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第二部 二人だけの世界編

まー君と淫乱女を部屋に残して私は外へ出る

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「へえ、君は本当にすごいね。自分で言うのもなんだけど、私の胸に興味を持たない高校生男子っていたんだね。彼女がいるって事は男好きってわけでもないと思うし、もしかして巨乳嫌いなのかな?」
「違うんじゃないかな。若い子が好きなだけだと思うよ。私も愛ちゃんも会社じゃ若い方かもしれないけど、世間ではアラサーなんて言われてる年齢だしね。若い子には勝てないもんだよ」
「いや、お二人は僕から見ても魅力的だとは思いますよ。でもそれ以上に僕にはみさきが魅力的に見えるだけです。たぶんですけど、街でたまたま出会ったとしてもお姉さんたちは僕たちに話しかけたりしてなかったと思いますし、お互いにこうして話す機会も得られなかったと思いますよ」
「そうかもしれないけどさ、でも今はこうして目の前にたわわに育ったお胸が四つもあるんだよ。久子のは物足りないんで除外しちゃうけど、それでも触りたいって気持ちにはならないのかな?」
「はい、特にそうは思わないですね」
「もう、彼女の前だからって我慢してちゃだめだよ。若いんだから、触るくらいなら彼女も許してくれるって。ほら、恥ずかしがらずに手を伸ばしてみなって」
「そうだよ。お姉さんたちはいやらしい気持ちで言ってるんじゃなくて、君がとてつもない勇気を振り絞って彼女を守ったことに敬意を表しているだけなんだからね」
「いや、その言葉だけで充分ですから」

 私は久子さんと一緒にこの部屋を抜け出すことになっているんだけど、少しあの二人はやりすぎているんじゃないかなって思うんだよね。あの程度でまー君をどうにか出来ると思っているのは浅はかだし、無駄に年齢と経験だけを重ねてきてるみたいで全くもって薄っぺらいよ。まー君と会うのは今日が初対面だと思うけど、そんなんで男をひっかけようとしているなんて出来の悪い漫画のキャラクターなんじゃないかなって思うんだよね。大体、まー君を誘惑するのにそんな無駄に大きい胸なんて必要ないってわからないのかな。

「じゃあ、そろそろ私達は行こうか」

 私は久子さんに連れられて部屋を出て行くのだけれど、私はどんなことがあってもまー君を最後まで信じているからね。それに、あの二人が男に捨てられたというのは何となく今の状況を見ているだけでもわかるかもしれない。きっと、あの胸の大きい人は酔ってしまえば相手は誰でもいい人なんだろうね。もう一人の人は話を聞いた感じでは、お酒が入った後に寝て好き勝手されてるタイプなのかな。私が男だったとしたら、そんな二人に本気で付き合おうなんて考えるわけもないのにな。そんな事を考えてしまっていた。
 でも、そんな事を考えるのは良くない子だし、私はまー君のためにもいい子でいなくちゃね。よし、今よりももっと綺麗になってまー君に喜んでもらおうっと。

「あ、まー君。私はこれから久子さんともう一回温泉に行ってこようと思うんだけどいいかな?」
「いや、別に構わないけど、それだったら僕も一緒に行こうか?」
「ううん、いいの。私は久子さんと同じ佐藤として仲良くなりたいって思ってね。久子さんが旦那さんの好きなところを一杯教えてくれるって言うから聞きたいなって思ってね」
「ごめんね。私もみさきちゃんからまー君の良いところを聞いているうちにさ、お互いに好きな相手を思う気持ちって一緒なんじゃないかなって思うようになってさ。それで、ちょっと温泉にでも浸かってゆっくり話そうかってなったんだよね。私ももう一回温泉に行きたいって思ってたし、みさきちゃんももう一回くらい温泉に入って今よりも綺麗なお肌になりたいって思うもんね」
「はい、久子さんの美容法も気になります」
「そんなわけで、私はみさきちゃんを借りていくね。そっちの酔っ払い二人の相手はまー君に任せるからさ。大丈夫、その二人って自分から絡む割には臆病だから何もしてこないと思うよ」
「じゃあ、行ってくるね」

 私は久子さんの後をついているのだけれど、久子さんは温泉ではなく旅館の食堂へと向かっていた。食堂の営業自体は終わっているのだけれど、今は談話室代わりに自由に使っていいとのことで宿泊客は食堂を好きなようにつかえるようだった。私と久子さんは私達が食事をとった席に向かい合わせに座ることになった。私はまー君の座っていた席に座ってみたのだけれど、不思議なものでまだまー君のぬくもりが感じられるような気がしていた。そんな事をぼんやりと考えていると、久子さんは急に私に向かって頭を下げてきたのだ。

「ごめんなさい。あの二人はちょっとやりすぎちゃっているかもしれないよね。あの二人を見てみさきちゃんは気を悪くしてるよね」
「そんな事ないですよ。私はまー君の事を信じているから大丈夫です。それに、あの二人みたいな感じだとまー君は何も思わないと思いますよ」
「そうなのかな。でもさ、あのくらいの若い男の子ってエッチなお姉さんが誘惑して来たらそれに乗ってしまうって事もあるんじゃないかな」
「それはあるかもしれないですけど、それってまー君が悪いって事にはならないですよね?」
「みさきちゃんがそう思うならそうかもしれないけどさ、でも、自分の彼氏が他の女の子と仲良くするのってあんまり嬉しくないって思うんじゃないかな」
「それは平気ですよ。まー君って私の友達とも私のお姉ちゃんの友達とも仲が良いですけど、二人っきりになっても変な事とかエッチな事ってしたことないですから。久子さんのお友達って体は大人っぽいですけど、そう言う人って高校生にも結構いますし、何だったらもっと胸が大きい子がまー君の事を誘惑したことだってあるんですよ。でも、まー君ってそう言うのに乗るタイプじゃないですし、どっちかって言うと胸の大きさって気にも留めてない方だと思うんですよね」
「それって、みさきちゃんがわからないところでも何もしてないってことなのかな?」
「え、私のわからないところでまー君が何かしてるって事はないですよ」
「二人に隠し事はないってこと?」
「そうですよ。私とまー君の間に隠し事なんて無いんです」
「そんなことは無いと思うな。だってさ、毎日ずっと一緒に居るわけじゃないんだし、そんなのは夫婦だって無理だと思うんだけど。どうして隠し事がないって言いきれるのかな?」
「そんなの簡単ですよ。私はまー君がどこにいても分かるし、何をしているのかも後でちゃんと聞いてますからね」
「それって、正樹君が教えてくれてるってこと?」
「違いますよ。私はまー君がどこにいて誰と何を話していたのかがわかるんです」
「どういうこと?」
「それだけ私達はわかりあえているってことです」
「そんな理由でどこにいて誰と何を話したのかがわかるって、ありえないでしょ」
「まあ、そうですよね。でも、私はそれが出来ちゃうんですよね。って言っても、スマホに特別なアプリを入れているだけなんですけどね」
「アプリって、そんなことして大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。私はまー君にちゃんと説明してますし、まー君もそれに納得してくれましたからね。それに、私も同じアプリを入れているんで条件的には同じことですから」
「それって、どんなやつなの?」
「簡単に言うとですね。お互いのスマホの座標がある距離以上離れると自動でICレコーダーが起動して録音を開始して、今の座標をGPSで位置情報をお互いに送りあうんです。だから、私はそれを後で聞けばいいって事なんですよ。ちなみに、久子さんたちの部屋に入る前から録音だけはするように設定を変えてますからね」
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