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誘拐事件
誘拐事件 第五話
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うまなちゃんが無事だという事は良いのだけど、そのすぐ横で寝転がっている二人の男性がピクリとも動かないのはとても気になってしまった。
頭のあたりに血だまりが出来ているのに気付かないふりをしていたけれど、うまなちゃんに近付いた時に血を踏んでしまって思わず固まってしまった。
俺はうまなちゃんに催促されるがままにうまなちゃんを縛り付けているロープを解いていったのだが、どうやっても体が自分の思い通りに動かなくて苦戦してしまっていた。
「お兄ちゃん、助けに来てくれてありがとうね」
うまなちゃんはそう言ってくれたけれど、俺としてはうまなちゃんを助けに来れたという自覚なんて持っていない。
銃声が聞こえた時にはまだ建物の中に入っていなかったんだし、もしかしたら俺が中に入らなかったことでこの二人が死んでしまった。なんて可能性があったりするのだろうか。そんな事を考えるのはよそう。
「すっごく怖かったよ。でも、みんなが助けに来てくれるって信じてたからね」
「うまなさんが無事で良かったです。なるべく早く助けたいって思ってたんですけど、その思い通りに行動出来て良かったですよ」
「そうだね。愛華が一番最初に来てくれてよかったかも。イザーちゃんだったらこんなに綺麗に出来ないもんね」
「そんなことないでしょ。私だってスマートにこの拳を叩き込むことくらい出来るし」
イザーちゃんが拳を突き出すと先ほど聞こえてきた銃声にも似た破裂音が聞こえるのだけど、それはいったい何の音なのだろう。知りたいような知らない方がいいような、そんな不思議な音が聞こえていた。
「イザーさんがそれを付けて殴ったら肉片が飛び散っちゃいますって。うまなさんに飛び散った肉片がついて怒られちゃうんじゃないですか」
「ええ、うまなちゃんはそれくらいじゃ怒らないと思うけどな。ね、うまなちゃんは怒らないよね?」
「いや、普通に怒るでしょ。愛華みたいに私に血がつかないようにしてくれないと困るんだからね」
楽しそうに会話をしている三人を見て俺は固まってしまっていた。
誘拐犯の生き残りの一人はやってきた二人と俺を見て固まっているようだが、あの感じだと何が起こっていたのか理解出来ていないのだろうな。
そんな俺も何が起こったのかさっぱりわかっていないのだ。
「じゃあ、私がこの人に尋問しちゃおうかな。愛華はうまなちゃんを連れてお姉ちゃんのところに行ってていいよ。お兄さんは私に付き合ってくれるよね?」
「うん、イザーちゃんに付き合うよ」
うまなちゃんは部屋を出ていくときに転がっている二人の死体を一瞬だけ見たのだが、すぐに俺に笑顔を向けて手を振りながら出ていったのだ。
俺は死体を見ないように気を付けていたのだけれど、うまなちゃんと愛華ちゃんが視線を下に移動させたことにつられて視線を落としてしまった。
当然だが、そこには先ほど見た時と何も変わっていない死体が転がっていたのだった。
「うまなちゃんもいなくなったことだし、君に質問があるんだけど答えてもらえるかな。別に答えたくなかったらそれでもいいんだけど、私は愛華みたいに優しくはないからね。あの子みたいに一発で殺したりなんてしないよ」
イザーちゃんみたいな可愛い子が言うような言葉ではない物騒な言葉が続いているのだが、その言葉の意味をちゃんと理解しているのかしていないのかわからない様子の男は俺に助けを求めるような視線を送ってきた。
俺に助けを求められても困るのだが。
「もしかして、日本語がわからないのかな。仕方ないな。この世界の人に使うと脳に良くないって言われてたけど別にいいよね。そんなに脳を使ってそうな感じでもないし、多少のダメージがあっても問題ないでしょ」
イザーちゃんが生き残りの男に向かって手を向けながら何かつぶやいていたところ、その手のひらからキラキラと光る紐が何本も男に向かって伸びていた。
男はその紐が見えていないのか 全くの無抵抗で体にまとわりついている紐を受け入れていた。
「これで言葉が通じるようになったと思うんだけど、私の言っていることがわかるかな?」
「急に頭を撃ちやがっておかしいんじゃないのか。こっちは何もまだ要求して無いっていうのに、おかしいんじゃないか」
「よし、言葉は通じるようになったね。じゃあ、君が魔王アスモデウスの転生体って事でいいんだよね?」
急に言葉が通じるようになったからなのか男は怯えていたようだが、残っているイザーちゃんも俺も愛華ちゃんと違って銃を持っていないという事に気が付いて少しだけ落ち着いたようだ。
「お前が何を言いたいのかわからないが、そんな弱そうな男と二人で俺に勝てると思ってるのか」
俺は確かに弱そうに見えると思う。
でも、今君の目の前にいる女の子はか弱そうに見えてもその腕につけている手甲は凄い質量で見た目以上に重いものだと思うよ。
それを付けたうえであれだけの速さの突きを繰り出せるんだから、イザーちゃんがか弱いってことはないと思うな。
「人質はいなくなったけど、今度はお前が人質になれ。いきなり銃をぶっ放した頭のおかしいメイドもいなくなったことだし、お前もさっきの女と同じように椅子に縛り付けてやる」
「あのさ、こっちの質問に答えてもらってもいいかな」
イザーちゃんが殴った壁には大きな穴が開いていたのだが、普通は鉄で出来ている壁を殴っても穴が空いたりなんてしないだろう。
そもそも、鉄に穴が開くほどの力と技術は人間の体で習得することが出来るのだろうか。
「はい、なんでも答えます。文句ばっかり言ってすいません」
「そう言ってくれると助かるよ。じゃあ、始めようか」
イザーちゃんは生き残った男をうまなちゃんが座っていた椅子に座らせていた。その左右に男の仲間が転がっているのだが、二人ともそんな細かいことは気にしていないようだった。
俺だけが転がっている二人の死体を気にしているのだが、ここまで二人が気にも留めないという事で本当は生きているんじゃないかという思いをわずかに抱いていた。
もちろん、転がっている二人が本当は生きているなんてことは、無かったのだけれどね。
頭のあたりに血だまりが出来ているのに気付かないふりをしていたけれど、うまなちゃんに近付いた時に血を踏んでしまって思わず固まってしまった。
俺はうまなちゃんに催促されるがままにうまなちゃんを縛り付けているロープを解いていったのだが、どうやっても体が自分の思い通りに動かなくて苦戦してしまっていた。
「お兄ちゃん、助けに来てくれてありがとうね」
うまなちゃんはそう言ってくれたけれど、俺としてはうまなちゃんを助けに来れたという自覚なんて持っていない。
銃声が聞こえた時にはまだ建物の中に入っていなかったんだし、もしかしたら俺が中に入らなかったことでこの二人が死んでしまった。なんて可能性があったりするのだろうか。そんな事を考えるのはよそう。
「すっごく怖かったよ。でも、みんなが助けに来てくれるって信じてたからね」
「うまなさんが無事で良かったです。なるべく早く助けたいって思ってたんですけど、その思い通りに行動出来て良かったですよ」
「そうだね。愛華が一番最初に来てくれてよかったかも。イザーちゃんだったらこんなに綺麗に出来ないもんね」
「そんなことないでしょ。私だってスマートにこの拳を叩き込むことくらい出来るし」
イザーちゃんが拳を突き出すと先ほど聞こえてきた銃声にも似た破裂音が聞こえるのだけど、それはいったい何の音なのだろう。知りたいような知らない方がいいような、そんな不思議な音が聞こえていた。
「イザーさんがそれを付けて殴ったら肉片が飛び散っちゃいますって。うまなさんに飛び散った肉片がついて怒られちゃうんじゃないですか」
「ええ、うまなちゃんはそれくらいじゃ怒らないと思うけどな。ね、うまなちゃんは怒らないよね?」
「いや、普通に怒るでしょ。愛華みたいに私に血がつかないようにしてくれないと困るんだからね」
楽しそうに会話をしている三人を見て俺は固まってしまっていた。
誘拐犯の生き残りの一人はやってきた二人と俺を見て固まっているようだが、あの感じだと何が起こっていたのか理解出来ていないのだろうな。
そんな俺も何が起こったのかさっぱりわかっていないのだ。
「じゃあ、私がこの人に尋問しちゃおうかな。愛華はうまなちゃんを連れてお姉ちゃんのところに行ってていいよ。お兄さんは私に付き合ってくれるよね?」
「うん、イザーちゃんに付き合うよ」
うまなちゃんは部屋を出ていくときに転がっている二人の死体を一瞬だけ見たのだが、すぐに俺に笑顔を向けて手を振りながら出ていったのだ。
俺は死体を見ないように気を付けていたのだけれど、うまなちゃんと愛華ちゃんが視線を下に移動させたことにつられて視線を落としてしまった。
当然だが、そこには先ほど見た時と何も変わっていない死体が転がっていたのだった。
「うまなちゃんもいなくなったことだし、君に質問があるんだけど答えてもらえるかな。別に答えたくなかったらそれでもいいんだけど、私は愛華みたいに優しくはないからね。あの子みたいに一発で殺したりなんてしないよ」
イザーちゃんみたいな可愛い子が言うような言葉ではない物騒な言葉が続いているのだが、その言葉の意味をちゃんと理解しているのかしていないのかわからない様子の男は俺に助けを求めるような視線を送ってきた。
俺に助けを求められても困るのだが。
「もしかして、日本語がわからないのかな。仕方ないな。この世界の人に使うと脳に良くないって言われてたけど別にいいよね。そんなに脳を使ってそうな感じでもないし、多少のダメージがあっても問題ないでしょ」
イザーちゃんが生き残りの男に向かって手を向けながら何かつぶやいていたところ、その手のひらからキラキラと光る紐が何本も男に向かって伸びていた。
男はその紐が見えていないのか 全くの無抵抗で体にまとわりついている紐を受け入れていた。
「これで言葉が通じるようになったと思うんだけど、私の言っていることがわかるかな?」
「急に頭を撃ちやがっておかしいんじゃないのか。こっちは何もまだ要求して無いっていうのに、おかしいんじゃないか」
「よし、言葉は通じるようになったね。じゃあ、君が魔王アスモデウスの転生体って事でいいんだよね?」
急に言葉が通じるようになったからなのか男は怯えていたようだが、残っているイザーちゃんも俺も愛華ちゃんと違って銃を持っていないという事に気が付いて少しだけ落ち着いたようだ。
「お前が何を言いたいのかわからないが、そんな弱そうな男と二人で俺に勝てると思ってるのか」
俺は確かに弱そうに見えると思う。
でも、今君の目の前にいる女の子はか弱そうに見えてもその腕につけている手甲は凄い質量で見た目以上に重いものだと思うよ。
それを付けたうえであれだけの速さの突きを繰り出せるんだから、イザーちゃんがか弱いってことはないと思うな。
「人質はいなくなったけど、今度はお前が人質になれ。いきなり銃をぶっ放した頭のおかしいメイドもいなくなったことだし、お前もさっきの女と同じように椅子に縛り付けてやる」
「あのさ、こっちの質問に答えてもらってもいいかな」
イザーちゃんが殴った壁には大きな穴が開いていたのだが、普通は鉄で出来ている壁を殴っても穴が空いたりなんてしないだろう。
そもそも、鉄に穴が開くほどの力と技術は人間の体で習得することが出来るのだろうか。
「はい、なんでも答えます。文句ばっかり言ってすいません」
「そう言ってくれると助かるよ。じゃあ、始めようか」
イザーちゃんは生き残った男をうまなちゃんが座っていた椅子に座らせていた。その左右に男の仲間が転がっているのだが、二人ともそんな細かいことは気にしていないようだった。
俺だけが転がっている二人の死体を気にしているのだが、ここまで二人が気にも留めないという事で本当は生きているんじゃないかという思いをわずかに抱いていた。
もちろん、転がっている二人が本当は生きているなんてことは、無かったのだけれどね。
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