英雄のいない世界で

赤坂皐月

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THE GROUND ZERO Chapter1

第4章 忍び寄る魔の手【3】

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「王族は滅んだ。よって王の居なくなったこの国は王族の代理として、この国の練魔大臣であるグリード様が、これより直接執政を行っていくこととなったのだ」
 
「……お前が取ったのか、その首を」

「フフッ、さあどうだろうな」

 セブルスは掴んでいた首を再び筒の中に入れ、ハンカチで手を拭くと、そのハンカチをゴミ箱の中へと放り投げた。

 もうコイツにとってあの首は、元君主であろうとなかろうと、ただの首でしかないんだろうな。

「そのために今日、君を呼び出したんだよ、ロクヨウ」

「そのために?」

「これからボク達は、新たな主君グリード様の下で、この国をまとめていかなければならない。しかしもし、王族が兵団のクーデターによって滅ぼされたと市民に知られては、不信感を抱かれてしまいかねない……そこでボクは、君の存在を思い出したんだよ」

 そう言ってセブルスが右手を挙げると、僕の両隣に居た兵士達が一斉に背中のライフルを構え、銃口を僕に向けてきた。

「ロクヨウ……君はこの軍の今後の繁栄のため、ここで人柱となってもらう」

 ここにきて、ここまで追い詰められて、僕はようやく、僕がここに呼び出された意味を知った。

 全ての罪を、僕に押し付けるため。

 トカゲの尻尾として利用するために、セブルスは僕をここに呼び出したのだ。

「どうやら君は先日、レジスタンスの女性を捕縛しようとした二人の兵士を邪魔したそうじゃないか。下から報告がきていたよ」

「レジスタンス……ちょ……ちょっと待て! あれは邪魔したんじゃなく、あの二人の兵士が女性に強姦をしようとしたから、僕はそれを止めただけだ!」

「フフフ……ロクヨウ、ボクにとっては別に、理由などどうでもいい。ようは君がレジスタンスと接触し、兵士二名を撃退した……その事実関係だけで十分、君がレジスタンスと組んでいるのではないのかという、疑惑を孕ませることができる。あとはボクがどうするか、君でも分かるんじゃないか?」

「……俺がレジスタンスと繋がっていたと仕立て上げ、王族の殺害はレジスタンスによるものとして処理する」

「そう……そしてそのレジスタンスと繋がり、この城へ迎え入れた君をボク達が討伐した……これで全ては、丸く収まる」

「……相変わらずやり方が汚ねえな」

「要領が良いと言ってくれ……」

 どうやらコイツ、本気で僕をこの場で消すつもりだな。

 まあそうか……末端の人間なんて、この程度のことにしか上の人間は利用できないと思ってるに違いないからな。

 もうこの兵団に、僕の居場所は無かったんだ。

 だったら……もう必要無いのだったら、こっちから出て行ってやるぜ。

 こんなくだらない場所で、犬死してたまるかっ!

「ふん……セブルス、お前は僕を見くびってるようだな」

「……どういうことだ」

「兵士として落ちこぼれたとはいえ、僕の剣技は廃れてなどいない。もし僕を本気で殺したかったのなら、こんなぶっきら棒兵士二人だけじゃなく、この部屋を埋めるほどの兵士で固めるべきだったな!」

 僕は左手でマテリアルガントレットの手の甲を押さえ、その効果を発動させた右手で、背中にある鋼の剣の柄を握る。

 確かセットしていた魔石の欠片は、土属性の欠片……地面を砕くほどの力を持っているのなら、この部屋の地面くらい軽く吹き飛ばせる!

「ロクヨウ……お前それはっ!しかしそれの配給はまだ行われてないはず……何故二等兵のお前がっ!」

 どうやらセブルスも、僕の装備しているガントレットが普通のガントレットでないことに気づいたようだ。

「たまたまだよコイツを手に入れたのは……しかしこんな偶然が起きるんだったら……!」

 僕は剣を一気に引き抜き、それを床に叩きつけると共に、僕自身はその場から跳躍した。

「僕はまだ、神様から完全に見放されたわけではないようだな!」

 床が砕け、僕に銃口を向けていた兵士達は下の階へと落ちていく。

 そして飛び上がった僕は、部屋の扉側へと着地し、セブルスを見据える。

「セブルス……お前に僕は殺せない。お前は頭は良いが、僕に戦闘では及ばない。それに今の僕にはマテリアルガントレットがあるから、尚更な」

「……そのガントレットをお前が所持しているのは想定外だった。今ボク自身がお前と勝負をしても、ボクが負けるだろう……だけど」

 するとセブルスは、ハッキリ確認はできなかったが、長官の机の下の部分を触ったように見えた。

 その刹那、兵士棟内の赤色灯が光り始め、強烈な音を出して警告音が鳴り響き始めた。

「この世界は集団戦が既に主軸だ……お前はもう、袋のネズミなんだよロクヨウ」

「チッ……!」

 やはりセブルス、二の矢を準備していたか。どおりで建物の中が静かだったのは、伏兵を潜ませていたからか。

 僕は踵を返し、扉を開いてからダッシュで廊下へと駆け出したのだが……。

「クッ……」

 廊下には既に四、五人の兵士が待機しており、全員がライフルを持って、僕に照準を合わせていた。

 四面楚歌……か。

「コヨミ! 目を閉じろっ!!」

 その時、どこからか分からないが、一人の男の声だけが廊下に響いた。

 どこかで聞いたことのあるような声であったが、しかしこの状況で一体、どんな意図があって僕を助けようなんていう発想に至ったのかは知らないが、しかし地獄の窯の淵に立たされた僕にとってはもう、その声の主だけが頼りだった。

 僕は指示された通り、目を閉じる。

 するとその直後、まぶたの奥から強烈な光が一瞬発光し、そしてその光はじきに収まっていった。

 何があったのか確認するために、僕はゆっくりと目を開くと、周囲で僕を包囲していた兵士達が一斉にライフルを下ろし、何故か目を瞑ってもがいていた。 

 一体僕が目を閉じている間に、何が起こった……?
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