英雄のいない世界で

赤坂皐月

文字の大きさ
85 / 149
THE GROUND ZERO 間章4 伝説の終息

間章4 伝説の終息

しおりを挟む
「…………クソッ! アイツはまだ来ないのか! どれだけこんな暗がりに、わたしを待たせるつもりだ!」

 コツン……コツン……。

「っ!! 誰だっ!!」

 ガバッ! チャキッ!

「フフッ……相手の姿がしっかり確認できないまま銃口を向けるとは。あまり感心できませんね、エイン・ルージさん?」

 コツン、コツン。

「なんだ……カレンダーだったか」

 スッ……ガサッ。

「フフ……魔石発電施設旧第三高炉……以前までは、まさに此処こそがマグナブラを動かすための心臓部であったのに、今やただの廃屋ですからね」

「それはなんだ、わたしがレジスタンスであるが故の、マグナブラ側のお前の嫌味というやつか?」

「別にそういうわけで言ったつもりではありません。ただ、ここに来る人間がいるとすれば、何かしらここに用がある人間か、あるいはそう……何かから追われて逃げ延びた、凶漢くらいでしょうからね」

「……わたしがその凶漢とでも、お前は言いたいのか?」

「あながち間違いではないでしょう? あなたはこの国に対して、蜂起を企てようとした張本人。斬首は免れないどころか、その後その首が民衆の前に晒されてしまうほどの、そんな超極悪人ですからね」

「ハッ! そこまで言うからには言葉を返させてもらうが、そんな大罪人を処分するチャンスがあったのにも関わらず、逃がし匿った国防大臣様は、果たしてそのことを民衆に弁解できるのかな?」

「おお……それはあまり好ましくない状況ですね。いや、参った参った」

「……チッ!」

 カンッ!

「フフ……まあそういう話をするために、ボクはわざわざあなたをここへ逃がしたわけじゃありません」

「逃がした? それはどういうことだ? わたしはお前が、決戦前に直接話があると聞いたから、ここへやって来たんじゃないか」

「そう……だったのですが、実は状況が変わりましてね。その決戦は既に、あなたの居ない内に決着が着いてしまいました」

「決着が着いた!? カレンダー、お前は何を?」

「レジスタンスは今朝、我が軍の襲撃により滅びました。それに伴い、本拠地であるあの砦も陥落しました」

「んなっ!? ……そんな……バカな……ことが……」

「フフ……しかしそれが事実。これにより、あなたの後ろ盾はもう無くなりました」

「まさか……ここにわたしを待たせている間、お前がしていたこととは……」

「ボクは国防大臣ですからね。このような大きな仕事、軍の最高指揮者がいなければ締りが悪いでしょう?」

「キ……キサマアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!! わたしをコケにしやがってええええええええええええええええええっっ!!!」

 ガバッ! チャ……ズドンッ!!

 ガシャッ!! ……ポタ……ポタポタ……。

「言ったでしょう? あなたにはもう、後ろ盾は無いと。あなたを庇ってくれるしもべはもうここには……いや、この世にはもう、誰一人居ないんですよ」 

「グ……グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 バタンッ! ググッ!

「いてえっ! 手が……手がああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」

 ボタボタボタッ……ボタッ……ボタボタッ。

「フン……手に数ミリの穴が一つ空いただけです。その程度じゃ致命傷にはなりません」

「カレンダー……テメエ、やはりわたしの命を……っ!」

「命? 命を狙うんだったら、ボクはあなたをここへ寄越してなどいません。しもべもろとも、あの兵器で滅ぼしていたでしょう」

 カツン……。

「ヒッ……!」

「ボクが滅ぼしたいのは、あなたのようなクズの命ではない。あなたの後ろにある、邪魔な七光りを滅ぼすために、ここに呼んだのですよ」

「七……光り……?」

「そう……あなたの唯一持ってるもの……勇者の血筋をね」

 カツン……。

「あなたがレジスタンスの首領になれたのも、その勇者の血筋であったから。つまり勇者という存在が軽薄になりつつある今でも、やはりその存在は、人々の潜在意識の中に生きてしまっているのです」

「そ……それのどこが悪いんだ……」

「どこが悪い? ……フフ、十分害悪じゃないですか。自分自身を、一度鏡で見て確認するといい」

「んなっ!?」

「おっと……でもこれからのことを考えると、そんないとまはありませんね。失敬。ではボクの方から、今まで通り教えてあげましょう。つまりあなたのような、カスみたいな人間が、勇者の血筋だというだけで、人の上に立っていたというこの状況……これ以上の不公平など、他には無いと思いませんか?」

「テメエ……どこまでわたしを侮辱するつもりだっ!!」

「侮辱ではない、これは事実だ。人間とは愚かな生き物だよ……いくらそいつが間違っていようとも、そいつのことを信仰していれば、それは合っていると解釈するのだからな。そしてその逆もしかり。信仰から反するものは、全て間違っていると解釈する。人間の中の信心というものは、それだけ厄介なものだということだ」

「何が言いたいっ!!」

「フフ……ボクが言いたいことは、さっきから一度たりとも変わっちゃいない。あなたの邪魔な七光りを、ここで滅ぼす」

 チャッ……!

「古い英雄の伝説サーガには、ここでご退場してもらう」

 ズドンッ!! ……カラン……カラン。

「…………カ……ハ……」

 ガッ……ペタン……。

「あ……ああ……」

「おっと、腰が抜けました? まあ無理もありませんか……最初に言った通り、あなたの命には興味はありません」

 チャッ!

「ヒイッ!」

「あなたはこのまま生かされ、レジスタンスの戦士が皆、死に絶えたのにも関わらず、そのリーダーはのこのこ逃げ延び、生きていたと。勇者の家系なんて所詮はこんなものかと、そう世間に後ろ指を差されながら、一生を過ごしていくのですよ」

「ぐっ……」

「あなたは勇者の伝説を崩した、最大の汚点として、生き恥を晒し続けなさい」

「グ……グギギギギギギギギギギギギギッ! グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 ガッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンダンダンダンダンッ!!

「……こうなったのは誰のせいか、よく考えなさい。自分が地獄に転げ落ち始めたのは、一体誰のせいかをね」

「あ……ああ……」

「それまではボクの協力を得て、順風満帆に金を稼ぎ、名声を思うがままに手にしていたあなたが、突如つまづき、地獄への下り坂を転がり始めたのはそう、この国のトップが代わってからでしたね。その元凶を作った男は今、この国のトップに立っています」

「この国の……トップ……」

「そいつの名前は……グリード」

「グリード……グリード……グリードグリードグリードグリードグリードグリードグリードグリードオオオオオオオオオオオオッ!!」

 ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ! ダンッ!!

「今ならまだ間に合う……復讐にはまだね」

「復讐……わたしを……俺を狂わせた男……グリードへの復讐を……へっ……ヘヘっ……ゲヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘッ!! 復讐ダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!」

 ガッ! タンタンタンタンタンタンタンタンタンタンタン…………。

「フッ……これであの男は、ただの憐れな復讐の犬へと堕ちた。勇者の伝説を引き継ぐ者はこれで、いなくなった」

 カシャ、ガチャコッ、カチッ……ガサッ。

「古い英雄の伝説サーガが終息し……これからはそう、新たな英雄の伝説サーガが始まる。それを紡いでいく者は即ち、この世界を収束させる者だ」

 コツン……。

「バラバラになった世界を、人々を一つにまとめ上げ、統制していく……これこそがボクの理想であり、ボクの目指すべき英雄像……」

 コツン……コツン……。

「だからボクは、もっと高みを目指さねばならない……この世界の、秩序となるために……」

 コツン……コツン……コツン……コツン……コツン…………。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...