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THE GROUND ZERO Chapter1
第4章 忍び寄る魔の手【1】
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周囲は既に、闇夜に包まれていた。
市街地のパトロールが終わり、一旦持っていた装備品を部屋に置いてから、いつものおやっさんの店に行き、一杯ひっかけようとしていた僕だったのだが、僕の部屋の前に二人の兵士が何故か立っていたのだ。
「先輩、あの人達知り合いっすか?」
隣にいたジョンが僕に尋ねる。
「いや……知らない」
「知らないって……じゃあ何で、先輩の部屋の前であの二人立ってるんっすか」
「そんなの僕に訊かないでくれよ……」
思い当たる節といえば……背中に下げている鋼の剣を、マテリアルガントレットを貰ったついでにとって行ってしまったことくらいだろうか。
でもそれなら、僕が訓練所を去る前に教官から呼び止められるはずだし、なによりも、今のこの兵団にとって剣は不必要なもの。
いつからあそこに居るのかは知らないが、わざわざ兵士を二人寄越してまで取り返すような物でもないだろう。
じゃあ、連中の目的とは一体……。
「とりあえずジョン、お先どうぞ」
「ちょっと! だってあれ、どう見たって先輩に用事があるからあそこに立ってるんでしょ!」
「いや分からんぞ、ただあそこに立ってのんびりしてただけなのかもしれないぞ」
「のんびりしてる人間は、あんな何かを探すかのようにキョロキョロ周りを眺めたりなんてしないっす!」
ジョンの言っている通り、二人の兵士はしきりに周囲を確認していた。
もしかして……僕を探してるのか?
「先輩、また何かやらかしたんすか?」
「そんな、僕が問題児みたいな扱いをするなよな」
「いや……実際問題児じゃないっすか。この前なんて市民の酔っぱらい達をボッコボコにしたり……」
「あれはアイツらが、魔石エネルギーの料金が高くなったからって、兵士の僕に八つ当たりをしてきたから、軽く捻ってやっただけさ」
「そういう前歴がある時点で、先輩はもう真っ黒っす!」
「あーあーはいはい……それくらいの案件だったらいいけどね」
「あっ! ちょっと先輩!」
僕はジョンを背に、二人の兵士の元、及び僕の部屋の方へと足を向ける。
その程度の案件で、この兵士達が僕を探しているのだったら別に、本当に構わない。
しかしジョンには見えていなかったようだが、やつらは背中にライフルのような物を背負っている。
通常武器として、兵士にはハンドガンの携行が許可されている。しかしライフルに関しては、戦闘時のみの携行となっており、いくら兵士だからといって、それを持ち出すことは厳罰に処されかねない。
そんなことくらいなら、兵士であるなら分かりそうなものだが……分かっていて尚且つ、こいつらはライフルを所持しているのだろう。
一体、こんな落ちこぼれに、そこまでの装備をして出迎えるとは……何の用事だ、コイツら。
「あんたら、そこは僕の部屋だ。男の出待ちなんてされても、僕はちっとも嬉しくないのだが」
僕の声に気づき、二人の兵士がこちらを向く。
しかし、背中のライフルに手を掛けないところを見ると、どうやら僕を捕らえにきたというわけではなさそうだ。
僕も背中の剣の柄に、こっそり手を掛けていたのだが。
「ロクヨウ・コヨミだな」
「ああ、そうだけど。でも、そこは僕の部屋だ。僕の部屋の前で勝手に待ち伏せをしておいて、僕だけ名乗らせるっていうのはどうなのかな?」
「……我々はマグナブラ兵団中枢管理委員会の者だ。君には長官より、招集指令が掛かった。よって我らは、君を迎えに来た」
「兵団の中枢管理委員会が僕を? 一体どういう風の吹き回しだ……?」
マグナブラ兵団中枢管理委員会……何千人といるマグナブラの兵士全員を管理している、名前通りの中枢機関である。
モチロン中枢機関であるため、そこで役員をしている者は全て、兵士の将官クラスの人間ばかりだ。
そんな場所に二等兵の、しかも僕のような落ちこぼれた、窓際の兵士が呼び出されることなど滅多に無い。
それこそ、剣を一本かすめとったくらいでは……どうやら、事態は僕が考えてるよりも、もっと深刻なものだと受け止めた方がいいのかもしれないな。
しかも長官からの呼び出しとなると、尚更……。
「ここでは内容を話すことはできない。内容に関しては、直接長官から伝えたいとの御達しでな」
「……なるほど」
「同行は……してくれるよな?」
その時、二人の兵士から妙な威圧感を感じ取った。
これまでになかった、殺気。
どうやら拒否するのも、逃げるという選択肢も与えてはくれなさそうだ。
「ええ、モチロン。上役からの、直々のお誘いとなっては拒否もできまい」
「物分かりが良くて助かる……では、行くぞ」
二人の兵士は、僕を挟むようにして両横に立つ。手錠はされて無いものの、まるで連行されてるかのようだ。
いや、実際されてるのか。この状態なんだし。
「せ……先輩……! うっ……」
ジョンが僕の方へ駆け寄ってくるが、しかし二人の兵士が睨みを利かせ、それを妨げる。
「大丈夫だよジョン、僕はちょっと話をしに行くだけさ」
「話……っすか?」
「そう、それに僕、犯罪チックなことは多々したことあるけど、実際に法に引っかかるようなことはしてないし、大丈夫だろ」
「……その言い分じゃ、全然安心できないっす」
「まあ……もしかしたら昇進の話かもしれないしな」
「それは無いでしょ」
「おい、なんでそこだけ即答なんだよ!」
「解雇ならありそうっすけど」
「お前は僕のことが心配じゃなかったのかっ!?」
「まあ……そりゃあ心配っすよ……」
ジョンは俯いていた。
一応コイツはコイツなりに、僕のことを心配してくれているようだ。
まあ……ジョンとももう、随分と長い付き合いになるしな。
「もういいだろ、行くぞ」
両側を固める兵士は、僕に催促をする。
どうやら、これ以上の猶予はくれないようだ。せっかちなやつらだぜまったく……。
「ジョン、僕が勇者を目指したように、お前はお前の正義を目指していけ……これは先輩からの、最後の頼みだ」
「さ……最後の頼みって……」
「はははっ! まあ、こういう慣れないことが起きた時は、ロクなことが無いっていうからね。まあ一応さ」
そう、一応。
一応であって欲しいという、これは僕の希望でもあった。
「…………分かったっす! 自分、自分の正義を貫いて、もっともっと上を目指すっす!!」
「フッ……いつもは僕の頼みなんて、すぐには聞いてくれないくせに」
「先輩のいつものは頼みじゃなくて、ただの我がままっす」
「そうだったっけか……うん、じゃあ行ってくるよ」
「ええ! ご武運を!」
それから僕は、後輩に見守られながら、歩き始める。
後ろは決して、振り返らない。別にまだ、分かれると決まったわけじゃないし。
しかし僕のような末端の人間を、中枢管理委員会が直に呼び出す時は大抵、解雇を言い渡す時か、なにかしらの罪を罰される時だと、そういう解釈が成されている。
だから僕は、本当に一応の意味で別れの言葉を述べたに過ぎない。
帰って来れたら来れたで、発言を撤回したらいいことだしな。
だからきっと帰れるだろう、きっとまた戻って来て、あの後輩とダラダラした日々を過ごすのだろう。
そう僕は、高を括っていた。
中枢管理委員会の長官……アイツの顔を見るまでは。
市街地のパトロールが終わり、一旦持っていた装備品を部屋に置いてから、いつものおやっさんの店に行き、一杯ひっかけようとしていた僕だったのだが、僕の部屋の前に二人の兵士が何故か立っていたのだ。
「先輩、あの人達知り合いっすか?」
隣にいたジョンが僕に尋ねる。
「いや……知らない」
「知らないって……じゃあ何で、先輩の部屋の前であの二人立ってるんっすか」
「そんなの僕に訊かないでくれよ……」
思い当たる節といえば……背中に下げている鋼の剣を、マテリアルガントレットを貰ったついでにとって行ってしまったことくらいだろうか。
でもそれなら、僕が訓練所を去る前に教官から呼び止められるはずだし、なによりも、今のこの兵団にとって剣は不必要なもの。
いつからあそこに居るのかは知らないが、わざわざ兵士を二人寄越してまで取り返すような物でもないだろう。
じゃあ、連中の目的とは一体……。
「とりあえずジョン、お先どうぞ」
「ちょっと! だってあれ、どう見たって先輩に用事があるからあそこに立ってるんでしょ!」
「いや分からんぞ、ただあそこに立ってのんびりしてただけなのかもしれないぞ」
「のんびりしてる人間は、あんな何かを探すかのようにキョロキョロ周りを眺めたりなんてしないっす!」
ジョンの言っている通り、二人の兵士はしきりに周囲を確認していた。
もしかして……僕を探してるのか?
「先輩、また何かやらかしたんすか?」
「そんな、僕が問題児みたいな扱いをするなよな」
「いや……実際問題児じゃないっすか。この前なんて市民の酔っぱらい達をボッコボコにしたり……」
「あれはアイツらが、魔石エネルギーの料金が高くなったからって、兵士の僕に八つ当たりをしてきたから、軽く捻ってやっただけさ」
「そういう前歴がある時点で、先輩はもう真っ黒っす!」
「あーあーはいはい……それくらいの案件だったらいいけどね」
「あっ! ちょっと先輩!」
僕はジョンを背に、二人の兵士の元、及び僕の部屋の方へと足を向ける。
その程度の案件で、この兵士達が僕を探しているのだったら別に、本当に構わない。
しかしジョンには見えていなかったようだが、やつらは背中にライフルのような物を背負っている。
通常武器として、兵士にはハンドガンの携行が許可されている。しかしライフルに関しては、戦闘時のみの携行となっており、いくら兵士だからといって、それを持ち出すことは厳罰に処されかねない。
そんなことくらいなら、兵士であるなら分かりそうなものだが……分かっていて尚且つ、こいつらはライフルを所持しているのだろう。
一体、こんな落ちこぼれに、そこまでの装備をして出迎えるとは……何の用事だ、コイツら。
「あんたら、そこは僕の部屋だ。男の出待ちなんてされても、僕はちっとも嬉しくないのだが」
僕の声に気づき、二人の兵士がこちらを向く。
しかし、背中のライフルに手を掛けないところを見ると、どうやら僕を捕らえにきたというわけではなさそうだ。
僕も背中の剣の柄に、こっそり手を掛けていたのだが。
「ロクヨウ・コヨミだな」
「ああ、そうだけど。でも、そこは僕の部屋だ。僕の部屋の前で勝手に待ち伏せをしておいて、僕だけ名乗らせるっていうのはどうなのかな?」
「……我々はマグナブラ兵団中枢管理委員会の者だ。君には長官より、招集指令が掛かった。よって我らは、君を迎えに来た」
「兵団の中枢管理委員会が僕を? 一体どういう風の吹き回しだ……?」
マグナブラ兵団中枢管理委員会……何千人といるマグナブラの兵士全員を管理している、名前通りの中枢機関である。
モチロン中枢機関であるため、そこで役員をしている者は全て、兵士の将官クラスの人間ばかりだ。
そんな場所に二等兵の、しかも僕のような落ちこぼれた、窓際の兵士が呼び出されることなど滅多に無い。
それこそ、剣を一本かすめとったくらいでは……どうやら、事態は僕が考えてるよりも、もっと深刻なものだと受け止めた方がいいのかもしれないな。
しかも長官からの呼び出しとなると、尚更……。
「ここでは内容を話すことはできない。内容に関しては、直接長官から伝えたいとの御達しでな」
「……なるほど」
「同行は……してくれるよな?」
その時、二人の兵士から妙な威圧感を感じ取った。
これまでになかった、殺気。
どうやら拒否するのも、逃げるという選択肢も与えてはくれなさそうだ。
「ええ、モチロン。上役からの、直々のお誘いとなっては拒否もできまい」
「物分かりが良くて助かる……では、行くぞ」
二人の兵士は、僕を挟むようにして両横に立つ。手錠はされて無いものの、まるで連行されてるかのようだ。
いや、実際されてるのか。この状態なんだし。
「せ……先輩……! うっ……」
ジョンが僕の方へ駆け寄ってくるが、しかし二人の兵士が睨みを利かせ、それを妨げる。
「大丈夫だよジョン、僕はちょっと話をしに行くだけさ」
「話……っすか?」
「そう、それに僕、犯罪チックなことは多々したことあるけど、実際に法に引っかかるようなことはしてないし、大丈夫だろ」
「……その言い分じゃ、全然安心できないっす」
「まあ……もしかしたら昇進の話かもしれないしな」
「それは無いでしょ」
「おい、なんでそこだけ即答なんだよ!」
「解雇ならありそうっすけど」
「お前は僕のことが心配じゃなかったのかっ!?」
「まあ……そりゃあ心配っすよ……」
ジョンは俯いていた。
一応コイツはコイツなりに、僕のことを心配してくれているようだ。
まあ……ジョンとももう、随分と長い付き合いになるしな。
「もういいだろ、行くぞ」
両側を固める兵士は、僕に催促をする。
どうやら、これ以上の猶予はくれないようだ。せっかちなやつらだぜまったく……。
「ジョン、僕が勇者を目指したように、お前はお前の正義を目指していけ……これは先輩からの、最後の頼みだ」
「さ……最後の頼みって……」
「はははっ! まあ、こういう慣れないことが起きた時は、ロクなことが無いっていうからね。まあ一応さ」
そう、一応。
一応であって欲しいという、これは僕の希望でもあった。
「…………分かったっす! 自分、自分の正義を貫いて、もっともっと上を目指すっす!!」
「フッ……いつもは僕の頼みなんて、すぐには聞いてくれないくせに」
「先輩のいつものは頼みじゃなくて、ただの我がままっす」
「そうだったっけか……うん、じゃあ行ってくるよ」
「ええ! ご武運を!」
それから僕は、後輩に見守られながら、歩き始める。
後ろは決して、振り返らない。別にまだ、分かれると決まったわけじゃないし。
しかし僕のような末端の人間を、中枢管理委員会が直に呼び出す時は大抵、解雇を言い渡す時か、なにかしらの罪を罰される時だと、そういう解釈が成されている。
だから僕は、本当に一応の意味で別れの言葉を述べたに過ぎない。
帰って来れたら来れたで、発言を撤回したらいいことだしな。
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