきてくれるアランが今日はなぜかいやに遅い。
そのおかげでエリーは人の目を気にすることなく、好きなだけ泣けた。
しばらく経ってからアランが淹れて持ってきた紅茶は、エリーが一番好きな茶葉のものだった。
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