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おパンツ戦争
第95話 隠しきれない嬉しさと
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工藤太郎の目覚めをただ待っているだけの時間ではあったが、工藤珠希にとってこれ以上ない幸せな時間となっていた。
今までは姿を見ることすら出来ない遠い場所にいた工藤太郎がすぐ目の前にいると思えばこれ以上の幸せは無いと言えるのだ。
ただ、今のところ工藤太郎が起きてくる気配が無いのでただ待っていることしか出来ないというのがもどかしいのだが、ペタコン博士に頼んだところで宇宙船に連れていってもらう事は難しそうだ。宇宙船に空いた穴の影響で移動装置がうまく機能していないという事なので普通の人間である工藤珠希の体が耐えられるか確証を持てないという話だそうだ。
「太郎ちゃんにもう少しで会えるんだね。いつもよりも珠希ちゃんが嬉しそうに見えるんだけど、やっぱり今まで会えなかったからってのもあるの?」
「別にそういうのはないけど。嬉しいとかそんな感情はないかな。どっちかって言うと、今まで過ごしていた日常に戻っちゃうんだなって思いの方が強いかもね。今まで太郎がいるのが当たり前の生活だったんだけど、ここ数週間は太郎がいなかったんで家も何となく静かだったんだよ。太郎がいたからって別に頻繁に話してたりはしてなかったけど、何となく一人いないだけで家の中に空白が出来てるって感じだったのかな。一人で学校に行くのも勉強をするのも夜に外を見るのも嫌じゃなかったけど、何となく物足りないなって気持ちはあったかもしれない。それが太郎がいないからなのか、仲良くしている学校のみんなとあまり話せてなかったからなのかはわからないけど、ボクとしてはちょっとした変化を感じちゃっていつもと違う日常は何だか慣れないなって思ってたところなんだよ。太郎がいればボクが変わるとかそんなんじゃなくて、どっちかって言うとこのまま静かな時間を過ごすのも悪くないんじゃないかなって感じだったんだよ。そんなわけで、太郎が戻ってきたからってボクが変わるとかは無いんじゃないかな。どちらかというと、変わるのはボクじゃなくて環境の方なんじゃないかな」
「珠希ちゃんめっちゃ喋るね。そんなに寂しい思いをしてたんだ」
「だから、別にそんなに寂しいとか思ってないって。ボクは別に太郎がいなくても寂しいとかないから」
「そうは言っても、太郎ちゃんが出てくるまでここで待ってるつもりでしょ?」
「まあ、そういう事にはなるんだけど、久しぶりに地球に戻ってきて誰も出迎えてくれなかったら寂しいと思うから。ボクだったら帰る家も一緒だし、待っててあげても不自然じゃないと思うだけだし」
「そういう事にしておくね」
この場にいる全員が思っていたことは同じだろう。
工藤太郎の事をそこまで好きなのか。
恋する乙女のキラキラした眼差しとしか思えない視線をずっと宇宙船に向けていることからもわかるのだが、工藤珠希という人間は抑圧された状態が続くと感情を押し殺すことが出来なくなってしまうのかもしれない。そんな風に感じているのは工藤珠希と仲の良い零楼館の者たちだけではなく、野生のサキュバス達や宇宙人たちも同じだった。
それに、今日初めて対面したはずのペタコン博士も工藤珠希の気持ちを一瞬で感じ取って理解してしまったのだ。
もちろん、栗宮院うまな以外は誰もその事を口に出したりはしなかった。
「それにしても、イザーちゃんが気絶したままなんだけど、これってちゃんと元に戻るのかな?」
「大丈夫だと思うよ。太郎ちゃんの作った記憶転送装置で送った情報を処理しきれていないだけだと思うし、強い負荷を急激に受けた脳がリフレッシュするために固まってるんじゃないかな。あたしたちの知識の六割くらいを送っちゃったんだけど、ちょっとやり過ぎたかもね」
「やりすぎくらいがちょうどいいと思うよ。でも、知識の増えたイザーちゃんって今以上に無敵の存在になっちゃうかも」
「その可能性はあるかもしれないけれど、重要なことは何一つ送ってないんだ。どうでもいい知識をたくさん送っちゃったってのも、脳に負荷がかかり過ぎちゃってる理由の一つかも」
「その装置って私達にも使ってもらう事って出来るの?」
「全然可能だけど、危険だからやめといた方がいいかも。あなたたちが束になってもかなわないイザーちゃんがあんな風になってるんだよ。うまなちゃんたちは自分で大丈夫だと思う?」
「全然思わないかも。イザーちゃんがあんなになっちゃうなんて、私達には絶対無理だよ。でも、案外珠希ちゃんだったら平気だったりして」
勉強はそれなりに出来るとの自負があるのだが、イザーと比べて脳の処理速度が速いかと聞かれると即答は出来ると思っている。
どんな状況であったとしても、自分よりもイザーの方が優秀だと思っている。
それは誰と比べても変わることが無いと思うのだが、イザーと同じくらい優秀だと思っている人物はいる。
世の中にはなかなか断言することが難しい事象があったりもするのだけれど、こればっかりはイザーと工藤太郎の事を知っていれば間違いなく即答出来る問題であった。
「イザーちゃんであんな風になっちゃうんだったとしたら、ボクの脳は一瞬でオーバーヒートして脳が蒸発してしまうかもしれないよ」
笑いながらそう答えた工藤珠希ではあったが、この場にいるほどんどの人物が工藤珠希と同じ考えを持っていた。
そんな事を考えていた時、宇宙船から何かが落下してきて物凄い音を立てた後に地面に大きな穴が出来ていた。
結構な衝撃があったと思うのだが、すぐ近くにいたイザーがまったく反応していなかったという事を考慮してなのか、そこまで気にするものでもないのかもしれないと思っている者が大多数であった。
今までは姿を見ることすら出来ない遠い場所にいた工藤太郎がすぐ目の前にいると思えばこれ以上の幸せは無いと言えるのだ。
ただ、今のところ工藤太郎が起きてくる気配が無いのでただ待っていることしか出来ないというのがもどかしいのだが、ペタコン博士に頼んだところで宇宙船に連れていってもらう事は難しそうだ。宇宙船に空いた穴の影響で移動装置がうまく機能していないという事なので普通の人間である工藤珠希の体が耐えられるか確証を持てないという話だそうだ。
「太郎ちゃんにもう少しで会えるんだね。いつもよりも珠希ちゃんが嬉しそうに見えるんだけど、やっぱり今まで会えなかったからってのもあるの?」
「別にそういうのはないけど。嬉しいとかそんな感情はないかな。どっちかって言うと、今まで過ごしていた日常に戻っちゃうんだなって思いの方が強いかもね。今まで太郎がいるのが当たり前の生活だったんだけど、ここ数週間は太郎がいなかったんで家も何となく静かだったんだよ。太郎がいたからって別に頻繁に話してたりはしてなかったけど、何となく一人いないだけで家の中に空白が出来てるって感じだったのかな。一人で学校に行くのも勉強をするのも夜に外を見るのも嫌じゃなかったけど、何となく物足りないなって気持ちはあったかもしれない。それが太郎がいないからなのか、仲良くしている学校のみんなとあまり話せてなかったからなのかはわからないけど、ボクとしてはちょっとした変化を感じちゃっていつもと違う日常は何だか慣れないなって思ってたところなんだよ。太郎がいればボクが変わるとかそんなんじゃなくて、どっちかって言うとこのまま静かな時間を過ごすのも悪くないんじゃないかなって感じだったんだよ。そんなわけで、太郎が戻ってきたからってボクが変わるとかは無いんじゃないかな。どちらかというと、変わるのはボクじゃなくて環境の方なんじゃないかな」
「珠希ちゃんめっちゃ喋るね。そんなに寂しい思いをしてたんだ」
「だから、別にそんなに寂しいとか思ってないって。ボクは別に太郎がいなくても寂しいとかないから」
「そうは言っても、太郎ちゃんが出てくるまでここで待ってるつもりでしょ?」
「まあ、そういう事にはなるんだけど、久しぶりに地球に戻ってきて誰も出迎えてくれなかったら寂しいと思うから。ボクだったら帰る家も一緒だし、待っててあげても不自然じゃないと思うだけだし」
「そういう事にしておくね」
この場にいる全員が思っていたことは同じだろう。
工藤太郎の事をそこまで好きなのか。
恋する乙女のキラキラした眼差しとしか思えない視線をずっと宇宙船に向けていることからもわかるのだが、工藤珠希という人間は抑圧された状態が続くと感情を押し殺すことが出来なくなってしまうのかもしれない。そんな風に感じているのは工藤珠希と仲の良い零楼館の者たちだけではなく、野生のサキュバス達や宇宙人たちも同じだった。
それに、今日初めて対面したはずのペタコン博士も工藤珠希の気持ちを一瞬で感じ取って理解してしまったのだ。
もちろん、栗宮院うまな以外は誰もその事を口に出したりはしなかった。
「それにしても、イザーちゃんが気絶したままなんだけど、これってちゃんと元に戻るのかな?」
「大丈夫だと思うよ。太郎ちゃんの作った記憶転送装置で送った情報を処理しきれていないだけだと思うし、強い負荷を急激に受けた脳がリフレッシュするために固まってるんじゃないかな。あたしたちの知識の六割くらいを送っちゃったんだけど、ちょっとやり過ぎたかもね」
「やりすぎくらいがちょうどいいと思うよ。でも、知識の増えたイザーちゃんって今以上に無敵の存在になっちゃうかも」
「その可能性はあるかもしれないけれど、重要なことは何一つ送ってないんだ。どうでもいい知識をたくさん送っちゃったってのも、脳に負荷がかかり過ぎちゃってる理由の一つかも」
「その装置って私達にも使ってもらう事って出来るの?」
「全然可能だけど、危険だからやめといた方がいいかも。あなたたちが束になってもかなわないイザーちゃんがあんな風になってるんだよ。うまなちゃんたちは自分で大丈夫だと思う?」
「全然思わないかも。イザーちゃんがあんなになっちゃうなんて、私達には絶対無理だよ。でも、案外珠希ちゃんだったら平気だったりして」
勉強はそれなりに出来るとの自負があるのだが、イザーと比べて脳の処理速度が速いかと聞かれると即答は出来ると思っている。
どんな状況であったとしても、自分よりもイザーの方が優秀だと思っている。
それは誰と比べても変わることが無いと思うのだが、イザーと同じくらい優秀だと思っている人物はいる。
世の中にはなかなか断言することが難しい事象があったりもするのだけれど、こればっかりはイザーと工藤太郎の事を知っていれば間違いなく即答出来る問題であった。
「イザーちゃんであんな風になっちゃうんだったとしたら、ボクの脳は一瞬でオーバーヒートして脳が蒸発してしまうかもしれないよ」
笑いながらそう答えた工藤珠希ではあったが、この場にいるほどんどの人物が工藤珠希と同じ考えを持っていた。
そんな事を考えていた時、宇宙船から何かが落下してきて物凄い音を立てた後に地面に大きな穴が出来ていた。
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