百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎

文字の大きさ
72 / 127
おパンツ戦争

第72話 ピンク脳

しおりを挟む
 嫌な予感というものは不思議と当たってしまうモノであって、嫌なものを想像しなければいいのであるのだがそれは難しいのである。どうしても嫌な方へと考えが進んでしまう事があるのだが、今の工藤珠希と栗鳥院柘榴のように明らかに怪しい自動販売機が一台だけ存在しているこの状況ではどうしてもソレに目がいってしまうのは仕方のない話である。
 ただ、栗宮院うまなと鈴木愛華がソレを選ぶとは限らないし、ソレを選んだところで変な商品が並んでいるとも限らないのだ。
 鈴木愛華が持っている二本のお茶はまだ理解出来るのだが、栗宮院うまなはどこで手に入れたのか段ボール箱を両手で抱えるようにして持っていた。スーパーなどでは時々見かける商品を入れる用の段ボール箱がなぜ自動販売機のコーナーにも置いてあるのだろうか。
 こんな辺鄙な場所にある自動販売機で大量に購入する人がいたとしても、そんな人であれば自分で箱なり袋なりを持ってくると思うのだが、その人ように段ボール箱が置いてあるとでもいうのだろうか。そんな馬鹿な話は無いと思うのだが、実際に栗宮院うまなが段ボール箱を持っていることからその場にあったと推測されるのである。。

「柘榴ちゃんにはお茶を買ってきたよ。愛華ちゃんが柘榴ちゃんがいつも飲んでいるお茶がこれだよって教えてくれたからコレにしてみたんだ。これって柘榴ちゃんが好きなお茶であってるのかな?」
「大正解。私はこのお茶をよく飲んでるのだよ。愛華が一緒にいてくれて本当に良かったよ。持つべきものは何とやらってやつだね」
「あっててよかった。ちょっとだけ愛華ちゃんが嘘ついてたらどうしようかなって思ってたんだ。でも、やっぱり愛華ちゃんは嘘つかなかったんだね」
「そうだよ。私はうまなちゃんに嘘なんてつかないからね。だから、さっき珠希ちゃん用に買ったのは私が飲むんで交換しようか」
「それはダメ。これは絶対に珠希ちゃんに飲んでもらうの。珠希ちゃんにはこれが一番似合ってるってうまなちゃんは思ってるんだもん。だから、これは全部珠希ちゃんに飲んでもらうんだもん」

 栗宮院うまなは鈴木愛華の行動を遮るように工藤珠希の前へと段ボール箱を持っていくと、その中から一本取り出して工藤珠希にて渡してきたのだ。

「はい、珠希ちゃんの好みがわからなかったから珠希ちゃんに似合いそうな飲み物を買ってみたよ。気に入ってくれたら嬉しいな」
「あ、ありがとう。普段あんまり飲まないけど好きなやつだから嬉しいよ」
「本当に? 良かった。珠希ちゃんには可愛いイチゴミルクが似合うと思ったんだよね。でも、うまなちゃんは他にも珠希ちゃんに似合うと思うモノを買ってるんで安心してね」

 イチゴミルクはそれなりに飲むこともあるのだけれど、のどが渇いているこの瞬間はもう少しすっきりとした飲み物が良いと思った工藤珠希ではあったが、せっかくの好意を無駄にするのも悪いと思って素直に受け取ったのだ。

「でも、それだけだと余計に喉が渇いてしまうかもしれないので、これもあげるね。珠希ちゃんにはこれも似合うと思うんだ」
「わ、わあ、二つもありがとう。でも、そんなにたくさんは飲めないかも」
「大丈夫。他にも色々あるけど、とりあえずはこれを飲んでね」

 次に渡されたのはエナジードリンクのモンスターパイプラインパンチであった。
 エナジードリンクをごくごく飲むのはどうなのかと思ったのだけれど、イチゴミルクよりは飲みやすいかもしれない。そう思っていた工藤珠希に対して栗宮院うまなはさらには段ボール箱からドリンクを取り出したのである。。

「その次はこれね。可愛い珠希ちゃんには可愛らしい飲み物が良いと思ったんだ。素敵な珠希ちゃんにはこれが良く似合うと思うよ」
「あ、ありがとう。でも、本当にそんなにたくさんは飲めないかも」
「ダイジョウブダイジョウブ。飲みきれなかったら持って帰ればいいんだよ」

 可愛らしい桃の絵が描かれたジュースを受け取ったのだ。
 スーパーでもコンビニでも見たことが無い飲み物だったのでラベルをじっくりと見てみることにしたのだが、そのラベルには日本語が一切書かれていなかった。どこの国の言語なのかもわからない得体の知れないドリンクではあったが、そこに描かれている桃はとても可愛らしく愛くるしいものであった。

「後はね、これとこれも良いんじゃないかな。珠希ちゃんはコレも似合うと思うんだよね」

 断りを入れる間もなく差し出されたドリンクを受け取る工藤珠希。
 先ほど受け取ったドリンクを自分の足元に置いてから新しいドリンクを受け取っているのだが、チラリと見えた箱の中にはまだたくさんドリンクが入っているように見えてしまった。

「ピンクレモネードと桜サイダーだよ。可愛くて女の子らしい珠希ちゃんにはよく似合うよね」
「ありがとう。でも本当にこんなにたくさんもらっても持って帰れないよ。こんなに一杯は飲みきれないし、持って帰るのも大変だよ」
「それもそうだね。じゃあ、コレはみんなで美味しく飲まなくちゃね。でも、うまなちゃんは珠希ちゃんにはすごくすごくこれが似合ってると思うよ」

 段ボール箱の中に入っているドリンクが全てピンク色だと気付いた時、本当は栗宮院うまなが幼児化しておらず演技であって自分をピンク派にしようとしているのではないかと思ってしまった。
 イザーと同じ水色のおパンツを推していた鈴木愛華が持っている水色のサイダーも気にはなっていたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

AV研は今日もハレンチ

楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo? AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて―― 薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!

ほのぼの学園百合小説 キタコミ!

水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。 帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、ほのぼの学園百合小説。 ♪ 野阪 千紗都(のさか ちさと):一人称の主人公。帰宅部部長。 ♪ 猪谷 涼夏(いのや すずか):帰宅部。雑貨屋でバイトをしている。 ♪ 西畑 絢音(にしはた あやね):帰宅部。塾に行っていて成績優秀。 ♪ 今澤 奈都(いまざわ なつ):バトン部。千紗都の中学からの親友。 ※本小説は小説家になろう等、他サイトにも掲載しております。 ★Kindle情報★ 1巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4 2巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP 3巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3 4巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P 5巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL 6巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ 7巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0F7FLTV8P Chit-Chat!1:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H Chit-Chat!2:https://www.amazon.co.jp/dp/B0FP9YBQSL ★YouTube情報★ 第1話『アイス』朗読 https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE 番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読 https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI Chit-Chat!1 https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34 イラスト:tojo様(@tojonatori)

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...