恋愛アプリを使ってみたら幼馴染と両想いになれました

釧路太郎

文字の大きさ
32 / 71
恋愛コレクション

第七話

しおりを挟む
 河野は山口の味方だってはっきりしたわけなんだけど、この状況なら宮崎は山口の味方になってくれるよな。宮崎が今まで何度も弱者を助けているのを見てきたし、山口が困った時には助けてくれるよな。でも、山口ってあんまり弱った姿を見せないからそういう意味では助けてくれないかもしれないな。

「なあ、信寛って山口と宮崎の両方から告白されたらどっちと付き合うの?」
「え、なんでそんなこと言うの?」
「いや、最近の信寛ってずっと宮崎の事見てるような気がするからさ。朋英と同じくらい宮崎の事見てるぜ」
「マジかよ。泉ちゃんの事を好きな男子は多いって思ってたけど、信寛が好きになっちゃ駄目だろ。お前の事を好きな女子なんてたくさんいるんだから泉ちゃんは諦めとけよ」
「朋英は必死過ぎるだろ。信寛が宮崎の事を好きでも好きじゃなくてもお前が宮崎から思われることなんて無いから安心しろよ。どんなに頑張ったってお前は宮崎に振り向いてもらえないよ」
「そんなこと言うなって、俺にも可能性を残してくれよ。なあ、信寛もそう思うのか?」
「どうだろうな。宮崎の事は小学校から知ってるけど、どんなやつがタイプなのかって聞いたことは無いからな。もしかしたら朋英みたいな男がタイプかもしれないよ」
「マジかよ、その可能性があるなら聞いてみようかな。でもさ、俺がいきなり話しかけてもびっくりされちゃうかもしれないんだよな。信寛がそれとなく聞いてくれたら助かるんだけど、どうよ?」
「どうよって何だよ。俺はあんまりそういう事に興味は無いんだけど、聞くだけなら聞いてやるよ。その代わり、なんか奢れよ」
「ああ、奢るのは構わんが、もしも泉ちゃんがお前の事を好きだって言いだしたら俺になんか奢れよ」
「なんで俺が奢らなきゃならないんだよ。そんなことは無いから安心してろよ。あ、そう言えばさ、朋英って恋愛アプリに登録しているのって宮崎なんだろ?」
「そうだけど、それがどうしたんだよ」
「それってさ、お前が両想いになってない時点で答えが出てないか?」
「うるせぇ。少しは俺にも夢を見させろよ」

 そう言えば、宮崎とはずいぶんと長い事同じクラスになっているのにこうして話しかけに行くのは久しぶりな気がしていた。特に何か用事があるわけでもないし、話すきっかけも今まで無かったんだよな。宮崎と山口が仲のいい友達だったらもっと話していたかもしれないけど、あんまりそういう感じの二人でも無いんだよな。どっちかって言えば、社交的で誰からも好かれる宮崎と山口って対極な感じがするもんな。月と太陽って例えがぴったりくる感じなんだよな。

 しゃあない、宮崎に話しかけてみるか。いつも一緒にいる若林がいなくて河野と二人っきりみたいだな。そうだ、この状況って宮崎も河野みたいに山口の味方になってくれるか確認するいい機会じゃないか。

「あのさ、ちょっと二人に話があるんだけどいいかな?」

 あんまり会話に割り込むのが得意じゃないんで不自然なタイミングだったらどうしようかと思っていたんだけど、それは何とか大丈夫だったみたいだ。

「別にいいけど、話って何?」
「宮崎ってさ、若林と西森と渡辺が山口に何かしようとしてるとか聞いてないかな?」
「聞いてないけど、何かあるの?」
「いや、俺の気のせいかもしれないんだけどさ、あいつらが吉原たちを使って山口に何かしようとしてるような感じなんだよね。俺は全然気にしてないんだけどさ、あいつらってバカだから何かとんでもないことをしでかさないかなって思っちゃったんだよ。河野は聞いてないよな?」
「ウチが何か知ってたらどうだって言うのさ」
「いや、何も知らないんならいいだ。悪いんだけどさ、何か良くないことをしているようだったら俺に教えてくれ」
「教えるのは良いんだけどさ、なんで山口じゃなくて奥谷に教えないといけないわけさ」
「俺は思うんだけどさ、山口に直接そんな事を言ったって気にしないと思うんだよ。俺が代わりに対処できることがあればやっときたいって思うんだよね」
「へえ、奥谷って山口の事をよく知ってるんだね」
「それなりに付き合い長いからな。小さい頃から見てればある程度の性格はわかるよ」
「だってさ、泉も割と付き合い長いって言ってたけど、そんな言い方して泉が協力してくれるのかな?」
「何言ってるんだよ。宮崎って正義の味方みたいに困っている奴の味方をしてくれるんだぜ。俺はそんな宮崎を知ってるからこうして頼んでるんだよ」
「だってさ、泉は亜梨沙たちから山口を助けることになっちゃうのかな?」
「どうだろうね。本当に山口さんが亜梨沙ちゃんたちから何かされるっていうんなら助けるよ。でもさ、それって梓ちゃんと奥谷君の気のせいかもしれないよね」
「まあな、今は何も起きてないし、何も起きないのが一番だよな。でもさ、何かありそうだなって思ったら教えてくれよ。何か起きてからじゃ遅いってこともあるからさ。それと、もう一つ聞いていいかな?」
「なに?」
「宮崎ってさ、好きなやつとかいるの?」
「……。いたとしてさ、それを奥谷君に教える必要ってあるのかな?」
「あれ、もしかして、奥谷って泉の事好きだったりするのか?」
「違うって、俺じゃなくて朋英が、って、何でもない。ごめん、この話は忘れてくれ」
「どうする。忘れてくれって言われたけど、そんな事出来ないよね。それにさ、そんな事を聞くって事は泉に気があるって事なんじゃないのかな?」
「待ってくれよ。宮崎のが好きな相手がいるのか知りたいのは俺なんじゃなくて、朋英なんだって。だからさ、それを聞きたかったのは俺じゃないんだよ」
「奥谷君は私に好きな人がいるか気にならないって事なのかな?」
「いや、気にはなるけどさ、そういうのは今じゃないっていうか、山口の事が片付いてからっていうか」
「おいおい、そんなんじゃ泉は奥谷に協力なんかしないんじゃないかな。じゃあさ、協力してもらうために奥谷が泉に飯でも奢ってやんなきゃな」
「待ってくれよ。それってどういうことだよ」
「奥谷は泉の気持ちを弄んじゃったからな。それを償うって意味でも、何かおごってやんなよ。次の日曜にケーキでも奢ってやれって。なあ、泉もそれくらいしてもらわないと手伝う気持ちがわかないよな」
「そうだね。私もいきなりそんな事を言われたからびっくりしちゃったもんね。ケーキをおごってくれるなら考え直してもいいかな」
「わかったよ。じゃあ、次の日曜に小学校近くの喫茶店でいいか?」
「私はそれで良いよ。梓ちゃんは大丈夫?」
「あ、ウチはその日どうしても外せない用事があるんだよ。代わりに山口を誘って行ってきなよ」
「え、梓ちゃんは来ないの?」
「ごめんね、三人で楽しんでおいで」

 三人でって河野は言ってくれたけど、どう考えても山口は来ないと思うんだよな。来てくれたら嬉しいけど、俺が嬉しいってだけで山口は来てくれないんだよな。今まで何度か誘ったことがあったけど、全部断られていたし今回も無理なんだろうな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...