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第1章 1度目の人生での反省点と今後の人生プラン

出会う

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エリーが泣いてから数日後、侯爵家では穏やかな時間がいつも通り流れていた。
リナリーは出張から帰ってきて二日たっぷりと休みをとった後、父の侯爵の仕事の補佐をしている。


(お兄様が帰ってきて家族全員が揃ったのはうれしことだけど。)

リナリーが仕事の疲れを癒した二日間、逆にエリーは疲労することになった。三ヶ月もエリーに会えなかったリナリーはその月日を埋めるようにべったりとエリーにひっついて離れなかったのだ。

(兄弟の距離としてこれははたして当たり前なのだろうか?)

エリーがそう疑問に感じるくらいリナリーとエリーの距離は近い。前世でもこんなに兄弟との距離が近かったことはなかったので、エリーは不思議に感じるが公爵家の面々は穏やかな目で見るだけなのでここではこの距離が正しいのかもしれない。

頬がふれるほど近かったり、膝の上に乗せられたり、食べ物をあーんと口に入れられたり……………

(……………まあ、リナリーお兄様は人との距離が近い方なんだろう)

リナリーが自分以外にこのような距離で接するのを見たことがないが、エリーはそう結論付けた。

それよりも考えなければいけないのは学園のことについてだ。家族は人との関わりをあまり望んでいないエリーを思っていかなくても良いと言っていたが、やはり今後のためにも行っておいた方が良い気がするのも事実である。


また堂々巡りの思考に陥りながら屋敷の長い廊下ひとりで歩いていると、人の話し声が聞こえてきた。
ちょうど応接間に近いところまで歩いていたようで、父の侯爵の声が聞こえてくる。

(来客の予定ってあったっけ?)

いつも誰かが侯爵邸に来る時はエリーにも誰が来るか伝えられる。しかし、今日は誰からもそのようなことは聞いていない。

足を忍ばせながら、応接間の扉の近くまで行き、音を立てないようにドア少し開けて中を覗く。
ちらりと隙間から見えたのは、父の険しい顔と話し相手の後ろ姿だった。

(よく見えないな……………)

ドアをもう少しだけ、と開くと、徐々に来客の姿格好がはっきりと見えてきた。広いソファにどっさりと座って相手を威圧している侯爵とは反対に、その人は客であるにも関わらず立ちながら、何やら侯爵に懇願している。


スラリとした長い足に、一目で上等だとわかる濃紺の服がピッタリと引き締まった体躯にとてつもなく似合っている。応接間の大きなガラス窓から入る陽の光がキラキラと輝く男の銀髪を照らしていた。








この国で銀の髪を持つのは王家の者しかいない。







ということは、男は確実に王家の者だった。


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