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勇者の試練
勇者の試練 第五話
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愛華ちゃんが戻ってきてから二日も経つというのに誰一人として帰ってくる気配はなかった。
イザーちゃんがみんなとこまめに連絡を取ってくれているので何か不測の事態が起きたという事ではないようなのだが、戻ってくることが出来ない事情があるそうなのだ。少なくとも命にかかわるようなことは起きていないらしい。
俺も連絡を取って無事を確認しておきたいところではあったが、審査官が奥で待っていることを考えるとこれ以上時間をかけることも出来ないのだ。
愛華ちゃんは俺の手を引いて扉の前まで誘導すると、小さく深呼吸をしてから扉に手をかけていた。
「私と同じように真琴さんも扉を押してください。真っすぐ奥に押す感じで大丈夫ですから」
「え、それだけでいいの?」
「それだけで十分ですよ。この扉って奥に開くタイプですから」
「そうなんだ。イザーちゃんと試した時はどんなことをしても開かなかったから何か特別な方向に力を入れるのかと思ってたよ」
愛華ちゃんは扉から手を離すと体を反転させイザーちゃんとポンピーノ姫の方を見ていた。何か挑戦者のような表情に見えたのだけど、これから挑むダンジョンに対する決意の表れというものなのだろうか。
「真琴さんとイザーさんの二人が扉を開けることが出来ないんだったとしたら、私と真琴さんも扉を開けることが出来ないかもしれないですね。そうなると、勇者の試練を受けられなくなるという事ですよね。それは困ったな。って、アレ?」
俺は扉に手を添えていただけなのだが、愛華ちゃんが扉に触れた瞬間に音もなく扉が開いていった。
イザーちゃんと二人であれほど色々と頑張っていたのが嘘のようにあっさりと扉が開いてしまった。
俺と愛華ちゃんはイザーちゃんとポンピーノ姫の応援を背にダンジョンの中へと入っていったのだ。やや不機嫌そうな感じの愛華ちゃんが暗闇に向かって何発か撃っていたのだが、暗闇の中から悲鳴やうめき声が聞こえてきて少し不気味に感じてしまっていた。
何か話しかけようと思って咳払いをしてみたタイミングで愛華ちゃんは銃をぶっ放しているので俺は話しかけることも出来なくなってしまっていた。たぶん、タイミングが合わなかっただけだとは思うのだが、俺が話しかけようとしているタイミングで銃を撃つのは拒絶されているようにも感じてしまった。
「全く、こんな小さな明かりじゃ何も見えないですよね。このダンジョンを作った人って何を考えてるんでしょうか。それとも、このダンジョンを管理している全国勇者連合の怠慢って事なんでしょうかね」
明らかに俺に同意を求めているような感じだったのでそれに答えようとしたのだが、またしても俺がしゃべりだすよりも少しだけ早く引き金を三回引いていた。
これでは何も答えられないな。
「まあ、コレだけ暗くて狭いとあんまり離れない方がいいかもしれないですよね。こんな言い方をしたらあれですけど、真琴さんって戦力として計算出来ないですもんね」
「確かにそうかもしれないけど。あ、普通にしゃべっていいの?」
「え、普通に喋ってくれていいんですけど。私とは喋りたくないって事ですか?」
「そんなわけな」
今度は俺が話し終える前に引き金を四回引いていた。何か気に障ってしまうようなことでも言ったのかと思っていたが、暗闇の奥から命乞いをする影が現れた。
体から血が出ていなければ気付かないくらい周りと同化している影は愛華ちゃんに必死に命乞いをしているのだ。
「暗闇に紛れて私たちを襲おうとしたみたいだけど、そんなの通用するわけないですよね。武器も持たずに私たちを殺せると思ってたんですか?」
「いえ、そんな事は無いです。どうか、命だけはお助けください」
今まで愛華ちゃんが撃った数を考えるとこの影と同じようなのが十体以上いたという計算になるのかな。一発で一体を仕留めていたという前提にはなるが、十体以上の影が襲ってきていたと考えると、こいつらが素手でも俺たちを殺すことは簡単なんじゃないかと思う。
現に、こうして血が出ていなければこの影の存在に気付かなかったと思うのだ。
「助けてあげてもいいんだけど、このダンジョンは何回まであるのか教えて貰ってもいいですか?」
「正確なことはわからないですが、地下五階までは行ったことがあります。そこから先は命の危険を感じたので行ったことはないです」
「そうなんだ。じゃあ、審査官は地下五階にいるのかもしれないですね。とりあえず、そこを目指してもう少し頑張りましょうか」
影に銃を突きつけながら愛華ちゃんは優しい表情を見せてくれた。
これがギャップというやつかと感心していたのだが、世の中の男はこういったギャップに萌えるという事なのだろうな。
「ありがとうございます。あなたたちならきっと素晴らしい勇者になれると思います。応援してますので無事に試練を乗り越えてください」
「ありがとうね。あなたもこれから頑張ってね」
「はい、試練のダンジョンに入ってきた二人の男女がこんなに仲が良いのは意外でした。聞いた話によると、愛し合っている二人は」
「ごめんなさいね。やっぱり試練のダンジョンに出てくる敵は抹殺しとかないと審査官の印象良くないですよね」
影が愛し合っている二人はと言いかけたところで愛華ちゃんが引き金を引いたのだ。
俺が話をしようとしている時とは違って険しい表情で秘儀金を引いていたのだが、この影は何かを言おうとして撃たれていた。確実に何か言おうとしていたことを遮る形で引き金を引いていた。
「変なコト言われても困っちゃいますよね。殺す前に下に降りる階段がどこか聞いておけば良かったですね」
「そうかもしれないけど、あの影って何を言おうとしたんだろうね。愛し合っている二人は、って何だったんだろう?」
「さあ、どういう意味なんでしょうね。愛華全然わかんないな」
いつもと違う愛華ちゃんの様子に驚いてしまった俺はそれ以上何も聞くことは出来なかった。
聞いてはいけないことに触れてしまった時は、俺もあの影のように撃ち殺されてしまうのかもしれないな。
イザーちゃんがみんなとこまめに連絡を取ってくれているので何か不測の事態が起きたという事ではないようなのだが、戻ってくることが出来ない事情があるそうなのだ。少なくとも命にかかわるようなことは起きていないらしい。
俺も連絡を取って無事を確認しておきたいところではあったが、審査官が奥で待っていることを考えるとこれ以上時間をかけることも出来ないのだ。
愛華ちゃんは俺の手を引いて扉の前まで誘導すると、小さく深呼吸をしてから扉に手をかけていた。
「私と同じように真琴さんも扉を押してください。真っすぐ奥に押す感じで大丈夫ですから」
「え、それだけでいいの?」
「それだけで十分ですよ。この扉って奥に開くタイプですから」
「そうなんだ。イザーちゃんと試した時はどんなことをしても開かなかったから何か特別な方向に力を入れるのかと思ってたよ」
愛華ちゃんは扉から手を離すと体を反転させイザーちゃんとポンピーノ姫の方を見ていた。何か挑戦者のような表情に見えたのだけど、これから挑むダンジョンに対する決意の表れというものなのだろうか。
「真琴さんとイザーさんの二人が扉を開けることが出来ないんだったとしたら、私と真琴さんも扉を開けることが出来ないかもしれないですね。そうなると、勇者の試練を受けられなくなるという事ですよね。それは困ったな。って、アレ?」
俺は扉に手を添えていただけなのだが、愛華ちゃんが扉に触れた瞬間に音もなく扉が開いていった。
イザーちゃんと二人であれほど色々と頑張っていたのが嘘のようにあっさりと扉が開いてしまった。
俺と愛華ちゃんはイザーちゃんとポンピーノ姫の応援を背にダンジョンの中へと入っていったのだ。やや不機嫌そうな感じの愛華ちゃんが暗闇に向かって何発か撃っていたのだが、暗闇の中から悲鳴やうめき声が聞こえてきて少し不気味に感じてしまっていた。
何か話しかけようと思って咳払いをしてみたタイミングで愛華ちゃんは銃をぶっ放しているので俺は話しかけることも出来なくなってしまっていた。たぶん、タイミングが合わなかっただけだとは思うのだが、俺が話しかけようとしているタイミングで銃を撃つのは拒絶されているようにも感じてしまった。
「全く、こんな小さな明かりじゃ何も見えないですよね。このダンジョンを作った人って何を考えてるんでしょうか。それとも、このダンジョンを管理している全国勇者連合の怠慢って事なんでしょうかね」
明らかに俺に同意を求めているような感じだったのでそれに答えようとしたのだが、またしても俺がしゃべりだすよりも少しだけ早く引き金を三回引いていた。
これでは何も答えられないな。
「まあ、コレだけ暗くて狭いとあんまり離れない方がいいかもしれないですよね。こんな言い方をしたらあれですけど、真琴さんって戦力として計算出来ないですもんね」
「確かにそうかもしれないけど。あ、普通にしゃべっていいの?」
「え、普通に喋ってくれていいんですけど。私とは喋りたくないって事ですか?」
「そんなわけな」
今度は俺が話し終える前に引き金を四回引いていた。何か気に障ってしまうようなことでも言ったのかと思っていたが、暗闇の奥から命乞いをする影が現れた。
体から血が出ていなければ気付かないくらい周りと同化している影は愛華ちゃんに必死に命乞いをしているのだ。
「暗闇に紛れて私たちを襲おうとしたみたいだけど、そんなの通用するわけないですよね。武器も持たずに私たちを殺せると思ってたんですか?」
「いえ、そんな事は無いです。どうか、命だけはお助けください」
今まで愛華ちゃんが撃った数を考えるとこの影と同じようなのが十体以上いたという計算になるのかな。一発で一体を仕留めていたという前提にはなるが、十体以上の影が襲ってきていたと考えると、こいつらが素手でも俺たちを殺すことは簡単なんじゃないかと思う。
現に、こうして血が出ていなければこの影の存在に気付かなかったと思うのだ。
「助けてあげてもいいんだけど、このダンジョンは何回まであるのか教えて貰ってもいいですか?」
「正確なことはわからないですが、地下五階までは行ったことがあります。そこから先は命の危険を感じたので行ったことはないです」
「そうなんだ。じゃあ、審査官は地下五階にいるのかもしれないですね。とりあえず、そこを目指してもう少し頑張りましょうか」
影に銃を突きつけながら愛華ちゃんは優しい表情を見せてくれた。
これがギャップというやつかと感心していたのだが、世の中の男はこういったギャップに萌えるという事なのだろうな。
「ありがとうございます。あなたたちならきっと素晴らしい勇者になれると思います。応援してますので無事に試練を乗り越えてください」
「ありがとうね。あなたもこれから頑張ってね」
「はい、試練のダンジョンに入ってきた二人の男女がこんなに仲が良いのは意外でした。聞いた話によると、愛し合っている二人は」
「ごめんなさいね。やっぱり試練のダンジョンに出てくる敵は抹殺しとかないと審査官の印象良くないですよね」
影が愛し合っている二人はと言いかけたところで愛華ちゃんが引き金を引いたのだ。
俺が話をしようとしている時とは違って険しい表情で秘儀金を引いていたのだが、この影は何かを言おうとして撃たれていた。確実に何か言おうとしていたことを遮る形で引き金を引いていた。
「変なコト言われても困っちゃいますよね。殺す前に下に降りる階段がどこか聞いておけば良かったですね」
「そうかもしれないけど、あの影って何を言おうとしたんだろうね。愛し合っている二人は、って何だったんだろう?」
「さあ、どういう意味なんでしょうね。愛華全然わかんないな」
いつもと違う愛華ちゃんの様子に驚いてしまった俺はそれ以上何も聞くことは出来なかった。
聞いてはいけないことに触れてしまった時は、俺もあの影のように撃ち殺されてしまうのかもしれないな。
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