百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎

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おパンツ戦争

第110話 工藤太郎の復活、イザーの焦り

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 未遂に終わったとはいえ、工藤太郎を殺しかけたことを悔いているイザーはいつもよりも大人しく一歩引いているように見えた。
 それと同じようにクリーキーも工藤太郎から離れていたのだが、そんな事は誰も気にしていなかった。気にするというよりも視界に入っていないというのが正しかったのかもしれない。

「あんなに死にそうな感じだったのにさ、もう大丈夫なのかい?」
「イザーちゃんの強烈な力で死にかけたけれど、今はもう大丈夫。宇宙用の防御パターンになってたのを忘れてたんだよね。地球と違って宇宙にいる時は衝撃に強くならないと駄目だったんだけど、イザーちゃんのじわじわと絞めてくる感じは本気で死を覚悟したよ。本当に強くなったね」
「太郎ちゃんは私のどんな攻撃も受け切ってくれるって安心感があったから久しぶりに本気を出しちゃったんだよ。いや、あんなこと言ってくれたから実力以上の力を出せたのかもしれないな。そう考えなきゃ太郎ちゃんをあんな風にしちゃうなんて思えないよ」

「そうそう、ソレが気になってたんだけど、太郎ちゃんはいったい何をイザーちゃんに言ったの?」

 みんなが気になっていることを栗宮院うまなが聞いていたのだが、言われたことを思い出したイザーは再び工藤太郎に襲い掛かっていた。
 ただし、今回は工藤太郎もしっかりと防御態勢を整えダメージを最小限に抑えていたので瀕死の状態に追い込まれるという事は無かった。

「私も気になってたんだけど、太郎ちゃんって何を言ってたのかな?」
「凄いよ。私が思いもしなかったことだったんだけど、太郎ちゃんはソレを一瞬で思いついてたんだって。私と太郎ちゃんはよく比較されることが多いんだけど、今回のこの話を聞いて太郎ちゃんの方が私よりも一歩も二歩も上だなって思ったよ」
「で、それがいったい何なのよ?」
「あんまり焦らさないで教えてくださいよ」

 サキュバスもレジスタンスも関係なく工藤太郎が何を言ったのか気になっているようだ。
 さりげなく人ごみに紛れて片岡瑠璃先生もいるのだが、他の人達と一緒に工藤太郎の言葉を待っていた。

 そんな中でも思い出しテレをしているイザーは工藤太郎を一方的に攻撃し続けている。
 当然工藤太郎はそれに対してしっかりと対処をしているのだけれど、高い技術の応酬によって致命傷は何とか避けることが出来ている工藤太郎ではあるのだが、イザーはどういうわけか確実に急所を狙って耐えられないであろう攻撃を繰り返しているのだ。
 微妙にテンポをずらしての攻撃なので工藤太郎の対処がほんの少し遅れそうになっているのが見て取れるけれど、イザーに反撃をすることなく受けに徹している工藤太郎にとっては攻撃を見てからの反応でも急所を避けることが出来ている。イザーの動きを止めるために反撃に転じてみようものなら、イザーの不安定なコンビネーションを全て避けきることが出来ずに先ほどのような失態を犯してしまいかねない。工藤太郎はそう思い、反撃をすることを諦めていたのだ。
 そんな工藤太郎の思いを知るはずもないイザーは相変わらず致命傷になりそうな攻撃を繰り返しているのだが、後ろからそっと近づいた片岡瑠璃先生がイザーの耳に息を吹きかけることに成功していた。イザーはリズム感の無い攻撃をピタッと止め、すぐに真横を向いて誰にやられたのか確認していた。

「張り切るのは構わないけれど、そんな乱暴なことをしちゃダメですよ。太郎ちゃんはまだ地球に帰ってきたばっかりで疲れているところなんですからね。イザーちゃんもその辺に気を使ってあげないと先生みたいなイイ女になれませんよ」

 自分の事をイイ女だと言い切った片岡瑠璃先生に対してこの場にいた全員が大きなリスペクトの気持ちを抱いていた。
 イイ女という事が間違いではないと思うのだが、それを自分で言ってのける姿に全員が心からの拍手を送っていた。

「それで、太郎ちゃんはいったいどんな提案をしたのかな?」
「先生、それがですね。太郎ちゃんって本当にすっごいことを思いついたんですよ。私もみんなも一生出てこないだろうなって発想だったんですけど、それを発表しちゃいましょう。でも、そんな素晴らしいことを私の口から言うなんておこがましいですし、直接太郎ちゃんの口から言ってもらいましょうよ。ね、その方がいいですよね?」

 誰に向かって話しているのだろうという感じのイザーではあったが、少しずつ近付いてきている多くの観衆はイザーに対して反応を返していた。
 いつの間にか学校中の人達が集まっているようで、見える範囲には隙間は一切なく人の海と言った感じであった。
 コレだけ多くの人が詰めかけてしまっていてはイザーや工藤太郎の声が聞こえないだろうと思ったのだが、なぜか片岡瑠璃先生が持っていたマイクを渡された二人はマイクを通してのやり取りに変わっていった。

「いつの間にか凄い人が集まっちゃってるね。太郎ちゃんの帰りを聞きつけて集まった人達なのかな?」

 イザーの言葉を聞いた観衆のいたるところから声が上がっているのだが、それは悲鳴にも似た叫び声であった。
 マイクを通して観衆の隅々までイザーの言葉が届いている。もちろん、スピーカーは校舎にもあるのだ。この騒ぎを聞きつけた人達が更に集まってくることも予想されるのだが、その中にはきっと工藤珠希はいないのだろう。

 ソレだけが少し心残りなイザーであった。
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