DRAGONS

ぜろせろり

文字の大きさ
36 / 72
第3章

34話 第1ラウンド

しおりを挟む
以前よりやけに親しげに接するようになった紗由美が昼休みの椿と宙を眺めている。

『RED』の件については新たな情報が入るまでは一旦保留となったのだが何も無い日々がもう10日も続いていた。
「...ほんとに『RED』の狙いは俺なのか?正直何もなさすぎて実感がないんだが。」
「まだ分からないからそういうことにしとかないと、もしもの時困るでしょー?」
宙は言いながらパンを頬張る。
「そうだねー。あっち側から直接連絡あったりしない限り進歩は無さそうだけどー。」
そんな呑気なことを言っていたら椿の携帯が鳴った。
送り主不明の1通のメール。
椿は一瞬躊躇ったがそのメールを開く。


「茅崎椿。ゲームを始めよう。」
ただそれだけの文章と地図の画像が添付されていた。
「...ほんとに直接来るなんてな。」
「え、えぇ!!いまの誰から!?」
「わかんねぇ。けど、きっとゴウガってやつだと思う。」
「な、内容は?」
「ゲームを始めようだってさ...面倒じゃなきゃいいけど。」




────夜が近くなってきている。
赤焼けの世界が一転して黒に塗り替えられていく。
そんな時間の路地裏に立つ2人の男、
滅龍の遣い茅崎椿と、炎龍の遣いゴウガ・ディン。
「まさか本当に本人登場とはな。俺もちょっと驚きだぜ。」
「...よくきたな、茅崎椿。安心しろ。今は俺とお前の2人だけだ。邪魔者はいない。」
「そりゃ助かる。...んで、ゲームってのは?」
「そうだな。簡単に説明しよう。俺とお前で3点先取のゲームを行う。互いに負けた方が買った方の要求を聞こう。」
「割とシンプルでわかりやすいな。んでゲームの内容は?」
「それも簡単だ。先行を俺として交互にゲームの内容を提示する。どんなに自分に有利な内容でも構わない。」
「へぇ。んじゃ最初はあんたのゲームか。さっさとやろうぜ。」


「...よかろう。俺が提示するゲームはババ抜きだ。トランプのジョーカーを持っていたら負け。ただそれだけのものだ。」



静かな夜にトランプの音だけが響く。
ジョーカーはゴウガの手元にある状態から始まり、それぞれの手札が5枚ほどになった今でも椿はそのジョーカーを引いていない。
昔から施設の人たちとトランプはやっていた。そしてババ抜きをするときジョーカーをもっている人はそのジョーカーを右半分に置く。大体の人にそれが当てはまったいたため、椿は確信していた。

────ジョーカーは右から1、2番目のどちらか。

そう思い椿は左端のカードを取る。

...ジョーカーだ。

しかし、当時の椿も必ずしもジョーカーを取らなかったわけではないし、相手に取らせる戦法も考えてあった。
だが、
「俺の勝ちだ。」
そう告げるゴウガの手元には焼け焦げたトランプの跡が。
「は?え、おい...お前。」
「自分に有利にしただけだ。ジョーカーが移れば残りの手札なんていらねぇ燃やせば俺の手札なんて無くなる。つまり俺の勝ちだ。」
ゴウガは仕込んでおいた卑怯な方法を明かす。
「...あぁ。いいぜ。なら俺だって次は絶対に勝ってやるよ。」





椿とゴウガの静かな戦いが始まっている。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

処理中です...