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おパンツ戦争
第69話 野生のサキュバス達の思い
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真剣な表情でイザーを見ているサキュバスのお姉さんと同じように他のサキュバス達もイザーを真っすぐに見つめていた。
断られてしまっても後悔はない。イザーの怒りを買って殲滅されるようなことになったとしても、その時期が少し早くなってしまっただけの事だと思っているのだ。
自分を見つめてくる真剣な眼差しに答えるようにイザーは一人一人の顔を確認し、最後にサキュバスのお姉さんを真っすぐに見つめて、イザーが工藤珠希を見る時と同じ笑顔を見せていた。
「傘下に入れてくれって話だけど、私が決める事じゃないんでこの場では何とも言えないね。でも、ちょっと前にうまなちゃん達とも話してたことがあって、あなたたち野生のサキュバスと仲良く出来たらいいのにねってみんな考えてるんだよ。今まで色々と行き違いはあったけど、私たちとしても同じサキュバスであるあなたたちと事を構えるようなことはしたくないんだよね。だって、あなたたちがどんなに頑張ったところで私には勝つことが出来ないんだから。それをわかった上で挑んでくるのは凄いことだと思うんだけど、もう少しお互いにとっていい方法があるんじゃないかなって思うよ」
イザーの言う通りで、今まで幾度となく衝突を繰り返してきた零楼館とその他のサキュバス達。
サキュバス界において新興勢力である零楼館サイドに対して圧倒的な人員をもって制圧しようとしたこともあったのだが、それらのほとんどはイザー一人の手によってあっという間に返り討ちにあっていたのであった。何度負けても立ち上がる不屈の精神を持つものも多くいたのだが、何度挑んでも攻略の糸口さえ見るけることの出来ない状況に一人また一人と戦う意欲を削がれていっていたのである。
このままでは自然消滅してしまうと考えたサキュバスサイドは負けるとわかってはいたものの定期的に零楼館と戦うことによって新規参戦者を募ることはしていた。ただ、その新規参戦者も数回参加すると自分の無力さを実感し、戦う意欲もほぼ無くなってしまっているのが現状であった。
そんな中、サキュバスサイドの切り札として考えられたのが栗宮院うまなとイザーの寵愛する工藤珠希を味方に引き入れるという作戦だったのだが、その作戦も工藤珠希に直接会ってその魅力に惹かれたサキュバス達の考えを完全に変えさせる結果になってしまったのだ。
「私たちの傘下に入るってのはここにいるあなたたちだけって事なのかな?」
「はい、他の仲間には何も言っていませんので今時点ではこの場にいる者だけになります。ただ、私たちの考えを伝えれば多くの者も賛同してくれるとは思います。意地になって最後まで敵対しようとする者もいると思うのですが、ハッキリ言ってしまうとそういった人たちはただ騒いでいるだけで何も実行することが出来ず力のない口先だけの弱者なので気にする必要も無いと思います」
「なかなかハッキリ言うね。そういった人たちはどこにでもいるかもしれないな。私も今まで様々な世界で色々な人を見てきたけど、そういった人たちは自分たちの主張を通すためにはどんな手段だって用いるから結構面倒なことになると思うよ。どんなに些細なことでもそれが重要なことかのように触れ回っていくだろうし、物事の表面しか見ることの出来ない多くの人達はそれを真実だと思い込んでしまう事だってあるんじゃないかな。みんながみんなあなたたちのように“ちゃんと”自分を持っているとは限らないからね。それでも、気にする必要はないって言えるのかな?」
「気にする必要は無いと言えます。これだけは断言できます」
「そんなに言い切るとは大した自身だね。その根拠はあるのかな?」
「上手く言葉には出来ませんが、私は珠希ちゃんに会って話をして何か凄く凄いものを感じました。何と言うか、心の底から満たされているような不思議な感覚でした。それを感じたのが私だけなのかと思っていましたが、この場にいるみんなが私と同じような気持ちを感じていたんです。もちろん、みんながみんな珠希ちゃんとお話をしたというわけではないのですけど、話をしていない者も含めてみんな珠希ちゃんと一緒にいることで今までになかったような幸福感を感じて一つになっているような感覚を味わっていました。だから、私はこの場にいないサキュバスの子たちも珠希ちゃんと同じ空間にいることが出来れば争う事もなく平和に過ごすことが出来るんじゃないかと思ってるんです」
サキュバスのお姉さんが話を終えると同時に賛同するかの如くサキュバス達から拍手が沸き起こった。その中には数人のサキュバス星人も混ざっているのだが、イザーはその事に気付くことはなかった。
「なるほど、確かに君たちの言う通りで珠希ちゃんには私たちを幸せな気持ちにさせる凄い力がある。それは事実だ。でも、私たちが珠希ちゃんを独占したいと言ったらどうするのかな?」
「何もしません。その事実を黙って受け入れるだけです。私たちが今まで何となく戦っていたという理由で攻めていたから敗走することも蘇ることも出来たと思うんですが、責める目的が珠希ちゃんの奪取になった時点で私たちは何も残らなくなると思います。それは間違いないですよね?」
「確かにね。君たちが珠希ちゃんを欲しがって取りに来たんだとしたら、今までとは違ってみんな本気になるだろうね。レジスタンスの最終兵器も動き出しちゃうと思うし、そうなったら私でも止められないと思うよ」
「私たちは、そうならないように祈るだけです。今一度お尋ねいたしますが、私たちが零楼館の傘下に加えていただけるでしょうか?」
「私としては問題無いと思うんだけど、今のうまなちゃんの状況を考えると返事は待ってもらうことになるかもしれないね。少なくとも、今私たちが抱えている問題が解決するまでは答えられないと思うよ」
断られてしまっても後悔はない。イザーの怒りを買って殲滅されるようなことになったとしても、その時期が少し早くなってしまっただけの事だと思っているのだ。
自分を見つめてくる真剣な眼差しに答えるようにイザーは一人一人の顔を確認し、最後にサキュバスのお姉さんを真っすぐに見つめて、イザーが工藤珠希を見る時と同じ笑顔を見せていた。
「傘下に入れてくれって話だけど、私が決める事じゃないんでこの場では何とも言えないね。でも、ちょっと前にうまなちゃん達とも話してたことがあって、あなたたち野生のサキュバスと仲良く出来たらいいのにねってみんな考えてるんだよ。今まで色々と行き違いはあったけど、私たちとしても同じサキュバスであるあなたたちと事を構えるようなことはしたくないんだよね。だって、あなたたちがどんなに頑張ったところで私には勝つことが出来ないんだから。それをわかった上で挑んでくるのは凄いことだと思うんだけど、もう少しお互いにとっていい方法があるんじゃないかなって思うよ」
イザーの言う通りで、今まで幾度となく衝突を繰り返してきた零楼館とその他のサキュバス達。
サキュバス界において新興勢力である零楼館サイドに対して圧倒的な人員をもって制圧しようとしたこともあったのだが、それらのほとんどはイザー一人の手によってあっという間に返り討ちにあっていたのであった。何度負けても立ち上がる不屈の精神を持つものも多くいたのだが、何度挑んでも攻略の糸口さえ見るけることの出来ない状況に一人また一人と戦う意欲を削がれていっていたのである。
このままでは自然消滅してしまうと考えたサキュバスサイドは負けるとわかってはいたものの定期的に零楼館と戦うことによって新規参戦者を募ることはしていた。ただ、その新規参戦者も数回参加すると自分の無力さを実感し、戦う意欲もほぼ無くなってしまっているのが現状であった。
そんな中、サキュバスサイドの切り札として考えられたのが栗宮院うまなとイザーの寵愛する工藤珠希を味方に引き入れるという作戦だったのだが、その作戦も工藤珠希に直接会ってその魅力に惹かれたサキュバス達の考えを完全に変えさせる結果になってしまったのだ。
「私たちの傘下に入るってのはここにいるあなたたちだけって事なのかな?」
「はい、他の仲間には何も言っていませんので今時点ではこの場にいる者だけになります。ただ、私たちの考えを伝えれば多くの者も賛同してくれるとは思います。意地になって最後まで敵対しようとする者もいると思うのですが、ハッキリ言ってしまうとそういった人たちはただ騒いでいるだけで何も実行することが出来ず力のない口先だけの弱者なので気にする必要も無いと思います」
「なかなかハッキリ言うね。そういった人たちはどこにでもいるかもしれないな。私も今まで様々な世界で色々な人を見てきたけど、そういった人たちは自分たちの主張を通すためにはどんな手段だって用いるから結構面倒なことになると思うよ。どんなに些細なことでもそれが重要なことかのように触れ回っていくだろうし、物事の表面しか見ることの出来ない多くの人達はそれを真実だと思い込んでしまう事だってあるんじゃないかな。みんながみんなあなたたちのように“ちゃんと”自分を持っているとは限らないからね。それでも、気にする必要はないって言えるのかな?」
「気にする必要は無いと言えます。これだけは断言できます」
「そんなに言い切るとは大した自身だね。その根拠はあるのかな?」
「上手く言葉には出来ませんが、私は珠希ちゃんに会って話をして何か凄く凄いものを感じました。何と言うか、心の底から満たされているような不思議な感覚でした。それを感じたのが私だけなのかと思っていましたが、この場にいるみんなが私と同じような気持ちを感じていたんです。もちろん、みんながみんな珠希ちゃんとお話をしたというわけではないのですけど、話をしていない者も含めてみんな珠希ちゃんと一緒にいることで今までになかったような幸福感を感じて一つになっているような感覚を味わっていました。だから、私はこの場にいないサキュバスの子たちも珠希ちゃんと同じ空間にいることが出来れば争う事もなく平和に過ごすことが出来るんじゃないかと思ってるんです」
サキュバスのお姉さんが話を終えると同時に賛同するかの如くサキュバス達から拍手が沸き起こった。その中には数人のサキュバス星人も混ざっているのだが、イザーはその事に気付くことはなかった。
「なるほど、確かに君たちの言う通りで珠希ちゃんには私たちを幸せな気持ちにさせる凄い力がある。それは事実だ。でも、私たちが珠希ちゃんを独占したいと言ったらどうするのかな?」
「何もしません。その事実を黙って受け入れるだけです。私たちが今まで何となく戦っていたという理由で攻めていたから敗走することも蘇ることも出来たと思うんですが、責める目的が珠希ちゃんの奪取になった時点で私たちは何も残らなくなると思います。それは間違いないですよね?」
「確かにね。君たちが珠希ちゃんを欲しがって取りに来たんだとしたら、今までとは違ってみんな本気になるだろうね。レジスタンスの最終兵器も動き出しちゃうと思うし、そうなったら私でも止められないと思うよ」
「私たちは、そうならないように祈るだけです。今一度お尋ねいたしますが、私たちが零楼館の傘下に加えていただけるでしょうか?」
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