くりきゅういんうまなとイザーと釧路太郎

釧路太郎

文字の大きさ
31 / 42
うまなちゃんのチョコレート工場

うまなちゃんのチョコレート工場 第十話

しおりを挟む
 うまなちゃんが教えてくれた甘味料は本当にそれを口に入れて大丈夫なのかと思うようなものだった。うまなちゃんもイザーさんも問題は無いと言っているのだけれど、どう考えても私には問題があるとしか思えなかった。
「そんな物で本当に甘味を作り出せると思ってるんですか?」
「思ってないよ。でもさ、しょうがないじゃないか。この世界には愛華ちゃんのところみたいに気軽に摂取できるような甘いものが無いんだよ。食べ物の中に感じるほのかな甘みだって貴重なんだし、大量に作り出せるものがこれしかないんだから仕方ないでしょ。他に何かいいアイデアがあるって言うんだったら教えてよ。愛華ちゃんだったら何かいいアイデア思い浮かんだりするんでしょ」
 そんなことを言われたって私はそういう知識があるわけじゃないからどうする事も出来やしない。知識があったとしてもソレを実行するだけの行動力だって私にはない。私が出来ることなんて何も無いのだ。
「いきなりそんなことを言われたって無理だよ。私のいた世界だってスイカとかも甘いもの同士を掛け合わせて長い時間をかけて美味しくなったって聞いたことがあるし、そんなにすぐに出来たりなんてしないよ」
「そんな簡単な方法で良いのか。それだったら簡単に甘いものを作れるんじゃないかな。私はてっきり甘いものを独占している神を殺して奪い取らないといけないのかと思ってしまったよ。そんな事をしなくても簡単に作れそうだし、愛華ちゃんに聞いてみてよかったと思うよ」
「今からやったとしてもすぐには作り出せないと思うけど、どこが簡単なの?」
 私は当然の疑問をうまなちゃんにぶつけた。この世界で植物がどの程度の速度で成長するのかなんて知らないけど、昨日植えたものが今日には収穫できるようになるなんてことは無いだろう。いくらこの世界の水がありえないくらい豊富な栄養素を含んでいたとして、この世界の太陽が植物の育成に効果がありすぎたとしても、肝心の植物がその栄養素を吸収しきれず太陽の力も過剰すぎてマイナス効果を与えている状況なので甘いものを作ること以前に植物をちゃんと育てる事すら不可能な状況なのだ。
「もしかして、魔法で植物をどうにかうまい事成長させることが出来るって事なのかな?」
「そんな便利な魔法があったら最初っから使ってるわよ。大体、口に入れるものを魔法で成長させるなんてどんな副作用があるかわからないじゃない。そんなの誰も食べたがらないわよ」
「あの、魔法で作ったものを食べたくないっていうのと、このチョコレートを平気で食べることが出来るって事の違いがわからないんだけど」
「なんでそんな事を考えるのかわからないわ。愛華ちゃんの世界のチョコに比べたらそんなに甘くないかもしれないけど、これだって十分に甘いと思うんだけどな。甘くておいしいと思うんだけど、やっぱり愛華ちゃんが食べてたのと同じくらい甘いものも食べてみたいんだよね。イザーもそう思うでしょ?」
「別にそんな風には思わないかな。うまなちゃんが作ってくれているチョコレートも十分美味しいと思うからね。それにさ、そんなことしたらここに居るサキュバスちゃんたちが自由になっちゃうんじゃないかな。そうなると、この辺の治安が悪くなっちゃうんじゃないかなって思うんだよね」
「それはあるかもしれないな。さすがに四天王は大丈夫だと思うけど、町にいる人達がサキュバスに骨抜きにされちゃうかもしれないもんね。そうなると、この世界が欲望にまみれた醜い世界になってしまうかもしれないもんね」

 うまなちゃんが作っているチョコレートはカカオっぽい豆を使っているので見た目はとても良く似ているし風味も本物に近いと思う。ハイカカオチョコレートを食べ慣れている人にはそこまで感じないと思う程度の苦みもあるのだけれど、それを紛らわすために使われている甘味料はなんと“サキュバスの体液”なのだ。
 なんでそんなものが甘味料として使われているのか私には全く理解出来ないのだけど、サキュバスの体液というのは人間を魅了するために甘みも含まれているという事らしい。ただ、そのままサキュバスの体液を使ったのであれば男性はチョコレートに近付いただけで正気を失ってしまうだろう。それもあって、うまなちゃんはこの工場を使ってサキュバスの体液から催淫効果を取り除いているとのことなのである。
 そんな事が本当に可能なのかわからないが、このチョコレートは男性が食べても大丈夫なようには作られているそうだ。ただし、一日に摂取していい量が決まっているそうで、その男性の精力によって変動するという話なのだ。あまり聞きたくない話ではあるが、四天王の人達は平均して一日三粒までで、偽福島君は二十粒くらいまでは平気だろうということだ。
 私はそれを聞いて、ますます偽福島君との距離を取ろうと心に誓ったのだった。
「女の子はいくら食べても平気だと思うんだけど、食べ過ぎは別の意味で体に悪いと思うから控えめにしてね。ちょっと試食をし過ぎて肌も荒れてきちゃったんだよね。ねえ、私のココって荒れてたりしないかな?」
 うまなちゃんが私に向かって自分の唇を指さしているのだけど、唇は荒れているようには見えなかった。うまなちゃんのほっぺもおでこもあれている部分なんて無くもちろん皺だってない。どう見ても綺麗な肌だとは思うんだけど、私には気付かない何かがあるのかな。
「ねえ、もっと近くで見てもらっても良いかな。その方が、いいと思うんだけどな」
 うまなちゃんのその言葉を聞いたからなのか、イザーさんと他の四天王さん達も近付いてうまなちゃんの顔をじっと見つめていた。
 私もうまなちゃんの事をじっと見てしまっているんだけど、それって何か違う意味があるのかな。そんなはずはないんだけど、じっと見つめているとうまなちゃんの唇が気になってしまって仕方がない。どうしても、目が離せなくなってしまっている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...