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第24話 何気ない会話の中に
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中華風たい焼きの名前の由来。それを工藤太郎なら知っているのではないかと思った工藤珠希はそれとなく聞いてみることにした。
上手く聞き出す自信はなかったけれど、太郎なら聞いたことを素直に答えてくれる。そんな自信だけはあったのだ。
「なんでこれって中華風たい焼きなんだろう?」
「それって、中身がこしあんでしょ?」
「うん、そうだね。こしあんだけど、それがどうかしたの?」
「そのこしあんってのが中華風の秘密なんだよ」
「秘密って、胡麻団子もこしあんだったと思うだけど、それが中華風っていう名前の理由だったらショックだわ。そんなことないとは思うけど、そんな理由だったら本当にショックだわ」
「胡麻団子とは関係ないよ。その時は胡麻団子なんて見たことも無かったよ。おじさんなら知ってたかもしれないけど、俺は全然知らなかったからね。ちょっと前に食べに行った中華料理屋さんで初めて知ったんだし」
「何回か家族で中華を食べに行ったことはあったと思うけど、食後はいつも杏仁豆腐だったもんね。この前太郎が頼んでたセットのデザートが胡麻団子だった時があったけど、その時に初めて食べたって事?」
「うん、そうだよ。名前は知ってたんだけど、俺は串団子に胡麻が乗ってるのを想像したからビックリしちゃったよ。これは一体何なんだって思ったんだけど、よくよく観察してみたら胡麻がびっしりついていたからさ、そういう事なのかって納得したよね。それで、一口食べてみたらさらに驚いちゃった。周りの胡麻が甘いものだとばかり思ってたんで中にあんこが入っててさ、これは何なんだろうって思っちゃったよ。珠希ちゃんは胡麻団子って食べたことある?」
「え、普通にあるけど。太郎の前でも食べたことあったよね?」
「そう言えばそうかも。あの時は何を食べてるんだろうって思ってたけど、今になって思えば珠希ちゃんが胡麻団子を食べてたのを何回も見てたね」
胡麻団子について話をしている二人ではあるが、工藤珠希が気になっているのは胡麻団子ではなくなぜあのたい焼きが中華風と言う名前になっているのかという事だ。太郎はその事について教えてくれるつもりはないのだろうか。工藤珠希は少し気になっていた。
「胡麻団子の事はもういいよ。それで、なんでこのたい焼きが中華風って名前になったのか教えてよ。あんまり焦らすのって良くないよ」
「ごめんごめん、焦らすつもりではなかったんだ。最近驚いたことを珠希ちゃんに教えたくてつい余計なことを言ってしまっただけなんだ」
「最近驚いたことって、あんたはそんな事に驚くよりももっとすごい体験してるでしょ。普通な感じで通話してるけどさ、あんたが今いるのって地球じゃないどこか別の世界なんだよ。宇宙船に乗っても行けないようなどこにあるかもわからないような場所にいるうえに、魔王を三体倒せって言われてそれもやり遂げたんでしょ。胡麻団子を初めて食べた衝撃よりもそっちの方が驚きだと思うんだけど、あんたの価値基準ってどうなってるわけ?」
「そう言われてもな、俺にとって魔王を倒すことなんてそこまで特別なコトじゃないからね。ほら、ゲームとかでもよく魔王を倒してたし、珠希ちゃんが勝てない相手もかわりに倒してあげてたでしょ」
「それはボクがゲーム下手なだけだし。それよりも、ゲームと現実を同じ尺度とで測るのは良くないと思うよ。さすがに死んだりはしないと思うけど、魔王と戦って太郎が怪我するのなんて見たくないからね」
「多少は怪我をすることもあるし、何だったら命を落としかけたこともあるんだけどね。イザーちゃんが何とかしてくれるから平気だったりするんだよ。この通話を繋ぐまで左手が無かったからね。再生してもらうのに少し時間がかかって待たせちゃったんだよ」
画面に映し出されている太郎の手は何事も無かったかのように動いていた。
左手を失っているというのが太郎の冗談なのかと思った工藤珠希ではあったが、無くなったという左手をよく見てみると日焼けとは異なる肌の色の違いがあるように感じていた。それが気のせいなのか、腕時計をしているからなのかハッキリとはわからないが、向こうの世界でもこちらと同じように命を落としたとしても生き返らせてくれる人がいるという事なのかもしれない。
ドクターポンピーノ程ではないにしても、イザーにもそのような力があるという事なのだろう。
「その左手って、何ともないわけ?」
「今のところ特に不都合はないね。こっちで宴会をしてくれるってのも俺の傷を癒す時間を作るためだったりするみたいだよ。そっちに戻るころには完全に馴染んでると思うから安心してね。ほら、いつもみたいに珠希ちゃんの頭をなでなでしてあげるから」
「いつもって、ボクは太郎にそんなことしてもらったことないだろ。何を言っているんだ君は」
「そう言えば最近してなかったね。最後にしたのは小学校さん二年生の冬休みだったかな?」
「そんな昔の事なんて言われても覚えてないって。それに、太郎は左手で撫でたりしてなかっただろ」
上手く聞き出す自信はなかったけれど、太郎なら聞いたことを素直に答えてくれる。そんな自信だけはあったのだ。
「なんでこれって中華風たい焼きなんだろう?」
「それって、中身がこしあんでしょ?」
「うん、そうだね。こしあんだけど、それがどうかしたの?」
「そのこしあんってのが中華風の秘密なんだよ」
「秘密って、胡麻団子もこしあんだったと思うだけど、それが中華風っていう名前の理由だったらショックだわ。そんなことないとは思うけど、そんな理由だったら本当にショックだわ」
「胡麻団子とは関係ないよ。その時は胡麻団子なんて見たことも無かったよ。おじさんなら知ってたかもしれないけど、俺は全然知らなかったからね。ちょっと前に食べに行った中華料理屋さんで初めて知ったんだし」
「何回か家族で中華を食べに行ったことはあったと思うけど、食後はいつも杏仁豆腐だったもんね。この前太郎が頼んでたセットのデザートが胡麻団子だった時があったけど、その時に初めて食べたって事?」
「うん、そうだよ。名前は知ってたんだけど、俺は串団子に胡麻が乗ってるのを想像したからビックリしちゃったよ。これは一体何なんだって思ったんだけど、よくよく観察してみたら胡麻がびっしりついていたからさ、そういう事なのかって納得したよね。それで、一口食べてみたらさらに驚いちゃった。周りの胡麻が甘いものだとばかり思ってたんで中にあんこが入っててさ、これは何なんだろうって思っちゃったよ。珠希ちゃんは胡麻団子って食べたことある?」
「え、普通にあるけど。太郎の前でも食べたことあったよね?」
「そう言えばそうかも。あの時は何を食べてるんだろうって思ってたけど、今になって思えば珠希ちゃんが胡麻団子を食べてたのを何回も見てたね」
胡麻団子について話をしている二人ではあるが、工藤珠希が気になっているのは胡麻団子ではなくなぜあのたい焼きが中華風と言う名前になっているのかという事だ。太郎はその事について教えてくれるつもりはないのだろうか。工藤珠希は少し気になっていた。
「胡麻団子の事はもういいよ。それで、なんでこのたい焼きが中華風って名前になったのか教えてよ。あんまり焦らすのって良くないよ」
「ごめんごめん、焦らすつもりではなかったんだ。最近驚いたことを珠希ちゃんに教えたくてつい余計なことを言ってしまっただけなんだ」
「最近驚いたことって、あんたはそんな事に驚くよりももっとすごい体験してるでしょ。普通な感じで通話してるけどさ、あんたが今いるのって地球じゃないどこか別の世界なんだよ。宇宙船に乗っても行けないようなどこにあるかもわからないような場所にいるうえに、魔王を三体倒せって言われてそれもやり遂げたんでしょ。胡麻団子を初めて食べた衝撃よりもそっちの方が驚きだと思うんだけど、あんたの価値基準ってどうなってるわけ?」
「そう言われてもな、俺にとって魔王を倒すことなんてそこまで特別なコトじゃないからね。ほら、ゲームとかでもよく魔王を倒してたし、珠希ちゃんが勝てない相手もかわりに倒してあげてたでしょ」
「それはボクがゲーム下手なだけだし。それよりも、ゲームと現実を同じ尺度とで測るのは良くないと思うよ。さすがに死んだりはしないと思うけど、魔王と戦って太郎が怪我するのなんて見たくないからね」
「多少は怪我をすることもあるし、何だったら命を落としかけたこともあるんだけどね。イザーちゃんが何とかしてくれるから平気だったりするんだよ。この通話を繋ぐまで左手が無かったからね。再生してもらうのに少し時間がかかって待たせちゃったんだよ」
画面に映し出されている太郎の手は何事も無かったかのように動いていた。
左手を失っているというのが太郎の冗談なのかと思った工藤珠希ではあったが、無くなったという左手をよく見てみると日焼けとは異なる肌の色の違いがあるように感じていた。それが気のせいなのか、腕時計をしているからなのかハッキリとはわからないが、向こうの世界でもこちらと同じように命を落としたとしても生き返らせてくれる人がいるという事なのかもしれない。
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「いつもって、ボクは太郎にそんなことしてもらったことないだろ。何を言っているんだ君は」
「そう言えば最近してなかったね。最後にしたのは小学校さん二年生の冬休みだったかな?」
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